死亡エンドしかない悪役令息に転生してしまったみたいだが、全力で死亡フラグを回避する!

柚希乃愁

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第一章

情報共有②

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 家屋かおくで起きたことについてはこれ以上話しても、今わかることはないと考えたフォルステッドは別のことをレオナルドにうた。

「……ところでレオナルドよ、どうしてセレナリーゼを一人で追おうなどと思った?」
「ミレーネなら必ず騎士達をれてきてくれると信じていましたから」
 レオナルドがきっぱりと言い切ると、ミレーネの肩が小さくぴくりと動いた。また、レオナルドのとなりではセレナリーゼが何か考え事をしながら口の中で小さく「なるほど……」とつぶやいた。けれど、どちらも誰にも気づかれることはなかった。
 一方、フォルステッドは少し視線がするどくなってしまった。魔力探知たんちの基本も知らずに信頼しんらいだけでそんなけみたいなことをするな、と言いたいが、実際ミレーネの精度の高い魔力探知のおかげで騎士達が辿たどけたたのは事実のため、言い返すことはしなかった。魔法のことは追々おいおい知っていけばいい。フォルステッドは意識して一つ息をいた。
「……そもそもどうやってセレナリーゼを追いかけることができたのだ?」
「それは……自分でもよくわからないのですが、はなれすぎていなければセレナの居場所が俺にはわかるんです」
 レオナルドは言いづらそうに、だが、自分でも理由がわからないこの不思議ふしぎな感覚について正直しょうじきに話した。
「そうなのですか!?」
 二人の会話にセレナリーゼが思わずといった感じでおどろきの声を上げる。
「俺に居場所が知られるなんてセレナは嫌だよね?ごめん……」
 これがレオナルドの言い辛そうにしていた理由だった。監視かんししているなんてことは全然ないのだが、そうとらえられても仕方がない内容だ。だからレオナルドはもうわけなさそうにセレナリーゼに謝罪しゃざいする。
「そんなことはありません!うれしいです!」
 だが、なぜかセレナリーゼは目をキラキラさせていた。
「そ、そう?」
 そんなセレナリーゼにレオナルドは困惑こんわくしてしまう。
(お世辞せじでも気持ち悪がられないのはありがたいけど……)
「それは探知魔法ということか!?」
 一方、フォルステッドは驚きに目を見開いていた。そして魔力がない、と判断されていたが、実は極僅ごくわずかにでも魔力があり魔法が使えたのではないかと考えたのだ。もしそうならどれほどいいことか―――。
「いえいえ、まさか。俺に魔力はありませんので、魔法は使えませんよ。だから自分でもよくわからないんです」
 だが、フォルステッドのそんなあわい期待はレオナルドの軽い言葉によって完全に否定された。
「そうか……」
「?どうかしましたか、父上?」
 わかり切ったことなのに落胆らくたんしているように見えるフォルステッドの態度にレオナルドは疑問をいだいた。
「いや……」
 言葉をにごすフォルステッドがチラリとセレナリーゼに視線を向けたことをレオナルドは見のがさなかった。
「何かあるのなら教えてください。今更いまさら魔法のことでどうこう思いませんから」
「実は……、レオ兄さまが眠っている間に私魔法が使えるようになったんです」
 レオナルドのうながしに対し、答えたのはセレナリーゼだった。
「っ!?おめでとう!セレナ!よかったね。何が使えるようになったの?」
「あ、ありがとうございます。初歩しょほの魔法ですがウォーターボールが使えるようになりました」
「すごいじゃないか!セレナならきっとすぐにもっとすごい魔法もいっぱい使えるようになるよ」
 ゲームでは初期から使えていた魔法だ。今が使えるようになった時期なのだろう。レベルの概念がいねんがないからどうしたら新しい魔法をおぼえるのかはよくわからないが、ゲームの知識をゆうしているレオナルドにとってはセレナリーゼが今後様々な魔法を使えるようになることはなかば確定事項だ。そもそも、クラントスを倒したのは相当粗削あらけずりだったと思うがあきらかにフロストノヴァだった。だがそこでレオナルドには一つ疑問が浮かぶ。フロストノヴァはようやくウォーターボールが使えるようになった今のセレナリーゼに使える魔法ではないはずなのだ。
(もしかして魔法には俺が知らない設定とかがあったりするのか?)
 そんなレオナルドの疑問に答えられる者は誰もいない。
「はい。これから頑張がんばります!」
 レオナルドがめてくれたことが嬉しくてセレナリーゼは気合を入れ直した。

 二人のやり取りを見ていたフォルステッドは静かにほっと安堵あんどした。レオナルドは本当にっ切れている様子で、自分の懸念けねん杞憂きゆうだったようだ、と。
「セレナリーゼが魔法を使えるようになり、レオナルドは魔法について独学どくがくをしていたようだからな。これからは魔法の勉強も始めていこうと思う。基礎きそからしっかり学ぶように」
「「はい」」
 フォルステッドの言葉にレオナルドとセレナリーゼはそろって返事をした。

「レオナルド、もう一つ確認したいことがある。実はな、お前にはなぜか回復魔法がかなかった」
「はい。ミレーネに聞きました」
「そうか。一つ仮説かせつを立てるならば、魔力がないことが関係しているのではないかということだが、今はそれはいい。たった一日ではなおるはずもない傷が治ったことについて、自分の身体に何が起こったのか何かわかっているか?」
「いえ、何も知りません。起きたら傷が無くなっていて自分でも驚いています」
「……そうか」
 レオナルドが自然に口にした言葉にフォルステッドはわずかな引っかかりをおぼえた。今の言い方では、先ほどまでのどこかで、本当は知っていることがある、というように聞こえる。偶然ぐうぜんかもしれない。だが、そう、魔物の話のとき、あきらかに辻褄つじつまが合わないことをレオナルドは言っていたのだ。背中の傷は気を失っているときにつけられた、と。もしそれが本当なら、クラントスは殺すでもなく、倒れているレオナルドの背をわざわざ引き裂く程度に攻撃したことになる。戦ってけきれなかったと考える方がしっくりくるのだ。だが、レオナルドにクラントスと戦う力はない。ならば、もしかしたらレオナルドはクラントスを倒した者を知っていてかくそうとしているのではないか。その者にたのまれでもしたのだろうか。フォルステッドの中に疑問だけが残った。

「色々聞いてきたが、私からもレオナルドに伝えておくことがある」
「はい、何ですか?」
「シャルロッテ様には昨日セレナリーゼと謝罪に行ってきた。こういうことは早い方がいいからな」
「そうだったんですね。俺も直接謝罪できればよかったんですが。ありがとうございます父上、ありがとうセレナ」
「今回のこと、どこからか情報がれていたと考えるべきだろう。賊の男二人はただの実行犯で裏で糸を引いていた者がいるはずだ。シャルロッテ様への謝罪に私が同伴どうはんしたのもそれを確かめるためだった」
「まさか、シャルロッテ様が!?」
「いや、シャルロッテ様ではないだろう。まあ私をもあざむけるような方であればわからんが。だが、確実に今回のお茶会は犯人に利用された」
「そう、ですか……」
「賊もいなくなり、現状ではこれ以上調べようがない。真実はやみの中、だ。よって、当面の間セレナリーゼの護衛ごえいを強化することにした。ねらわれたのはセレナリーゼだがレオナルドも今後十分注意するように。お前にも護衛を―――」
「いえいえ、俺はいいですよ。今の自分にそれほど利用価値があるとは思えませんし、早く鍛錬たんれんも再開したいですから」
「鍛錬だと?馬鹿ばかを言うな。三日も意識が戻らなかったのだぞ?当分とうぶん安静あんせいにしていなさい」
「いやいやいや。父上、それはこまります。あまり休んでいると体がなまってしまいます。十分に注意するのでこれからも鍛錬はさせてください」
「……いったい何がお前をそこまでり立てるんだ?」
「強くなりたいんですよ。もっと、もっと。今回のことだって、俺がもっと強ければセレナをちゃんと助けられたはずですし」
「レオ兄さま……」
「……お前には辛い現実かもしれんがはっきり言おう。魔力のないお前がどれだけ努力しようと魔力持ちにはかなわないのだぞ?」
 フォルステッドはレオナルドの身をあんじ、この世界における現実を突きつけた。
「お父さま!?」
 これに驚いたのはセレナリーゼだった。思わず非難ひなんするような声になってしまった。何もそんなことをレオナルドに言う必要はないではないか。
「いいんだ、セレナ。父上、それでも、です」
 レオナルドはセレナリーゼの反応にっすら笑みを浮かべ、フォルステッドをまっすぐ見つめて言った。
 レオナルドから意志の固さが伝わったフォルステッドは一度大きく息を吐いた。
「……ならば、もうじき公爵領に帰省きせいする時期だ。それまで鍛錬はひかえなさい。帰省中はアレンとの鍛錬だけは認めよう。魔物との実戦は王都に戻ってきてからにするように。これ以上はゆずれん」
「……わかりました」

 その後もこまかな確認がいくつかされ、話し合いも終わりとなったときのこと。
「お父さま、少しだけ二人でお話したいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
 セレナリーゼは真剣な表情でフォルステッドに願い出た。
「?わかった」

 こうしてフォルステッドとセレナリーゼを残し、レオナルド達は執務室を後にした。
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