死亡エンドしかない悪役令息に転生してしまったみたいだが、全力で死亡フラグを回避する!

柚希乃愁

文字の大きさ
38 / 119
第一章

趣味嗜好とチートについて

しおりを挟む
『あなたは私の封印をく前、死ぬ運命を回避かいひしたいから力が欲しいと言いました。こうして私と契約した今、これからどうしていくつもりなのですか?』
「とりあえずは、今できることをコツコツしていくつもりだよ。っていうか、現在進行形でしてる」
『と言うと?』
「毎日鍛錬たんれんしてるのがそうだし、ゲームでは開始時点で俺は次期公爵のままだけど、この世界ではすでにセレナになった。これは大きな違いだと思ってる。少なくともこれで、この国の第二王女、シャルロッテ様ルートに進んだ場合は大幅に内容が変わるはずなんだ」
『その言い方だとルートというのは物語の分岐ぶんきのことですよね?ルートはいくつあるのですか?』
「さっき、セレナとミレーネのこと少し言ったよね?ゲーム通りなら、主人公と結ばれる可能性がある女の子は五人のヒロインと五人のサブヒロイン、合わせて十人いて、それぞれのルートがある。そのうち、ヒロインの一人がセレナで、サブヒロインの一人がミレーネなんだ。それとこういうゲームではお約束の全員と結ばれるハーレムルートの可能性もある。だから主軸は十一ルートってことになるのかな。そこに不幸な結末をむかえるバッドエンドを含めたら倍以上になるけど……」
『すごい数ですね。その主人公は相手をり取り見取りという訳ですか』
「まあ、そういうゲームだからなぁ」
 レオナルドは思わず苦笑してしまう。エロゲなんてだいたいそんなものだからだ。
 だが、そこで精霊から予期せぬ質問が飛び出す。
『あなたもそのゲームをやっていたということは、複数の女性から言い寄られたいということですか?ハーレム願望があると?』
 それはレオナルドの趣味嗜好しゅみしこうについてだった。
「いやいや、そういうのはゲームだからありというか、男の夢なのは認めざるを得ないけど、現実でそんなことしたいとは思ってないよ!?そもそもゲームでもこの世界でもレオナルドを好きになるような人なんていないから。俺は魔力なしの落ちこぼれだし。……なんか自分で言ってて悲しくなってきた」
『そうなのですか?本当はしたいなら協力してあげますよ?』
「本当は、って何だよ。疑うなよ!しかも協力って何する気だよ!?」
 この手の話で精霊の協力というのは、レオナルドにとって悪い予感しかしない。そしてその予感はすぐに当たることになる。
『女性の意識をちょこちょこっと誘導ゆうどうするくらいは簡単ですよ?』
「やっぱりダメなやつだった!ゲームの精霊さんは確かに力を使ってたみたいですしね!それくらいできちゃいますよね!でも怖いこと言うのはマジでやめて!?そんなこと絶対しないでくれよ!フリじゃないからな!?」
 ゲームでは主人公からヒロインの略奪りゃくだつこころみるレオナルドだが、それには精霊の力を使っていたことが明かされているのだ。ただこれについても具体的にどう力を使っていたのかは説明がなかった、のだが……。答え合わせをする方法はもちろんない。が、もしかしたら意識誘導をしていたのかもしれない。
『なるほど。ゲームの私はやっていたんですね?つまりあなたも本心では……』
「本心とかじゃないからな!?」
『そうですか?まあ、安心してください。今の私はあなたの意思に反することはできませんから』
「はぁ……今、本気で契約してよかったって思ったよ」
『実感できてよかったですね』
 反射的に言い返しそうになったレオナルドだが、この話題から早く離れたいと思い直し、ぐっとこらえた。

「…………話を戻そう。って、どこまで話したっけ?」
『ルートが二十以上あるというところですね』
「あ~そうだった。それで、問題なのは、主人公が誰と結ばれるかでそれぞれ話の展開が違うのは当然なんだけど、俺の殺され方も全然違うんだ。で、俺が死ぬ分岐点―――、死亡フラグも全部違ってる」
前途多難ぜんとたなんですね。先回りしてその死亡フラグとやらを全部つぶしてしまうことはできないのですか?あなたはこれから起こることをすべて知っているのでしょう?』
「すべて、っていうのは違うかな。ただの日常は全然わからないし。で、先回りって話だけど、それも難しい。俺の死亡フラグには他者の動きが多分に影響するんだ。でも、四年半後、どんな分岐をしていって、どういう展開になるかは今の時点じゃ全くわからない。そのときが来ても、主人公が誰と仲良くなるかで、ある程度ルートの予想はつくかもしれないけど、それも確実じゃないし……」
後手ごてに回らざるを得ない、ということですか。』
「ああ。強いて言えば、本編開始までに起きてしまった登場人物達に悪影響のある出来事はいくつかわかるんだ。ゲームの回想とかに出てきてたから。でもそれだってほとんどの場合、具体的な日付まではさすがにわからないから介入かいにゅうは難しい……」
『現状やれることが少ないということは理解しました』

「それにさ、つい先日、セレナがさらわれた。これはゲームにはなかったことなんだ。しかもそのとき、犯人の男達が突然苦しみだしたかと思ったら魔物に変身した。何を言ってるんだって思うかもしれないけど、本当に変身としか言いようがなくて。何とかその魔物、クラントスは倒してセレナは無事助けられたんだけど、どうして人が魔物になったのか、セレナを攫った目的もわからずじまいで……」
『ゲーム的には大した出来事ではないということなのでは?無事だったのでしょう?』
「否定はできないけど、これがゲームで語られていなかっただけとは思えなくて。もしかしたら俺のせい―――、次期当主がセレナになったことで、ゲームの展開から離れてしまったんじゃないかって。もしそうなら、俺が持ってる知識はそのうち役に立たなくなるのかもしれない」
『なるほど。あなたが死ぬ運命を回避しようとすれば、確かにゲームとは違った展開になっていく可能性はありますね』
「うん。だからこそ、迷いに迷ったけど、精霊さんとの関係もこうして前倒しにした。これもゲームとはだいぶ変わってしまうけど」
『ほう?私に関して迷いに迷ったというのは?』
 レオナルドには精霊の声に怒りが混ざった、ような気がしてあわてる。
「だ、だって、レオナルドが精霊さんを宿すのは死ぬ運命に近づく行為っていうか、一番わかりやすい分岐っていうか、極大の死亡フラグなんだよ!?だから本当は避けたかったんだ。そりゃ迷うよ」
『……それならば会いになど来なければよかったでしょうに』
 精霊の言い方からは、プイっとそっぽを向いてしまったのが幻視げんしできそうだ。
「勝手なこと言ってるってのはわかってるけど、俺には精霊さんの力がどうしても必要だったんだ。一番はもちろん殺されたくなんてないからだけど、この先、不測の事態が起きてもセレナ達を守れるようになりたかったんだ。精霊さんはこの世界において間違いなくチートな存在だから」
随分ずいぶんと甘い、そして傲慢ごうまんな考えですね』
「わかってるつもりだよ……」
 自分のことだけでもままならないのに、大切な人も守りたいなんて確かに傲慢だとレオナルドの口元に自嘲じちょうするような笑みが浮かぶ。
『ところでチートとは?』
「最強って意味だよ。ゲームで戦ったのは精霊さんを宿したレオナルドだけど、精霊術は本当に理不尽りふじんなほど強かったんだ」
『……いいでしょう。ではその精霊術を使えるようにするためにも、鍛錬のときに言った通り、あなたには霊力のあつかい方から教えて差し上げましょう。何せ私はチートですからね』
 もしも精霊に顔があれば、フフン、とドヤ顔をしているところが見られたかもしれない。そんな雰囲気ふんいきがあった。
「ありがとう!よろしくお願いします!」
 目の前に精霊がいる訳ではないが、レオナルドは実際に頭を下げるのだった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき
ファンタジー
 停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。  どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。  だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。  もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。  後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました! ※完結後、三人称一元視点に変えて全話改稿する予定です。規約を確認してから決めますが、こちらも残したいと思っています。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

【完結】ヤンデレ乙女ゲームの転生ヒロインは、囮を差し出して攻略対象を回避する。はずが、隣国の王子様にばれてしまいました(詰み)

瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
 ヤンデレだらけの乙女ゲームに転生してしまったヒロイン、アシュリー。周りには、攻略対象のヤンデレ達が勢ぞろい。  しかし、彼女は、実現したい夢のために、何としても攻略対象を回避したいのだ。  そこで彼女は、ヤンデレ攻略対象を回避する妙案を思いつく。  それは、「ヒロイン養成講座」で攻略対象好みの囮(私のコピー)を養成して、ヤンデレたちに差し出すこと。(もちろん希望者)  しかし、そこへ隣国からきた第五王子様にこの活動がばれてしまった!!  王子は、黙っている代償に、アシュリーに恋人契約を要求してきて!?  全14話です+番外編4話

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...