裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G

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Chapetr1

033 レティシアと妄想サイクリング

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 良いお天気だ。
 涼しい風が吹く湖畔の道。
 景色はゆったり流れる。
 
 「最近、このコースで新記録が出たんだって。星団新記録らしいよ」
「……へー、そーなんだ」
 マリーさんの視線がつらい。最近デレたと思っていたが、冷たさは健在だ。
「スピード新記録で、若い女性らしいわ。展示とか有るみたいだから、後で見に行かない?実はたくましい太股、憧れるのよね~」
「いや……いいかな。サイクリングってほらのんびりを楽しむものだし」
「私は興味有るわ。その人、意外と細身で可愛いかもしれないし」
 誉められてんだけどね!

 今日は惰弱……もとい、ファミリーサイクリングコースをのんびり走る、のが目的。
 さっきから最上級コースの赤い道が気になって仕方ない。
 そんな私の気も知らない惰弱なソフィアが、私の前後左右にまとわりつく。普通に危ない。
 あの時のマシンは、今と同じ何の変哲もないサイクリング用自転車。もし、戦闘用のマシンに乗ることができていれば、宇宙記録を更新できていたかもしれない……。
「レティシア、なんか怖くなってるよ」
「闘争本能が疼くのよ……」
 わかっています、今日はね。
 それにしても、ソフィアは危なっかしいな。下手クソだ!
「ソフィア、練習場でもう少し練習しようよ~」
「やだよ~。私が練習している間、二人はキャッキャしてるんでしょ?」
「ソフィには私か付いておくわ。レティシアは走りたいんでしょ?」
「……え、そう、なんだけどね」
 いいのかな?いいのかな?
「めっちゃウキウキしてるよこの子。何?レティシア走るの好きなの?」
「ソフィ、さっき言ってた……」
「マリー!それはオチ用の」
「星団記録のこと?レティシアでしょ?……知ってるよ」
 ソフィアの雰囲気が変わった。
「ふふ……貴女がどういう反応を見せるか、ずっと探っていたの。その様子、やっぱり何の覚悟も持っていないようね、タイトルホルダーの覚悟を!」 
 また小芝居を……この前は騙されちゃったけど、そう何度も騙されてたまるかよ!役に酔っているソフィアではなく、後ろのマリーを睨みつける。
(えっ、何?私も分からないよ!)
 何も知らない村人Aの役?違うの?どっちなのマリー!
 ソフィアは私の答えを待っている。なんて答えよう。1、つき合ってやる。2、無視してここを去る。
「私は……」
「えい」
 マリーがソフィアに「膝カックン」!
「あう」
 コレはキレイに入ったな。
 力が抜けて崩れるソフィアをマリーが優しく抱き留める。
「マリィ……何すんだよぉ……」
「レティシアがタイトルをとったのは、私の為なの」
 まだ続けるのかよ……。ソフィア、そんな目で見るな。始めたのはアンタだ。
「ソフィア。私は行くわ。マリーは最近私に構ってばかりでいてくれたから、ソフィア成分が足りてないみたい。二人でイチャコラしていなさい」
「ちょっと、レティ……」
 うわ、ソフィアの力が入らないことを良いことに、マリーったら対面に抱き替えて……あれってチューしてるんじゃないよね?まさかね!
 レティシア号戦線離脱、急速発進!

 落ち着け、落ち着け。
 黄色コースを走り、心を落ち着かせる。
 あの二人は割と子供の頃から知り合いみたいだったし、一緒にいたらお風呂もベッドも当然一緒みたいだし。だからってチューはないよね!いやでもさ、私のことも揉もうとして来るじゃない?あの子達は二人だけの時も、あんなのかしら、どっちかが止めるの?止まるの?そしたら盛り上がってチューくらいしちゃうんじゃないの?そっちの人?でも先生と結婚狙ってるはずだし。もしかしたら街の女の子達はチューくらい普通なのか?私もされちゃうのか?
 動揺してヨタヨタ走っていたら、惰弱コースに入るよう指示された。
 ムカツク!……でもよ、でもさ……。
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