裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G

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073 レティシアと恨み節(19/20)

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 自由大学の食堂は、周囲を植栽でかこまれていて中からも外からもお互い見えにくくなっている。私はそんな植栽に潜り込み、中で楽しそうに語らう一組のカップルを凝視していた。
 そういえば、彼の容姿を説明したことがなかった。
 座る姿勢がやたらと美しいのは私と同じで骨格が完璧だからだ。髪はやや癖のある短髪で私にとっては憧れの髪色の一つの濃いブラウン。同じくブラウンの瞳は光の加減で金色に見える事もあってずっと見つめたくなるから不思議。歳は知らないけど私より下って事はないだろうから、童顔だ。可愛いしカッコいい。え?よく分からない?それで結構。私が分かっていれば良いのです。
 私の隣で別のカップルを凝視しているのは、マリーという常にお姉さんぶる恩人で親友で、最新の称号は口軽女だ!大学講師のフェルディナンドとこれもついさっきまで親友だったソフィアという女を睨みつけている。
 この二組は今日は連れで、直前まで講義関係で一緒だったのだ。食堂が2人掛け席しか空いていなかったので、別れた、自然に、男女カップルで!
 ソフィアは憧れのフェルディナンドと2人で食事というシチュエーションも、マリーに凝視されていると気付いてからは目に見えて青ざめてしまっている。
 アカリ氏にいたっては……!
 
 昨日までのもやもやを陽の光を浴びて溶かしてしまおうと、私は朝から大学周辺をウロウロしていた。お昼はみんな中庭で集まって食べるから、場所取りも兼ねる。
 昼食時になったので、講義が終わった友人達がそれぞれの食事を持って私が占領しているベンチにやってきた。私はすでにデザートのフェイズに入っているが。
 
「昨日の、私の親友オーディションはどうなったの?結果」
 今日も親友面して私の隣に陣取っているマリーをわざと無視して、周りの子たちに聞いてみた。
「それがねぇ、思ったより数が集まらなくて……」
 ゲラゲラとケイトが笑って、マリーにぱちんと叩かれる。
「ちなみに、私たちも参加しての人数だからね」
 マリーとソフィアは再選狙いで参加したようだ。私のこと好きなんだな?
 なぜか審査員はたくさん集まったらしい。
「でも審査員の中にレティシアのおじさんがいて、結局私たち以外を落としちゃったの」
 癒着に違いないな。
「その、ごめんね。痴女行動を言いふらしちゃって」
「もういいよ」
 恥女と言うな。
 
 会話が途切れた一瞬、余所の会話が耳に入った。
「通りのご飯やさんもみんな美味しいんですけど、学校の食堂も私は好きで」
「そうなんだ。僕も宿舎の頃はご飯は楽しみだったな」
 私の今一番聞きたい声がした。
 声が聞こえた瞬間に立ち上がって振り返った。
 目が一瞬合ったかもしれないけど、すぐに椅子にうずくまって隠れる。
「レティシアちゃんどうしたの?」
 突然妙な行動をとった私をアイちゃんは不審がったけど。
「あ、船長さんだ。レティシアちゃん、今日の特別ゲスト、アカリさんだったんだよ」
 さっきまで一緒に話を聞いていたのだが、時間が来ても終わらないためさっさと講義室から出てきたと言う。
「お~アカリさん、女連れとはやるなぁ。腕なんか組まれちゃって」
 マリーが冷やかす。女連れというか、最後まで彼らの話を聞いていた強者だろう。
「……羨ましくなんてないし」
 マリーとアイちゃんがアカリさんに手を振った。
「アカリさん、レティシア捜してたよ」
「ああ、あの人がレティシアちゃんの恥女被害にあったっていう」
「船長さんってなんで?」
 友人たちもよく分かっていない。私も知りたいとは思うけど。
「先生が言うには、船長さんは宇宙のすごい英雄さんで、今は隠居して宇宙の配達屋さんをしてるんだって。レティシアちゃん知ってた?」
「知らないよ……」
「泣かないでよ」
 マリーが優しく撫でてくれる……。
「痛!」
 撫でてくれてたマリーの指が、頭に食い込む。
「マリー、痛いって」
「ソフィ……」
「あ、ソフィアが抜け駆けしてる!」
 私には見えなかったけど、アカリさんの後を歩いていたフェルディナンドとソフィアが仲良く食堂に入っていったとか?あいつ、度胸あるな……って痛いな。
「行くよ、レティシア!」

 ということで、文頭に戻るのだが……。
 相手の顔はよく見えないし、話も全く聞こえないが、アカリさんはにこやかに対応している
「む~」
 私の中のいい子ちゃんが、アカリ氏を睨むのも女の子を睨むのも違うと言っているが……。
「む~」
 無理なものは無理なのだ!
「あ、ソフィアが出てくる!私捕まえてくるね!」
 アカリさん、長い!
「む~」
 結局、20分は歓談していただろうか。呼び出しを受けたらしいアカリさんは、食堂を出た。
 何か最後、こっちを見ていたような……?

 葉っぱまみれでみんなの所に戻った私は、むごい扱いを受けている捕虜の姿を見るのだった。
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