裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G

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Chapetr2

087 レティシアと葡萄畑の思い出

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 私が星都へ来ることになったきっかけは、何だったか。
 よく考えると記憶にない。私が行きたいと言って、やって来た。当然あるはずの家族とのひと悶着も、ストーリーとしてはあったということになっているけど、映像とかの記憶にはない。
 不思議なことに、この二年間考えたこともなかったんだ。
 それが今、アカリさんの船ハイペリオン号のおかしなクルー達のせいで、忘れさせられていた家族の記憶を思い出した。
 
 あの日はとても晴れていた。

 朝からいつも通り、お兄ちゃんに追い立てられてスクールに行った。あんな人でも朝早くから起きて仕事してるんだ。働き者で自慢のお兄ちゃんと思ったのは秘密だ。すぐに調子に乗るからね。
 お昼過ぎに、スクールが急に取りやめになって、何だろうどうしたんだろうと、友達と言いながら帰った。
 スクールがある辺りは、畑と家を別に持っている人達の住居だけが集まっているちょっとした町だ。私の家は畑に付いているので友達と別れたあともまだまだ歩かないとならない。
 家が近づくにつれてやたらと警察さんや消防車がいて、何か大きな事件が起きたのだとわかった。
 向こうの丘にある私の家から煙が立っているのが見えてしまった。家の形もおかしい。
 私はたまらず走り出す。
 実はこの後はよく覚えていない。
 ああ、一つ。崩れ落ちた家の残骸から畑を見下ろすと、あの綺麗だった葡萄の畑はなくて、焦げ茶色い大きな穴が開いていたんだ。
 
 気が付いたら病院だった。寝込んでたというわけではなく、気が付くと病院で暮らしていた、ということ。後にお酒のことでお世話になる先生が主治医ということだった。
 当初は家に帰りたいと、相当暴れたそうだ。そりゃそうだろう。朝、笑顔で別れた家族が、ほんの数時間後に誰もいなくなっているなんてありえない。
 何日も暴れて泣いて、ある日急に大人しくなったらしい。相当きつい薬を打たれたかと心配したと、私の世話をしてくれていた看護士さんが言っていた。まあ完璧に失言だが、当時の私には意味が分からなかった。たぶん叔父さんが何かしてくれたんだろう、私が壊れないように。

 原因は隕石の衝突だと、事件の日は言われていたけど、実は落ちてきたのは隕石ではなくて十年前の戦争で沈んだ宇宙戦艦の欠片だと、叔父さんは話してくれた。その欠片は運悪く我が家の畑に落ち、付近のものを吹き飛ばした。
 お父さんお母さん、お兄ちゃん、いつもお手伝いに来てくれていたお兄ちゃんの彼女。順番で手伝いに来てくれていた親戚の人達。可愛い子牛も、私だけに懐いていた白猫も。

 そして全部すっかり忘れてしまって、のんきに町で暮らすうち、みんないつからかはわからないけど気が付いたんだろう。マリー達は私の家族の話になると強引に内容を変えてたし、エレナさんも話の中で気が付いた。とても奇妙で異常に見えたていたと思うよ。

 今日は家で友達と過ごすように、と叔父さんが言った。
 どうやって家に戻ったかはわからないんだけど、帰るとマリーとソフィアがもう来ていて、ご飯の準備も出来ていた。
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