87 / 104
Chapetr2
087 レティシアと葡萄畑の思い出
しおりを挟む
私が星都へ来ることになったきっかけは、何だったか。
よく考えると記憶にない。私が行きたいと言って、やって来た。当然あるはずの家族とのひと悶着も、ストーリーとしてはあったということになっているけど、映像とかの記憶にはない。
不思議なことに、この二年間考えたこともなかったんだ。
それが今、アカリさんの船ハイペリオン号のおかしなクルー達のせいで、忘れさせられていた家族の記憶を思い出した。
あの日はとても晴れていた。
朝からいつも通り、お兄ちゃんに追い立てられてスクールに行った。あんな人でも朝早くから起きて仕事してるんだ。働き者で自慢のお兄ちゃんと思ったのは秘密だ。すぐに調子に乗るからね。
お昼過ぎに、スクールが急に取りやめになって、何だろうどうしたんだろうと、友達と言いながら帰った。
スクールがある辺りは、畑と家を別に持っている人達の住居だけが集まっているちょっとした町だ。私の家は畑に付いているので友達と別れたあともまだまだ歩かないとならない。
家が近づくにつれてやたらと警察さんや消防車がいて、何か大きな事件が起きたのだとわかった。
向こうの丘にある私の家から煙が立っているのが見えてしまった。家の形もおかしい。
私はたまらず走り出す。
実はこの後はよく覚えていない。
ああ、一つ。崩れ落ちた家の残骸から畑を見下ろすと、あの綺麗だった葡萄の畑はなくて、焦げ茶色い大きな穴が開いていたんだ。
気が付いたら病院だった。寝込んでたというわけではなく、気が付くと病院で暮らしていた、ということ。後にお酒のことでお世話になる先生が主治医ということだった。
当初は家に帰りたいと、相当暴れたそうだ。そりゃそうだろう。朝、笑顔で別れた家族が、ほんの数時間後に誰もいなくなっているなんてありえない。
何日も暴れて泣いて、ある日急に大人しくなったらしい。相当きつい薬を打たれたかと心配したと、私の世話をしてくれていた看護士さんが言っていた。まあ完璧に失言だが、当時の私には意味が分からなかった。たぶん叔父さんが何かしてくれたんだろう、私が壊れないように。
原因は隕石の衝突だと、事件の日は言われていたけど、実は落ちてきたのは隕石ではなくて十年前の戦争で沈んだ宇宙戦艦の欠片だと、叔父さんは話してくれた。その欠片は運悪く我が家の畑に落ち、付近のものを吹き飛ばした。
お父さんお母さん、お兄ちゃん、いつもお手伝いに来てくれていたお兄ちゃんの彼女。順番で手伝いに来てくれていた親戚の人達。可愛い子牛も、私だけに懐いていた白猫も。
そして全部すっかり忘れてしまって、のんきに町で暮らすうち、みんないつからかはわからないけど気が付いたんだろう。マリー達は私の家族の話になると強引に内容を変えてたし、エレナさんも話の中で気が付いた。とても奇妙で異常に見えたていたと思うよ。
今日は家で友達と過ごすように、と叔父さんが言った。
どうやって家に戻ったかはわからないんだけど、帰るとマリーとソフィアがもう来ていて、ご飯の準備も出来ていた。
よく考えると記憶にない。私が行きたいと言って、やって来た。当然あるはずの家族とのひと悶着も、ストーリーとしてはあったということになっているけど、映像とかの記憶にはない。
不思議なことに、この二年間考えたこともなかったんだ。
それが今、アカリさんの船ハイペリオン号のおかしなクルー達のせいで、忘れさせられていた家族の記憶を思い出した。
あの日はとても晴れていた。
朝からいつも通り、お兄ちゃんに追い立てられてスクールに行った。あんな人でも朝早くから起きて仕事してるんだ。働き者で自慢のお兄ちゃんと思ったのは秘密だ。すぐに調子に乗るからね。
お昼過ぎに、スクールが急に取りやめになって、何だろうどうしたんだろうと、友達と言いながら帰った。
スクールがある辺りは、畑と家を別に持っている人達の住居だけが集まっているちょっとした町だ。私の家は畑に付いているので友達と別れたあともまだまだ歩かないとならない。
家が近づくにつれてやたらと警察さんや消防車がいて、何か大きな事件が起きたのだとわかった。
向こうの丘にある私の家から煙が立っているのが見えてしまった。家の形もおかしい。
私はたまらず走り出す。
実はこの後はよく覚えていない。
ああ、一つ。崩れ落ちた家の残骸から畑を見下ろすと、あの綺麗だった葡萄の畑はなくて、焦げ茶色い大きな穴が開いていたんだ。
気が付いたら病院だった。寝込んでたというわけではなく、気が付くと病院で暮らしていた、ということ。後にお酒のことでお世話になる先生が主治医ということだった。
当初は家に帰りたいと、相当暴れたそうだ。そりゃそうだろう。朝、笑顔で別れた家族が、ほんの数時間後に誰もいなくなっているなんてありえない。
何日も暴れて泣いて、ある日急に大人しくなったらしい。相当きつい薬を打たれたかと心配したと、私の世話をしてくれていた看護士さんが言っていた。まあ完璧に失言だが、当時の私には意味が分からなかった。たぶん叔父さんが何かしてくれたんだろう、私が壊れないように。
原因は隕石の衝突だと、事件の日は言われていたけど、実は落ちてきたのは隕石ではなくて十年前の戦争で沈んだ宇宙戦艦の欠片だと、叔父さんは話してくれた。その欠片は運悪く我が家の畑に落ち、付近のものを吹き飛ばした。
お父さんお母さん、お兄ちゃん、いつもお手伝いに来てくれていたお兄ちゃんの彼女。順番で手伝いに来てくれていた親戚の人達。可愛い子牛も、私だけに懐いていた白猫も。
そして全部すっかり忘れてしまって、のんきに町で暮らすうち、みんないつからかはわからないけど気が付いたんだろう。マリー達は私の家族の話になると強引に内容を変えてたし、エレナさんも話の中で気が付いた。とても奇妙で異常に見えたていたと思うよ。
今日は家で友達と過ごすように、と叔父さんが言った。
どうやって家に戻ったかはわからないんだけど、帰るとマリーとソフィアがもう来ていて、ご飯の準備も出来ていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる