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Chapetr2
091 レティシアと邪龍召喚
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やり残したことの一つに、グリーンヒルズのドラゴントライアルがあった。アトラクションとしては誰でも思いつきそうなレベルだけど、こんな呪われた街が他にあるとは思えないし、そうなるとやはり唯一無二の物。
実は最近、コース制が導入されて難易度が大幅に下がったのだ。やはり難しくて、どうにもならんと言う顧客要求だそうだ。私の他にもチャレンジャーがいたことに驚きを隠せない。
コースは三つ。スタートで魔法陣の完成形を書いた地図を渡されて、そこからどれだけ逸脱しているかで減点されていく「初級コース」。地図だけ渡されて頭の中の完成形と比べながら進めていく「上級コース」。そして何もヒントがない「勇者コース」。名前の統一感とか、もうちょっと盛り上がりを考えた方が良いと思うよ。
その勇者コースで負け続けているのが私だ。ここは見栄を張らずに、ひ、ひ、一つ下の……コース。
「よく来たなよ勇者よ!」
「観測者!」
「久しいの、勇者よ」
「観測者……私は」
「旅に出るのであろう」
一万二千年前の聖魔大戦の時代から世界を観察し続けていた観測者にとっては、私の考えなんかはお見通しというわけか。
「ならば思い残すことがあってはならぬよ。己の信じたことを何度も何度もただ愚直に繰り返し、その先にある物に気付くとき、今までの全てが勇者よ!そなたの力になるのじゃぁ!」
……ちっぽけな幸せに妥協してしまうところだったわ。
「やってみる!」
観測者の鼓舞にのせられたと言えばそれまでなのだけど、戦う力が再び湧いてきたのは事実!
そうだ、この道だ!行ける、身体が覚えている!次は、その次は……!
って、身体が覚えてるコースでやればまた「フタコブラクダ」でしょ!ダメだ~
「レティシアちゃんよ、あんたノリは良いんだけどな。センスがないよ。はい、参加賞のガムだよ」
「ありがと……」
「スポンサーが変わってな、参加賞くらい出せって言われたんだ」
「そうなんだ」
ガムを口に放り込み、たどった道を振り返る。
最後ぐらい何かあってもよかったのに。
「でてこい、ドラゴン!」
そう唱えると月のペンダントがわずかに光り、身体の奥から何かが抜ける感触が私を襲った。
光の線が私が歩いたルートを辿り、グリーンヒルズの街にフタコブラクダの姿が描かれる。急に薄暗くなった空に、二重円に囲まれた複雑な魔法文字が浮かび上がると、街からドラゴンの影が浮かび、一声吼えると上空の魔法陣に向けて飛び立った。
「おじさん、今のは……」
「……まさか先代の仰っていたことは本当だったのか」
観察者のおじさんは、ドラゴンが飛んでいった方向の空を見て震えている。
私は、このペンダントを無性に捨てたくなったけど、結構な量の力を吸い取られたみたいで、腰が抜けたようにうまく動くことが出来ない。
「取り扱い、ミッションは成功……で良いの?」
「ん?ああ、そうじゃな。見事じゃ勇者レティシア!そなたは「邪龍召喚者」の称号を得た!」
「邪龍召喚者……」
悪くない!
「邪龍なの?さっきの」
「ウム。火炎龍じゃな……その内邪龍になるであろう」
また、適当なことを言う。でもこういうノリがこのアトラクションの醍醐味。
「どこに行ったんだろうね、ドラゴンは」
「それは……」
どうして私を見るの?いやいや、どこ見てるのよ。え?胸じゃなくて、ペンダント?
服の下からズルズルとペンダントを引き出してよく見ると、赤の石がビミョーに明るいかな?
「つまり、月だけじゃなくて……残り三体のドラゴンも集めるのだ!そんな感じ?」
私はやり残したことをしに来てるだけなのに、もっと増えてどうするんだ。いやいや、こんなのする必要は無いんだけど。またプレッシャーかけてくるんだろうな……このペンダント。
実は最近、コース制が導入されて難易度が大幅に下がったのだ。やはり難しくて、どうにもならんと言う顧客要求だそうだ。私の他にもチャレンジャーがいたことに驚きを隠せない。
コースは三つ。スタートで魔法陣の完成形を書いた地図を渡されて、そこからどれだけ逸脱しているかで減点されていく「初級コース」。地図だけ渡されて頭の中の完成形と比べながら進めていく「上級コース」。そして何もヒントがない「勇者コース」。名前の統一感とか、もうちょっと盛り上がりを考えた方が良いと思うよ。
その勇者コースで負け続けているのが私だ。ここは見栄を張らずに、ひ、ひ、一つ下の……コース。
「よく来たなよ勇者よ!」
「観測者!」
「久しいの、勇者よ」
「観測者……私は」
「旅に出るのであろう」
一万二千年前の聖魔大戦の時代から世界を観察し続けていた観測者にとっては、私の考えなんかはお見通しというわけか。
「ならば思い残すことがあってはならぬよ。己の信じたことを何度も何度もただ愚直に繰り返し、その先にある物に気付くとき、今までの全てが勇者よ!そなたの力になるのじゃぁ!」
……ちっぽけな幸せに妥協してしまうところだったわ。
「やってみる!」
観測者の鼓舞にのせられたと言えばそれまでなのだけど、戦う力が再び湧いてきたのは事実!
そうだ、この道だ!行ける、身体が覚えている!次は、その次は……!
って、身体が覚えてるコースでやればまた「フタコブラクダ」でしょ!ダメだ~
「レティシアちゃんよ、あんたノリは良いんだけどな。センスがないよ。はい、参加賞のガムだよ」
「ありがと……」
「スポンサーが変わってな、参加賞くらい出せって言われたんだ」
「そうなんだ」
ガムを口に放り込み、たどった道を振り返る。
最後ぐらい何かあってもよかったのに。
「でてこい、ドラゴン!」
そう唱えると月のペンダントがわずかに光り、身体の奥から何かが抜ける感触が私を襲った。
光の線が私が歩いたルートを辿り、グリーンヒルズの街にフタコブラクダの姿が描かれる。急に薄暗くなった空に、二重円に囲まれた複雑な魔法文字が浮かび上がると、街からドラゴンの影が浮かび、一声吼えると上空の魔法陣に向けて飛び立った。
「おじさん、今のは……」
「……まさか先代の仰っていたことは本当だったのか」
観察者のおじさんは、ドラゴンが飛んでいった方向の空を見て震えている。
私は、このペンダントを無性に捨てたくなったけど、結構な量の力を吸い取られたみたいで、腰が抜けたようにうまく動くことが出来ない。
「取り扱い、ミッションは成功……で良いの?」
「ん?ああ、そうじゃな。見事じゃ勇者レティシア!そなたは「邪龍召喚者」の称号を得た!」
「邪龍召喚者……」
悪くない!
「邪龍なの?さっきの」
「ウム。火炎龍じゃな……その内邪龍になるであろう」
また、適当なことを言う。でもこういうノリがこのアトラクションの醍醐味。
「どこに行ったんだろうね、ドラゴンは」
「それは……」
どうして私を見るの?いやいや、どこ見てるのよ。え?胸じゃなくて、ペンダント?
服の下からズルズルとペンダントを引き出してよく見ると、赤の石がビミョーに明るいかな?
「つまり、月だけじゃなくて……残り三体のドラゴンも集めるのだ!そんな感じ?」
私はやり残したことをしに来てるだけなのに、もっと増えてどうするんだ。いやいや、こんなのする必要は無いんだけど。またプレッシャーかけてくるんだろうな……このペンダント。
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