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水の庭『アクアガーデン』
先が思いやられる
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「ねえアニキ! 荷物待ちましょうか?」
「大丈夫だ」
「あっ! じゃあ肩揉みますよ! 結構上手いんですよ」
「凝ってない」
「アニキアニキ! すごく水が綺麗っすね! さすが水の庭『アクアガーデン』ですよ!」
「……」
「……なあリン どうしたんだアレ?」
「こっちが聞きたい……」
海賊団『ナイトメア』から離れ、そこで新たな賢者の石『ガイアペイン』をクレアから譲り受けた。
思いがけない収穫。本来なら砂漠大国『アレクサンドラ』まで行かなくてはならなかったところが、まさか海賊船内で「賢者の石』が手に入るとは思ってもいなかった。
だが問題が一つ発生した。
譲り受けた『お土産』は非常に癖があったのだ。
「いやありすぎるだろ 何でああなったんだよ!」
「だから知らん 直接聞いたらどうだ」
「いやそこはお前が聞けよ……ア・ニ・キ」
「勘弁してくれ……」
「もう! 何やってんですかアニキ! 早く城に行きましょうよ~!」
困惑している二人を他所に、レイはズイズイと先まで行っていた。
態度は今までとまるで違うが、強引なところは変わっていないようだ。
「ここの魚美味しそうっすよ! 買いましょう!」
「お前が寄り道してどうすんだ」
だがそう言われ、よくよく考えたたらお金という概念があるのはわかっていたが、そのお金を持っていないのに今気づく。
「そういえば今俺たちは文無しなんだな」
「リンさん 我々にはこのマジックカードがあるのですよ」
そう言うとチビルは、懐から怪しげな黒いカードを取り出す。
「何だそれは?」
「こいつで払えばあら不思議! 我々が払わずともサンサイドのバトラーが払ってくれるのだ!」
「最低なヒモ野郎だな」
完全にクレジットカードと同じ仕様だった。
「まあいざとなればぶんどれば良いんですよ」
「人として最低だな」
ロクな奴がいない。だがこの旅を一文無しで旅をするのは難しい。かといって働くと言う選択肢は時間の問題で難しいだろう。
「買い物はこのカードを使おう だが必要最低限だ」
「え~イイじゃん! バトラーからは許可もらってんだしさ~?」
「だとしても遠慮は必要だろう」
そもそも太陽都市『サンサイド』はただいま復興作業中。そんなところからお金を払わせたくない。
「流石ですね! 学ばせてもらいます!」
なんだか調子が狂うが、いずれ慣れるだろう。
たぶん。
それよりもまず、ここにある賢者の石を早く貰いに行かなければならない。
「チビル ここにある賢者の石はわかるか?」
「まあここは水の庭って言われるほどのところだぜ? ここにあるのは水の賢者の石『アクアシュバリエ』さ」
「それが手に入る場所はあそこのドデカイ城でいいのか?」
リンが指差す方向にはサンサイドほどではないが、大きな城が見える。大きさでは負けているが、美しさでは上回っているだろ。
「オレここには初めてですけどいい城ですね~ お宝沢山ありそうだし」
「間違っても貰おうとしたりするなよ」
「やだなぁ~そんなセコいことしませんよ」
「どうせ貰えないなら奪おうとでもしてるんだろ」
「ギクリッ!」
どうやらレイは海賊的思考を治さない限りは先が思いやられそうだ。
「それにしても水が多くて綺麗というのは見ればわかるが……ここの人たちは女性が多くないか?」
「ああアクアガーデンはアレクサンドラとは逆の国で女尊男卑って思考が強い国なんすよ」
「そうなのか?」
「まあな 昔ほどじゃあないらしいがそれでもまだ残ってるらいしいぞ」
国によって考え方が違うのはわかるが、こうも女性だらけだと何となく肩身がせまい。否応無く男側が負けてる気分になる。
「早々に城に向かおう ここは落ち着かん」
「オレ様もそうだな」
「それじゃ引率はこの「レイ・アレクサンドラ』が引き受けましょう! ではいざお宝の城へ!」
「勝手に目的を変えるな」
心配ではあるが張り切っているようだしここは一応女であるレイに任せよう。おそらくああ言うのだから何か自信があるのだろう。
だが、その選択は大きな間違いだった。
「おい」
「……はい?」
「もうすぐ日が暮れるな」
アクアガーデンに着いた時は昼過ぎだった。
「そうですね」
「なあここさっき通らなかったか?」
「奇遇だなチビル 俺も見た覚えがあるぞ」
「やだなぁお二人共! オレは初めてですよ」
「そうか じゃあこっちを見て話してくれないか」
「……」
迷子だ、完全に迷子だ、誰がどう見ても迷子だ。
思っていたよりも道が複雑で城にたどり着けなかったのだ。
「まあここに来るのは初めてだからな迷うの仕方ないだろ」
「うえ~んアニキありがとうごじゃいます~!」
「暑苦しい離れろ」
顔をぐしゃぐしゃにして腰のあたりに抱きついてきたレイを一蹴する。
だがこのままではどうしょうもない。何か考えなくては。
「それにしても話しかけても全然話聞いてくれなかったな」
「俺たちが男だからだろうな話にならん」
「でも何でオレもダメなんですかね?」
「お前も男とし見られたんじゃないのか」
「ハグゥ!?」
よほどショックだったのだろうそう言われると動かなくなってしまった。最初に性別を気付かなかった時もかなりショックだったのだろう、改めて悪いことをしたと思う。
「ププッ! もしそうだとしたらお前は女装した変態だって見られてたのか!」
バンッと街中で銃声を挽かせる。
ああそうだ。コイツは非常に短気なんだ。
「ブチ殺す」
「ギャー! ストップ! ストップ!」
「やめろ二人とも見苦しい それにこんなところで発砲する馬鹿がいるか」
「だってこいつが!」
「そこで何をしている!」
改めて先が思いやられる。
銃声を聞きつけ現れたのは、街を巡回する武装した警備団だった。
「大丈夫だ」
「あっ! じゃあ肩揉みますよ! 結構上手いんですよ」
「凝ってない」
「アニキアニキ! すごく水が綺麗っすね! さすが水の庭『アクアガーデン』ですよ!」
「……」
「……なあリン どうしたんだアレ?」
「こっちが聞きたい……」
海賊団『ナイトメア』から離れ、そこで新たな賢者の石『ガイアペイン』をクレアから譲り受けた。
思いがけない収穫。本来なら砂漠大国『アレクサンドラ』まで行かなくてはならなかったところが、まさか海賊船内で「賢者の石』が手に入るとは思ってもいなかった。
だが問題が一つ発生した。
譲り受けた『お土産』は非常に癖があったのだ。
「いやありすぎるだろ 何でああなったんだよ!」
「だから知らん 直接聞いたらどうだ」
「いやそこはお前が聞けよ……ア・ニ・キ」
「勘弁してくれ……」
「もう! 何やってんですかアニキ! 早く城に行きましょうよ~!」
困惑している二人を他所に、レイはズイズイと先まで行っていた。
態度は今までとまるで違うが、強引なところは変わっていないようだ。
「ここの魚美味しそうっすよ! 買いましょう!」
「お前が寄り道してどうすんだ」
だがそう言われ、よくよく考えたたらお金という概念があるのはわかっていたが、そのお金を持っていないのに今気づく。
「そういえば今俺たちは文無しなんだな」
「リンさん 我々にはこのマジックカードがあるのですよ」
そう言うとチビルは、懐から怪しげな黒いカードを取り出す。
「何だそれは?」
「こいつで払えばあら不思議! 我々が払わずともサンサイドのバトラーが払ってくれるのだ!」
「最低なヒモ野郎だな」
完全にクレジットカードと同じ仕様だった。
「まあいざとなればぶんどれば良いんですよ」
「人として最低だな」
ロクな奴がいない。だがこの旅を一文無しで旅をするのは難しい。かといって働くと言う選択肢は時間の問題で難しいだろう。
「買い物はこのカードを使おう だが必要最低限だ」
「え~イイじゃん! バトラーからは許可もらってんだしさ~?」
「だとしても遠慮は必要だろう」
そもそも太陽都市『サンサイド』はただいま復興作業中。そんなところからお金を払わせたくない。
「流石ですね! 学ばせてもらいます!」
なんだか調子が狂うが、いずれ慣れるだろう。
たぶん。
それよりもまず、ここにある賢者の石を早く貰いに行かなければならない。
「チビル ここにある賢者の石はわかるか?」
「まあここは水の庭って言われるほどのところだぜ? ここにあるのは水の賢者の石『アクアシュバリエ』さ」
「それが手に入る場所はあそこのドデカイ城でいいのか?」
リンが指差す方向にはサンサイドほどではないが、大きな城が見える。大きさでは負けているが、美しさでは上回っているだろ。
「オレここには初めてですけどいい城ですね~ お宝沢山ありそうだし」
「間違っても貰おうとしたりするなよ」
「やだなぁ~そんなセコいことしませんよ」
「どうせ貰えないなら奪おうとでもしてるんだろ」
「ギクリッ!」
どうやらレイは海賊的思考を治さない限りは先が思いやられそうだ。
「それにしても水が多くて綺麗というのは見ればわかるが……ここの人たちは女性が多くないか?」
「ああアクアガーデンはアレクサンドラとは逆の国で女尊男卑って思考が強い国なんすよ」
「そうなのか?」
「まあな 昔ほどじゃあないらしいがそれでもまだ残ってるらいしいぞ」
国によって考え方が違うのはわかるが、こうも女性だらけだと何となく肩身がせまい。否応無く男側が負けてる気分になる。
「早々に城に向かおう ここは落ち着かん」
「オレ様もそうだな」
「それじゃ引率はこの「レイ・アレクサンドラ』が引き受けましょう! ではいざお宝の城へ!」
「勝手に目的を変えるな」
心配ではあるが張り切っているようだしここは一応女であるレイに任せよう。おそらくああ言うのだから何か自信があるのだろう。
だが、その選択は大きな間違いだった。
「おい」
「……はい?」
「もうすぐ日が暮れるな」
アクアガーデンに着いた時は昼過ぎだった。
「そうですね」
「なあここさっき通らなかったか?」
「奇遇だなチビル 俺も見た覚えがあるぞ」
「やだなぁお二人共! オレは初めてですよ」
「そうか じゃあこっちを見て話してくれないか」
「……」
迷子だ、完全に迷子だ、誰がどう見ても迷子だ。
思っていたよりも道が複雑で城にたどり着けなかったのだ。
「まあここに来るのは初めてだからな迷うの仕方ないだろ」
「うえ~んアニキありがとうごじゃいます~!」
「暑苦しい離れろ」
顔をぐしゃぐしゃにして腰のあたりに抱きついてきたレイを一蹴する。
だがこのままではどうしょうもない。何か考えなくては。
「それにしても話しかけても全然話聞いてくれなかったな」
「俺たちが男だからだろうな話にならん」
「でも何でオレもダメなんですかね?」
「お前も男とし見られたんじゃないのか」
「ハグゥ!?」
よほどショックだったのだろうそう言われると動かなくなってしまった。最初に性別を気付かなかった時もかなりショックだったのだろう、改めて悪いことをしたと思う。
「ププッ! もしそうだとしたらお前は女装した変態だって見られてたのか!」
バンッと街中で銃声を挽かせる。
ああそうだ。コイツは非常に短気なんだ。
「ブチ殺す」
「ギャー! ストップ! ストップ!」
「やめろ二人とも見苦しい それにこんなところで発砲する馬鹿がいるか」
「だってこいつが!」
「そこで何をしている!」
改めて先が思いやられる。
銃声を聞きつけ現れたのは、街を巡回する武装した警備団だった。
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