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水の庭『アクアガーデン』
動き
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突如騎士団長候補に選ばれたかと思えば、団長になる為にこの国を離れ、聖剣使いと同行しろとピヴワ王妃に言われた。
「なぜ私が!?」
「簡単に言えば奴への剣術指南と護衛じゃな 優月輪の身を守りつつ 聖剣使いとしての実力を一流のものに仕立ててもらう」
「ですがその役割ならばここの騎士指導者に任せた方が適任では!? 何人かいるでしょう!」
「彼奴等はこれから忙しくなるからな そういうわけにもいかんのじゃ 何がそんなに不満じゃ?」
ニヤニヤニタニタとしながらシオンを眺める王妃に対し、シオンはアタフタとしながら反論する。
「ふっ不満というよりもその……年頃の男女が一緒にいるというのはどうかと……」
「クハハハッ! お前の年だと年頃とは言わんじゃろ!」
「貴方には絶対言われたくないです……」
「悪いのう? 年増は地獄耳でな 処刑方法ぐらい選ばせてやるぞ?」
「もっ! 申し訳ございません王妃!」
シオンは小声で言ったのだが王妃の耳に届いてしまったようだ。実際王妃の見た目はどう見ても十歳程度である。
これですでに千年は生きているというのだから恐ろしい。
というより年増という表現であっているのかが疑わしいのかもしれない。
「今失礼なこと考えてたじゃろ?」
「滅相もございませんですはい」
そのうえ読心術まで備えているのか、考えたことが見透かされてしまう。
余計な事を考るとバレてしまうのだ。
「言ったであろう? これは条件なんじゃ それとも何か? 余の右腕となることがそんなに不満か?」
「そっそれは……」
そんなものはシオンにありはしなかった。
この国で王妃を嫌うものなどいるはずがない。
どれだけ名誉なことかは、この国の者なら誰もが理解しているだろう、
「わかりました……警備団長改め 騎士団長候補『シオン・ヴァロワ』必ずや我が王妃の期待に応えて見せましょう」
「畏るな畏るな! 気楽しておれば良い! なんだったらあやつの子をもうけてきても良いのだぞ?」
「王妃! セクハラで訴えますよ!」
「良いぞ お主に勝ち目はないがな?」
反撃出来ず『ぐぬぬ』という表現がとても合う顔をして、シオンは立ち去ろうとする。だがシオンには一つ懸念があった。
「王妃 一つ尋ねてもよろしいでしょうか」
「許す なんじゃ」
「……リンに『あの事』は言わなくて本当によろしいのでしょうか」
「他言無用じゃ 言うたら騎士団長候補は取りやめじゃ」
「……失礼します」
王の間からシオンは出て行く。一人残る王妃はこう呟いた。
「……後のことは頼んだぞ リン」
確かな信頼を、この世界のことを思っての言葉だった。
「世話になったな」
翌日、アクアガーデン出立の日となったリン達。
「そうじゃな! 面倒みたものな余は!」
「無駄足だったがな」
「うぐっ!?」
すぐに調子にのる王妃にすぐさまダメ出しをする。でなければすぐに有頂天になってしまうからである。
王妃に非がある以上、王妃も言い返せないでいた。
「わるかったからぁ……余をあまり虐めるでない…….」
「別にもうどうでもいい 船の手配もしてくれてるんだろ」
次の国『カザネ』へ行くためにはまずこの島国であるアクアガーデンを出る必要がある。
その為の船を手はしていたのは王妃だった。
それに褒美としての条件は飲んでもらっているのだからそれでおあいこだと、それ以上責めることはしなかった。
「本当に余はなぁ……余はなぁ……」
「わかったからぐずるな こっちが悪者みたいだろう」
「なら良い! さあさっさと出て行け」
「芝居かよ!」
「なんじゃお主? 心配してくれてたのかぁ?」
「もういい 茶番に付き合ってられん」
(リンのやつ顔赤えな)
(アニキかわいい)
「まあ待て お主にせめてもの餞別じゃ お主達の役に立つはずじゃ 入れ」
そう言うと扉は開かれ、姿を現わす。
それは全身鎧をみにまとった謎の騎士だった。
「「誰?」」
レイとチビルの疑問は言葉として重なる。わかるわけない。顔まで鎧に包まれていたのだから。
リンも険しい表情をする。何故ならこの騎士がこれからの旅に同行するのだから、今のままだと暑苦しくて仕方ないなどと考えていた。
「警備団長改め! 騎士団長候補『シオン・ヴァロワ』!使える我が王妃の命により 魔王討伐の旅のお供になるため馳せ参じた!」
「お前かよ」
「あー……シオン ちとその装備は大げさで無いか」
「何を言うのですか王妃! これからの旅には常に危険が伴うのです! ならばこの格好以外に考えられません!」
「邪魔なんだけどな」
どうやらこの格好は王妃も予想外だったらしく、苦笑いするしかなかった。
実際、戦いに関しては万全なのだろうが、旅に関して言えば不釣り合いすぎる格好である。
暑苦しいのはリンのコートも同じなのだが。
「とにかく脱げ 警備団の時ので良いだろ あっちのピッチリしてた方が動きやすそうだ」
「なっ!? お前なんて大胆なセクハラを!」
「なんで頭お花畑なんだよ いいから脱げ ヘルムに反響して声がくぐもってんじゃねえか」
「嫌よ! せっかく新調したこの正装を脱ぐなんてね!」
「駄々っ子かよ」
「やれやれ 先が思いやられるのう 優月輪?」
「黙れポンコツ」
「くっ! やはり扱いが……」
こうして再び旅に出る。新たな仲間を加えて。
「やられましたねツヴァイ」
一方その頃、魔王軍にはアクアガーデンに行っていた『雷迅』が敗北したとの報告が入っていた。
「ああ 見事にね」
魔王城の王の間に続く長い廊下。そこにいたのは魔王軍三銃士の二人『ツヴァイ』と『ドライ』が話している。
「中々の戦士だったのにまさかやられるとは思いませんでしたよ」
「遊ぶのが好きなやつだったからね~ もしかしたらとは思ってたよ」
自身の部下がやられたのは想定していたと笑うツヴァイ。そんなツヴァイをドライは険しい表情で見る。
「だとしても……魔王軍だというのならやられて良いわけじゃありませんよ?」
「……見てみたいね」
「何?」
「見てみたくなった あんまり興味なかったけど見たくなっちゃったよ」
その顔は新しいおもちゃを見つけ、何をして遊ぼうかを考える無邪気な子供のようだった。
「なぜ私が!?」
「簡単に言えば奴への剣術指南と護衛じゃな 優月輪の身を守りつつ 聖剣使いとしての実力を一流のものに仕立ててもらう」
「ですがその役割ならばここの騎士指導者に任せた方が適任では!? 何人かいるでしょう!」
「彼奴等はこれから忙しくなるからな そういうわけにもいかんのじゃ 何がそんなに不満じゃ?」
ニヤニヤニタニタとしながらシオンを眺める王妃に対し、シオンはアタフタとしながら反論する。
「ふっ不満というよりもその……年頃の男女が一緒にいるというのはどうかと……」
「クハハハッ! お前の年だと年頃とは言わんじゃろ!」
「貴方には絶対言われたくないです……」
「悪いのう? 年増は地獄耳でな 処刑方法ぐらい選ばせてやるぞ?」
「もっ! 申し訳ございません王妃!」
シオンは小声で言ったのだが王妃の耳に届いてしまったようだ。実際王妃の見た目はどう見ても十歳程度である。
これですでに千年は生きているというのだから恐ろしい。
というより年増という表現であっているのかが疑わしいのかもしれない。
「今失礼なこと考えてたじゃろ?」
「滅相もございませんですはい」
そのうえ読心術まで備えているのか、考えたことが見透かされてしまう。
余計な事を考るとバレてしまうのだ。
「言ったであろう? これは条件なんじゃ それとも何か? 余の右腕となることがそんなに不満か?」
「そっそれは……」
そんなものはシオンにありはしなかった。
この国で王妃を嫌うものなどいるはずがない。
どれだけ名誉なことかは、この国の者なら誰もが理解しているだろう、
「わかりました……警備団長改め 騎士団長候補『シオン・ヴァロワ』必ずや我が王妃の期待に応えて見せましょう」
「畏るな畏るな! 気楽しておれば良い! なんだったらあやつの子をもうけてきても良いのだぞ?」
「王妃! セクハラで訴えますよ!」
「良いぞ お主に勝ち目はないがな?」
反撃出来ず『ぐぬぬ』という表現がとても合う顔をして、シオンは立ち去ろうとする。だがシオンには一つ懸念があった。
「王妃 一つ尋ねてもよろしいでしょうか」
「許す なんじゃ」
「……リンに『あの事』は言わなくて本当によろしいのでしょうか」
「他言無用じゃ 言うたら騎士団長候補は取りやめじゃ」
「……失礼します」
王の間からシオンは出て行く。一人残る王妃はこう呟いた。
「……後のことは頼んだぞ リン」
確かな信頼を、この世界のことを思っての言葉だった。
「世話になったな」
翌日、アクアガーデン出立の日となったリン達。
「そうじゃな! 面倒みたものな余は!」
「無駄足だったがな」
「うぐっ!?」
すぐに調子にのる王妃にすぐさまダメ出しをする。でなければすぐに有頂天になってしまうからである。
王妃に非がある以上、王妃も言い返せないでいた。
「わるかったからぁ……余をあまり虐めるでない…….」
「別にもうどうでもいい 船の手配もしてくれてるんだろ」
次の国『カザネ』へ行くためにはまずこの島国であるアクアガーデンを出る必要がある。
その為の船を手はしていたのは王妃だった。
それに褒美としての条件は飲んでもらっているのだからそれでおあいこだと、それ以上責めることはしなかった。
「本当に余はなぁ……余はなぁ……」
「わかったからぐずるな こっちが悪者みたいだろう」
「なら良い! さあさっさと出て行け」
「芝居かよ!」
「なんじゃお主? 心配してくれてたのかぁ?」
「もういい 茶番に付き合ってられん」
(リンのやつ顔赤えな)
(アニキかわいい)
「まあ待て お主にせめてもの餞別じゃ お主達の役に立つはずじゃ 入れ」
そう言うと扉は開かれ、姿を現わす。
それは全身鎧をみにまとった謎の騎士だった。
「「誰?」」
レイとチビルの疑問は言葉として重なる。わかるわけない。顔まで鎧に包まれていたのだから。
リンも険しい表情をする。何故ならこの騎士がこれからの旅に同行するのだから、今のままだと暑苦しくて仕方ないなどと考えていた。
「警備団長改め! 騎士団長候補『シオン・ヴァロワ』!使える我が王妃の命により 魔王討伐の旅のお供になるため馳せ参じた!」
「お前かよ」
「あー……シオン ちとその装備は大げさで無いか」
「何を言うのですか王妃! これからの旅には常に危険が伴うのです! ならばこの格好以外に考えられません!」
「邪魔なんだけどな」
どうやらこの格好は王妃も予想外だったらしく、苦笑いするしかなかった。
実際、戦いに関しては万全なのだろうが、旅に関して言えば不釣り合いすぎる格好である。
暑苦しいのはリンのコートも同じなのだが。
「とにかく脱げ 警備団の時ので良いだろ あっちのピッチリしてた方が動きやすそうだ」
「なっ!? お前なんて大胆なセクハラを!」
「なんで頭お花畑なんだよ いいから脱げ ヘルムに反響して声がくぐもってんじゃねえか」
「嫌よ! せっかく新調したこの正装を脱ぐなんてね!」
「駄々っ子かよ」
「やれやれ 先が思いやられるのう 優月輪?」
「黙れポンコツ」
「くっ! やはり扱いが……」
こうして再び旅に出る。新たな仲間を加えて。
「やられましたねツヴァイ」
一方その頃、魔王軍にはアクアガーデンに行っていた『雷迅』が敗北したとの報告が入っていた。
「ああ 見事にね」
魔王城の王の間に続く長い廊下。そこにいたのは魔王軍三銃士の二人『ツヴァイ』と『ドライ』が話している。
「中々の戦士だったのにまさかやられるとは思いませんでしたよ」
「遊ぶのが好きなやつだったからね~ もしかしたらとは思ってたよ」
自身の部下がやられたのは想定していたと笑うツヴァイ。そんなツヴァイをドライは険しい表情で見る。
「だとしても……魔王軍だというのならやられて良いわけじゃありませんよ?」
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