56 / 201
風の都『カザネ』
甘いひととき
しおりを挟む
「なんだか昔の日本に来たみたいだ」
「にほん? って元の世界の国の名前?」
「ああ 昔はこんな感じだったそうだ」
カザネの城下町、それは江戸や明治といった昔の日本のような風景だった。
無理矢理リンに連れてかれてここを案内しろと言われたが、シオンはカザネ二ついてそこまで詳しいというわけじゃなかった。
何故ならここに来たのは馬車でここに着いたっきりであり、ほとんど城の中で過ごしていたからだ、
「ってなわけで私は全然知らないから案内なんてできないよ」
「それならそれでいい 探索しない限りは一生わからんしな」
「だからそれならここの人に案内してもらえば……」
「あそこにあるのは茶店か 腹ごしらえには丁度いいだろう」
「あっ! ちょっと待ってよ!」
シオンの言葉を無視してグイグイと城下町の探索を進めようとするリンに疑問に持ちながらも、付き合うことにした。
「いらっしゃ~い さあどうぞ お好きなの選んでくださいまし」
「……」
「え~と……読もうか?」
「待ってろ この程度の字読めないはずがない」
異世界からの来訪者は、この世界の字を読むことができなかった。
アクアガーデンでチビル(と後一応レイ)に教えてもらって、少しは読めるようになったらしいが、まだ一人で読むのは難しいだろう。
それでもメニューと一生懸命格闘する姿勢には、シオンは素直に感心する。
「この『ハチミツをまぶした団子の餡子かけ』を一つ」
「はいな~」
「ちゃんと読めたね」
「一応習ったからな この程度造作もない」
さっきまで自信なさげにメニューを見ていたとは思えない発言に、シオンは笑ってしまいそうになるが本人は真面目なのだから笑ってはいけないだろう。
「飲み物はいかがなさいます?」
「……苦めのお茶で」
(あっ妥協した)
メニュー見ず、そっと閉じて普通に頼んだ。
読む事を諦めたのか、それとも時間がかかることが嫌だったのか。定かでは無い。
メニューをリンから渡され、シオンもとりあえず選び注文する。
ここに来てから外食をしてなかったので、シオンにとってもいい気分転換になりそうだ。
「でも意外だね リンって甘いのあんまり好きじゃないかと思ってた」
「どちらかといえば好きだな まあ嫌いなものが思い当たらないくらいにはなんでも」
「そっか」
「……いや この世界に来て真っ先に食べたものはもう二度と食べたくないな」
その顔は一気に生気をなくしていた。
余程不味かったのだろう。なんだか気になってしまうシオンだったが、踏み込んでは駄目な気がした為、それ以上聞かなかった。
「言われてみれば……甘い食べ物には苦い飲み物 この組み合わせが特に好きだな」
意外な一面を見れてシオンら少し嬉しくなる。
リンはあまり自分のことを話したがらない。だから些細な事でも話してくれる事が嬉しかったのだ。
「ねえ もっと聞かせてリンの事」
「別に俺のこと聞いても楽しくないだろ」
「いいからいいから」
シオンは男性に興味があった。
アクアガーデンでは殆ど見かけない自分とは別の性別。初めて会ったときから色々知りたかった。
(でもそれ以上に……彼を知りたい)
だがその好奇心はリンへのもの。彼個人を知りたいと『想い』始めた。
「なんでもいいよ? 身長体重好みの娘とか」
「知ってどうするんだそんな情報?」
「いいじゃない 私男の人ってどんなのが好きなのかどんなの好きなのかってわからないし」
「仲がよろしいようで 彼氏さんですか?」
先程注文した茶と菓子を持って茶店の店員が現れた。
側から見るとそう見えたようで、二人は茶化される。
「そっそんな!? 私たちはまだそんな関係なんかじゃあ…….」
「そうだな 歳の差がな」
「おっと手が滑っちゃった」
イラっとした。だからついつい剣を突きつけてしまった。
「危ねえだろ! なにしやがる!?」
「あらあらごめんあそばせ~? つい手を滑らせてしまいまして」
「このアマァ……」
「あら? お兄さんのほうが年上かと」
「ハグゥッ!?」
店員さんによる悪意のない一言はリンを致命傷を与えるには充分だった。
その一言に完全にリンは機能を停止した。
「アハハハハハ! ザマァみなさい!」
リンに指をさして笑う。シオンは以前にも歳の事で言われたのだから、これぐらいは許されるだろと仕返しを込めて。
「ごっごめんなさい! てっきりに二十五ぐらいかと」
「二十……五か……」
約十歳も多く見られていた。
その事に更に吹き出してしまう。
「……笑いすぎだ」
「だって……ふふふっ!」
お腹を抱えて笑っていると、力ない声でリンは落ち込んでだ様子を見せる。思っていた以上の最新の一撃だったようだ。
「言っとくが俺は気にしていないぞ コレっぽっちもな」
「いやもう無理があるでしょうその強がり」
「うるさいとっとと食え まだ行くところがあるんだからな」
そう言ってリンは不機嫌そうにしながら、団子を荒っぽく食べる。
(それにしても今日は本当にどうしたんだろ? これじゃあまるでデー……)
そう考えた瞬間一気に顔が赤くなる。先程の『彼氏』発言も含めると、この状況はそういう事になる。
(まっまさか最初からそのつもりで!? いやいやまさかそんなリンに限ってそんなこと意識して……)
両手で顔に手を当ててそんな事考えてると、リンがシオンの顔を覗き込む。
「どうした急に黙って? それに顔が赤いし熱でもあるのか?」
「誰のせいよ! 」
「……今のは怒られるところだったか?」
予期せぬ反応に真面目に考え込むリンだった。
楽しそうにする二人を、少し離れたところから編み笠の男が覗き込んでいた。
「あれが二代目か……」
その男の目的は『聖剣使い』である。
「本当……良く似てらっしゃることでまあ」
無精髭を生やした編み笠の男は、そう言うとその場を立ち去っていく。
「お手並み拝見といこうかね こりゃあ楽しみだあ」
腰に携えた愛刀に手を置き、嬉しそうな足取りで、戦う為の準備の為に準備を始める為に。
「にほん? って元の世界の国の名前?」
「ああ 昔はこんな感じだったそうだ」
カザネの城下町、それは江戸や明治といった昔の日本のような風景だった。
無理矢理リンに連れてかれてここを案内しろと言われたが、シオンはカザネ二ついてそこまで詳しいというわけじゃなかった。
何故ならここに来たのは馬車でここに着いたっきりであり、ほとんど城の中で過ごしていたからだ、
「ってなわけで私は全然知らないから案内なんてできないよ」
「それならそれでいい 探索しない限りは一生わからんしな」
「だからそれならここの人に案内してもらえば……」
「あそこにあるのは茶店か 腹ごしらえには丁度いいだろう」
「あっ! ちょっと待ってよ!」
シオンの言葉を無視してグイグイと城下町の探索を進めようとするリンに疑問に持ちながらも、付き合うことにした。
「いらっしゃ~い さあどうぞ お好きなの選んでくださいまし」
「……」
「え~と……読もうか?」
「待ってろ この程度の字読めないはずがない」
異世界からの来訪者は、この世界の字を読むことができなかった。
アクアガーデンでチビル(と後一応レイ)に教えてもらって、少しは読めるようになったらしいが、まだ一人で読むのは難しいだろう。
それでもメニューと一生懸命格闘する姿勢には、シオンは素直に感心する。
「この『ハチミツをまぶした団子の餡子かけ』を一つ」
「はいな~」
「ちゃんと読めたね」
「一応習ったからな この程度造作もない」
さっきまで自信なさげにメニューを見ていたとは思えない発言に、シオンは笑ってしまいそうになるが本人は真面目なのだから笑ってはいけないだろう。
「飲み物はいかがなさいます?」
「……苦めのお茶で」
(あっ妥協した)
メニュー見ず、そっと閉じて普通に頼んだ。
読む事を諦めたのか、それとも時間がかかることが嫌だったのか。定かでは無い。
メニューをリンから渡され、シオンもとりあえず選び注文する。
ここに来てから外食をしてなかったので、シオンにとってもいい気分転換になりそうだ。
「でも意外だね リンって甘いのあんまり好きじゃないかと思ってた」
「どちらかといえば好きだな まあ嫌いなものが思い当たらないくらいにはなんでも」
「そっか」
「……いや この世界に来て真っ先に食べたものはもう二度と食べたくないな」
その顔は一気に生気をなくしていた。
余程不味かったのだろう。なんだか気になってしまうシオンだったが、踏み込んでは駄目な気がした為、それ以上聞かなかった。
「言われてみれば……甘い食べ物には苦い飲み物 この組み合わせが特に好きだな」
意外な一面を見れてシオンら少し嬉しくなる。
リンはあまり自分のことを話したがらない。だから些細な事でも話してくれる事が嬉しかったのだ。
「ねえ もっと聞かせてリンの事」
「別に俺のこと聞いても楽しくないだろ」
「いいからいいから」
シオンは男性に興味があった。
アクアガーデンでは殆ど見かけない自分とは別の性別。初めて会ったときから色々知りたかった。
(でもそれ以上に……彼を知りたい)
だがその好奇心はリンへのもの。彼個人を知りたいと『想い』始めた。
「なんでもいいよ? 身長体重好みの娘とか」
「知ってどうするんだそんな情報?」
「いいじゃない 私男の人ってどんなのが好きなのかどんなの好きなのかってわからないし」
「仲がよろしいようで 彼氏さんですか?」
先程注文した茶と菓子を持って茶店の店員が現れた。
側から見るとそう見えたようで、二人は茶化される。
「そっそんな!? 私たちはまだそんな関係なんかじゃあ…….」
「そうだな 歳の差がな」
「おっと手が滑っちゃった」
イラっとした。だからついつい剣を突きつけてしまった。
「危ねえだろ! なにしやがる!?」
「あらあらごめんあそばせ~? つい手を滑らせてしまいまして」
「このアマァ……」
「あら? お兄さんのほうが年上かと」
「ハグゥッ!?」
店員さんによる悪意のない一言はリンを致命傷を与えるには充分だった。
その一言に完全にリンは機能を停止した。
「アハハハハハ! ザマァみなさい!」
リンに指をさして笑う。シオンは以前にも歳の事で言われたのだから、これぐらいは許されるだろと仕返しを込めて。
「ごっごめんなさい! てっきりに二十五ぐらいかと」
「二十……五か……」
約十歳も多く見られていた。
その事に更に吹き出してしまう。
「……笑いすぎだ」
「だって……ふふふっ!」
お腹を抱えて笑っていると、力ない声でリンは落ち込んでだ様子を見せる。思っていた以上の最新の一撃だったようだ。
「言っとくが俺は気にしていないぞ コレっぽっちもな」
「いやもう無理があるでしょうその強がり」
「うるさいとっとと食え まだ行くところがあるんだからな」
そう言ってリンは不機嫌そうにしながら、団子を荒っぽく食べる。
(それにしても今日は本当にどうしたんだろ? これじゃあまるでデー……)
そう考えた瞬間一気に顔が赤くなる。先程の『彼氏』発言も含めると、この状況はそういう事になる。
(まっまさか最初からそのつもりで!? いやいやまさかそんなリンに限ってそんなこと意識して……)
両手で顔に手を当ててそんな事考えてると、リンがシオンの顔を覗き込む。
「どうした急に黙って? それに顔が赤いし熱でもあるのか?」
「誰のせいよ! 」
「……今のは怒られるところだったか?」
予期せぬ反応に真面目に考え込むリンだった。
楽しそうにする二人を、少し離れたところから編み笠の男が覗き込んでいた。
「あれが二代目か……」
その男の目的は『聖剣使い』である。
「本当……良く似てらっしゃることでまあ」
無精髭を生やした編み笠の男は、そう言うとその場を立ち去っていく。
「お手並み拝見といこうかね こりゃあ楽しみだあ」
腰に携えた愛刀に手を置き、嬉しそうな足取りで、戦う為の準備の為に準備を始める為に。
0
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる