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より強くなるために
今度こそ褒美を
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「此度の活躍 実に見事であったな」
「もったいないお言葉 ありがとうございます」
木鬼との戦いの翌日、リン達は殿のいる大広間に集まっていた。
魔物の発生源である木鬼を倒した事で、町に出現していた魔物は姿を消した。
町の警戒を前から強くしていた事もあり、町の被害は最小限に抑えられ、死者も出なかったのだ。
「そりゃあもうアニキの活躍ぶりときたらこう……」
「良い もうその話は充分に存じておる いや本当」
帰ってきて早々にリン達から話を聞いたのだが、レイの口から語られるリンの活躍を、これでもかと言うほど聞かせられていた。
「それでなぁ……今回の一件の礼をさせて欲しいと思っておるのだがのう?」
「そのお気持ちだけ頂ければ充分です もとより我々の旅の目的の一つである魔王討伐の一環ですので」
この言葉は本心だった。
見返りがあることは嬉しいが、その為に戦っていたわけではない。
「むぅ……そう言われてしまうと此方としても引き下がるわけにいかんのじゃ」
「お殿様としての威厳ってやつかぁ? いいじゃあねえかいらねえってんならよ」
「喧しいわい馬鹿息子 少しは見習わんか」
「なんだってこのガキなんか見習わなきゃあならねえんだよ」
「お言葉ですがムロウの矯正はもう手遅れかと 年齢的に」
「それもそうか」
「納得してんじゃねぇ!」
「でもオッサンの言う通り勿体ないぜ? 貰えるものは貰っとこうって」
「そうですよアニキ! 金銀財宝たんまり貰えるってなら遠慮なく貰いましょうよ!」
「いやそこまでは言ってないんじゃが……」
貰えて嬉しいもの。
頭を捻って考えてみても、これといって欲しいモノが中々浮かんでこなかった。
「……宜しければなのですが 譲って欲しいモノがございます」
「ほう? 聞こうではないか」
考えに考えた欲しいもの。それは一冊の『本』だった。
「あっ! それって前に読んでた本ね」
「ああ 神話の本って事はわかったが文字が難しくてな 旅の最中にでもなんとかして読んでやろうと思ってな」
「聖剣使い殿……それを読んだのか?」
「そうですが……もしやこの本とても貴重なものでしたか? だとしたら無理にとは……」
先ほどまでと違い、とても真剣な表情でリンに問う。
確かによく見ると古い本ではあるが、装飾などから察するに普通の本ではないのだろう。
それを察したリンはすぐ別の本にでも変えようとしたのだが、逆に止められた。
「いや! お主が望むのであれば喜んで譲ろうではないか! 大切にするがいい!」
「しかし……」
「かまわん! 貰え! むしろ貰ってくれ! それが褒美となるのなら!」
物凄い勢いで肯定され、本は譲られた。が、当然違和感しかない。
「この本……何か?」
「何でもない! 多少高いだけの何の変哲もないただの本じゃ!」
「殿……流石に話しておかなけらばならないのでは?」
「ええい黙っとれ! 世の中には知らない方が幸せな事もある!」
臣下の意味深の発言をシンゲンは黙らせる。
「何だ親父? この本がどうしたってんだ?」
「その本を見るでない馬鹿息子!」
静止は間に合わず、本はリンからムロウの手に渡り、中を覗き込んだ。
覗き込んだのだが。
「何だこりゃ? 何も書いてねえじゃあねえか?」
「何……?」
「アンタ何言ってんだ ちゃんと書いてるだろ」
「いやどうみても白紙だって ほら」
そう言ってリン達にムロウは本を適当に開いて見せる。
そこには文字が書かれているのがリンにはわかるのだが、これが他には見えていないと言うのだ。
「いや……白紙だわ」
「オレ様にもそう見えるぜ」
「……本当に見えてないのか?」
「同じくオレも視えてないです」
リンを除く全ての人が視えてないという。
困惑するリンを見て、シンゲンは白状した。
「隠していた方が良いと思ったのじゃがなあ……それは『魔導書』じゃ」
「魔導書?」
「ハイハイハ~イ! 魔導書ってのは読めば誰でもそこに書かれた魔法が使えるようになる本です!」
「レイ ちょっと違う」
元気よく答えた回答では不十分だとシオンに言われてしまうレイ。
改めてチビルが解説してくれた。
「まあまるっきり間違いってわけじゃあねえよ そこに書かれた魔術を行使できるようになるってのは」
「じゃあ何なんだ」
「誰でもってわけじゃあないんだよ そもそも魔導書ってのは術者の魔力を文字に込めて記した本の事でさ それを読む事で『適応出来た』ヤツがそこに記された術式を使かえるようになるって事」
逆に言えば適応しなければ、読んだところで効果が無いという事。
リン以外が読めなかったのは、そういう事だったのだろう。
「どれだけ読めてもそれを記した人の魔力と同調しなきゃ使えないの 元々外付けの魔術だから合う合わないがあるのよ」
「魔導書として態々後世に残すんだ それだけ貴重で優れた魔法ってことさ だから親父も渋ってんだろ?」
「……そういう話ではないんじゃよその本は」
頭を抱えて魔導書を指差してこう言った。
「……呪われておる」
「……は?」
リンは思わず耳を疑った。
「その本は『呪われた本』なんじゃ それを読んだ者は尽く魔力を吸われ……そして死ぬ」
「だからさっき止めたのか」
「魔力を授ける本が逆に魔力を吸い尽くしてしまう恐ろしい代物なんじゃ……」
「ちょっと待って! リンがそれを読んでたのって決闘の後!」
「俺が聖剣が使えなくなった時期から考えると……?」
つまりそれは、聖剣の二刀流をした事による副作用で聖剣が使えなくなっていたと思われていた出来事。
原因はこの『呪われた魔導書』だったという事に他ならない。
「でもまあ良かったわい こうして生きておるという事は聖剣使い殿はその本に認められたという事 大切にするがいい!」
その顔には褒美をあげられたからなどという建前ではなく、厄介ごとを押し付けることができてホッとした事という本音からの言葉だった。
「……という事はこの本は自分のものになったという事でよろしいですか?」
「うむ! 大切にするがいい!」
「ではお言葉に甘えて……」
リンは立ち上がり大広間から見える庭に向かって、
「いるかこんなもん!」
勢いよく放り投げた。
それだけでなく、火の聖剣を取り出したかと思うと、形を弓に変化させ、炎の矢を魔導書に向けて放った。
「あ~あ勿体ないぜ二代目さん?」
「あんないわくつきの本なんざ頼まれたっているわけないないだろうが!」
(あそこまでやるなんてよっぽど嫌だったのね)
「これで失礼させて頂きます! 頂いた魔導書は忘れないように大切に心の中にしまって一生覚えておきますので!」
「アニキアニキ」
早々にこの場を出ようとするリンの服の裾を摘んで、レイは引き止める。
その表情は、何故か怯えているようにリンは思えた。
「ん? どうしたレイ」
「アレ……」
レイの震えながら指差す方を見る。
「……二冊あったのか」
間違いなく燃やし尽くした『魔導書』があった。
「そんなわけないでしょ!?」
「現実を見てくださいアニキ! アニキはもうこの本の呪いから逃げられないんですよぉ!」
「不安を煽るような事言ってんじゃあねえ!」
(それにしても厳重に保管していたあの本が何故ここに……?)
そもそもそんな本をリンに見せるつもりなどなかったというのに、何故手元に渡ったのかが、シンゲンの謎であった。
「……この本の返却はいつ頃がよろしいでしょうか?」
「死ぬまで借りておいて良いですぞ」
残念ながらリンに拒否権はなかった。
「もったいないお言葉 ありがとうございます」
木鬼との戦いの翌日、リン達は殿のいる大広間に集まっていた。
魔物の発生源である木鬼を倒した事で、町に出現していた魔物は姿を消した。
町の警戒を前から強くしていた事もあり、町の被害は最小限に抑えられ、死者も出なかったのだ。
「そりゃあもうアニキの活躍ぶりときたらこう……」
「良い もうその話は充分に存じておる いや本当」
帰ってきて早々にリン達から話を聞いたのだが、レイの口から語られるリンの活躍を、これでもかと言うほど聞かせられていた。
「それでなぁ……今回の一件の礼をさせて欲しいと思っておるのだがのう?」
「そのお気持ちだけ頂ければ充分です もとより我々の旅の目的の一つである魔王討伐の一環ですので」
この言葉は本心だった。
見返りがあることは嬉しいが、その為に戦っていたわけではない。
「むぅ……そう言われてしまうと此方としても引き下がるわけにいかんのじゃ」
「お殿様としての威厳ってやつかぁ? いいじゃあねえかいらねえってんならよ」
「喧しいわい馬鹿息子 少しは見習わんか」
「なんだってこのガキなんか見習わなきゃあならねえんだよ」
「お言葉ですがムロウの矯正はもう手遅れかと 年齢的に」
「それもそうか」
「納得してんじゃねぇ!」
「でもオッサンの言う通り勿体ないぜ? 貰えるものは貰っとこうって」
「そうですよアニキ! 金銀財宝たんまり貰えるってなら遠慮なく貰いましょうよ!」
「いやそこまでは言ってないんじゃが……」
貰えて嬉しいもの。
頭を捻って考えてみても、これといって欲しいモノが中々浮かんでこなかった。
「……宜しければなのですが 譲って欲しいモノがございます」
「ほう? 聞こうではないか」
考えに考えた欲しいもの。それは一冊の『本』だった。
「あっ! それって前に読んでた本ね」
「ああ 神話の本って事はわかったが文字が難しくてな 旅の最中にでもなんとかして読んでやろうと思ってな」
「聖剣使い殿……それを読んだのか?」
「そうですが……もしやこの本とても貴重なものでしたか? だとしたら無理にとは……」
先ほどまでと違い、とても真剣な表情でリンに問う。
確かによく見ると古い本ではあるが、装飾などから察するに普通の本ではないのだろう。
それを察したリンはすぐ別の本にでも変えようとしたのだが、逆に止められた。
「いや! お主が望むのであれば喜んで譲ろうではないか! 大切にするがいい!」
「しかし……」
「かまわん! 貰え! むしろ貰ってくれ! それが褒美となるのなら!」
物凄い勢いで肯定され、本は譲られた。が、当然違和感しかない。
「この本……何か?」
「何でもない! 多少高いだけの何の変哲もないただの本じゃ!」
「殿……流石に話しておかなけらばならないのでは?」
「ええい黙っとれ! 世の中には知らない方が幸せな事もある!」
臣下の意味深の発言をシンゲンは黙らせる。
「何だ親父? この本がどうしたってんだ?」
「その本を見るでない馬鹿息子!」
静止は間に合わず、本はリンからムロウの手に渡り、中を覗き込んだ。
覗き込んだのだが。
「何だこりゃ? 何も書いてねえじゃあねえか?」
「何……?」
「アンタ何言ってんだ ちゃんと書いてるだろ」
「いやどうみても白紙だって ほら」
そう言ってリン達にムロウは本を適当に開いて見せる。
そこには文字が書かれているのがリンにはわかるのだが、これが他には見えていないと言うのだ。
「いや……白紙だわ」
「オレ様にもそう見えるぜ」
「……本当に見えてないのか?」
「同じくオレも視えてないです」
リンを除く全ての人が視えてないという。
困惑するリンを見て、シンゲンは白状した。
「隠していた方が良いと思ったのじゃがなあ……それは『魔導書』じゃ」
「魔導書?」
「ハイハイハ~イ! 魔導書ってのは読めば誰でもそこに書かれた魔法が使えるようになる本です!」
「レイ ちょっと違う」
元気よく答えた回答では不十分だとシオンに言われてしまうレイ。
改めてチビルが解説してくれた。
「まあまるっきり間違いってわけじゃあねえよ そこに書かれた魔術を行使できるようになるってのは」
「じゃあ何なんだ」
「誰でもってわけじゃあないんだよ そもそも魔導書ってのは術者の魔力を文字に込めて記した本の事でさ それを読む事で『適応出来た』ヤツがそこに記された術式を使かえるようになるって事」
逆に言えば適応しなければ、読んだところで効果が無いという事。
リン以外が読めなかったのは、そういう事だったのだろう。
「どれだけ読めてもそれを記した人の魔力と同調しなきゃ使えないの 元々外付けの魔術だから合う合わないがあるのよ」
「魔導書として態々後世に残すんだ それだけ貴重で優れた魔法ってことさ だから親父も渋ってんだろ?」
「……そういう話ではないんじゃよその本は」
頭を抱えて魔導書を指差してこう言った。
「……呪われておる」
「……は?」
リンは思わず耳を疑った。
「その本は『呪われた本』なんじゃ それを読んだ者は尽く魔力を吸われ……そして死ぬ」
「だからさっき止めたのか」
「魔力を授ける本が逆に魔力を吸い尽くしてしまう恐ろしい代物なんじゃ……」
「ちょっと待って! リンがそれを読んでたのって決闘の後!」
「俺が聖剣が使えなくなった時期から考えると……?」
つまりそれは、聖剣の二刀流をした事による副作用で聖剣が使えなくなっていたと思われていた出来事。
原因はこの『呪われた魔導書』だったという事に他ならない。
「でもまあ良かったわい こうして生きておるという事は聖剣使い殿はその本に認められたという事 大切にするがいい!」
その顔には褒美をあげられたからなどという建前ではなく、厄介ごとを押し付けることができてホッとした事という本音からの言葉だった。
「……という事はこの本は自分のものになったという事でよろしいですか?」
「うむ! 大切にするがいい!」
「ではお言葉に甘えて……」
リンは立ち上がり大広間から見える庭に向かって、
「いるかこんなもん!」
勢いよく放り投げた。
それだけでなく、火の聖剣を取り出したかと思うと、形を弓に変化させ、炎の矢を魔導書に向けて放った。
「あ~あ勿体ないぜ二代目さん?」
「あんないわくつきの本なんざ頼まれたっているわけないないだろうが!」
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「これで失礼させて頂きます! 頂いた魔導書は忘れないように大切に心の中にしまって一生覚えておきますので!」
「アニキアニキ」
早々にこの場を出ようとするリンの服の裾を摘んで、レイは引き止める。
その表情は、何故か怯えているようにリンは思えた。
「ん? どうしたレイ」
「アレ……」
レイの震えながら指差す方を見る。
「……二冊あったのか」
間違いなく燃やし尽くした『魔導書』があった。
「そんなわけないでしょ!?」
「現実を見てくださいアニキ! アニキはもうこの本の呪いから逃げられないんですよぉ!」
「不安を煽るような事言ってんじゃあねえ!」
(それにしても厳重に保管していたあの本が何故ここに……?)
そもそもそんな本をリンに見せるつもりなどなかったというのに、何故手元に渡ったのかが、シンゲンの謎であった。
「……この本の返却はいつ頃がよろしいでしょうか?」
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