こどくなシード 異世界転移者の帰還道

藤原 司

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秩序機関『ギアズエンパイア』

機会帝国

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「アニキ~! 機械兵は全部倒したみたいですよ~!」

 廃棄場のようなこの場所に集まっていた魔王軍の機械兵達。

 そこで襲われているところを目撃したギアズエンパイアの住人である『ジャン・マイズ』を、無事に助け出す事がで来た。

「呼んでいるのは仲間の方ッスか?」

「ああ 機械兵は皆倒したみたいだし一緒に来てくれるか?」

「もちろん! ご挨拶させてください!」

 リンはジャンを仲間達のところへと連れて行く。

 レイ達の元へ戻ると、周りには無残に散らばった機械兵の残骸が、新たにこの廃棄場に加わっていた。

「また派手に暴れたな」

「お前もやってたろうが」

「ちなみに勝負は拙者が一番でござったよ」

「なんだってアヤカちゃんそんな強いの……?」

 リンの後をついで参加したアヤカが、どうやら雷迅とムロウよりも多くの機械兵を倒した事で、決着が着いたようであった。

「ふふん やはり修行の差でござろうな!」

「次は負けねえからなぁ」

「そんで? 悲鳴の人は後ろの兄ちゃんかい?」

「どうもッス! ジャンッス! よろしくッス!」

「随分軽いノリの人でござるな」

 誰一人傷ついた様子も無く、余裕を見せる仲間に安堵しつつ、ジャンの事を紹介するリン。

「ギアズエンパイアの開発部の人らしい 詳しい話は壁の中に入ってから話そう」

 また敵が現れないかも限らないこの場所で、長居するのは危険であると判断し、早速ギアズエンパイアの内部へと向かう。

「シオンは戻って来たか?」

「戻って来ましたよ その時にデッカイ門を見つけたからそこで待ってるって」

「そこが入り口ッス でも中に入るには許可が要るんで今はまだ入れないかと」

「許可はどうやって?」

「オレが出すッス」

「おーい! こっちよ!」

 手を振って居場所を知らせるシオンの姿が見える。

 ジャンの言ったように中に入れなかったようで、一緒にいたチビルと共に困っている様子であった。

「うん? その人は……?」

「ども! ジャンっていうッス!」

「誰だソイツ? 知り合いか?」

「さっき知り合った どうやらここの人らしい」

 曖昧な紹介ではあるが、これ以上リンも知らなかった。

「あれ? もしかして疑われてます?」

「あんまり素性がわからないからな」

「結構疑り深いッスね~? まあその証拠はここを開けたらってことッスね」

 門にあった端末に触れると、端末は『何か』を読み取ってるいるようであった。

「……『指紋認証』か」

「正解ッス ここの防衛システムに登録された指紋が無いと中に入る事が出来ない仕組みになってるんッスよ」

 その他網膜、虹彩、声紋などを確認して初めて中に入る事が出来るという、厳重なセキリティに守られた場所。

「これで入れるッス 腰抜かしちゃあダメッスよ?」

 門を開ける前に、ジャンは一度釘を刺す。

「ようこそ! 秩序機関……またの名を『機械帝国 ギアズエンパイア』へ!」

 一面に広がる機械都市。

 今まで見てきた場所とは一線を画する光景を見て、リン達全員が息を呑んだ。

「アニキ! あそこ何か飛んでますよ!?」

「あれも! あれも! あれも機械でござる!」

(驚いた……まるでスチームパンクの世界だ)

 圧巻の光景。今までの『ファンタジー』世界が嘘のように、次は『SF』の世界へと迷い込んでしまったのかと錯覚させる世界観。

「どうぞゆっくり町の観光でも……って言いたいんですが今回はおあずけッス 先にギアズエンアパイアの『治安維持局本部』の方まで案内するッスよ」

「なんだよ? 先に遊んでも良いだろうが?」

「オレ様も! ちょっとぐらい旅の疲れを癒す為にもだなぁ……」

「残念ながら無理ッス ここのセキリティはなにも出入り口だけじゃあ無いんスよ」

「何故だ?」

「ギアズエンパイア外から来た人にはまず『パスポート』の発行から! 用意して貰わないと買い物とかが出来なくなってるんスよ だから遊びたいのなら尚更手続きを済ませてもらわないと!」

「めんどくせ~!」

(身分証明か……やり方なんかはかなり元の世界に近いな)

 魔法では無く『機械』が発展したこの場所は、リンにとってかなりかなり馴染み深い雰囲気の場所である。

(流石にここまでSFチックではないが……凄く近代的だ)

 広がる風景は、元の世界にもありそうな雰囲気の場所ばかり。

 近未来的でありながら少々レトロな町並みは、味わい深いものばかりである。

「まあそう言うことなら大人しく従いましょうや 遊びはその後」

「そうね 今はたどり着いたこの場所のことも知っておきたいし」

「じゃあ決まりッスね! こっちッス!」

 ジャンが率先して案内する。

 指差された大きな建物が治安維持局本部だと言うが、アレを目印にしても、この入り組んだ町中ではガイド無しでは迷ってしまうであろう。

「そういえばなんでアンタはあんな所にいたんだ?」

「いや~! 昔からジャンク品集めが趣味なんスよね~! いっつも掘り出し物が無いか探しちゃうんスよ~」

「あんなガラクタの中にか? オレにはわかんないや」

「それがッスね! 案外使えるのに捨てられた物がいっぱい眠ってるんスよ!」

「おっおう……」

「たとえ壊れて使えなくても今ではもう製造しなくなったパーツとかが見つかった時のこの感動……廃棄された物同士を合わせて作り出した自作品を生み出す至福のひと時……あそこは宝の山ッス!」

「アニキ! コイツ変態です!」

「言ってやるな そいつなりの『浪漫』だ」

 突然饒舌に語りだすジャンに負けたレイ。それはリンにも理解出来ない事ではあったが、ジャンのあの場所への気持ちだけは本物だと理解出来ていた。

「紹介が遅れたな アンタが襲われてるのを見つけたのはこのレイだ」

「そうだったんスね! ありががとうございました!」

「ふん! 惚れるなよ? オレはそんな軽い女じゃあ無いからな!」

「あっ大丈夫ッス」

「よーしぶっ殺す!」

「落ち着け」

 おそらくジャンは機械の事以外は無頓着なのであろうと察するリン。

 軽くあしらわれて怒るレイをなだめ、リン達は治安維持局本部まで進んだ。

「到着ッス ここで皆さんのことを待ってる筈なんで……」

「コラーッ! また外に抜け出したなぁ!?」

 たどり着いて早々、治安維持局本部の中から怒号と共に、一人の人物が現れる。

「では皆さん! ご機嫌よ……」

「どこに逃げる気だジャン!?」

「ヒィ!?」

 首根っこを掴まれて猫のように持ち上げられるジャン。

 眼鏡をかけ、いかにも真面目そうな風貌の男がジャンを逃がしまいと離さない。

「まったくお前は! どうしてじっとしてられないんだ!?」

「ヒエ~! ごめんなさいッス~」

「いいや許さん! 今回ばかりは私も腹を立てましたよ!」

「それはいつも……」

「なんだと!?」

「あ~……ちょっと良いですか?」

 嫌々ながらもリンは間に割って入り、仲裁に入る。

「助けてくださいッス! いつもこの調子で最低一時間は怒られるんスよ~」

「お前が反省しないからだ! で!? アナタ方は!?」

「こう見えて一応『魔王軍討伐作戦本部基地』に呼ばれた者で……」

「ホラ! この顔見覚えない!?」

「……あ」

 ジャンに言われてリンを凝視したかと思うと、一旦身なりを整えて、改めて自己紹介をされた。

「大変お見苦しいところを……私は『ニューマ・ニング』と申します 以後お見知りおきを 聖剣使い様」

「もう~ オレだって初見でわかったのに~」

「このバカと一緒で開発部を担当でして……一応はそのリーダーとコイツの世話役をさせてもらっております」

「痛い痛い! ごめんなさいッス!」

 頬を引っ張ってお仕置きを実行するニューマ。

 ジャンは日頃から勝手に外に出ては廃棄場で、宝探しに没頭するあまり、丸一日帰って来ない事も少なくないのだと言う。

「皆様の事は既に把握しております どうぞこちらへ」

「この中が基地なんですか?」

「基地はこことは別のところにあります ご紹介するのは本部長です」

(エレベーターがある……)

 治安維持局の内装は非常に現代的であり、元の世界と相違ない。

「この箱の中に入ると上の階に行けるなんて便利なもんだねぇ」

「でもちょいと狭くねえか?」

「アニキと密着できるから別に」

(変態だ)

 その感情はあえて声に出さず、我慢するリン。

「本部長 聖剣使い様とその御一行方をお連れしました」

「入るが良い」

 最上階へと着き、奥にある扉をノックすると返事が返ってくる。

 返事を聞いたニューマが扉を開けると、中には二人・・の人物がいた。

「聖剣使いの諸君 私はここ治安維持局本部を預かっている『ロム・インストー』というものだ 初めまして 会えて大変嬉しく思うよ」

 貫禄のある初老の人物はそう名乗る。ここ治安維持局の本部長であると。

 そしてもう一人の人物。

「おお! やっと来おったか! 待ちくたびれたぞお前達!」

「……王妃・・!?」

 誰よりも驚くシオン。

 アクアガーデン王妃。シオンの使える主でである『ピヴワ』がそこにいた。

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