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第7話「ダンジョンの力と村の防衛」
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朝日がみかげ村を照らし、新たな一日が始まった。ダンジョン誕生から一週間が経ち、村には目に見える変化が表れていた。冒険者たちが定期的に訪れるようになり、広場にはかつてない活気が生まれている。フィンが設置した宿と装備店は繁盛し、リオとトーマスはガイド役として冒険者たちをダンジョンに案内していた。
御影要は村全体に意識を広げながら、この変化を感じていた。かつての廃村が、今や人々が行き交う場所になったのだ。それは村としての本来の姿を取り戻しつつあることを意味していた。
しかし、賑わいが増すということは、新たな問題も生じるということだ。要は村の入口で、二人の冒険者が言い争っている様子を観察していた。
「おい、あのスライムから出た魔力結晶は俺が先に見つけたぞ!」
「冗談じゃない、私が先に倒したのよ!」
言い争いは徐々にエスカレートし、剣に手をかける動きも見せ始めた。
要は即座に反応した。二人の間の地面から小さな壁を出現させ、物理的に二人を引き離した。
「なっ!?」
冒険者たちは驚いて後ずさった。その瞬間、フィンが駆けつけてきた。
「皆さん、落ち着いてください。みかげ村では争いは禁止されています」
フィンは冷静に二人を諭した。
「魔力結晶の分配でお困りなら、村のルールに従いましょう。同じダンジョン探索グループなら、収穫物は均等に分けることになっています」
冒険者たちは互いに睨み合ったが、やがて渋々と頷いた。
「わかった…」
「仕方ないわね」
フィンは安堵のため息をついた後、地面に向かって小声で言った。
「御影様、ありがとうございます。迅速な対応でした」
要は広場の地面に「当然だ」と描いた。村の平和を守ることは、自分の最も重要な役割の一つだ。
この小さな出来事は、村の規模が大きくなるにつれて管理の重要性も増すことを示していた。エリシアはこの課題に対処するため、村の規則を明文化した看板を広場に設置していた。
「みかげ村・ダンジョン利用規則」と書かれた大きな看板には、以下のルールが記されていた:
1. 村内での争いは禁止
2. ダンジョン探索は王国認定冒険者のみ
3. 収穫物の10%は村への寄付
4. 危険行為・破壊行為は厳禁
5. 村の指示に従うこと
フィンは冒険者たちに規則を指差し、再度説明した。二人は最終的に理解を示し、争いは収まった。
「管理が大変になってきましたね」
エリシアが研究所から出てきて、フィンに声をかけた。
「ええ、冒険者の数が増えるにつれて、トラブルも増えています」
フィンは頭を掻きながら答えた。
「御影様の力なしでは対応しきれないでしょう」
要も同感だった。村の防衛と管理は、今後の重要な課題だ。特に「基本防御構造」のスキルは有効だが、村全体を完全に守るには限界がある。
エリシアは思案顔で言った。
「ダンジョンから得られる魔力結晶を使って、村の防衛を強化できないかしら。私の研究によれば、結晶は防御魔法の素材として活用できるわ」
それは興味深い提案だった。要は「詳しく聞きたい」と地面に描いた。
「ええ、実は計画があるの」
エリシアは広場の中央に簡易的な図面を広げた。村の周囲に配置する魔法結界の設計図だった。
「ダンジョンから得られる魔力結晶を特定の位置に埋め込み、村全体を覆う結界を作れるわ。侵入者を感知し、緊急時には一時的な防壁も展開できる」
フィンも図面を覗き込んだ。
「素晴らしいアイデアですね。材料費はかかりますが、長期的に見れば投資する価値があります」
エリシアは続けた。
「さらに、ダンジョンと村の魔力を同調させれば、より強力な防御が可能になるはず。御影さんの『ダンジョン化スキル』と私の魔法を組み合わせるの」
要はこの提案に強い興味を示した。村とダンジョンを魔力で繋ぎ、一体として機能させる—それは自分が直感的に求めていたものだった。
「やりましょう」と要は答えた。
計画は早速実行に移された。リオとトーマスが冒険者たちから協力を取り付け、必要な数の魔力結晶を集める任務を開始した。フィンは資金面を担当し、装備店の収益を材料費に充てた。エリシアは魔法陣の設計と実装を担当した。
数日間の準備期間を経て、いよいよ結界の設置作業が始まった。村の周囲に均等間隔で魔力結晶を埋め込み、エリシアが魔法で活性化させていく。
「御影さん、あなたも力を貸してね」
エリシアは村の中央で呼びかけた。
「埋め込んだ結晶に意識を向けて、あなたの力を注いでみて」
要は言われた通りに試みた。村の周囲に配置された結晶一つ一つに意識を向け、「基本防御構造」のスキルを通じて力を注ぐ。
最初は何も起こらなかったが、やがて結晶が青く輝き始めた。光は地面に沿って広がり、結晶同士を線で結ぶように繋がっていった。
「うまくいってる!」
エリシアは興奮した様子で杖を振りながら魔法詠唱を続けた。魔法陣が地面に浮かび上がり、村全体を取り囲むように光の網が形成されていく。
作業は丸一日かかったが、夕方になってようやく完成した。村の周囲には目に見えない結界が張られ、わずかに青い光を放っている。侵入者を感知し、危険な存在は警告するという。
「これで村の安全は格段に向上しました」
トーマスは満足げに結界を見回した。
「アルフレッド様にも報告しておきましょう」
リオは結界に手を触れて驚いた。
「温かい!まるで生きているみたい」
エリシアは説明した。
「それは御影さんの力が流れているからよ。この結界は単なる魔法ではなく、村の意思そのものと繋がっているの」
要もそう感じていた。結界は自分の体の一部のようだった。村の範囲が拡張されたような感覚だ。
【村の影響範囲が拡大しました】
【防御機能が強化されました】
要の意識に新たな情報が流れ込んできた。
その夜、村に集まった冒険者たちは結界の完成を祝って宴を開いた。広場では篝火が焚かれ、フィンが用意した酒と食事が振る舞われた。村の住民たちも加わり、踊りや歌で盛り上がった。
要はこの光景を村全体として感じながら、深い満足感を覚えていた。これこそが村の本来の姿だ。人々が集い、語らい、共に喜びを分かち合う場所。
宴の最中、エリシアが要に話しかけた。彼女は広場の隅に腰を下ろし、空に向かって静かに語りかけるように言った。
「御影さん、あなたは特別な存在だと思うわ。単なる村の守り神ではなく、もっと深い意味を持っている気がする」
彼女は続けた。
「ダンジョンの研究を進めるうちに、興味深い発見があったの。あなたの力と、この大陸に流れる魔力線に強い関連性があるのよ」
要は興味を持って彼女の言葉に耳を傾けた。
「大陸全体には古代から魔力線というエネルギーの流れがあるわ。その交差点に位置する場所は特別な力を持つと言われているの。みかげ村はそんな交差点の一つなのよ」
「そして面白いことに、ダンジョンから回収した魔力結晶には、微量ながらあなたの…意識のようなものが含まれているの。あなたの力が結晶化したものとも言えるわ」
これは重要な発見だった。要は「どういう意味?」と地面に描いた。
「私の仮説だけど…あなたが村として転生したのは偶然ではないと思うの。この場所には元々特別な力があった。そして、あなたの魂がその力と共鳴したんじゃないかしら」
要はこれまで自分がなぜ村として転生したのか、その理由を知らなかった。エリシアの仮説は一つの答えを示唆しているようだった。
「さらに言えば…」
エリシアは声をさらに低めた。
「魔力結晶があなたの意識を含むということは、理論上はダンジョンを拡張することであなたの影響範囲も広げられるはず。村だけではなく、より広い地域を…」
彼女の言葉は中断された。村の入口から警報の音が鳴り響いたのだ。結界が反応している。
「侵入者だ!」
トーマスが即座に剣を抜き、村の入口へと走った。村の住民たちが慌てて立ち上がり、冒険者たちも武器を手に取った。
要は村全体に意識を広げ、結界を通じて侵入者を感知した。西の山道から複数の人影が近づいている。十人以上の集団だった。
「盗賊の一団です!」
山道付近を見張っていた冒険者が報告した。
「武装しています!」
エリシアは杖を構え、フィンは村の中央に立って指示を出し始めた。
「冒険者の皆さん、村の防衛にご協力を!住民は安全な場所に避難してください!」
要は結界を通じて侵入者たちをより詳細に感知した。その中心にいるのは間違いなくグリムだった。黒い剣を持ち、屈強な体格の男。その周りには武装した盗賊たちが固まっている。
「やはり来たか…」
要は警戒を強めた。グリムは精霊石を狙っているに違いない。そして今回は前回よりも大人数で組織的に攻めてくる様子だ。
村の中では、トーマスが防衛の陣頭指揮を執っていた。彼は冒険者たちを数グループに分け、村の周囲に配置した。エリシアは結界の強化に集中し、フィンはリオと共に非戦闘員の避難を手伝っていた。
「御影さん、力を貸して!」
エリシアが叫んだ。要は即座に「基本防御構造」のスキルを発動し、村の入口により強固な壁を作り出した。同時に、「ダンジョン化スキル」も部分的に発動させ、村の周囲の地形を変化させ始めた。地面から尖った岩が突き出し、道が迷路のように変化していく。
グリムの一団は村の近くまで来ると、一旦止まった。彼らは明らかに前回の経験から警戒しているようだった。
「結界があるぞ!魔法の防御だ!」
一人の盗賊が叫んだ。
グリムは冷静に状況を分析しているようだった。彼は部下たちに何か指示を出し、彼らは分散して村を囲むように動き始めた。
「囲まれるぞ!」
トーマスが警告を発した。
村の防衛隊は急いで態勢を立て直した。冒険者たちも各自の位置に散り、武器を構えた。
グリムは村の入口近くまで進み出て、大声で叫んだ。
「聞こえているだろう、村の者たち!我々が何を求めているかわかっているはずだ!精霊石を出せば、無駄な争いは避けられる!」
村からは誰も応答しなかった。
「最後の警告だ!石を渡さなければ、力づくでいただく!」
グリムの声には自信が満ちていた。彼はなぜそれほど自信を持っているのだろうか。要は不安を感じた。
その瞬間、村の北側から爆発音が響いた。煙と共に、北側の結界が一部崩れる。
「結界が破られた!」
エリシアが叫んだ。彼女は急いで杖を振り、結界の修復を試みる。
「爆薬だ!彼らは結界の弱点を知っていた!」
トーマスの声には驚きが含まれていた。
要も衝撃を受けた。結界が破られるとは予想していなかった。村の防御は完全ではなかったのだ。
北側の結界が破られた隙に、数人の盗賊が村に侵入した。トーマスと数人の冒険者がすぐさま迎撃に向かった。
「御影さん!」
リオが広場の中央から叫んだ。
「力を貸して!」
要は迷わず行動した。「ダンジョン化スキル」を最大限に発動させ、村の北側を中心に地形を変化させる。地面が隆起し、侵入してきた盗賊たちの足元が不安定になる。同時に、木々が動き、枝が伸びて盗賊たちの動きを妨げた。
トーマスと冒険者たちはこの機会を活かし、盗賊たちを撃退し始めた。剣と魔法の戦いが村の北側で繰り広げられる。
その間にもグリムは西側からさらに部下たちを送り込もうとしていた。しかし要は村の入口の防御を強化し、「基本防御構造」のスキルで壁をさらに高く、強固にした。
エリシアは北側の結界の修復を終え、今度は攻撃魔法を放ち始めた。青白い光の弾が飛び、盗賊たちを吹き飛ばす。
「御影さん!ダンジョンの力を村に!」
エリシアの叫びに、要は瞬時に理解した。彼女が提案していたのは、ダンジョンに蓄積された魔力を村の防衛に利用することだ。
要は意識を東のダンジョンへと広げた。確かに、ダンジョン内には大量の魔力が循環している。それを村へと引き寄せることはできるだろうか。
要は集中し、ダンジョンと村を繋ぐ魔力の橋を作り出そうとした。最初は抵抗を感じたが、徐々にエネルギーの流れが生まれ始めた。ダンジョンから村へと青い光の筋が地中を通じて伸び、村の中央へと到達する。
「来た!」
エリシアは歓声を上げた。彼女は杖を地面に突き立て、流れ込んできた魔力を受け止める。
「皆さん、下がって!」
エリシアの警告に従い、村の住民と冒険者たちは広場の中央から離れた。
エリシアは魔法陣を描き、詠唱を始めた。地面から青い光が立ち上り、徐々に形を作り始める。まるで巨大な兵士のような形だ。光の巨人は実体を持ち始め、村の中央に立ち上がった。
「魔力ゴーレム!」
驚きの声が上がった。エリシアが村の防衛のために作り出した魔法生物だった。ゴーレムは村の北側へと向かい、侵入してきた盗賊たちに対して拳を振り下ろした。
グリムたちは予想外の展開に動揺した様子だった。
「なんだあれは!?魔法生物か!?」
盗賊たちは恐怖に陥り、次々と撤退し始めた。魔力ゴーレムは容赦なく彼らを追いかけ、村の外へと押し出していく。
トーマスと冒険者たちもこの機会を活かし、残りの盗賊たちを撃退した。
グリムは状況が不利になったことを悟ったようだ。彼は部下たちに撤退の指示を出した。
「引くぞ!今日はここまでだ!」
盗賊たちは急いで山道へと逃げ出していった。
村の防衛隊は勝利の声を上げた。魔力ゴーレムは村の入口まで盗賊たちを追い払うと、その役目を終えて光の粒子へと分解し、消えていった。
「やりました!勝ちました!」
リオが喜びの声を上げた。
トーマスは冷静さを保ちながらも、満足げに頷いた。
「御影様とエリシアさんのおかげですね」
エリシアは疲れた様子で地面に座り込んだ。
「魔力ゴーレムの召喚は初めての試みだったわ。御影さんがダンジョンから魔力を送ってくれなければ不可能だったわね」
要も満足していた。村とダンジョンの連携が功を奏し、侵入者を撃退できたのだ。しかし同時に、安心はできないとも感じていた。グリムは撤退したが、完全に諦めたわけではないだろう。今回は結界の弱点を知っていたというのも気になる点だった。
「皆さん、無事でしたか?」
フィンが避難していた住民たちを連れて戻ってきた。幸い、村人に怪我人はいなかった。冒険者の中には軽傷を負った者もいたが、命に関わるものではなかった。
村は再び平和を取り戻したが、この襲撃は重要な教訓となった。要は村の防衛をさらに強化する必要性を感じていた。
翌日、村の住民と冒険者たちは広場に集まり、今後の対策を話し合った。
「結界の弱点を補強する必要があります」
エリシアは図面を広げながら説明した。
「昨日の爆薬が効いた箇所は、魔力線の流れが弱かった場所です。均等に魔力を分散させる改良が必要です」
トーマスは警備体制の強化を提案した。
「冒険者たちにも協力してもらい、交代制で見張りを立てましょう。また、アルフレッド様に援軍を要請したいと思います」
フィンは実務的な視点から意見を述べた。
「村の収入の一部を防衛費に回すべきでしょう。より良い装備や、魔法の防具を揃える資金にします」
リオは重要な質問を投げかけた。
「精霊石はどうしますか?グリムはこれからも狙ってくるでしょう」
要もこの問題を考えていた。精霊石は貴重な物だが、それが村の危険の原因になっているのも事実だ。
「安全な場所に」と要は地面に描いた。
エリシアが提案した。
「ダンジョンの最深部に隠すのはどうかしら?通常のダンジョンなら最も危険な場所だけど、御影さんのダンジョンなら最も安全な場所になるわ」
一同は頷いた。それは良い案だった。
「実は…」
リオが少し躊躇いながら言った。
「精霊石のことで新しい発見があるんです」
彼は懐から精霊石を取り出した。青く輝く美しい石だが、以前と比べて少し変化しているようだった。石の内部に、微かな渦のような模様が形成されている。
「エリシアさんと調べてみたんです。精霊石が村の魔力を吸収しているみたいなんです」
エリシアが説明を引き継いだ。
「精霊石は魔力を蓄える性質があるわ。そして興味深いことに、この石は御影さんの魔力と特別な共鳴を起こしているの」
「共鳴?」と要は尋ねた。
「ええ、まるで精霊石が御影さんの一部になろうとしているみたい。これは理論上可能なことで、強い魔力を持つ存在に精霊石が同調することがあるの」
これは予想外の展開だった。精霊石が村と結びつくことで何が起こるのか、要には予測できなかった。
「危険は?」と要は慎重に尋ねた。
「直接的な危険はないと思うわ。むしろ、精霊石があなたの力を増幅する可能性もあるの。ただ、グリムたちがそれを狙っているのは確かね」
トーマスが提案した。
「まずはダンジョンの最深部に安全に保管し、研究を続けましょう。精霊石の性質がより明らかになれば、対策も立てやすくなります」
一同は同意した。その日のうちに、精霊石はダンジョンの最も奥の部屋に特別な祭壇を設置して安置された。エリシアの魔法で保護され、要の力で監視されることになった。
数日後、アルフレッド騎士が小隊を率いて村に到着した。トーマスの報告を受けて急行してきたのだ。
「御影様、大変なことがあったようですね」
アルフレッドは村の中央で頭を下げた。
「王国としても、このようなダンジョンを有する村の安全は重要事項です。援軍を配置させていただきます」
要はアルフレッドの協力を歓迎した。村の防衛力が高まるのは心強い。
騎士たちは村の周囲に小さな詰め所を設置し、交代で警備に当たることになった。また、アルフレッドは冒険者たちにも協力を要請し、村の防衛に加わる者には王国から報酬が支払われることになった。
「グリムの一味の情報も入っています」
アルフレッドは要と村の住民たちに報告した。
「彼らは単なる盗賊団ではないようです。背後には何者かの支援があるとの情報があります。精霊石が目的ですが、それ以上の野望があるのかもしれません」
この情報は新たな不安を生み出した。グリムの背後に別の勢力がいるということは、より大きな脅威が存在する可能性がある。
エリシアはダンジョンと精霊石の研究を一層熱心に進めた。彼女の研究によれば、精霊石のエネルギーは村の魔力と共鳴し、互いに増幅し合う関係にあるという。そして、ダンジョンはその両者を繋ぐ触媒のような役割を果たしていた。
「三つの力が一つになれば、想像以上の力が生まれるわ」
エリシアは研究ノートを広げながら言った。
「村、ダンジョン、精霊石…これらが完全に調和すれば、御影さんの能力は飛躍的に向上するかもしれない」
要はその可能性に期待を抱いた。村として、より強く、より広範囲に影響を及ぼせるようになれば、住民たちをより良く守れるだろう。
そして、ある夜のこと。要はダンジョンの深部、精霊石が安置されている場所に不思議な変化を感じた。精霊石から放たれる青い光が強まり、周囲の空間に波紋のような模様が広がっていた。
要が意識を集中させると、精霊石と自分の間に強い共鳴が生じているのを感じた。まるで精霊石が要に何かを伝えようとしているかのようだった。
村の住民たちが眠る静かな夜、要は精霊石との対話を試みた。自分の意識を石へと向け、その核心部分に触れようとする。
最初は何も起こらなかったが、やがて要の意識は青い光の海へと引き込まれていった。そこでは無数の光の粒子が舞い、壮大な魔力の風景が広がっていた。
「ここは…」
要は声にならない言葉で思った。
「精霊石の内部?」
返答はなかったが、周囲の光が波打ち、何かを伝えようとしているように感じた。要は集中し、その波動を理解しようとした。
徐々に、断片的なイメージや情報が要の意識に流れ込んできた。大陸を覆う魔力線のネットワーク、古代の遺跡、そして「村」としての存在の意味。情報は複雑で、要はすべてを理解することはできなかったが、一つだけ明確に感じ取ったことがあった。
精霊石はただの鉱物ではなく、古代から存在する魔力の結晶体だということ。そして、要のような「村の意識」と共鳴することで、その潜在能力を引き出す鍵になるということ。
「なるほど…」
要は青い光の海から意識を引き戻した。精霊石との短い対話は終わったが、新たな可能性への扉が開かれた感覚があった。
翌朝、要はエリシアにこの体験を伝えた。彼女は興奮した様子で研究ノートに記録を取り始めた。
「これは重要な発見よ!精霊石が古代の魔力結晶体だとすれば、それは大陸の魔力線と直接つながっているかもしれない。そして、御影さんもその魔力線と共鳴している…」
エリシアは考え込んだ後、驚きの表情を浮かべた。
「もしかして…御影さんは『村の守護者』として選ばれたのかもしれないわ。この地に眠る古代の力によって」
要はその可能性に思いを巡らせた。自分が村として転生したのは偶然ではなく、何らかの意図があったのだろうか。そして、その目的は何なのか。
それらの疑問への答えはまだ見つかっていないが、要は自分の役割をより明確に感じるようになった。住民を守り、村を発展させ、そしてダンジョンと精霊石の力を活用して、より強固な存在になること。
村は日々成長を続け、ダンジョンも少しずつレベルアップしていった。冒険者たちが訪れ、王国の騎士が駐屯し、商人たちが行き交う。かつての廃村は、今や地域の重要な拠点へと変貌を遂げつつあった。
そして要は、村としての使命を全うするために、さらなる成長と挑戦に向き合う決意を新たにしていた。
【御影要】
【村レベル:3】
【住民数:7】(リオ、フィン、エリシア、トーマス、常駐の冒険者3名を含む)
【スキル:基本生活機能、ダンジョン化スキル(制限付)、基本資源生産、基本防御構造】
【ダンジョン:レベル1(成長率30%)】
村の物語は、まだ始まったばかりだった。
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御影要は村全体に意識を広げながら、この変化を感じていた。かつての廃村が、今や人々が行き交う場所になったのだ。それは村としての本来の姿を取り戻しつつあることを意味していた。
しかし、賑わいが増すということは、新たな問題も生じるということだ。要は村の入口で、二人の冒険者が言い争っている様子を観察していた。
「おい、あのスライムから出た魔力結晶は俺が先に見つけたぞ!」
「冗談じゃない、私が先に倒したのよ!」
言い争いは徐々にエスカレートし、剣に手をかける動きも見せ始めた。
要は即座に反応した。二人の間の地面から小さな壁を出現させ、物理的に二人を引き離した。
「なっ!?」
冒険者たちは驚いて後ずさった。その瞬間、フィンが駆けつけてきた。
「皆さん、落ち着いてください。みかげ村では争いは禁止されています」
フィンは冷静に二人を諭した。
「魔力結晶の分配でお困りなら、村のルールに従いましょう。同じダンジョン探索グループなら、収穫物は均等に分けることになっています」
冒険者たちは互いに睨み合ったが、やがて渋々と頷いた。
「わかった…」
「仕方ないわね」
フィンは安堵のため息をついた後、地面に向かって小声で言った。
「御影様、ありがとうございます。迅速な対応でした」
要は広場の地面に「当然だ」と描いた。村の平和を守ることは、自分の最も重要な役割の一つだ。
この小さな出来事は、村の規模が大きくなるにつれて管理の重要性も増すことを示していた。エリシアはこの課題に対処するため、村の規則を明文化した看板を広場に設置していた。
「みかげ村・ダンジョン利用規則」と書かれた大きな看板には、以下のルールが記されていた:
1. 村内での争いは禁止
2. ダンジョン探索は王国認定冒険者のみ
3. 収穫物の10%は村への寄付
4. 危険行為・破壊行為は厳禁
5. 村の指示に従うこと
フィンは冒険者たちに規則を指差し、再度説明した。二人は最終的に理解を示し、争いは収まった。
「管理が大変になってきましたね」
エリシアが研究所から出てきて、フィンに声をかけた。
「ええ、冒険者の数が増えるにつれて、トラブルも増えています」
フィンは頭を掻きながら答えた。
「御影様の力なしでは対応しきれないでしょう」
要も同感だった。村の防衛と管理は、今後の重要な課題だ。特に「基本防御構造」のスキルは有効だが、村全体を完全に守るには限界がある。
エリシアは思案顔で言った。
「ダンジョンから得られる魔力結晶を使って、村の防衛を強化できないかしら。私の研究によれば、結晶は防御魔法の素材として活用できるわ」
それは興味深い提案だった。要は「詳しく聞きたい」と地面に描いた。
「ええ、実は計画があるの」
エリシアは広場の中央に簡易的な図面を広げた。村の周囲に配置する魔法結界の設計図だった。
「ダンジョンから得られる魔力結晶を特定の位置に埋め込み、村全体を覆う結界を作れるわ。侵入者を感知し、緊急時には一時的な防壁も展開できる」
フィンも図面を覗き込んだ。
「素晴らしいアイデアですね。材料費はかかりますが、長期的に見れば投資する価値があります」
エリシアは続けた。
「さらに、ダンジョンと村の魔力を同調させれば、より強力な防御が可能になるはず。御影さんの『ダンジョン化スキル』と私の魔法を組み合わせるの」
要はこの提案に強い興味を示した。村とダンジョンを魔力で繋ぎ、一体として機能させる—それは自分が直感的に求めていたものだった。
「やりましょう」と要は答えた。
計画は早速実行に移された。リオとトーマスが冒険者たちから協力を取り付け、必要な数の魔力結晶を集める任務を開始した。フィンは資金面を担当し、装備店の収益を材料費に充てた。エリシアは魔法陣の設計と実装を担当した。
数日間の準備期間を経て、いよいよ結界の設置作業が始まった。村の周囲に均等間隔で魔力結晶を埋め込み、エリシアが魔法で活性化させていく。
「御影さん、あなたも力を貸してね」
エリシアは村の中央で呼びかけた。
「埋め込んだ結晶に意識を向けて、あなたの力を注いでみて」
要は言われた通りに試みた。村の周囲に配置された結晶一つ一つに意識を向け、「基本防御構造」のスキルを通じて力を注ぐ。
最初は何も起こらなかったが、やがて結晶が青く輝き始めた。光は地面に沿って広がり、結晶同士を線で結ぶように繋がっていった。
「うまくいってる!」
エリシアは興奮した様子で杖を振りながら魔法詠唱を続けた。魔法陣が地面に浮かび上がり、村全体を取り囲むように光の網が形成されていく。
作業は丸一日かかったが、夕方になってようやく完成した。村の周囲には目に見えない結界が張られ、わずかに青い光を放っている。侵入者を感知し、危険な存在は警告するという。
「これで村の安全は格段に向上しました」
トーマスは満足げに結界を見回した。
「アルフレッド様にも報告しておきましょう」
リオは結界に手を触れて驚いた。
「温かい!まるで生きているみたい」
エリシアは説明した。
「それは御影さんの力が流れているからよ。この結界は単なる魔法ではなく、村の意思そのものと繋がっているの」
要もそう感じていた。結界は自分の体の一部のようだった。村の範囲が拡張されたような感覚だ。
【村の影響範囲が拡大しました】
【防御機能が強化されました】
要の意識に新たな情報が流れ込んできた。
その夜、村に集まった冒険者たちは結界の完成を祝って宴を開いた。広場では篝火が焚かれ、フィンが用意した酒と食事が振る舞われた。村の住民たちも加わり、踊りや歌で盛り上がった。
要はこの光景を村全体として感じながら、深い満足感を覚えていた。これこそが村の本来の姿だ。人々が集い、語らい、共に喜びを分かち合う場所。
宴の最中、エリシアが要に話しかけた。彼女は広場の隅に腰を下ろし、空に向かって静かに語りかけるように言った。
「御影さん、あなたは特別な存在だと思うわ。単なる村の守り神ではなく、もっと深い意味を持っている気がする」
彼女は続けた。
「ダンジョンの研究を進めるうちに、興味深い発見があったの。あなたの力と、この大陸に流れる魔力線に強い関連性があるのよ」
要は興味を持って彼女の言葉に耳を傾けた。
「大陸全体には古代から魔力線というエネルギーの流れがあるわ。その交差点に位置する場所は特別な力を持つと言われているの。みかげ村はそんな交差点の一つなのよ」
「そして面白いことに、ダンジョンから回収した魔力結晶には、微量ながらあなたの…意識のようなものが含まれているの。あなたの力が結晶化したものとも言えるわ」
これは重要な発見だった。要は「どういう意味?」と地面に描いた。
「私の仮説だけど…あなたが村として転生したのは偶然ではないと思うの。この場所には元々特別な力があった。そして、あなたの魂がその力と共鳴したんじゃないかしら」
要はこれまで自分がなぜ村として転生したのか、その理由を知らなかった。エリシアの仮説は一つの答えを示唆しているようだった。
「さらに言えば…」
エリシアは声をさらに低めた。
「魔力結晶があなたの意識を含むということは、理論上はダンジョンを拡張することであなたの影響範囲も広げられるはず。村だけではなく、より広い地域を…」
彼女の言葉は中断された。村の入口から警報の音が鳴り響いたのだ。結界が反応している。
「侵入者だ!」
トーマスが即座に剣を抜き、村の入口へと走った。村の住民たちが慌てて立ち上がり、冒険者たちも武器を手に取った。
要は村全体に意識を広げ、結界を通じて侵入者を感知した。西の山道から複数の人影が近づいている。十人以上の集団だった。
「盗賊の一団です!」
山道付近を見張っていた冒険者が報告した。
「武装しています!」
エリシアは杖を構え、フィンは村の中央に立って指示を出し始めた。
「冒険者の皆さん、村の防衛にご協力を!住民は安全な場所に避難してください!」
要は結界を通じて侵入者たちをより詳細に感知した。その中心にいるのは間違いなくグリムだった。黒い剣を持ち、屈強な体格の男。その周りには武装した盗賊たちが固まっている。
「やはり来たか…」
要は警戒を強めた。グリムは精霊石を狙っているに違いない。そして今回は前回よりも大人数で組織的に攻めてくる様子だ。
村の中では、トーマスが防衛の陣頭指揮を執っていた。彼は冒険者たちを数グループに分け、村の周囲に配置した。エリシアは結界の強化に集中し、フィンはリオと共に非戦闘員の避難を手伝っていた。
「御影さん、力を貸して!」
エリシアが叫んだ。要は即座に「基本防御構造」のスキルを発動し、村の入口により強固な壁を作り出した。同時に、「ダンジョン化スキル」も部分的に発動させ、村の周囲の地形を変化させ始めた。地面から尖った岩が突き出し、道が迷路のように変化していく。
グリムの一団は村の近くまで来ると、一旦止まった。彼らは明らかに前回の経験から警戒しているようだった。
「結界があるぞ!魔法の防御だ!」
一人の盗賊が叫んだ。
グリムは冷静に状況を分析しているようだった。彼は部下たちに何か指示を出し、彼らは分散して村を囲むように動き始めた。
「囲まれるぞ!」
トーマスが警告を発した。
村の防衛隊は急いで態勢を立て直した。冒険者たちも各自の位置に散り、武器を構えた。
グリムは村の入口近くまで進み出て、大声で叫んだ。
「聞こえているだろう、村の者たち!我々が何を求めているかわかっているはずだ!精霊石を出せば、無駄な争いは避けられる!」
村からは誰も応答しなかった。
「最後の警告だ!石を渡さなければ、力づくでいただく!」
グリムの声には自信が満ちていた。彼はなぜそれほど自信を持っているのだろうか。要は不安を感じた。
その瞬間、村の北側から爆発音が響いた。煙と共に、北側の結界が一部崩れる。
「結界が破られた!」
エリシアが叫んだ。彼女は急いで杖を振り、結界の修復を試みる。
「爆薬だ!彼らは結界の弱点を知っていた!」
トーマスの声には驚きが含まれていた。
要も衝撃を受けた。結界が破られるとは予想していなかった。村の防御は完全ではなかったのだ。
北側の結界が破られた隙に、数人の盗賊が村に侵入した。トーマスと数人の冒険者がすぐさま迎撃に向かった。
「御影さん!」
リオが広場の中央から叫んだ。
「力を貸して!」
要は迷わず行動した。「ダンジョン化スキル」を最大限に発動させ、村の北側を中心に地形を変化させる。地面が隆起し、侵入してきた盗賊たちの足元が不安定になる。同時に、木々が動き、枝が伸びて盗賊たちの動きを妨げた。
トーマスと冒険者たちはこの機会を活かし、盗賊たちを撃退し始めた。剣と魔法の戦いが村の北側で繰り広げられる。
その間にもグリムは西側からさらに部下たちを送り込もうとしていた。しかし要は村の入口の防御を強化し、「基本防御構造」のスキルで壁をさらに高く、強固にした。
エリシアは北側の結界の修復を終え、今度は攻撃魔法を放ち始めた。青白い光の弾が飛び、盗賊たちを吹き飛ばす。
「御影さん!ダンジョンの力を村に!」
エリシアの叫びに、要は瞬時に理解した。彼女が提案していたのは、ダンジョンに蓄積された魔力を村の防衛に利用することだ。
要は意識を東のダンジョンへと広げた。確かに、ダンジョン内には大量の魔力が循環している。それを村へと引き寄せることはできるだろうか。
要は集中し、ダンジョンと村を繋ぐ魔力の橋を作り出そうとした。最初は抵抗を感じたが、徐々にエネルギーの流れが生まれ始めた。ダンジョンから村へと青い光の筋が地中を通じて伸び、村の中央へと到達する。
「来た!」
エリシアは歓声を上げた。彼女は杖を地面に突き立て、流れ込んできた魔力を受け止める。
「皆さん、下がって!」
エリシアの警告に従い、村の住民と冒険者たちは広場の中央から離れた。
エリシアは魔法陣を描き、詠唱を始めた。地面から青い光が立ち上り、徐々に形を作り始める。まるで巨大な兵士のような形だ。光の巨人は実体を持ち始め、村の中央に立ち上がった。
「魔力ゴーレム!」
驚きの声が上がった。エリシアが村の防衛のために作り出した魔法生物だった。ゴーレムは村の北側へと向かい、侵入してきた盗賊たちに対して拳を振り下ろした。
グリムたちは予想外の展開に動揺した様子だった。
「なんだあれは!?魔法生物か!?」
盗賊たちは恐怖に陥り、次々と撤退し始めた。魔力ゴーレムは容赦なく彼らを追いかけ、村の外へと押し出していく。
トーマスと冒険者たちもこの機会を活かし、残りの盗賊たちを撃退した。
グリムは状況が不利になったことを悟ったようだ。彼は部下たちに撤退の指示を出した。
「引くぞ!今日はここまでだ!」
盗賊たちは急いで山道へと逃げ出していった。
村の防衛隊は勝利の声を上げた。魔力ゴーレムは村の入口まで盗賊たちを追い払うと、その役目を終えて光の粒子へと分解し、消えていった。
「やりました!勝ちました!」
リオが喜びの声を上げた。
トーマスは冷静さを保ちながらも、満足げに頷いた。
「御影様とエリシアさんのおかげですね」
エリシアは疲れた様子で地面に座り込んだ。
「魔力ゴーレムの召喚は初めての試みだったわ。御影さんがダンジョンから魔力を送ってくれなければ不可能だったわね」
要も満足していた。村とダンジョンの連携が功を奏し、侵入者を撃退できたのだ。しかし同時に、安心はできないとも感じていた。グリムは撤退したが、完全に諦めたわけではないだろう。今回は結界の弱点を知っていたというのも気になる点だった。
「皆さん、無事でしたか?」
フィンが避難していた住民たちを連れて戻ってきた。幸い、村人に怪我人はいなかった。冒険者の中には軽傷を負った者もいたが、命に関わるものではなかった。
村は再び平和を取り戻したが、この襲撃は重要な教訓となった。要は村の防衛をさらに強化する必要性を感じていた。
翌日、村の住民と冒険者たちは広場に集まり、今後の対策を話し合った。
「結界の弱点を補強する必要があります」
エリシアは図面を広げながら説明した。
「昨日の爆薬が効いた箇所は、魔力線の流れが弱かった場所です。均等に魔力を分散させる改良が必要です」
トーマスは警備体制の強化を提案した。
「冒険者たちにも協力してもらい、交代制で見張りを立てましょう。また、アルフレッド様に援軍を要請したいと思います」
フィンは実務的な視点から意見を述べた。
「村の収入の一部を防衛費に回すべきでしょう。より良い装備や、魔法の防具を揃える資金にします」
リオは重要な質問を投げかけた。
「精霊石はどうしますか?グリムはこれからも狙ってくるでしょう」
要もこの問題を考えていた。精霊石は貴重な物だが、それが村の危険の原因になっているのも事実だ。
「安全な場所に」と要は地面に描いた。
エリシアが提案した。
「ダンジョンの最深部に隠すのはどうかしら?通常のダンジョンなら最も危険な場所だけど、御影さんのダンジョンなら最も安全な場所になるわ」
一同は頷いた。それは良い案だった。
「実は…」
リオが少し躊躇いながら言った。
「精霊石のことで新しい発見があるんです」
彼は懐から精霊石を取り出した。青く輝く美しい石だが、以前と比べて少し変化しているようだった。石の内部に、微かな渦のような模様が形成されている。
「エリシアさんと調べてみたんです。精霊石が村の魔力を吸収しているみたいなんです」
エリシアが説明を引き継いだ。
「精霊石は魔力を蓄える性質があるわ。そして興味深いことに、この石は御影さんの魔力と特別な共鳴を起こしているの」
「共鳴?」と要は尋ねた。
「ええ、まるで精霊石が御影さんの一部になろうとしているみたい。これは理論上可能なことで、強い魔力を持つ存在に精霊石が同調することがあるの」
これは予想外の展開だった。精霊石が村と結びつくことで何が起こるのか、要には予測できなかった。
「危険は?」と要は慎重に尋ねた。
「直接的な危険はないと思うわ。むしろ、精霊石があなたの力を増幅する可能性もあるの。ただ、グリムたちがそれを狙っているのは確かね」
トーマスが提案した。
「まずはダンジョンの最深部に安全に保管し、研究を続けましょう。精霊石の性質がより明らかになれば、対策も立てやすくなります」
一同は同意した。その日のうちに、精霊石はダンジョンの最も奥の部屋に特別な祭壇を設置して安置された。エリシアの魔法で保護され、要の力で監視されることになった。
数日後、アルフレッド騎士が小隊を率いて村に到着した。トーマスの報告を受けて急行してきたのだ。
「御影様、大変なことがあったようですね」
アルフレッドは村の中央で頭を下げた。
「王国としても、このようなダンジョンを有する村の安全は重要事項です。援軍を配置させていただきます」
要はアルフレッドの協力を歓迎した。村の防衛力が高まるのは心強い。
騎士たちは村の周囲に小さな詰め所を設置し、交代で警備に当たることになった。また、アルフレッドは冒険者たちにも協力を要請し、村の防衛に加わる者には王国から報酬が支払われることになった。
「グリムの一味の情報も入っています」
アルフレッドは要と村の住民たちに報告した。
「彼らは単なる盗賊団ではないようです。背後には何者かの支援があるとの情報があります。精霊石が目的ですが、それ以上の野望があるのかもしれません」
この情報は新たな不安を生み出した。グリムの背後に別の勢力がいるということは、より大きな脅威が存在する可能性がある。
エリシアはダンジョンと精霊石の研究を一層熱心に進めた。彼女の研究によれば、精霊石のエネルギーは村の魔力と共鳴し、互いに増幅し合う関係にあるという。そして、ダンジョンはその両者を繋ぐ触媒のような役割を果たしていた。
「三つの力が一つになれば、想像以上の力が生まれるわ」
エリシアは研究ノートを広げながら言った。
「村、ダンジョン、精霊石…これらが完全に調和すれば、御影さんの能力は飛躍的に向上するかもしれない」
要はその可能性に期待を抱いた。村として、より強く、より広範囲に影響を及ぼせるようになれば、住民たちをより良く守れるだろう。
そして、ある夜のこと。要はダンジョンの深部、精霊石が安置されている場所に不思議な変化を感じた。精霊石から放たれる青い光が強まり、周囲の空間に波紋のような模様が広がっていた。
要が意識を集中させると、精霊石と自分の間に強い共鳴が生じているのを感じた。まるで精霊石が要に何かを伝えようとしているかのようだった。
村の住民たちが眠る静かな夜、要は精霊石との対話を試みた。自分の意識を石へと向け、その核心部分に触れようとする。
最初は何も起こらなかったが、やがて要の意識は青い光の海へと引き込まれていった。そこでは無数の光の粒子が舞い、壮大な魔力の風景が広がっていた。
「ここは…」
要は声にならない言葉で思った。
「精霊石の内部?」
返答はなかったが、周囲の光が波打ち、何かを伝えようとしているように感じた。要は集中し、その波動を理解しようとした。
徐々に、断片的なイメージや情報が要の意識に流れ込んできた。大陸を覆う魔力線のネットワーク、古代の遺跡、そして「村」としての存在の意味。情報は複雑で、要はすべてを理解することはできなかったが、一つだけ明確に感じ取ったことがあった。
精霊石はただの鉱物ではなく、古代から存在する魔力の結晶体だということ。そして、要のような「村の意識」と共鳴することで、その潜在能力を引き出す鍵になるということ。
「なるほど…」
要は青い光の海から意識を引き戻した。精霊石との短い対話は終わったが、新たな可能性への扉が開かれた感覚があった。
翌朝、要はエリシアにこの体験を伝えた。彼女は興奮した様子で研究ノートに記録を取り始めた。
「これは重要な発見よ!精霊石が古代の魔力結晶体だとすれば、それは大陸の魔力線と直接つながっているかもしれない。そして、御影さんもその魔力線と共鳴している…」
エリシアは考え込んだ後、驚きの表情を浮かべた。
「もしかして…御影さんは『村の守護者』として選ばれたのかもしれないわ。この地に眠る古代の力によって」
要はその可能性に思いを巡らせた。自分が村として転生したのは偶然ではなく、何らかの意図があったのだろうか。そして、その目的は何なのか。
それらの疑問への答えはまだ見つかっていないが、要は自分の役割をより明確に感じるようになった。住民を守り、村を発展させ、そしてダンジョンと精霊石の力を活用して、より強固な存在になること。
村は日々成長を続け、ダンジョンも少しずつレベルアップしていった。冒険者たちが訪れ、王国の騎士が駐屯し、商人たちが行き交う。かつての廃村は、今や地域の重要な拠点へと変貌を遂げつつあった。
そして要は、村としての使命を全うするために、さらなる成長と挑戦に向き合う決意を新たにしていた。
【御影要】
【村レベル:3】
【住民数:7】(リオ、フィン、エリシア、トーマス、常駐の冒険者3名を含む)
【スキル:基本生活機能、ダンジョン化スキル(制限付)、基本資源生産、基本防御構造】
【ダンジョン:レベル1(成長率30%)】
村の物語は、まだ始まったばかりだった。
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