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君の名はマシュー
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――……あれ? おれ、どうなった?
冷たい水の中に落下するはずだったのに、なぜか体は静止していた。目を開けると、おれは満点の美しい星空を仰ぎ見ていた。なんだこれは。東京の空ってこんなにキレイだったっけ?
起き上がってみてみると、どうも何かの建物の屋上らしい。貯水タンクがあって、そして物干し竿にたくさんの洗濯物が干してある。誰かの住居だろうか。おれの荷物がバッグから周囲に散らばり、ゴープロを取り付けていた自撮り棒が転がっている。適当に片付ける。
「……は? わけわかんねーんだけど、どこだよ」
すると背後から扉が開いた音がして、やせた茶髪の、年増の女の人が入ってきた。青色の質素な民族衣装を着ていて、彫りの深いキレイな顔立ちだった。外人さん?? 目が合う。まずい、不審者に思われるかもしれない!
「あ、あの、その、決して怪しいものじゃなくてっっ」
「……マシュー?」
「へ?」
「マシュー? GODNBI,BBGINNOUBSO!!!」
「え、ちょっ、なんて言ってんですか、え、何語??」
年増の女(ちょうどおれの母親ぐらいの感じ)は突然泣き崩れて、そのままおれに抱きついてきた。え、もしかしてそういう趣味の人!?
「マシューっ、マシュー! AAAAAAAH!」
マシュー、という謎の言葉がやたらかけられる。マシューって、おれのこと言ってんのかな、とおもい、いや、おれマシューじゃねーから、リンタローだから、おばさん、ちょっと、抱きつかないでくれ! と言った。
「OEIBGEN?」
「はい?」
おばさんは一人で合点がいったみたいにうなずいて、ふところから一本の短い杖を取り出した。そして呪文のようなものを唱え始める。おいおい、おばさん、何の冗談ですか、と言いかけたとき、杖が黄色く輝いた。
「うおっ」
まぶしくて閉じていたまぶたを開けてみると、さっきのおばさんがまだいた。おばさんは言った。
「マシュー、お帰りなさい、お母さんよ、分かる?」
言葉が通じるようになっていた。なんだ、日本語しゃべれたのかよ。今の演出はいったいどういうこった。
「いや、わかんないっすけど、え、どなた!?」
「そ、そうよねっ、わかるはずないものね、あなたが消えてしまってからもう十五年もたつんですから! いいわ! それでもいい、神よ、感謝します!」
自称お母さんはおれを抱きしめて、必死に頭をなでてきた、大きな胸が当たって、息子がバーニングしそうで、いきなりマザコンに目覚めてしまいそうだったところをなんとか押さえて、やめろ、やめてくれぃ おかしくなるぅ! と声を荒立てた。おばさんは手を離す。それと同時に腹が鳴った。ゲロって、胃の中が空になっていたからだった。
「おなかすいているのね! だったらお母さんがたくさん料理作ってあげるから、はやくいきましょ! ね、ね!」
「え、ちょっ、まっ、あ――」
おばさんは目に涙をいっぱいためながら勢い込んで話すから、おれは圧倒されて、そのまま屋上扉の向こうの短い階段を下りていって、その階にたくさんある中の一つの扉を開き、中へ案内された。
どうも巨大バラックのような感じで、ひたすら部屋が縦横無尽に積み重ねられているような雑な構造だった。その部屋は最上階に位置していた。
冷たい水の中に落下するはずだったのに、なぜか体は静止していた。目を開けると、おれは満点の美しい星空を仰ぎ見ていた。なんだこれは。東京の空ってこんなにキレイだったっけ?
起き上がってみてみると、どうも何かの建物の屋上らしい。貯水タンクがあって、そして物干し竿にたくさんの洗濯物が干してある。誰かの住居だろうか。おれの荷物がバッグから周囲に散らばり、ゴープロを取り付けていた自撮り棒が転がっている。適当に片付ける。
「……は? わけわかんねーんだけど、どこだよ」
すると背後から扉が開いた音がして、やせた茶髪の、年増の女の人が入ってきた。青色の質素な民族衣装を着ていて、彫りの深いキレイな顔立ちだった。外人さん?? 目が合う。まずい、不審者に思われるかもしれない!
「あ、あの、その、決して怪しいものじゃなくてっっ」
「……マシュー?」
「へ?」
「マシュー? GODNBI,BBGINNOUBSO!!!」
「え、ちょっ、なんて言ってんですか、え、何語??」
年増の女(ちょうどおれの母親ぐらいの感じ)は突然泣き崩れて、そのままおれに抱きついてきた。え、もしかしてそういう趣味の人!?
「マシューっ、マシュー! AAAAAAAH!」
マシュー、という謎の言葉がやたらかけられる。マシューって、おれのこと言ってんのかな、とおもい、いや、おれマシューじゃねーから、リンタローだから、おばさん、ちょっと、抱きつかないでくれ! と言った。
「OEIBGEN?」
「はい?」
おばさんは一人で合点がいったみたいにうなずいて、ふところから一本の短い杖を取り出した。そして呪文のようなものを唱え始める。おいおい、おばさん、何の冗談ですか、と言いかけたとき、杖が黄色く輝いた。
「うおっ」
まぶしくて閉じていたまぶたを開けてみると、さっきのおばさんがまだいた。おばさんは言った。
「マシュー、お帰りなさい、お母さんよ、分かる?」
言葉が通じるようになっていた。なんだ、日本語しゃべれたのかよ。今の演出はいったいどういうこった。
「いや、わかんないっすけど、え、どなた!?」
「そ、そうよねっ、わかるはずないものね、あなたが消えてしまってからもう十五年もたつんですから! いいわ! それでもいい、神よ、感謝します!」
自称お母さんはおれを抱きしめて、必死に頭をなでてきた、大きな胸が当たって、息子がバーニングしそうで、いきなりマザコンに目覚めてしまいそうだったところをなんとか押さえて、やめろ、やめてくれぃ おかしくなるぅ! と声を荒立てた。おばさんは手を離す。それと同時に腹が鳴った。ゲロって、胃の中が空になっていたからだった。
「おなかすいているのね! だったらお母さんがたくさん料理作ってあげるから、はやくいきましょ! ね、ね!」
「え、ちょっ、まっ、あ――」
おばさんは目に涙をいっぱいためながら勢い込んで話すから、おれは圧倒されて、そのまま屋上扉の向こうの短い階段を下りていって、その階にたくさんある中の一つの扉を開き、中へ案内された。
どうも巨大バラックのような感じで、ひたすら部屋が縦横無尽に積み重ねられているような雑な構造だった。その部屋は最上階に位置していた。
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