特殊ダンジョンを攻略していたおっさんが知らない間に世界一のハンターになっていた件について

masa

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おっさん、ドラゴンを目撃する

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「お、見たことない動物がいるぞ」
「リーフペンギンですね。草原地帯にいるペンギンさんです、ハンタースクールの教科書に載ってました!」
「岡田、リーフペンギンも見たことがないのか。今までどこで腕を磨いていたんだ」
「いやぁ、俺は田舎者でさ。ちょっとへんぴなダンジョンばっかり攻略してたもんだから」
「へんぴって、どんなところなの、ユウスケ」

 ローラに尋ねられて、その興味ありげな表情に少しおどろいた。もともと特殊ダンジョンの調査員だったこともある彼女だから、そういうのには関心があるんだろう。

「とある島に単独発生したダンジョンなんだけど、四方がクリスタル製っていうか、やたら半透明でキラキラしてるんだよ」
「……聞いたことがないわね。あとで詳しく教えてくれないかしら」
「いいよ」

 俺たちに気づいたリーフペンギンがぴょこぴょこと歩いて、ピー、と鳴いている。敵意は全くなく、頭の上に草冠がついている姿はかなりかわいい。実際、犬や猫のように愛玩用の動物として飼われているらしい。

「お、木の上にいるあの猿みたいなのは?」
「あれはたしか、ヒノコ猿です。その名の通り火の粉を口から吐き出しますが、たまに自分でのどが焼けてむせるという、ちょっとお茶目なお猿さんです」
「前まではヒノコ猿はこの草原にはいなかったのにな」

 木の上に群がる猿はどう猛な目つきでこちらを見てくる。俺はすぐに視線をそらし、草原を一歩ずつ進んでいった。遠くからきぃきぃと言う独特の猿の鳴き声が聞こえる。この草原に何をしに来た、といわんばかりだ。

「あっ、エンリドラゴンだ!」

 蓮が空中を指さして叫んだ。その方向に首を回すと、青空の向こうに小さなドラゴンの姿があった。

「でも、まだ小さいわ。まだ子供ね」
「ドラゴンが草原地帯にいるなんて……」

 ほのかが心配そうな顔つきになったから、俺がこっそり耳打ちしてやった。

「だいじょうぶだ、あのくらいの竜なら、俺も昔バリバリ狩ってた」
「えっ、そうなんですか?」
「もっとばかでかいのも倒したことがあるし、ドラゴンってのは動きが単純なやつが多いから、見かけ倒しだったりするんだ」
「で、でも、ドラゴンって、子供でもCランク上位の強さだし、親なら確実にBランクはあるんですよ……?」
「だーいじょうぶだーいじょうぶ、BだかCだか知らないが、ドラゴンはドラゴンだよ」

 そんなことを話しながら歩いていると、ようやく目的地の丘にたどり着いた。

「……近くで見ると、ほんとに断崖絶壁だな、地殻変動でも起こったのか?」
「ええ、昔はもっとなだらかな丘だったの。今はかなり強いモンスターがひしめく、岩の城のようになってしまったけれど」
「久々に来たらこんなことになってるとはな……」
「ううう、なんだかこわいです」
「こっちよ」

 ローラに案内されて、俺たちパーティは丘の下端部にあいた洞窟のようなところに足を踏み入れた。暗いので、マップレーダーに付属のライトであたりを照らす。

「さて、と」
「こんなところにビリビリ石なんてあるのか?」
「最初に言ったでしょう、蓮。このダンジョンは最近になって異様に活発化しているの。だからモンスターのレベルだけじゃなくて地質も変わっているの」

 採集クエストの目的達成にはビリビリ石というわりと高価な鉱物が必要だった。電池のように電気を蓄えている石だそうで、草原地帯にはなさそうな代物だが、地質が変わってしまったせいで出現するようになったらしい。

「汚い話だけど、それって、一個いくらするんだ?」
「市場価格で10万ほどだ」
「えぇ! すごいな」
「みんな、静かに!」

 ローラが言うと、全員が押し黙った。何か聞こえる。

「近づいてくるな……」
「仕方ない、やるわよ」

 全員が武器を構えた。ライトの先から、鳴き声を上げていたモンスターが姿を現す。

「――うげぇ、何じゃありゃ」
「ガーゴイルよ!」

 コウモリみたいなモンスターが五体ほど洞窟の上方から飛来して、グワッ、と奇声を発しながら長くて黒い爪で攻撃してきた。蓮が盾で防ぎ、ローラは網ネットのようなものを射出してガーゴイルが身動きとれないように捕縛していた。

 俺は相手の戦闘力がわからず、いったんひらりと身をかわした。

「――よし、初撃はかわせた! そこまで早い相手じゃない……って、おい、ほのか!」

 かわし損ねたほのかが転倒し、上からガーゴイルに突っつかれていた。

「きゃああっ、助けて!」

 俺が太刀を振るう前にローラが持っていた音響弾を放ち、あたりに金属音が炸裂する。

「グェェエェ」

 ガーゴイルはこの手の金属音を嫌うため、ほのかを襲っていたガーゴイルが飛び退いて、天井に張り付いた。

「――ふん、この脆弱者め」

 グゲっ、グゲっ……。と苦しそうに声を漏らすのは蓮を襲ったガーゴイルだった。のど元を槍で串刺しにされている。盾で防ぎ、槍で突く。ガンナーらしい戦い方だ。蓮は誇らしそうにどや顔している。

「だいじょうぶか、ほのか。立てるか?」
「はいっ……すみません、みなさん」
「余計な戦闘は避けましょう。これは採集クエストですから」

 ガーゴイルが音に警戒してなかなか降りてこないのを利用して、俺たちは先を急いだ。俺は走りながら、ほのかがまだ俺と同じ初心者で、接近戦に不向きな弓使いであることを明確に自覚した。危なくなったら、男の俺が助けないといけない。俺でも無理そうだったら、ローラや蓮に任せよう。
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