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第一話 地味な子は追放される
「イルエマ・ジミィーナ。あなたには、この聖女ギルド【女神の光輝】から出ていってもらいます」
そう告げられたのは、【女神の光輝】のギルドマスター、キアーラさん。
私は、小首を傾げる。
「なぜでしょう?」
「鏡を見ればわかるでしょう?」
はぁ?
大きな姿見には私の全身が映ります。
黒髪に大きな眼鏡。身長は152センチ。胸は発展途上……。
「えーーと、私が何か?」
「地味なのよ」
「はい?」
「私と比べればわかるわよね?」
「ははは。それは酷ですよ」
キアーラさんは身長170センチ。
金色の長髪が美しい、ナイスバディの美人さんです。
私なんかと比べたら月とスライム。
「私だけじゃないわ。他の聖女と比べても、ねぇ。あなたは地味なのよ」
まぁ、確かに見た目はそうかもしれない。この聖女ギルドは美人揃いだ。王都でも有名である。
最近売り出した 小型肖像画が、特に評判が良い。【女神の光輝】のメンバーを描いた絵画です。
「みんなの 小型肖像画は千枚以上売れてますのにね。あなたのはたったの100枚しか売れてませんのよ!」
「ハハハ……。しかしですね。100枚も売れてること自体が奇跡というか。奇特な方がおられるというか」
「何を笑っているの! 恥ずかしい! これは当ギルドにとっては汚点なのよ!」
お、汚点……。
「しかしですね。見た目より実益の方が大事かと……」
「その点においてもあなたは劣っているわ。魔力量は中の下。A級魔法はおろか、B級でさえ使うのは危うい」
「う……」
「しかも、使えるのは聖女なら誰でも使える聖女魔法の3種類だけ」
私が使える魔法は、 回復と 素材進化と 解呪だけです。
他の聖女さんはもっと使えますからね。痛いところを突かれました。
「それと、ユニークスキルを持っていたわよね。ペンを使わずに文字を描くだけの」
「光魔字《ひかるまじ》」
「そうそれよ。それってただペンを使わずに文字を書くだけのくだらないスキルでしょう!」
「で、でも紙要らずですよ? 空中にも文字が書けますしね。紙がなくても計算がスラスラとできるんです。意外と便利なんですよ。えへへ」
「お黙りなさい!」
「うう」
「はぁ~~。あなたは見た目はおろか、実力さえも地味なのよ」
「……地味なのは、そのとおりですね」
「やっている仕事といえば、誰でもできる雑用ばかりじゃないの!」
え!?
「それは違います! 私は先代の要望で聖女の仕事に尽力してきました! 先代は私に──」
「お黙り!」
「!?」
「先代の時代は終わったのよ。今は私がギルドマスターよ。聖女ギルドは私の運営でやっていくの。私がルールなのよ!」
「……で、ですがぁ。魔法薬の生成、魔法壁の強化、厄災解呪。その他、祭事、相談ごとは先代のやり方で私が率先してですねぇ──」
「フン、見苦しいわねぇ。地味なあなたに何ができるっていうのよ。ここまで言わないとわからないの? ハッキリ言って邪魔なのよ。ゴミなの。無能な聖女を雇っておくほど広い心は持ち合わせていないのよ。潔くここから出て行きなさい。美しい見た目こそ、この世界に求めれる聖女の証。あなたみたいな地味な聖女は迷惑なのよ!」
そ、そんなぁ~~。
「あはは。そんな顔したってダメよ。土下座したってあなたはギルドには残れないんだから」
いや、流石に土下座はしませんが。
「さぁ、シッシッ! これから【女神の光輝】は美人ばかりの聖女ギルドになるんだからね。地味子がいたら汚れるわよ。出て行ってちょうだい」
背中ごしにみんなの嘲笑が聞こえてきます。
「ふふふ。地味エマが追い出されたわよ」
「おんな地味な子がこのギルドにいるのがおかしいわよね。うふふふ」
「これからは美少女の時代なのよ。可愛いは正義なんだから」
と、いうわけで、私は3年間勤めた聖女ギルドをクビになってしまいました。
思い起こせば、私が聖女ギルド【新緑の蕾】に入ったのは13歳の頃。私の力を認めてくれた先代が雇ってくれました。
その時は良かったなぁ。
聖女の仕事は順調で、王室の評価は右肩上がり。B級だったギルドの評価がS級にまで跳ね上がりました。でも、先代が病に倒れて引退。新しいギルドマスターがキアーラさんに代わってから状況は一変しました。
私の給料は4分の1にまで減給、面倒な仕事は全部私に丸投げです。
それに、彼女は聖女の容姿をグッズにして売り始めました。
始まりは 小型肖像画。それからはハンカチ、コップ、ポーションの瓶。聖女の似顔絵を描いた物を発売しました。
困ったことに、そのグッズは売れに売れ、キアーラさんの企画は大当たりしてしまったのです。
気をよくした彼女は新しい聖女を募集しました。そうして集まったのが、見た目ばかりが良い人材。現在のギルドメンバーなのです。
従来の聖女の仕事は、私を中心に先代から続いている古参メンバーがやっていました。
私が抜けて、本当に大丈夫でしょうか?
古参メンバーは優秀な人材ばかりですが、少々癖が強いように感じます。キアーラさんの才覚だけでやっていけるのか心配です。
でも、人の心配より自分ですよね。
聖女の給金が無くては生活がままなりませんから。
ああ、これからどうしましょうか?
私はトボトボと帰路に向かう。
途中、市場に寄って夕食の食材を買いました。食費は抑えなければなりません。でも、落ち込んだ時こそ、美味しい物を食べるべきでしょう。
少々高いですが、分厚いお肉を買いました。串焼きが美味しいですね。シチューにも入れましょう。
そうだ、お菓子屋さんにも寄りましょうか。食後には甘いクッキー。これも元気がでますからね。
辛いことがあった時こそ、楽しいことをしなければ。
同い年の女の子と会話すると、気分を上げるのはお洒落だと言いますが、私は美味しい物を食べる方が性に合っているようです。
あ、そうそう。
香りの良い茶葉も購入しましょうか。
あとミルク。
クッキーにはミルクティーですよね。
美味しい物を食べれば、きっと良い考えが浮かびます。
それからゆっくり考えれば良いんです。
気分を上げるために詠いましょうか。
《元気出せ。美味しい物が待ってます》
────
全18話。
全部で5万字程度。完結保証付き。
どうぞよろしくお願いします。
そう告げられたのは、【女神の光輝】のギルドマスター、キアーラさん。
私は、小首を傾げる。
「なぜでしょう?」
「鏡を見ればわかるでしょう?」
はぁ?
大きな姿見には私の全身が映ります。
黒髪に大きな眼鏡。身長は152センチ。胸は発展途上……。
「えーーと、私が何か?」
「地味なのよ」
「はい?」
「私と比べればわかるわよね?」
「ははは。それは酷ですよ」
キアーラさんは身長170センチ。
金色の長髪が美しい、ナイスバディの美人さんです。
私なんかと比べたら月とスライム。
「私だけじゃないわ。他の聖女と比べても、ねぇ。あなたは地味なのよ」
まぁ、確かに見た目はそうかもしれない。この聖女ギルドは美人揃いだ。王都でも有名である。
最近売り出した 小型肖像画が、特に評判が良い。【女神の光輝】のメンバーを描いた絵画です。
「みんなの 小型肖像画は千枚以上売れてますのにね。あなたのはたったの100枚しか売れてませんのよ!」
「ハハハ……。しかしですね。100枚も売れてること自体が奇跡というか。奇特な方がおられるというか」
「何を笑っているの! 恥ずかしい! これは当ギルドにとっては汚点なのよ!」
お、汚点……。
「しかしですね。見た目より実益の方が大事かと……」
「その点においてもあなたは劣っているわ。魔力量は中の下。A級魔法はおろか、B級でさえ使うのは危うい」
「う……」
「しかも、使えるのは聖女なら誰でも使える聖女魔法の3種類だけ」
私が使える魔法は、 回復と 素材進化と 解呪だけです。
他の聖女さんはもっと使えますからね。痛いところを突かれました。
「それと、ユニークスキルを持っていたわよね。ペンを使わずに文字を描くだけの」
「光魔字《ひかるまじ》」
「そうそれよ。それってただペンを使わずに文字を書くだけのくだらないスキルでしょう!」
「で、でも紙要らずですよ? 空中にも文字が書けますしね。紙がなくても計算がスラスラとできるんです。意外と便利なんですよ。えへへ」
「お黙りなさい!」
「うう」
「はぁ~~。あなたは見た目はおろか、実力さえも地味なのよ」
「……地味なのは、そのとおりですね」
「やっている仕事といえば、誰でもできる雑用ばかりじゃないの!」
え!?
「それは違います! 私は先代の要望で聖女の仕事に尽力してきました! 先代は私に──」
「お黙り!」
「!?」
「先代の時代は終わったのよ。今は私がギルドマスターよ。聖女ギルドは私の運営でやっていくの。私がルールなのよ!」
「……で、ですがぁ。魔法薬の生成、魔法壁の強化、厄災解呪。その他、祭事、相談ごとは先代のやり方で私が率先してですねぇ──」
「フン、見苦しいわねぇ。地味なあなたに何ができるっていうのよ。ここまで言わないとわからないの? ハッキリ言って邪魔なのよ。ゴミなの。無能な聖女を雇っておくほど広い心は持ち合わせていないのよ。潔くここから出て行きなさい。美しい見た目こそ、この世界に求めれる聖女の証。あなたみたいな地味な聖女は迷惑なのよ!」
そ、そんなぁ~~。
「あはは。そんな顔したってダメよ。土下座したってあなたはギルドには残れないんだから」
いや、流石に土下座はしませんが。
「さぁ、シッシッ! これから【女神の光輝】は美人ばかりの聖女ギルドになるんだからね。地味子がいたら汚れるわよ。出て行ってちょうだい」
背中ごしにみんなの嘲笑が聞こえてきます。
「ふふふ。地味エマが追い出されたわよ」
「おんな地味な子がこのギルドにいるのがおかしいわよね。うふふふ」
「これからは美少女の時代なのよ。可愛いは正義なんだから」
と、いうわけで、私は3年間勤めた聖女ギルドをクビになってしまいました。
思い起こせば、私が聖女ギルド【新緑の蕾】に入ったのは13歳の頃。私の力を認めてくれた先代が雇ってくれました。
その時は良かったなぁ。
聖女の仕事は順調で、王室の評価は右肩上がり。B級だったギルドの評価がS級にまで跳ね上がりました。でも、先代が病に倒れて引退。新しいギルドマスターがキアーラさんに代わってから状況は一変しました。
私の給料は4分の1にまで減給、面倒な仕事は全部私に丸投げです。
それに、彼女は聖女の容姿をグッズにして売り始めました。
始まりは 小型肖像画。それからはハンカチ、コップ、ポーションの瓶。聖女の似顔絵を描いた物を発売しました。
困ったことに、そのグッズは売れに売れ、キアーラさんの企画は大当たりしてしまったのです。
気をよくした彼女は新しい聖女を募集しました。そうして集まったのが、見た目ばかりが良い人材。現在のギルドメンバーなのです。
従来の聖女の仕事は、私を中心に先代から続いている古参メンバーがやっていました。
私が抜けて、本当に大丈夫でしょうか?
古参メンバーは優秀な人材ばかりですが、少々癖が強いように感じます。キアーラさんの才覚だけでやっていけるのか心配です。
でも、人の心配より自分ですよね。
聖女の給金が無くては生活がままなりませんから。
ああ、これからどうしましょうか?
私はトボトボと帰路に向かう。
途中、市場に寄って夕食の食材を買いました。食費は抑えなければなりません。でも、落ち込んだ時こそ、美味しい物を食べるべきでしょう。
少々高いですが、分厚いお肉を買いました。串焼きが美味しいですね。シチューにも入れましょう。
そうだ、お菓子屋さんにも寄りましょうか。食後には甘いクッキー。これも元気がでますからね。
辛いことがあった時こそ、楽しいことをしなければ。
同い年の女の子と会話すると、気分を上げるのはお洒落だと言いますが、私は美味しい物を食べる方が性に合っているようです。
あ、そうそう。
香りの良い茶葉も購入しましょうか。
あとミルク。
クッキーにはミルクティーですよね。
美味しい物を食べれば、きっと良い考えが浮かびます。
それからゆっくり考えれば良いんです。
気分を上げるために詠いましょうか。
《元気出せ。美味しい物が待ってます》
────
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全部で5万字程度。完結保証付き。
どうぞよろしくお願いします。
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