普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児

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第九話 イルエマとチーム戦

 ナナハさんはモンスター討伐のクエスト依頼を受けて来ました。

 これは王城が出すクエストで、王都にある上位のギルドには通達が回っている依頼です。
 かなり大掛かりであるのは言うまでもありません。

「ゴブリンマッチョ。ですか。聞いたこともないモンスターですね」

「ゴブリンの亜種みたいね。性能が通常種の3倍以上はあるのよ」

「基本的に討伐依頼の場合。うちのギルドからはバーバダとレギが行くことになるんだけど、イルエマは回復役で入れるかしら?」

「ええ。後方支援という形で、回復くらいしかできませんが、入ることは可能です」

 そういうわけで、私たち3人は、ゴブリンマッチョが大量発生したというカッセン草原へと向かいました。

「討伐の戦法は決まっているのですか?」

 私あたしが補助魔法でバーバダを強化。バーバダが敵を蹴散らす感じね。後は攻撃魔法の遠距離攻撃かしら」

 なるほど。
 手堅いですね。

「まぁ、安心しなよ。いつも楽勝だからさ。ゴブリン程度に苦戦はしないわよ」

「だと良いのですが……」

 亜種モンスターですからね。
 いつもの戦法が通じれば良いのですが……。

 現地到着。
 
 周囲には王城の兵団と、各種ギルドの冒険者たちが集う。
 兵士長が指揮を取る。

「ゴブリンマッチョは防御力が高い。しかし、高々、通常ゴブリンの3倍だ。高火力の攻撃ならば殲滅は可能だろう。より多く殲滅した者には王室から褒美が出るそうだ! 皆、気張って倒してくれ!」

「「「 おおーー!! 」」」

 カッセン草原を奥に進むと大柄で筋肉質のゴブリンの集団に遭遇した。
 全身青色なのが特徴的です。

「ゴブリンマッチョだ! 皆の者、行けぇええええッ!!」

 しかし、

「か、硬い!! 攻撃が弾かれるぞ!!」

 名を上げようと前に出た通常兵士の攻撃はことごとく弾かれる。

「俺。やる」

 バーバダさんの大剣が風を切る。

ブォオオオオンッ!!

 しかし、ゴブリンマッチョには効きません。
 ガードポーズは2、3歩退かしただけです。

 通常の3倍?
 もしかして、3倍以上ってこと?
 3倍と3倍以上では大きく違いますよ。
 事前情報が間違っていたということでしょうか!?

「バーバダ! 受け取りな!  攻撃増強バイカー!」

 攻撃力が2倍になる補助呪文です。

「レギ。サンキュー。はぁああッ!!」

ブォオオオオオオオンッ!!

 ゴブリンマッチョは真っ二つ。

 すごい!
 流石はバーバダさんです。誰も倒せていない状況で一番早くに倒しました。
 それに、状況判断ですぐに補助呪文をかけたレギさんもすごいです。彼女のフォローがあってこその結果!
 抜群の連携プレーです!

 レギさんはA級の火属性魔法を放ちます。

「ギガファイヤー!」

 メガファイヤーでは敵わないマッチョなゴブリンたちが次々に燃え尽きます。

 うは!
 流石のお二人です。
 これなら私の出番はなさそうですね。

 などと、安心するや否や、バーバダさんがふっ飛ばされます。

「うぁああッ!」

 あらら!?
 大変です!

「大丈夫ですか!?」

「更に。固く。なった」

 どういうことでしょうか!?
 とにかく、

「光の精霊よ。地上の民に慈愛の加護を授けたまえ。 回復ヒール

「ありがと。治った」

 倍化したバーバダさんの斬撃を跳ね返すなんて相当ですよ。
 私の魔力量では、そんなに多くの傷は治せまん。

「くっ!  私あたしの魔法も効かなくなった。一体どういうことなんだい!?」

 周囲の冒険者たちも苦戦し始める。
 ゴブリンマッチョの群れの最奥には、オレンジ色の肌をしたゴブリンが補助魔法を使っていた。

 ゴブリンメイジだ。
 戦闘力は低いですが、魔法を使って仲間を強化します。

「最悪の組み合わせですね」

 いよいよ。
 妙な雰囲気になってきました。

「レギさんの魔法はメイジには届きませんか?」

「ダメだね。奴の手前でマッチョどもに防がれてしまうんだ」

 困りましたね。
 メイジの周囲10メートルはマッチョの群れ。
 魔法で強化されて硬い。
 メイジになら攻撃は通るものの、硬いマッチョが防御してしまう。
 
「うあああッ!!」

 ああ、バーバダさんがまたつき飛ばされました。
 回復してあげましょう。

 回復ヒール!!」

 加えて、私の 回復ヒールはあと数回が限度。
 さて、この状況。どう切り抜ける?

 うーーん。
 やはり、

「逃げましょう」

 全滅するより撤退が最優先。逃げるが勝ちです。
 しかし、

「イルエマ。ダメだ。周り。こまれてる」

 あちゃあ。
 後方にはいつの間にかゴブリンマッチョ。
 完全に退路を絶たれましたよ。

「嬢ちゃん。大ピンチだね」

「ええ。本当に……」

 バーバダさんは私とレギさんを抱きかかえました。

「俺。2人。投げ飛ばす。2人。だけでも。逃げろ」

「何を言うんだい! バカ! 仲間なら死ぬ時は一緒だよ!」

 投げ飛ばす?
 ……そうか、彼女の筋力なら女1人を投げ飛ばすのは簡単なこと。
 私たちを後方に控えるマッチョの先に投げれば、私たちだけは助かるのか。

 私あたしは残るよ! 投げ飛ばすのは嬢ちゃんだけにしな!」

 へぇ……。レギさんって意外と仲間想いの人なんだ……。
 ふふふ。バーバダさんといい、まったくなんだかんだでお人好しなんですから。
 私はこんなお2人が大好きです。見殺しになんてできません。
 ここを切り抜ける作戦……これしかない!

「いいえ。投げられるのはレギさんです」

「バカ、お言いでないよ!  私あたしはバーバダと一緒に戦うんだ! 嬢ちゃんは逃げな! さぁバーバダ!」

「うん。わかった」

 あああ!

「違います違います! 逃げるんじゃないんですよ。私たち3人でゴブリンメイジを倒すんです」

「「 え?? 」」

 私が作戦を伝えると、レギさんは笑った。

「嬢ちゃん。あんた、めちゃくちゃだねぇ」

「……ごめんなさい。この戦法しか思いつかなくて」

「あはは。いいよ。最高の作戦さ。ちょっと痛いだろうけどね」

「はい。この作戦はレギさんが痛いんです」

「でも、全滅よりマシさね」

「……やってくれますか」

「当然よ」

 よし。
 じゃあ、風力計算。
 
 バーバダさんはレギさんを持ち上げた。

「この風上ならばこの角度。投げるのは45度です。レギさんは詠唱を済ませておいてください」

「あいよ」

 じゃあ。

「お願いします」

「よし。俺、レギ投げる。飛んでけ」


ブゥウウウウウウウウウウンッ!!


「ひぃいいいいいっ!!」

 彼女の悲鳴が空に響く。
 投げられたのはゴブリンメイジがいる方向。
 彼女の体はマッチョの群れを超えてメイジの上空へと到達した。

 逃げるために投げるんじゃないんです。

 攻撃のために、投げる。

 レギさん。今です!



「ギガファイヤー!!」



 巨大な炎がゴブリンメイジを燃やします。

『ギャァアアアアアアアッ!!』

 やった!
 成功です。

 ゴブリンメイジの補助魔法が受けれなくなったマッチョはパワーダウン。
 バーバダさんをはじめ、他の冒険者の攻撃も通るようになりました。
 
 そうして、全てのゴブリンを殲滅することに成功したのでした。

 さて、急いで探さなくてはいけません。

「レギさーーん! どこですかぁあ!?」

「じょ、嬢ちゃん……。こ、ここよ~~」

 と、弱々しい声は茂みの中からです。
 上空から墜落したレギさんが突っ込んだ後でした。
 全身骨折、傷だらけです。
 
 さぁ、最後の作業ですよ。

 回復ヒール!」

「ふぅ……。痛かったぁあ」

「レギさんのおかげで勝てました」

「何言ってんだい。嬢ちゃんの作戦がなかったら全滅していたさ」

 バーバダさんは私たちを抱きしめた。

「俺、投げる。レギ。攻撃する。イルエマ治す。俺たち。3人で。倒した」

 そうですね。
 これぞチームワークです。

「ちょいと。苦しいよバーバダ」
「あはは」
「俺たち。最高のチーム。勝った」

 翌日の王都新聞には、この戦いのことが記事になりました。

『【狸の 腹鼓はらづつみ】大活躍! 萬ギルドが王都を守る!』

 私たちのギルドは注目を浴びることになったのでした。
 王室からは特別報酬として1千万コズンが与えられ、私たち3人にはそれぞれ200万コズンの報酬が貰えることになりました。

 大金が入ったナナハさんは大喜び。
 ボロ小屋だったギルドは改装されることになりました。

 ふふふ。

《なにごとも、順風満帆、異論なし》


────

次回キアーラ回です。
乞うご期待!
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