ぽんぽこタヌキの天狗退治

神伊 咲児

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最終話 夢かもしれない

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 僕は元の世界に帰って来た。

 母さんが作った朝食を食べる。

 目玉焼きにバタートースト。
 ふふふ。ずっと和食だったからな。こういうのはうれしい。

 なんだか、今まで見ていた景色が違うような気がする。

 でも、夢だったのかも……。なんて、気もする。

「もうすぐ新学期でしょ? 夏休みの宿題は全部やったの?」

「まぁね。僕は要領がいいからね」

「はは~~ん。さては、私が出かけている間にゲーム三昧の計画だな」

「ふふふ。予定はあるんだ」

「あら、そうなの?」

「うん。市民プールに行ってくる」

「え、なんで!? 泳ぐのは、あきらめたんじゃなかったの?」

「目標ができたんだ。二十五メートルをクロールで泳ぎきるってね」

「ええええ!? どうしちゃったのぉおお? あんなに『才能がない』ってわめいていたのにさ」

「工夫と努力でなんとかなるかもしれないと思ったんだ」

「へぇ。偉いわね。流石は来年六年生になる男ね」

「フフフ。カードゲームの応用さ」

「よぉし、んじゃあ、二十五メートルを泳げるようになったら、好きなカードパックを三つ買ったげるわ」

「え!? 本当!? やったぁ!」

「泳げるようになったらね」

「やるぞーー!」

「三日坊主にならないことを祈る」

 それから、僕は市民プールに通うことになった。
 初めは全然泳げなかったさ。
 だから、めげずに努力でやり続けた。

 でも、ふと気がつく。

「コーチがいればいいんだ」

 なにごとも工夫次第。
 僕は泳げる人に教えてもらうことにした。
 それは学校の友達。休日には父さんと母さんにもコーチになってもらう。
 みんなに泳ぎのコーチになってもらって泳ぐコツを教わりながら練習を続けた。

 そしてついに!

 夏休み最後の日。

 僕は二十五メートルのプールをクロールで泳ぎきった。

「ぷはぁ! やった!! 泳げたぞ!!」

「やるじゃない大助! すごいわ!!」

 プールの帰り。
 カードショップに行って、約束通りにカードパックを三つも買ってもらった。

「ふふふ。がんばったご褒美よ」

 うれしいことは続くようで。そのパックには、欲しかったレアカードが三枚も入っていたんだ。
 もう最高だよ。

 今やタヌキだったことなんか忘れてすっかり人間の生活に戻った感じ。
 妖怪退治の旅が嘘みたいだよ。

 父さんと母さん……。僕がタヌキになって妖怪と戦っていた、なんて言ったら信じてもらえるかな?

 言っても無駄なような気がする。
 もう自分だって、夢の出来事だと思っているもん。
 きっと、誰に話したって、『夢を見たんだ』って笑われるだけかもしれないな。

 ふと、テレビの報道が気になった。
 それは 火炎寺かえんでらというお寺から、珍しいお宝が発見されたニュースだった。

 住職は得げに掛け軸を広げる。

「これはな。先祖が大切にしていた絵なんですよ」

 その掛け軸には、一枚の和紙が貼り付けられていて、そこには墨汁で描いた下手くそな絵が描いたあった。
 レポーターは首をかしげる。

「不思議な絵ですね。これストローに見えますが? まるでジュースみたいです」

 え!?

「こっちの絵はクリームパフェみたいに見えますね。この二つの絵はなにを描いているのでしょうか……??」
 
 僕が描いたクリームソーダとチョコレートパフェの絵だ!
 どうして、こんなお寺に!?

 住職は仏像を両手で差した。

「この絵はうちの寺の守り神である『ウサギ菩薩』が大切にしていたといわれております」

 ウ、ウサギ菩薩だって!?
 天女さまみたいな仏像の頭にウサギの耳がついているぞ!?
 ま、まるで耳子じゃないか!?

 あれ、待てよ!?
 火炎寺って名前が気になるぞ!?

 テレビのカメラがお寺の外観を映すと、僕の考えと一致した。
 やっぱり! あの山の風景は身覚えがある!

「ここは、火炎将軍と戦った、古寺のあった場所だ!」

 たしか、僕がファイヤータヌキ隕石で破壊した場所だよ。
 と、いうことは寺は無くなっているよね? あるなら大きなクレーター。
 じゃあ、違う場所か……。
 いや、待て待て。そういえば村から離れるときに、火炎将軍が新しく作り直すって言ってたぞ。
 と、いうことは、あのテレビに映っているお寺は、元は古寺で、掛け軸の絵は僕が描いたもの!?

 テレビのニュースは、僕が混乱している間に終わってしまう。

 ああああ……。結論が出ないままに見れなくなっちゃった。
 ちょっと、ネットで検索してみよう。

「火炎寺……火炎寺……っと。ホームページでもあればいいんだけど……」

 な、ない……。ネットに情報がないよ。
 うーーん、マイナーなお寺なのかなぁ??
 それともお寺の名前を聞き間違えたかな?
 どちらにせよ、調べることはできなさそうだぞ。

 やれやれ。
 やっぱり気のせいだったのかな?

 そうだよなーー。
 この世の中に妖怪なんていないもんなぁ。

 僕がタヌキになって天狗を退治するなんてさ。
 あるわけないよね。
 結局、あれは夢だったんだ。

 やけにリアルな夢だったけどさ。
 ゲームのやり過ぎかもしれない。

 さぁ、もう考えるのはやめようか。
 明日から学校だしな。
 早めに寝ちゃおっと。

 僕がベッドに体を沈めると、カチャ! という音がした。

「ん? なんだ?」

 その音はベッドと壁の隙間から聞こえた。
 ベッドを揺らすとカチャカチャと音がする。

 何かが当たっている?

 隙間をのぞいてみると、小さな巾着袋が見つかった。

「え!? こ、これって……」

 急いでその袋を取り出した。
 中からは小石が三つ出て来た。
 それは色鮮やかに輝いて、大きさはチグハグ。

「ま、間違いないよ……。大きいのは耳子で、中ぐらいが僕、一番小さいのが事典蝶だ」

 これは、耳子が僕にくれた彼女の宝物。河童を退治した時にもらった綺麗な石ころだ。

「ははは。夢じゃなかったのか……」

 目頭がグッと熱くなる。

 ああ、そうか、夢じゃない。

 あの妖怪退治の旅は夢じゃなかったんだ。

 僕はお腹を叩いてみた。

ポンポコポン。

 ふふふ。

「明日、学校に行くのが楽しみだなぁ」




 おしまい。
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