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龍王と狐の来訪者
36話目 フラップフラップ1/2
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ーー清正sideーー
『何か俺に御用ですか?魏良伯爵』
『清正殿、折り入って頼みたいことがあるのですが……』
俺は今現在ホールを離れて足早と別館へと向かっている最中だった。理由としては、館の主人である魏良伯爵が別館に待機しているはずの警護人たちと連絡が取れなくなり心配なので様子を見てきて欲しいと頼まれたからだ。
相手が相手なので断る訳にもいないが、正直気は進まなかった。狙ったかのようなタイミングでの連絡途絶は最悪の場合は既に別館が制圧された可能性が極めて高いことを示唆しているからだ。
(いや流石にそれは考え過ぎか?警護の数は200と少し。どれだけ腕が立つとしても、気付かれずにそれだけの人数を殺す事は不可能に近いだろう、だが万が一がある……)
どちらにせよ何の確認もせず無闇に騒ぎ立てるわけにもいかない。今回の主催はバルドラきっての大貴族"白魏"の分家である魏一族の魏良伯爵によるものだからだ。
そんな中で無闇矢鱈に騒いだら王と懇意にしている魏良伯爵の顔を潰すことになってしまう。
暗殺計画があるにせよ、王が狙われている件は集まっている貴族たちの誰も知らないのだ。怪しい点があれば直ぐに報告する。これが1番良いだろう。
「‥‥‥」
会場を出て、昇降口にたどり着いた時、早速引き返すべきだと思った。何故なら、かつては生きていたであろう命の抜け落ちた『人形』が数体無造作に打ち捨てられていたからだ。
人形は鋭利な刃物で切り裂かれでもしたのか、内側からこぼれ出た赤い綿を床一面に広げて動かなくなっていた。飛び散った赤い綿からはむせ返るような鉄の臭いとジメジメと篭った熱気が漂い、それに当てられ自然と腰にぶら下がった剣柄に手が伸びてしまう。
「この人数を手際良く一撃。何の魔法だ?」
状態を見ればある程度の予測はつく。彼らに抵抗したような素振りは見受けられないことから、何が起こったのか理解する間もなく殆ど一瞬で事は済んだのだろう。人を余りにも殺し慣れている。これが……
殺気をまるで隠す気のない視線に対して睨み返した。
「そんなに睨むなよ。言っておくが、そいつ等を殺ったのは俺じゃあないぜ。
あんたは知らないと思うが、そのやり口は宿木のやつだ。それに俺はさっきまで別の場所で遊んでたからな」
そう言って外の闇を静かな足取りで掻き分けて入ってきたのは一人の男だった。男には眉が無く、加えて三白眼だった。浅黒い肌とは対照的に髪の毛は綺麗に脱色されており、老人と見間違ってしまいそうになるが、年齢はそう変わらなさそうな印象を受けた。
「別に殺ったのが誰でも構わねえ。大事なのはお前らが我らが王に刃を向けた敵であるってことだからな」
俺が静かに小太刀を引き抜き構えたにも関わらず、褐色の男は人を不快にする笑みを浮かべながらポケットに手を突っ込んだまま動く様子はない。
「構えろ」
「武人気質結構だが、いいから来いって」
俺の言葉に褐色の男は挑発のつもりか人差し指をちょいちょいとまるで手招きの様な動作をしてきた。
相手はこちらの出方を伺う気のようだ。ならば、と、俺は床を踏み砕くほどに足裏に力を込めて、自身の最速をもって一歩を踏み出した。
ただ一直線に相手に突っ込めば、それにタイミングを合わせ反撃してくるのは明らかだ。だから高速に縦の変化を加える。つまりは顔が地に触れてしまいそうになるまで重心を低く落としての高速攻撃を繰り出す。
俺は一息で褐色の男の懐に潜り込む。人というものは自分が考えてるより眼下というものが死角になっているとは思わない。目が追い切れず、相手にはまるで俺が忽然と消えたかの様に写っているだろう。現に男の瞳は未だに俺が先程まで居た場所に注がれている。
虎剣・一ノ太刀 伏地……
だが小太刀を振ろうとするよりも速く、何かが下より顔に迫りくるのを感じ取る。褐色の男は俺の動きを追い切れていないにも関わらず足元を動かした。左蹴りだ。
いや。これは。ただの蹴りではない。本能的に当たり所が悪ければ一発で死ぬことを研ぎ澄ました野生の勘が感じ取ったからだ。
だがカウンターの要領で繰り出された見事な蹴りに対して避けることが敵わず、身を捩りながら咄嗟に攻撃から腕で庇うのが限界だった。
「ぐっ‥!」
ミシリッ!鈍い音と共にそのまま蹴り飛ばされて、ゴロゴロと床を転がるがすぐに態勢を立て直す。
瞬間、ズキリと右手に鋭い痛みが走り、指の感覚が次第に鈍くなっていき小太刀を思わず取りこぼしてしまう。
痛みの原因へと視線を向けると直ぐに理解出来た。先ほど防御した右腕は痣のように青黒く変色していたからだ。それだけではない。前腕部分から手首にかけては腕が不自然なほど捻れてしまっている。
ただの蹴りで身体の一部分だけがこうも変形するわけがない。
思わず褐色の男を睨みつけると褐色の男はにまりと口角を引き上げる。
「怖い顔だな。だがそれで済んでラッキーだ。今のが顔に当たれば頚椎がねじ切れて終わってた所だぞ」
「チッ‥‥‥触れたものを捻る魔法でも使えんのか」
俺の言葉に褐色の男は小馬鹿にするように小さく拍手を送る。
「当たりだ。俺の魔法は歪曲。今みたいに触れたものを自在に捻ることが出来る。」
答え合わせと言わんばかりに、褐色の男が長い舌を見せるとそこに歪曲魔法の術式が長々と刻まれていた。
「けけっ。勉強代としては高くついちまったなぁ?お前のその手、骨が捻れてへし折れてる。いやその様子だと腱も切れてるな。高度な回復魔法が使える奴がいなきゃその右手はもう二度と使いモノにならねえぜ」
「よく動く舌だ。右手一つ使えなくした程度でもう勝ったつもりか?」
「今の踏み込みで実力も大体分かった。
しかしこんなものか。軍事大国バルドラご自慢の王族親衛隊ってのは。屋敷を守ってた奴らもテンで大した事ねえし、存外この国の底が知れるな」
「いやまあ案外噂ってのはこういうもんか。尾鰭がついて誇張されちまうもんだからな。空蝉のクソガキにくれてやるのも癪だし、このまま武王項遠も俺が殺っちまうかなぁ」
安い挑発だ。乗ってはいけないことは分かっている。悔しいが確かにこいつと俺は相性が悪い。それでも
「ほざけ 外道。お前は王族親衛隊第四官の名に賭けてここで必ず殺す」
俺が不甲斐ないせいで、敬愛する王が。志を同じくする同胞が。誇り高き国が。軽んじられている。侮られている。容認できない。看過できない。この王より賜った宝刀に賭けて。威信を示す義務が俺にはある。退くわけにはいかない。
あとがき
キャラクター紹介
【夕霧 鈴虫】
人間/殺し屋
【ステータス】
パワー E
魔力 C
精密性 A+
能力 D
【魔法 精霊の眷顧 狂った者たち 犯罪羊皮紙】
精霊の眷顧:下位の精霊に愛される。
狂った者たち:銃ではなく弾丸の他にタネがあり、微精霊(精霊の1ランク下の自我の無い存在)を定着させ疑似的に魔弾化させている。14秒という時間に限り運動能力を失わせず、本人が対象を視認に限らず何らかの方法で認知さえしていれば自在に対象を追尾する事が可能。視認している場合はより操作が精密になる。
犯罪羊皮紙:魔法具の一つ。切れ端である羊皮紙に血を染み込ませた者が行った悪事が記載される不思議な道具。本来なら罪人の悪事再発を抑止する為に用いる。鈴虫の場合はキルカウントの確認のためだけに使ってる。
【説明欄】
夕霧という殺しの名家の本家筋に当たる人。どちらかというと内向的で感情表出が少ない。桐壺に次いで若い。今回の襲撃でダントツで人を殺している。スプリーキラー(無差別殺人)の性質を秘めているので実のところ、露骨に態度に出す花宴よりタチが悪い
『何か俺に御用ですか?魏良伯爵』
『清正殿、折り入って頼みたいことがあるのですが……』
俺は今現在ホールを離れて足早と別館へと向かっている最中だった。理由としては、館の主人である魏良伯爵が別館に待機しているはずの警護人たちと連絡が取れなくなり心配なので様子を見てきて欲しいと頼まれたからだ。
相手が相手なので断る訳にもいないが、正直気は進まなかった。狙ったかのようなタイミングでの連絡途絶は最悪の場合は既に別館が制圧された可能性が極めて高いことを示唆しているからだ。
(いや流石にそれは考え過ぎか?警護の数は200と少し。どれだけ腕が立つとしても、気付かれずにそれだけの人数を殺す事は不可能に近いだろう、だが万が一がある……)
どちらにせよ何の確認もせず無闇に騒ぎ立てるわけにもいかない。今回の主催はバルドラきっての大貴族"白魏"の分家である魏一族の魏良伯爵によるものだからだ。
そんな中で無闇矢鱈に騒いだら王と懇意にしている魏良伯爵の顔を潰すことになってしまう。
暗殺計画があるにせよ、王が狙われている件は集まっている貴族たちの誰も知らないのだ。怪しい点があれば直ぐに報告する。これが1番良いだろう。
「‥‥‥」
会場を出て、昇降口にたどり着いた時、早速引き返すべきだと思った。何故なら、かつては生きていたであろう命の抜け落ちた『人形』が数体無造作に打ち捨てられていたからだ。
人形は鋭利な刃物で切り裂かれでもしたのか、内側からこぼれ出た赤い綿を床一面に広げて動かなくなっていた。飛び散った赤い綿からはむせ返るような鉄の臭いとジメジメと篭った熱気が漂い、それに当てられ自然と腰にぶら下がった剣柄に手が伸びてしまう。
「この人数を手際良く一撃。何の魔法だ?」
状態を見ればある程度の予測はつく。彼らに抵抗したような素振りは見受けられないことから、何が起こったのか理解する間もなく殆ど一瞬で事は済んだのだろう。人を余りにも殺し慣れている。これが……
殺気をまるで隠す気のない視線に対して睨み返した。
「そんなに睨むなよ。言っておくが、そいつ等を殺ったのは俺じゃあないぜ。
あんたは知らないと思うが、そのやり口は宿木のやつだ。それに俺はさっきまで別の場所で遊んでたからな」
そう言って外の闇を静かな足取りで掻き分けて入ってきたのは一人の男だった。男には眉が無く、加えて三白眼だった。浅黒い肌とは対照的に髪の毛は綺麗に脱色されており、老人と見間違ってしまいそうになるが、年齢はそう変わらなさそうな印象を受けた。
「別に殺ったのが誰でも構わねえ。大事なのはお前らが我らが王に刃を向けた敵であるってことだからな」
俺が静かに小太刀を引き抜き構えたにも関わらず、褐色の男は人を不快にする笑みを浮かべながらポケットに手を突っ込んだまま動く様子はない。
「構えろ」
「武人気質結構だが、いいから来いって」
俺の言葉に褐色の男は挑発のつもりか人差し指をちょいちょいとまるで手招きの様な動作をしてきた。
相手はこちらの出方を伺う気のようだ。ならば、と、俺は床を踏み砕くほどに足裏に力を込めて、自身の最速をもって一歩を踏み出した。
ただ一直線に相手に突っ込めば、それにタイミングを合わせ反撃してくるのは明らかだ。だから高速に縦の変化を加える。つまりは顔が地に触れてしまいそうになるまで重心を低く落としての高速攻撃を繰り出す。
俺は一息で褐色の男の懐に潜り込む。人というものは自分が考えてるより眼下というものが死角になっているとは思わない。目が追い切れず、相手にはまるで俺が忽然と消えたかの様に写っているだろう。現に男の瞳は未だに俺が先程まで居た場所に注がれている。
虎剣・一ノ太刀 伏地……
だが小太刀を振ろうとするよりも速く、何かが下より顔に迫りくるのを感じ取る。褐色の男は俺の動きを追い切れていないにも関わらず足元を動かした。左蹴りだ。
いや。これは。ただの蹴りではない。本能的に当たり所が悪ければ一発で死ぬことを研ぎ澄ました野生の勘が感じ取ったからだ。
だがカウンターの要領で繰り出された見事な蹴りに対して避けることが敵わず、身を捩りながら咄嗟に攻撃から腕で庇うのが限界だった。
「ぐっ‥!」
ミシリッ!鈍い音と共にそのまま蹴り飛ばされて、ゴロゴロと床を転がるがすぐに態勢を立て直す。
瞬間、ズキリと右手に鋭い痛みが走り、指の感覚が次第に鈍くなっていき小太刀を思わず取りこぼしてしまう。
痛みの原因へと視線を向けると直ぐに理解出来た。先ほど防御した右腕は痣のように青黒く変色していたからだ。それだけではない。前腕部分から手首にかけては腕が不自然なほど捻れてしまっている。
ただの蹴りで身体の一部分だけがこうも変形するわけがない。
思わず褐色の男を睨みつけると褐色の男はにまりと口角を引き上げる。
「怖い顔だな。だがそれで済んでラッキーだ。今のが顔に当たれば頚椎がねじ切れて終わってた所だぞ」
「チッ‥‥‥触れたものを捻る魔法でも使えんのか」
俺の言葉に褐色の男は小馬鹿にするように小さく拍手を送る。
「当たりだ。俺の魔法は歪曲。今みたいに触れたものを自在に捻ることが出来る。」
答え合わせと言わんばかりに、褐色の男が長い舌を見せるとそこに歪曲魔法の術式が長々と刻まれていた。
「けけっ。勉強代としては高くついちまったなぁ?お前のその手、骨が捻れてへし折れてる。いやその様子だと腱も切れてるな。高度な回復魔法が使える奴がいなきゃその右手はもう二度と使いモノにならねえぜ」
「よく動く舌だ。右手一つ使えなくした程度でもう勝ったつもりか?」
「今の踏み込みで実力も大体分かった。
しかしこんなものか。軍事大国バルドラご自慢の王族親衛隊ってのは。屋敷を守ってた奴らもテンで大した事ねえし、存外この国の底が知れるな」
「いやまあ案外噂ってのはこういうもんか。尾鰭がついて誇張されちまうもんだからな。空蝉のクソガキにくれてやるのも癪だし、このまま武王項遠も俺が殺っちまうかなぁ」
安い挑発だ。乗ってはいけないことは分かっている。悔しいが確かにこいつと俺は相性が悪い。それでも
「ほざけ 外道。お前は王族親衛隊第四官の名に賭けてここで必ず殺す」
俺が不甲斐ないせいで、敬愛する王が。志を同じくする同胞が。誇り高き国が。軽んじられている。侮られている。容認できない。看過できない。この王より賜った宝刀に賭けて。威信を示す義務が俺にはある。退くわけにはいかない。
あとがき
キャラクター紹介
【夕霧 鈴虫】
人間/殺し屋
【ステータス】
パワー E
魔力 C
精密性 A+
能力 D
【魔法 精霊の眷顧 狂った者たち 犯罪羊皮紙】
精霊の眷顧:下位の精霊に愛される。
狂った者たち:銃ではなく弾丸の他にタネがあり、微精霊(精霊の1ランク下の自我の無い存在)を定着させ疑似的に魔弾化させている。14秒という時間に限り運動能力を失わせず、本人が対象を視認に限らず何らかの方法で認知さえしていれば自在に対象を追尾する事が可能。視認している場合はより操作が精密になる。
犯罪羊皮紙:魔法具の一つ。切れ端である羊皮紙に血を染み込ませた者が行った悪事が記載される不思議な道具。本来なら罪人の悪事再発を抑止する為に用いる。鈴虫の場合はキルカウントの確認のためだけに使ってる。
【説明欄】
夕霧という殺しの名家の本家筋に当たる人。どちらかというと内向的で感情表出が少ない。桐壺に次いで若い。今回の襲撃でダントツで人を殺している。スプリーキラー(無差別殺人)の性質を秘めているので実のところ、露骨に態度に出す花宴よりタチが悪い
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