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第二章──解放者──

じゅう

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※ ※ ※

冴木さえきと申します。昨日さくじつもお電話致しましたが、潤之介じゅんのすけくんの事ですが」
「あぁ、あいつ何かやったの?今、父さんも母さんもいないんだよね」
「それでは、またお時間を改めて」
「いや、良いよ。何か、お宅が面倒みてくれるんでしょ?昨日、そんな話をして喜んでたよ。学校も、面倒みてくれるんだって?こっちとしては、清々するよ。いっつも、鬱陶しい感じだったんだよねぇ。鹿毛かげだか何だか知らないけどさ。ド田舎の部族の風習なんて、こっちには迷惑しかないっての」
「……それでは。潤之介くんは、もうそちらへ顔を出さなくとも宜しいと」
「あぁ、良いよ良いよ。もう顔も見たくないって」
「…………分かりました。では、そちらの潤之介くんの身の回りの品。教科書類など、本日うけたまわりに伺います」
「あぁ、そうして。マジでもう、金とか一切払わないからねっ」
「構いません。書類上の手続きもございますので、本日改めて伺います」

※ ※ ※

「え?何。冴木って、寺の坊主?」
「そうらしいわね。本当に、何をやらかしたのかしら」
「あぁ、もう良いだろう。もう私たちとアレとは、書類の上でも無関係になったんだ」
「本当に、貴方のお兄さん。面倒事を振ってくれたわよね」
「仕方がないだろう。私だって、急にアレを押し付けられて困ったんだ」
「そうは言っても。結局面倒を見るのって、私に丸投げだったじゃないの」
「私は働いているのだぞ。家の事は、妻であるお前がやるべきだろう。アレの事だって。兄さんから養育費として金がもらえるからって、お前だって喜んでいただろう」
「あぁ、それもそうね。あら、どうしようかしら。もうあのお金、もらえないのよね」
「まぁ、そうだろうな」
「え。それじゃあ、俺の小遣いは?」
「嘘を言って、まだ養育している事に出来ないかしら」
「それもそうだな。どうせ、会いに来ないんだから。分からないだろう」

※ ※ ※

「ちょっと、貴方。まだあのお金、入らないの?」
「それがだな。私も連絡を取っているのだが、一向に兄さんと話が出来ないんだ」
「どうするのよ、貴方。今まであのお金でやりくりしてたのよ?このバッグのお金だって、まだ支払いが残ってるのに」
「何だ、お前。また鞄を買っていたのか。私も、新しいゴルフクラブが欲しかったのに」
「こんな事なら、あの指輪を買っておくんだったわ」
「私もだ。来月は部長を旅行に連れていく事になっているのに」
「ねぇ、俺の小遣いはぁ?」
「「うるさいっ」」
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