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第二章
8.精霊とは違う【5】
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「あ、あの……」
視線を合わせたまま微動だにしない二人に、私の方が心臓停止しそうです。とにかくこの場をどうにかしなくては。でも頑張って声を掛けてみましたが、次の言葉が続けられません。
「お客様……。申し訳ないのですが、手荒な事は避けて頂きたいのですけれども……」
かなりのへっぴり腰で話し掛けて来たのは店員さん。そうですよね、男の人でも怖いですよね?ヴォルと片眼鏡は、流血沙汰になりそうな程の空気を醸し出しているのですから。
出来れば私も早々に立ち去りたいです。周囲の好奇の視線が痛い程突き刺さります。
え~……、原因はやはり私ですか?
元々見目の良いヴォルと、冷たい印象を受ける片眼鏡も少しばかり年齢は上ですが見目だけは良いです。その二人の間に挟まれる状態の私は、端から見たら二人の男が取り合っている?的な感じなのでしょうか。
実際問題、全くこれっぽっちも違いますが。
「ヴォル?」
居たたまれなくなって、私は思わずヴォルに訴えかける視線を向けます。お願いですから、もう帰りましょうよ!
せっかくの美味しかった食事も既になくなりかけているデザートも、もう私の気持ちを立て直してくれません。勿体ないです。
「分かった。帰るぞ、メル」
驚きました。もしかしなくても今ので通じました?!
「は、はいっ」
「お待ちください」
ゆっくりと腰をあげたヴォルに続き、嬉々として立ち上がった私です。が、何故止めるのでしょうか。
私はソワソワしながらヴォルを見上げましたが、彼は片眼鏡に一瞥しただけで背を向けました。よ、良かったです。
ホッとした私ですが、後ろを振り向いた途端に硬直しました。会計をしているヴォルの向こう側で、片眼鏡が無言の圧力を送って来ます。こ、怖すぎます。
私は勢い良く視線を外し、自分の足元を見ました。ここで彼を真っ直ぐ見れる程、私の心臓は強くないのです。自然とヴォルの影に隠れるように移動しました。だって怖いじゃないですか、気分的に猛獣へ背中を向けるようなものですよ!
「行くぞ、メル」
ヴォルに声を掛けられながら背を押され、漸く変な緊張から解放されました。な、何かかなり疲れましたよ。
「悪かった」
宿屋に向かう途中で、ヴォルが静かに謝罪の言葉をつむぎます。
「ベンダーツがいるとは思わなかった」
そうですよね、普通はいるとは思いませんよ。しかも隣に席を取るなんて、明らかに嫌がらせです。
「ヴォルは悪くないですから。……でも出来れば、会いたくないです。あの人、怖いです」
何を考えているのか分かりませんが、あの片眼鏡の奥の冷たい目は油断のならない相手であると私の中で決定しました。
このまま私、無事にセントラルに到着出来るのでしょうか。ヴォルと一緒にいない時に来られたら、本当に私の心臓が持ちません。あの冷笑を浮かべたまま突き刺すような言葉に、はっきり言って耐えられる自信がないです。
視線を合わせたまま微動だにしない二人に、私の方が心臓停止しそうです。とにかくこの場をどうにかしなくては。でも頑張って声を掛けてみましたが、次の言葉が続けられません。
「お客様……。申し訳ないのですが、手荒な事は避けて頂きたいのですけれども……」
かなりのへっぴり腰で話し掛けて来たのは店員さん。そうですよね、男の人でも怖いですよね?ヴォルと片眼鏡は、流血沙汰になりそうな程の空気を醸し出しているのですから。
出来れば私も早々に立ち去りたいです。周囲の好奇の視線が痛い程突き刺さります。
え~……、原因はやはり私ですか?
元々見目の良いヴォルと、冷たい印象を受ける片眼鏡も少しばかり年齢は上ですが見目だけは良いです。その二人の間に挟まれる状態の私は、端から見たら二人の男が取り合っている?的な感じなのでしょうか。
実際問題、全くこれっぽっちも違いますが。
「ヴォル?」
居たたまれなくなって、私は思わずヴォルに訴えかける視線を向けます。お願いですから、もう帰りましょうよ!
せっかくの美味しかった食事も既になくなりかけているデザートも、もう私の気持ちを立て直してくれません。勿体ないです。
「分かった。帰るぞ、メル」
驚きました。もしかしなくても今ので通じました?!
「は、はいっ」
「お待ちください」
ゆっくりと腰をあげたヴォルに続き、嬉々として立ち上がった私です。が、何故止めるのでしょうか。
私はソワソワしながらヴォルを見上げましたが、彼は片眼鏡に一瞥しただけで背を向けました。よ、良かったです。
ホッとした私ですが、後ろを振り向いた途端に硬直しました。会計をしているヴォルの向こう側で、片眼鏡が無言の圧力を送って来ます。こ、怖すぎます。
私は勢い良く視線を外し、自分の足元を見ました。ここで彼を真っ直ぐ見れる程、私の心臓は強くないのです。自然とヴォルの影に隠れるように移動しました。だって怖いじゃないですか、気分的に猛獣へ背中を向けるようなものですよ!
「行くぞ、メル」
ヴォルに声を掛けられながら背を押され、漸く変な緊張から解放されました。な、何かかなり疲れましたよ。
「悪かった」
宿屋に向かう途中で、ヴォルが静かに謝罪の言葉をつむぎます。
「ベンダーツがいるとは思わなかった」
そうですよね、普通はいるとは思いませんよ。しかも隣に席を取るなんて、明らかに嫌がらせです。
「ヴォルは悪くないですから。……でも出来れば、会いたくないです。あの人、怖いです」
何を考えているのか分かりませんが、あの片眼鏡の奥の冷たい目は油断のならない相手であると私の中で決定しました。
このまま私、無事にセントラルに到着出来るのでしょうか。ヴォルと一緒にいない時に来られたら、本当に私の心臓が持ちません。あの冷笑を浮かべたまま突き刺すような言葉に、はっきり言って耐えられる自信がないです。
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