異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字サイズ
小 中 大 特大
92 / 1,609

92 仮説

「アラタ、こうして二人で話すのは、なんだか久しぶりだな」

「そう言われると、そうだな。みんなで集まって話す事はあるけど、レイチェルと二人きりで話すのは、本当に久しぶりだよね」

車輪が石畳の上を回る振動を感じる。エルウィンもあまり大きく揺れないよう、ゆっくりと走らせているようだが、舗装されていない道はやはり小刻みに体に響くようだ。


「もうすっかり、こっちの世界に慣れたんじゃないか?」

「そうだな。他国の事はほとんど分からないけど、この国で普通に生活する分には、困らないくらいの知識は付いたつもりだよ。レイチェルと店の皆のおかげだ。ありがとう」

「それは何よりだ。ところでアラタ、聞いておきたい事があるんだが、ムラトシュウイチとはどういう人物だ?」


私がその名を口にすると、アラタは一瞬驚いたようだが、自分を納得させるように何度か小さく頷いた後、両手を組み、やや下を向きながら話し始めた。

「・・・うん。確かに話しておかないとな。村戸修一さんは、俺が日本にいた時に働いていた、ウイニングって店の店長だったんだ。俺は村戸さんに誘われて、ウイニングで働いてたんだ。ウイニングは俺の家の近所だったから、仕事もせずにブラブラしてた俺は、よく時間潰しに行ってたよ。ある日、店の前に求人の張り紙が出ててね・・・なんとなくそれを見てたら、村戸さんが声をかけてくれたんだ。毎日のように店に行ってたから、すっかり顔を覚えられててさ、興味を持ってくれてたんだって。それが村戸さんと働く事になったきっかけだね」


私は黙って続きを待った。アラタは当時を思い出しているのだろう。
懐かしそうに、言葉一つ一つを確かめるように、ゆっくりと話を続けた。


「俺が日本にいた時の最後の記憶・・・レイチェルには、最初の日に話したけど、俺は日本で一度死んでいると思うんだ」

「・・・そう言えば、頭を殴られて、そこからの記憶が無いって言ってたね?その時、死んだと思ったのかい?」

「あぁ、気が付くとあの空き家で目が覚めて、それからレイチェルが部屋に入って来たんだ。いまでも毎日思い出すよ。あの日の事は・・・答えはでない。でも、やっぱりあの日、俺は死んだんだと思う。そうとしか思えないんだ・・・・・・」

アラタはそこで言葉を区切ると、窓の外へ目を向けた。
街の大通りをゆっくり走る。馬車から見える景色はとても美しい。赤レンガの屋根が並ぶ統一感のある外装、赤、青、黄色の色とりどりの花が咲き誇り、時間を忘れて見入ってしまう。

だけど、今のアラタはその景色を見ているようで、どこかもっと遠くを見ているようだった。


「・・・マルゴンが、村戸さんの名前を知っているはずがないんだ。10年前なんてありえない。10年前なら、村戸さんはウイニングで働き始めたばかりだし、この世界にいるはずもない。だけど・・・計算がまるで合わないし、おかしな話なんだけど・・・マルゴンは嘘を付いてないと思うんだ。あれだけの執念は、中途半端な気持ちで出せるもんじゃないよ。だから、村戸さんはこの世界にいると思う・・・・・・」


「そうか・・・ムラトシュウイチも、アラタと同じ戦い方をするんだってね?ボクシングっていうんだっけ?」

「うん。ボクシングは村戸さんに教えてもらって、それからジム・・・あぁ、ボクシングを習う場所だよ。ジムに行って本格的に始めたんだ。階級ってのがあって、体の大きさをできるだけ合わせて、体格が近い者同士で戦うようにしてるんだ。村戸さんは、身長は俺より5~6cmは高いかな。筋肉がすごい付いててね、体格は俺よりずっといいな」

「そうなのか。ボクシングで勝負したら、アラタより強いのか?」

「階級が全然違うからね。村戸さんはミドル級でやっていたから。ライト級の俺じゃ話にならない」

アラタは軽く眉を寄せ、口元に少し笑みを浮かべながら顔の前で手を振った。
アラタの話し振りからすると、最初から勝てないと決めつけているように聞こえる。


「ミドル級とライト級ってのはどう違うんだ?」

「あ、ごめんごめん。えっとね、階級は体重で分けるんだけど、アマチュアの場合、ミドル級ってのは75キロまで、それでライト級は60キロまでなんだ。15キロも差がある。体格の違いが想像できるだろ?」

「・・・それだけで、アラタはムラトシュウイチに勝てないと思ってるのか?」

「え?」

私にはピンとこなかった。体重が15キロ違うから、その分パワーに差が出るのは分かる。
だが、なぜ勝てないと決めつけるのか理解できない。


「アラタ、キミはマルコスと戦っただろ?アイツは160cmにも満たない身長で、一度はキミを倒し、そのままカリウスとフェンテスを二人同時に相手して倒し、更に私と戦って、悔しいが私にも勝ったんだぞ?たかだか15キロの体重差が、勝敗を分ける決定的な要因になるのか?」

「・・・・・・」

私の指摘に、アラタは口を開きかけたが、何も言葉を出さなかった。ただ、ショックを受けているような表情を見ると、なにか認識を改めているのかもしれない。


「何も、キミの恩人であるムラトシュウイチと戦えという訳ではないが、やる前から勝てないと決めつけていては、その時点で勝負にならないぞ?それに、キミはこの国最強のマルコスに勝ったんだ。誰が相手でも勝つくらいの気持ちは持ってほしいね」

「いや・・・俺は実力で勝ったとは思ってないよ。マルゴンは俺と最後の戦いをする時には、かなり消耗していた。レイチェルが相当削ったんだろ?俺一人の力で勝ったとは思ってないよ」

自信無さ気に視線を落とすアラタの両頬を、私は挟むように両手で打ち付けた。
乾いた音が響く。

「いってぇッ!な、なにすんだよ!?」

「アラタ、キミは勝っただろ?キミだって少ない食事や、暴力を受けていたせいで最初から体力を落としてたじゃないか?周りの力を認めるのはいいんだ。だけど実力で勝ったと思ってないってのは駄目だ。城に行けば、マルコスに会えるかもしれない。だけど、そんな事言うんじゃないよ?アイツはいけ好かないけど、真っ向から命をかけて戦ったんだ。キミは勝者だ。ならば勝者として堂々とマルコスの前に立て。それが戦いへの礼儀だ」



「レイチェル・・・うん。そうだな・・・分かった」

アラタはどうも腰が低い。実績を誇ろうともしない。
真面目で良いヤツだけど、男としてもっと自分を立ててもいいんじゃないかと思う。
リカルドの挑発的な性格を少しわけてやりたいくらいだ。


「・・・最後の戦いの時、男らしかったんだからさ、もっと自信もちなよ」

アタシはアラタの肩を軽く叩くと、アラタは少し笑った。

こういうのは、本当は彼女のカチュアがやるべきなんだが、あの子はそういう性格じゃないからな。
ちょっとお節介かもしれないけど、口出しさせてもらおうか。

その後、聞いた話では、ムラトシュウイチがなぜこの世界に来ているのか、アラタなりの仮説はあった。

アラタはあまり口にしたくないように、小さく、だがハッキリとその言葉を口にした。


「あの男に・・・村戸さんも殺されたんだと思う」
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します 表紙

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ファンタジー 連載中 長編 R15
文字数 194,716
神様の不手際 表紙

神様の不手際

我が身を守り安心安全な生活を送る為の魔法やスキルを願い、治癒魔法、収納魔法、転移魔法、結界魔法とスキルを授かったが、魔力は25と少なく増やすことも無理。  授かったスキルは何か不明で、神父様曰く、授けの日は忙しいので時々手違いが起きる、それは神様の不手際だと言われてしまった。  無病息災家内安全を願って生きるつもりなのに、予定は未定であって決定ではなく、希望は常に打ち砕かれるが夢は諦めない!  結果として無敵な治癒魔法使いになってしまった。
ファンタジー 完結 長編 R15
文字数 314,750
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜 表紙

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】
ファンタジー 完結 長編 R15
文字数 149,424
 独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活 表紙

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ファンタジー 完結 長編 R15
文字数 730,673
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~ 表紙

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
ファンタジー 完結 長編 R15
文字数 528,478
転生貴族のスローライフ 表紙

転生貴族のスローライフ

現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ファンタジー 完結 長編 R15
文字数 117,349
異世界マイホーム 表紙

異世界マイホーム

『ホームって何なんだろうな』 仕事を辞めてリタイア生活を送ろうとしていたら、 突然モンスターが蔓延る森の中に連れてこられていた中年男性 千葉 祐磨。 手に入れていた謎のスキルを使ってモンスターを撃退したり、生活を快適にしたり。 何故か増えていく仲間たちと共に生き抜いていく。 嫌だ、のんびりぐうたら過ごしたい。 ※基本的に主人公視点のみで話は進んでいきます
ファンタジー 完結 長編
文字数 124,678
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る 表紙

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈
ファンタジー 連載中 長編
文字数 97,006