異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
235 / 1,560

【234 話し合い②】

しおりを挟む
ブロートン帝国は大陸一の軍事国家であり、火の精霊の加護を受けている。

その加護は、風の精霊、土の精霊、水の精霊とは一線を画き、ブロートン帝国が大陸一の軍事国家と示すものだった。


「火の加護を受けた装備をすると、少しだけど筋力が上がるわ。そして元々の体力が低い魔法使いには、その少しが大きいの。火の加護のおかげで、ブロートンの魔法使いは他国の魔法使いより機動力があるの。
師匠やウィッカーのレベルとは比べられないけれど、普通の魔法兵レベルだったら、苦戦は免れないでしょうね。
魔力で上回っていても、ブロートンの魔法兵はその速さを生かして、かく乱して来るから。
そして深紅の武器は剣でもナイフでも炎を宿し、深紅の防具は炎に対する耐性が強いのよ。効かないわけじゃないけど、普通の黒魔法使いは、火魔法以外での攻撃をするしかないし、火の魔道具もあまり効果は見込めないわ」


「筋力アップと、武器や防具、装備に属性が付く・・・つまり、二種類の加護があるって事?風の精霊の加護は魔力アップの一つだけなのよ?」

ジャニスさんの説明に、私は疑問を投げかける。
属性は違えど、同じ一国を加護を与える精霊に、なぜそのような違いがでるのだろう?

「・・・火の精霊は好戦的と言われているの。だからだと思う。戦うための協力って言うのかな・・・そういう力は惜しまず与えてるんじゃないかな?特に武器に火の属性が付くのは本当にやっかいなのよ。弓兵が放つ矢は、放たれた瞬間に火矢になるし、剣で斬りつけた物は燃え上がる。これなら、戦い方を知らない素人でも、ナイフ一本持つだけでそこそこの戦力になる。これが、ブロートンが大陸一の軍事国家と呼ばれる所以よ」






ブロートン帝国、大臣ジャフ・アラムと、カエストゥス国、大臣代理のエマヌエル・ロペスの話し合いは、すでに二時間に及んでいた。

ブロートン帝国からは、バッタに対しての賠償の要求も上がったが、ロペスは拒んだ。
ロペス自身、内心認めてはいたが、素直に要求を受けてブロートンに足元を見られるわけにはいかなかったからだ。
仮にバッタの件でなんらかの譲歩をするのであれば、ブロートンからディーロ兄弟の襲撃と、先日のゲーリーの件での責任を認めさせ、こちらが賠償を通してからである。



「ふぅ・・・そちらも、話しつかれたでしょう?少し、休憩を挟みませんか?部屋を用意してありますので、お寛ぎください」

「・・・そうですな。もう二時間・・・ここまで長くなるとは思いませんでしたよ。ではお言葉に甘えて少し休ませていただきましょうか」

そう話しジャフ・アラムが席を立つと、入り口に控えていたカエストゥス国の侍女が近づき、廊下へ促した。
ジャフ・アラムに続き、ブロートン帝国の7人の護衛が会議室を出て行く。
ロペスさんに絡んだ2メートル以上の長身の、セルヒオ・コバレフという男は部屋を出るまでずっと私達を睨み付けていた。

最後に、レイピアという武器だろう。
細身で先端の鋭く尖った深紅の片手剣を腰に携え、深紅のマントを羽織った女性が部屋を出たところで立ち止まると、くるりと振り返り会議室内に戻り、一直線に私に向かい歩き進んで来た。



「え・・・あの、なにか?」

「・・・ふ~ん、どういう事だか分からないけど、ずいぶん変わった人なのかな?あなた・・・名前教えてくれない?」


身長は170cm程だろう。私と同じ目線だ。
切れ長の瞳の色は血のように赤く、腰まである長い髪も瞳の色と同じ赤だった。
気の強さを表すような、シュッとしたシャープな顎のライン、その肌は瞳や髪の色を引き立てるかのように、雪のように白かった。

胸当て、鉄鋼、膝当て、脛当ても全て深紅に染められている。
素早さ、動きやすさを重視しているのか、お腹や腰の周りには甲冑が当てられていなかった。


「・・・新庄・・・弥生、です」

「シンジョウ・・・ヤヨイ、ね?うん・・・シンジョウ、ヤヨイか・・・覚えた」

形の良い赤い唇が私の名前を二度口にする。まるでその名前が極上の料理かのように、女性は嬉しそうに微笑んだ。

だが、その目は友好的なそれではなく、まるで観察するかのように好奇に満ち、冷たく妖しい光を宿していた。


「私はセシリア。 セシリア・シールズ。ブロートン帝国、第一師団長よ。覚えておいて、あなたとはまた会うと思う」


そう告げると、セシリアはその身をひるがえし、今度こそ振り返らずに部屋を出て行った。




「・・・ヤヨイさん?・・・ヤヨイさん!?ちょっと、大丈夫!?すごい汗だよ!」


セシリア・シールズの姿が見えなくなると、ジャニスさんが私の肩を掴み、驚きと心配の混じった表情を見せる。


「・・・え?・・・汗?・・・・・」

ジャニスさんの言葉に、額に手を当てると汗で手が湿った。
四月の終わりと言っても、今日はそこまで暑くもなく、気温は丁度良く心地よい。
こんなに汗をかく事は無いはずだ・・・・・

気が付くと、胸元や背中にも汗をかいたようで気持ちが悪い・・・一体どうして・・・・・


「ヤヨイ、少し休んだ方がいい・・・多分、セシリアの気に当てられたんだろう・・・・・無理もない・・・噂には聞いていたが、あれ程とはな」

リンダさんが、私の背中に手を回し、イスを引いて私を座らせた。

「ヤヨイさん、大丈夫ですか?」

ウィッカーさんがグラスに水を注ぎ、私に手渡す。

「・・・えぇ・・・大丈夫、よ・・・・・でも、私、なんでこんなに・・・・・」

水を一口飲み、一つ大きく息を吐く。
緊張が解けたのだろう。どっと疲れが押し寄せて来る。眩暈がして思わず両手で頭を支えた。

「ヤヨイさん!大丈夫!?リン姉さん、あの女・・・一体ヤヨイさんに何をしたの!?」

ジャニスさんがしゃがんで、私の体を支えるように手を回した。


「・・・私も、噂でしか聞いた事はないんだけど・・・あの女、セシリア・シールズは、特に強い火の加護を受けているようで、その目は相手に熱を帯びた気を当てる事ができるらしい」

「・・・じゃあ、ヤヨイさんは、今あの女と話した時に、その気でやられたって事?」

「あぁ、そうとしか考えられない。ヤヨイの汗が物語っている。短い時間で良かった・・・私も見るのは初めてだが・・・まさか本当に視線だけで、これほど消耗させるなんて・・・・・」


「・・・許せない・・・あの女、戻ってきたらただじゃ・・・ヤヨイさん?」

「大丈夫よ・・・私は大丈夫・・・ジャニスさん、ありがとう。でも、抑えて・・・ロペスさんがおっしゃってたでしょ?ここは話し合いの場よ・・・・・手を出したら負けなの・・・だから、ね?」

感情に任せて立ち上がったジャニスさんの袖を引っ張り、私は笑顔を見せた。

まだ動悸が早く、呼吸も落ち着かないけれど、ここで怒ったら負けだ。

私は力も無く、この場にはふさわしくない。
だけど、自分が何をすべきかは分かっているつもりだ。


「ロペスさん・・・私、大丈夫です・・・・・ここで休んで、話し合いが再会する時には、また護衛としてこの場に立ちます」

「・・・うむ。そうしてくれると助かる」

だって、話し合いが再会した時、私がその場にいなかったら、カエストゥスの護衛が甘くみられてしまう。弱みを見せちゃ駄目なんだ。

「ロペスさん!でも・・・」

「ジャニス、落ち着くんじゃ・・・ロペスが怒っておらんと思うか?ロペスが胸を痛めておらんと思うのか?」

なおも食い下がろうとするジャニスさんに、ブレンダン様は遮るように少し強く言葉を発した。

「あっ・・・」

ジャニスさんの視線の先のロペスさんは、目を瞑り、イスに腰をかけ、テーブルの上で拳を握っていた。

ただ、その体からは微かに殺気をはらんだ魔力がにじみ出し、ロペスさんの心の内を表しているかのようだった。


「・・・ジャニス、俺もな・・・ヤヨイさんを、娘を傷つけられて、はらわたが煮えくり返っているんだ。だが、俺達の頭はロペスだ。ロペスが耐えているんだ・・・お前もここは耐えてくれ」

ロビンさんは、少し険しい顔をしているけれど、感情を押し殺しているかのように、悔しさをにじませつつも冷静な言葉をジャニスさんにかけた。


「ヤヨイさん、すまない。まさかあんな攻撃を仕掛けてくるとは予想もできなかった。だが、次は無い。必ず俺が・・・俺が義父ちちとしてあなたを絶対に護る!」

ロビンさんは、私の隣に来てかがむと、私の手を握り、力強い言葉をかけてくれた。


モニカさんも、ロビンさんも・・・本当に私にはもったいないくらいの・・・・・

パトリックさんとまだ結婚していないけれど、もう呼んでもいいよね・・・・・



「ありがとう・・・・・お義父さん・・・・・」



少し目頭が熱くなった。


ロビンさんは、目を開いて唇を少し震わせている。
顔を下に向け、少し肩を震わせた後、黙ったまま何度か頷いて、私に顔を見せないようにして立ち上がり、右手で顔を隠すように押さえながら、窓際に歩いて行った。


「・・・ロビンさん、よっぽど嬉しかったんだね」

ジャニスさんが私の隣にしゃがみ、窓際のロビンさんに目を向けながら囁いた。


「・・・・・うん。私もロビンさんの娘になれて嬉しいの・・・ねぇ、欲張りかもしれないけど、結婚してもずっとジャニスさんのお姉ちゃんでいいよね?」


「・・・・・もぅ・・・私まで泣かせないでよ・・・ヤヨイ、お姉ちゃん・・・・・」



ジャニスさんが私を抱きしめられる。
胸に感じる温もりは、私がこの世界で受けた愛情、優しさ、絆と呼ぶものだろう。

私はこの世界で本当に沢山のものをもらった。

どれだけ感謝してもしきれない。

だから、私は立ち向かわなければならない・・・・・


私はあの女・・・セシリア・シールズと戦う事になるだろう。
あの女は私の中の弥生を捉えていた。

あの女は危険だ・・・・・いくつか言葉を交わしただけの、ほんの短い間だったけれど、あの女の底冷えするような目は忘れる事ができない。


私が護る・・・絶対に・・・みんなを、孤児院を・・・・・

ジャニスさん・・・この温もりをくれたあなたを、私は絶対に護ってみせる。

私は、私自身が強くならなければと心に決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...