異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
350 / 1,560

【349 気付け】

しおりを挟む
「・・・チッ、おい、なんだ?もう死んだのか?」

つまらなそうに息を付き、顔をしかめる。
もっと痛ぶってから殺すつもりだったが、全く反応しなくなったエロールを見て、苛立ったように舌打ちをする。

肩の角に串刺しになったエロールを見上げる。
ぐったりと、と言うより全く力が無くなったように見える。四肢もだらり投げ出され、顔は見えないが、頭も無防備にぶら下がっている。

「・・・つまらん男だ」

ルシアンは吐き捨てるようにそう口にすると、体を振ってエロールを放り投げた。

肩の角から体が抜けると、エロールはそのまま地面に叩きつけられ、勢いのまま体が転がされていく。

やがて動きを止めたエロールを、ルシアンは用心深く観察した。


こいつ・・・本当に死んでいるのか?


ここまで見る限り、生きているようには見えない。
腹に穴を開けられて、微動だにせず死んだふりなど不可能だろう。

しかも放り投げられたのだ、気力で痛みに耐えても、血を吐き出したり、咳き込んだり、意思の力ではどうにもならない体の反応というものがある。

どう見ても死んでいる。



しかしルシアンはこの男、エロールに対して、この状態でも安心しきる事ができずにいた。

それはここまで戦って、エロールという男のしたたかさを、感じ取っていたからかもしれない。

実力差を埋めるために、ハッタリや挑発を当たり前のように使う。そしてそれは口先だけではなく、実力に裏打ちされた確かなもの。勝てる確率を少しでも上げるためのものだった。


こいつは切れ者だ。
俺には想像もつかない方法で、死んだふりをしているのかもしれない。

ルシアンは屈んで石を拾うと、おもむろにエロールに向かって投げつけた。

エロールの胸にぶつかり、骨を砕く鈍り音がかすかに聞こえる。

衝撃で体が少しだけ跳ねるが、それきり動く様子はない。

生死の検証としては十分だと思えるが、それでもルシアンは納得できないと言うように、
腕を組み少しだけ考える様子を見せる。


次にルシアンは指先をエロールに向けて突き出した。
深紅の鎧から発した炎を指先に集めると、エロールに向かって小さな火の玉を撃ちこんだ。

火の玉はエロールの胴体にあたる。そのままエロールの腹のあたりで火がくすぶるが、それでもエロールは全く反応せず、そのまま横たわっている。


「・・・ふむ、骨を砕き、体を焼いても微動だにしないか・・・どうやら本当に死んでいるようだな。だが、俺のこのうっぷんを晴らすには、やはり直接その顔を踏み潰さねばならんな」


ルシアンはゆっくりと歩を進める。
ダメージを受けた左足は引きずっているが、痛みは顔に出していない。

念入りに生死を確かめた事で警戒は解いていた。

そしてエロールの前に立つと、ルシアンは右足を上げる。その顔には歪んだ笑みが浮かんでいた。

部下の前で恥をかかせた男の顔を踏み潰す。
相手の尊厳を踏みにじる事で自分のプライドを取り戻す。ルシアンにとって最高の瞬間だった。

「脳みそをぶちまけてカラスの餌にでもなるがいい!」




この時、直接止めをさそうとせず、石で頭を砕いていれば・・・
体が燃え尽きるまで火の玉を撃ち込んでいれば、ルシアンの勝利だった。


胴体を串刺しにされた時、エロールは反撃ではなく、生き残るために全魔力を使う事を選択した。

以前、ジャニスから聞いた事がある。
森で戦ったジャーゴル・ディーロという魔法使いの殺し屋から、数百発の爆裂弾を受け続けた時、ジャニスは自分自身にヒールをかけ続け、その猛攻を耐えきったという。

エロールは腹に開けられた穴にヒールをかけ続けた。
角で貫かれている事から、穴を塞ぐことはできない。そのため継続した痛みはあるが、痛みを和らげ出血を抑える事はできた。

しかし、長くはもたない。
穴を塞がない限り血は流れ続け、いずれは死に至る。

そしてエロールの選んだ答えは、死んだふりだった。

ルシアンに見えないようにできるだけ前のめりに体を折り、可能な限り力を抜く。
ヒールをかけ続けても激痛に体がこわばりそうになるが、唇を噛みしめできる限り脱力し死を演出する。

しかし、こみ上げてくるものはどうしようもなかった。
血を吐き散らす度に、ルシアンは苦しむエロールを見て恍惚とした表情を浮かべ、嬉々として痛ぶる事に力が入る。


やはり無理・・・か・・・
エロールの意識は徐々に薄れていった。


幸運だった事は、意識を失ってもエロールの頭の片隅で、絶対に生き抜いてい見せるという強い意思が残っていた事。

無意識化でエロールの生存本能がヒールをかけ続けた事。
仮死状態になったエロールを見て、ルシアンの疑心暗鬼を解けた事。

いくつもの幸運が重なった。


しかし、放り投げられても、仮死状態からすぐに目を覚ます事はできなかった。

ルシアンの勝利はこの時点でほぼ確定していた。

エロールの幸運は続く、それはルシアンがエロールに対して必要以上に警戒心を持った事だった。

先制攻撃を止められ反撃の一打を受け、ボルケーノまで止められた。
およそ白魔法使いにできる芸当ではなかった。その事がルシアンを用心深くさせていた。


最大の幸運は、ルシアンの投げた石だった。

胸に当たり肋骨を砕く程の痛みは、最高の気付けになった。


そして今

ルシアンがエロールの顔を踏みつぶそうと足を上げたその時

エロールの両目は開かれた





「なっ!?んだとぉぉぉぉーッツ!?」

エロールの顔を踏みつぶすはずだったその右足は、青く輝くマフラーによって止められていた。
信じられなかった。

間違いなく死んでいた。そう確信を持って近づいた。
だが、この男は倒れながらも、右手に握ったマフラーで結界を張り、自分の踏みつけを防いでいる。
それは眼前で起こっている疑いようもない事実だった。


予想だにできない展開。
そしてエロールの顔を踏みつぶすはずが、中途半端な位置で右足を止められた事、左足の負傷と相まって、ルシアンは体のバランスを崩し、ぐらりと後ろによろけてしまう。


体勢を崩したほんの一瞬だったがルシアンは確かに見た。

横たわったまま顔だけルシアンに向け、ニヤリと不敵に笑うエロールを。

ルシアンの足がマフラーから浮いて離れると、エロールはマフラーを破壊の魔力に変換し、そのまま右手を振り抜いた。


まさかここで反撃を受けるなど夢にも思わないルシアンの無防備な足に、エロールの渾身の一撃がぶつけられ、ルシアンの右足は膝から下が吹き飛ばされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

転生したら最強の神具を持っていた!~無自覚英雄は今日ものんびり街を救う~

にゃ-さん
ファンタジー
ブラック企業で過労死した青年・タクトが転生した先は、魔法と剣が息づく異世界。 神から与えられた“壊れ性能”の神具を片手に、本人は「平穏に暮らしたい」と願うが、なぜか行く先々でトラブルと美女が寄ってくる。 魔物を一撃で倒し、王族を救い、知らぬ間に英雄扱いされるタクト。 そして、彼を見下していた貴族や勇者たちが次々と“ざまぁ”されていく…。 無自覚最強系×コミカルな日常×ほのぼのハーレム。テンプレの中に熱さと癒しを込めた異世界活劇、ここに開幕!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜

namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。 かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。 無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。 前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。 アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。 「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」 家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。 立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。 これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。

処理中です...