異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
395 / 1,557

【394 樹々に囲まれた小屋の中で ④】

しおりを挟む
ブレンダンはカエストゥスで生まれ育ち70年である。
首都の近辺など庭のようなものだった。

当然、今自分がいる場所もおおよそ分かってはいる。
ゆるかやに流れる川、そして顔を上げると少し遠くに見える首都バンテージのエンスウィル城。

目に映るエンスウィル城の大きさからして、おそらく首都から歩きで30~40分程度の距離だろうと検討も付いた。

川沿いに歩き続ければ問題なく着く。
・・・そのはずだった。



「・・・考えてみれば、ワシはこんな小屋初めて見るぞ。かなり年期が入っているようじゃが、いったいいつ誰が作ったんじゃ?」

森を歩き続け、出発地点の小屋に戻ってしまったブレンダンとクラレッサは、まさかと思いながら小屋の中を覗き込んだ。
自分達は小屋を出てから、川沿いを真っ直ぐ歩き続けた。
戻って来るはずが無いのだ。
似たような小屋があっただけだと・・・


しかし出発前に魚を食べた時の焚火の跡もあり、否が応でもここが出発した時の小屋だという現実を突きつけられてしまう。


「・・・おじいさん、どういう事でしょうか?」

「・・・分からん。ワシらは真っ直ぐに川沿いを歩いた。一周して戻ってくるなんてありえんぞ」

一先ず小屋に入って休もう、その言葉にクラレッサは小さく、はい、とだけ返事をして中へ足を踏み入れた。



水を飲んで腰を下ろし体を休める。
クラレッサは何も言わず、膝を抱えたまま黙ってブレンダンの隣に座っている。
何が起きているのか分からず、不安になっている事が伝わって来る。

「・・・クラレッサ、もう一度歩いてみるか?」

ブレンダンの問いかけに、クラレッサはすぐには反応を見せなかったが、少しの沈黙の後、意を決したうようにハッキリと頷いた。

「・・・はい。もう一度歩いてみます。今度は周りをよく見て歩きます」

そうじゃな。ブレンダンはそう一言言葉を返すと、ローブについた砂や誇りを払い立ち上がった。

「ここでじっとしてても何も変わらんからな。ワシもなにがおかしいか注意しながら歩くとしよう」


小屋を出るとだいぶ陽が傾いていた。
夕焼けが樹々の枝葉を赤く染め始めている。

「・・・陽は持ってあと一時間というところかの。冬は暗くなるのが早くてこういう時は困るな」

「そうですね。急ぎましょう」

うむ、とブレンダンが頷くと、二人はまた川の流れに沿って並んで歩き出した。

焦りや不安からか、やや足速ではある。
だが、なにか異常があれば見落とさないように、周囲に気を配る事は忘れない。

ブレンダンはクラレッサの緊張をほぐすように、足元への注意や、歩くペースなどに織り交ぜて、それとなく声をかけた。
それに対しクラレッサは、大丈夫です。と言葉少なに返事をするだけだった。
表情が硬く、やはり緊張しているのは見て取れる。



「・・・クラレッサ」

「・・・はい、やっぱりここは一度通ってます」

10分、15分程歩いただろうか。
二人は足を止めて辺りを見回した。

「・・・ふむ、ここは確かに一度通った場所じゃ。そこの大岩は見間違いようがない」

ブレンダンが川沿いの大岩を指差した。
大人二人は座れそうな平たい岩で、覚えやすい目印と言える。

「はい。私もこの岩を目印にしました。それともう一つ、あそこの樹の根が盛り上がっていて、兎くらいならくぐれそうだと思ってあれも目印にしてました。二つも同じ特徴があれば、これは間違いないでしょう」

「よく見とるのう・・・して、どうじゃ?なにか分かるか?」

「・・・いえ、私とおじいさんがこの森に捕らわれてしまったのは理解できましたが、なぜこのようになってしまったのかは分かりません」

首を横に振るクラレッサ。ブレンダンもまた、原因が分からず首をひねるだけだった。

陽が沈むギリギリまで周囲を調べて回ったが、結局何も見つける事ができず二人はその場を後にした。




「結局、ここに戻ってしまいましたね」

半壊した小屋を前にしてクラレッサとブレンダンは立ち止まっていた。

クラレッサは表情が読めず、ただぼんやりと小屋を眺めているようにも見える。
ブレンダンは腕を組み、眉間にシワを寄せている事から、今後について頭を悩ませているようだ。

「うむ・・・じゃが、これでハッキリしたな。川沿いを真っすぐ歩けばここに戻って来る。時間は感覚的なものじゃが、30分前後というところじゃろう。」


原因は分からないが、自分達は今この森に捕らわれている。
これがどういう現象なのかは分からないが、ただ歩くだけではこの森から出られそうにない。


「・・・おじいさん、暗くなりました。今日のところはこの小屋で休みませんか?」

「・・・今日のところは、そうするしかなさそうじゃな」

先に小屋に入ったクラレッサの後に続いて、ブレンダンも小屋の出入口をくぐる。

開けたままでは風が入ると思い、玄関の引き戸を閉めようと手をかけ動かそうとするが、
ガタガタと揺れてスムーズには動かせなかった。建付けの悪さというよりは、もはや壊れているのだろう。
それでも少し強く引くと、なんとか玄関戸は閉められた。






「・・・暖かいですね」

「そうじゃな。クラレッサが火を起こしてくれたからじゃよ。ありがとう」

食欲が沸かない事もあったが、暗くなり川の魚が見えないため、夜は水だけ飲んで何も食べていなかった。

二人は隣同士に座り、目の前で揺れる火にあたりながら、これからの事を考えていた。
本来であればすでに首都に入っていたはずだった。
あれから戦いはどうなったのだろう?城が見えた事から、首都はまだ被害を受けていないようだ。
セシリアもさすがに単身で首都に乗り込む事はしなかったのだろう。
自分達が逃げた後、戦力補給に動き時間がかかっているのかもしれない。

思わぬ形で足を止める事になり、そして脱出の方法がまるで分からない。
こうしている間にも、戦いの状況はどんどん変わっていく。
ブレンダン握り合わせた両手は、はやる気持ちを表すように、赤くなるほど強く力が入っていた。


「・・・おじいさん・・・あれは、なんでしょうか?」

つい、考え込んでしまっていると、クラレッサがブレンダンの袖を掴んだ。

「ん?あぁ、どうしたんじゃ?」

そこでクラレッサが指差す先に目を向ける。
ひび割れた窓ガラスは、一部が欠けていて小屋の外を見る事ができる。


窓ガラスの先でブレンダンの目に映ったものは、暗闇の中、列を作り歩く無数の人影だった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...