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434 落雷
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外で見上げた外観から想像していたよりも、部屋の中はずいぶんと広さを感じるものだった。
天井も高く、自分の身長をベースに推察して、5メートルはあるのではないだろうか。
石造りの壁には一定の感覚で顔が入りそうなくらいの穴が空いており、この塔が見張りに使われているという僕の推理を裏付けするように見えた。
部屋の奥には一脚のイスとテーブルがあるだけで、他には何もなかった。
イスとテーブル以外に何も無いこの殺風景な部屋が、より部屋を広く見えるようにしているのだろう。
そしてそのイスに座り、テーブルに肘を着いてこの部屋への入室者、つまり僕達へ目を向けているこの男こそ、四勇士シャクール・バルデスなのだろう。
後ろに流した銀色の髪と、僕達を品定めするかのように見ている青い目が印象的だった。
「バルデス様。お客様をお連れしました。街のリサイクルショップ、レイジェスの店員で、ジーン・ハワード様。ユーリ・ロサリオ様です」
部屋へ僕らを通し、僕の隣に立っていた侍女のサリーが、奥のイスに座っているバルデスに向かい、僕達を紹介する。
名前は部屋に入る前に、この侍女に聞かれ答えた。
何でも名前も分からない人物を、主人に通す訳にはいかないとの理屈だった。
侍女としては当然だと思うが、どうにも調子を狂わされる。
「・・・ジーン、なにこれ?なんでアタシ達、お客様扱いされてるわけ?」
「・・・いや、僕にもなにがなんだか・・・」
予想だにしない事態に、僕とユーリが困惑していると、奥でイスに座っているバルデスが右肘をテーブルに着いたまま指先を天井に向けた。
「・・・例えば今ここで、落雷がこの塔を直撃したとしよう。天からの奇襲に貴様らはどう対応する?」
良く通る声だった。
この広い部屋でバルデスの声は、僕の耳にその言葉を一言一句正確に届けた。
しかし、何を言っているのか分からない。
なぜ今ここでそんな質問をしてくる?僕達がここにお前を倒しに来た敵だと言う事くらい、分かっているだろう?
ユーリもバルデスの質問の意味が分からず、眉を潜めて首を傾げている。
「・・・答えられないか?ならばしかたない」
バルデスは僕達に興味を無くしたように軽い溜息を付くと、天井に向けていた右手人差し指を、下へと振り下ろした。
それと同時に頭上に強い魔力を感じ、僕とユーリが顔を上げた次の瞬間、耳をつんざく凄まじい轟音と共に天井が爆発し、天から強烈なエネルギーを持った光が僕とユーリを撃ち抜いた。
「答えられないという事は防ぐすべを知らないという事。死ぬしかないな」
テーブルに肘を着いたまま、バルデスはゆっくり右手を頬に当てる。
その青い瞳は退屈そうに、今しがた自分の放った雷に焼かれる二人を眺めていた。
天井に開いた穴から入る冷たい風が、バルデスの銀色の髪を撫でる。
だが、肌寒さなど微塵も感じていないように眉一つ動かさず、バルデスは表情を変える事は無かった。
「・・・サリー、ケガは無かったか?」
いつの間にかサリーは、ジーンとユーリから距離を取っていた。
雷に巻き込まれる事もなく、用を命じられればすぐにでも行動に移せるように、バルデスから適度な距離を持って背筋を伸ばし立っていた。
「はい。お気遣いまことにありがとうございます。私はご覧の通り無傷です。天井はすぐに修理の手配を致します」
「よし、任せたぞ。それにしてもこの10年で初めての客だと言うのに、あっけなかった・・・!?」
僅かに風を切る音が耳に届き、バルデスは顔を左に振った。
「バルデス様!」
「・・・これは・・・?」
バルデスの右の頬には、まるで鋭利な刃物で斬られたような一筋の斬り傷が浮かび、赤い血が滴り落ちる。
「・・・危なかったよ。結界が間に合うかどうか、ギリギリのタイミングだった」
魔力の放出により雷による炎を搔き消すと、僕とユーリは無傷で姿を見せた。
「どうだい?僕らはキミと戦う資格くらいはある。そう認めてもいいんじゃないかな?ところでほっぺの赤い化粧は斬新だね?とても似合ってるよ」
ジーンはバルデスに指を突き付けると、かかって来いと言うように自分に向けてクイっと曲げて見せた。
「・・・ほう、これはこれは・・・ぜひともお礼をしなければならないな」
バルデスはイスから立ち上がると、血の滴る右の頬を右手の甲で拭う。
ジーンの言葉に嬉しそうに返すその目には、自分を傷つけた男に対する怒りと興味が交じり合って見えた。
天井も高く、自分の身長をベースに推察して、5メートルはあるのではないだろうか。
石造りの壁には一定の感覚で顔が入りそうなくらいの穴が空いており、この塔が見張りに使われているという僕の推理を裏付けするように見えた。
部屋の奥には一脚のイスとテーブルがあるだけで、他には何もなかった。
イスとテーブル以外に何も無いこの殺風景な部屋が、より部屋を広く見えるようにしているのだろう。
そしてそのイスに座り、テーブルに肘を着いてこの部屋への入室者、つまり僕達へ目を向けているこの男こそ、四勇士シャクール・バルデスなのだろう。
後ろに流した銀色の髪と、僕達を品定めするかのように見ている青い目が印象的だった。
「バルデス様。お客様をお連れしました。街のリサイクルショップ、レイジェスの店員で、ジーン・ハワード様。ユーリ・ロサリオ様です」
部屋へ僕らを通し、僕の隣に立っていた侍女のサリーが、奥のイスに座っているバルデスに向かい、僕達を紹介する。
名前は部屋に入る前に、この侍女に聞かれ答えた。
何でも名前も分からない人物を、主人に通す訳にはいかないとの理屈だった。
侍女としては当然だと思うが、どうにも調子を狂わされる。
「・・・ジーン、なにこれ?なんでアタシ達、お客様扱いされてるわけ?」
「・・・いや、僕にもなにがなんだか・・・」
予想だにしない事態に、僕とユーリが困惑していると、奥でイスに座っているバルデスが右肘をテーブルに着いたまま指先を天井に向けた。
「・・・例えば今ここで、落雷がこの塔を直撃したとしよう。天からの奇襲に貴様らはどう対応する?」
良く通る声だった。
この広い部屋でバルデスの声は、僕の耳にその言葉を一言一句正確に届けた。
しかし、何を言っているのか分からない。
なぜ今ここでそんな質問をしてくる?僕達がここにお前を倒しに来た敵だと言う事くらい、分かっているだろう?
ユーリもバルデスの質問の意味が分からず、眉を潜めて首を傾げている。
「・・・答えられないか?ならばしかたない」
バルデスは僕達に興味を無くしたように軽い溜息を付くと、天井に向けていた右手人差し指を、下へと振り下ろした。
それと同時に頭上に強い魔力を感じ、僕とユーリが顔を上げた次の瞬間、耳をつんざく凄まじい轟音と共に天井が爆発し、天から強烈なエネルギーを持った光が僕とユーリを撃ち抜いた。
「答えられないという事は防ぐすべを知らないという事。死ぬしかないな」
テーブルに肘を着いたまま、バルデスはゆっくり右手を頬に当てる。
その青い瞳は退屈そうに、今しがた自分の放った雷に焼かれる二人を眺めていた。
天井に開いた穴から入る冷たい風が、バルデスの銀色の髪を撫でる。
だが、肌寒さなど微塵も感じていないように眉一つ動かさず、バルデスは表情を変える事は無かった。
「・・・サリー、ケガは無かったか?」
いつの間にかサリーは、ジーンとユーリから距離を取っていた。
雷に巻き込まれる事もなく、用を命じられればすぐにでも行動に移せるように、バルデスから適度な距離を持って背筋を伸ばし立っていた。
「はい。お気遣いまことにありがとうございます。私はご覧の通り無傷です。天井はすぐに修理の手配を致します」
「よし、任せたぞ。それにしてもこの10年で初めての客だと言うのに、あっけなかった・・・!?」
僅かに風を切る音が耳に届き、バルデスは顔を左に振った。
「バルデス様!」
「・・・これは・・・?」
バルデスの右の頬には、まるで鋭利な刃物で斬られたような一筋の斬り傷が浮かび、赤い血が滴り落ちる。
「・・・危なかったよ。結界が間に合うかどうか、ギリギリのタイミングだった」
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「どうだい?僕らはキミと戦う資格くらいはある。そう認めてもいいんじゃないかな?ところでほっぺの赤い化粧は斬新だね?とても似合ってるよ」
ジーンはバルデスに指を突き付けると、かかって来いと言うように自分に向けてクイっと曲げて見せた。
「・・・ほう、これはこれは・・・ぜひともお礼をしなければならないな」
バルデスはイスから立ち上がると、血の滴る右の頬を右手の甲で拭う。
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