異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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722 巡る季節

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この国は日本と違って初売りという習慣はないようだ。

1月5日から年明けの営業が始まったが、仕事内容はいつもと変わらない。
一週間近く店を閉めていたから、1月5日はかなりの客入りだった。
しかしレイジェスは福袋も作らないし、年明けだからといって何かイベントをやるわけでもない。

必要な人に必要な物を売る。買い取りはできるだけキャンセルを無くす。他に必要としている人がいるかもしれないから。これが店長の営業方針である。

派手な事や変わった事はやらないが、いつも誠実で堅実な営業をしているため、レイジェスの信用は高く固定客が多い。

そして買い取りが驚くくらい多かった、来る客の半分は買い取りだったと思う。
ジャレットさん曰く、どこも大掃除で出てきた不要品を持ってきているとの事だった。
一日の売り上げよりも、買い取りによる支出が多い日もあり、各部門のコーナーに買い取った商品が山のように積まれたりもしたからよっぽどだ。

「福袋ねぇ、アラやんのいたニホンってのは面白い事考えるな。否定はしねぇ、良いアイディアだと思うぜ。けどレイジェスには合わないやり方だな。それってつまり不要品の詰め合わせだろ?その場のノリで買ってもよ、家に帰って冷静になったら、やっぱりいらねってなったりするんじゃねぇのか?そんでまたうちに買い取りで持ち込まれたら馬鹿らしいだろ?お客も内心不満には思うはずだぜ」

地域に根を張って営業しているレイジェスは、常に一人一人のお客の事を考えて商売をしている。
だからこそ、売れれば良いという販売のしかたはできない。

文化の違いもあるだろうが、レイジェスはこのやり方で信頼を築いてきた。
俺は日本でのやり方の違い、価値観の違いをあらためて実感した。




1月10日、俺とカチュアはモロニー・スタイルを訪れた。
カチュアのウェディングドレスの採寸のためだ。
店主のジャック・モロニーさんには、俺もスーツを作ってもらった事がある。
カチュアも普段からここで服を買っているから、すっかり顔馴染みだ。

ジャックさんは、海の糸を見て驚いていた。
海の糸自体が希少な素材だが、質がとても良かったらしい。
この繊維を使える事は、専門家として腕が鳴るようだ。

「最高のドレスをご用意させていただきますね」

ジャックさんは満面の笑顔で、カチュアにそう話した。

すでに出来上がった反物と違い、今回は糸から生地を織っていくため、少し時間を欲しいと言われた。
最高のドレスにするため、ジャックさんが一から全て仕上げるというのだ。

カチュアもとても喜んでいた。
最初に海の糸を見せた時は、これがドレスになるんだと驚いていたし、それに俺がドレスの事を考えていた事が嬉しかったとも言っていた。
今回は専門家のジャックさんが、仕上がりのイメージイラストを描いて見せた事で、具体的に想像できたのが大きかったようだ。

カチュアは、これを私が着るんだ。と言っていつまでもイラストを離さないでいた。
本当にカチュアは喜んでいた。とびきりの笑顔を見せてくれるカチュアに、俺も胸が温かくなった。


2月になると、ジャレットさんとシルヴィアさんがロンズデールに旅行に行った。
交際を始めた頃から計画はしていたようだ。ロンズデールに行った俺とレイチェルの話しも聞いて、アラルコン商会系列の宿に泊まり、温泉を堪能してきたようだ。

すぐに結婚は考えず、自分達のペースでのんびり付き合っていくという二人は、自分達の人生を楽しんでいるように見える。

まだまだ雪が残っているため、アラルコン商会のクインズベリー進出は時間がかかっているが、すでに立地は決まっていて、現地で職人も雇い着工は始まった。夏前には開店できる見込みだ。




月日は流れる。

3月になり、正式にクインズベリーとロンズデールの同盟が結ばれた。
それと同時にロンズデール第一王女ファビアナと、クインズベリー国ビリージョーの婚約が発表された。

ビリージョーは新興貴族であり子爵位と、王女の婚約者としてはどうしても見劣りしてしまうが、ファビアナが王位継承権を放棄し、今後のロンズデールの政治に一切の口出しをしない事を条件に認められた。これは国王であり父リゴベルトの命令であったが、ファビアナにとっては父の優しさを感じる処遇だった。

国王リゴベルトは、ファビアナを正式に子として国民に紹介したが、それはファビアナにとって望んでいない結果を生んだ。
元々妾の子として、平民と変わらぬ生活を送って来たファビアナにとって、突然王女としての振る舞いを求められても、それは苦痛なだけであった。

そして毎日申し込まれる縁談にも頭を悩ませていた。
上級貴族からの手紙に、どう返事を書けばいいのかと、連日机の前で頭を抱えるファビアナを見て、リゴベルトはファビアナを紹介した事は早計だったかと、胸を痛めていた。
そんなある日、クリンズベリー国女王、アンリエールから写しの鏡で連絡が入ったのだ。

内容は同盟の承諾と、王女ファビアナとビリージョーの婚約の提案だった。
ビリージョーの事はファビアナから聞いてはいた。
しかし身分の差があり過ぎるため承諾できないでいたが、聞けばこの婚約のために子爵位を与え、女王が後ろ盾になると言うのだ。
今後の活躍にもよるが、将来的には伯爵も見込めるだろう。なによりファビアナ本人が望んでいるのだ。

表向きは他国へ嫁ぐためという名目で王位継承権を剥奪したが、本心はファビアナへの干渉を避けるためである。
それがファビアナにも分かっているため、親子の絆に溝ができる事はなかった。

結婚はまだ先の話しではある。ビリージョーとファビアナもあの日以来再会はしていない。
だが、定期的に届く手紙には、お互いがお互いを思いやる温かい文で満たされていた。


そして4月、雪も溶けて温かい陽差しが体に心地よい春の日。

アラタとカチュアは結婚式を迎えた。
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