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【881 カエストゥス 対 帝国 ⑮ 防戦】
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「・・・私が思っていたより、ずっと優秀な魔法使いだったようだな」
目の前で倒れている男に向け、アンソニーは静かに語りかけた。
火の精霊の力で火柱を上げ、全身を焼き尽くしたはずだった。
しかし、骨さえ残さず消し炭になる程の業火に焼かれながらも、この男は生き残った。
身に纏っていた黒いローブは焼け落ち、全身が赤く焼けただれている。
弱い呼吸を繰り返し、意識は朦朧としているようだがそれでも息がある。
「私の火柱を直前で察し、火魔法で全身を包むとはな。可能な限り火の流れを同調させて受け流し、受けるダメージを最小限に抑える・・・・・才能だけでできる技ではない。貴様が己を高めるために、これまで費やした時間、研鑽がよく分かる」
アンソニーはゆっくりと右手の人差し指を向けた。
指先に火が付き、力が集約されていく。
「この私を相手に、ここまで戦った事への敬意を払い、苦しまぬようひと思いに殺してやろう」
アンソニーの指先から、鋭い熱線が撃ち放たれた。
それはパトリックと魔法兵達を葬った、あの火の精霊の一撃・・・・・
「・・・なに?」
しかし熱線がウィッカーに届く事はなかった。
「・・・あぶねぇな~、ギリギリだ」
エメラルドグリーンの髪に、中性的な顔立ちをしたその白魔法使いは、ウィッカーの前に立ち、大きく息を吐き出した。
両手で握った水色のマフラー、反作用の糸を前に出し、青く輝く結界を張り熱線を受け止めている。
今や白魔法使いとして、ジャニスに次ぐ実力者となったエロール・タドゥランは、明確な敵意を宿した鋭い目で、アンソニーを睨んだ。
「エロール君!ウィッカー様は私に任せて!」
エロールの後ろには、ピンク色の髪をした小柄な女性が、倒れているウィッカーの脇に膝を着いていた。
エロールの後輩であり恋人、フローラ・ラミレスである。
フローラが両手をウィッカーの胸に当てると、淡い輝きをがウィッカーを包み込む。
回復魔法のヒールである。
「頼むぞ!ウィッカー様が回復するまで、俺がこいつを食い止める!」
フローラがウィッカーの回復に入ると、反作用の糸の結界で熱線を弾きながら、エロールは声を張り上げた。
「・・・白いローブだが、その結界・・・貴様、青魔法使いか?」
アンソニーの金色の目がエロールを捉えた。
その目には、エロールに対しての興味が見える。
火の精霊の力を使って撃つ熱線は、並の結界では一瞬も持たない。
その熱線を防いだのだから、エロールの力量が計れるというものだった。
アンソニーは、この魔法使いもウィッカーと同じく、自分と戦うに値すると認めた。
「ハッ、俺は白魔法使いだよ。こいつは俺の魔道具だ」
水色のマフラーを顎で指すと、アンソニーは感心したように息をついて頷いた。
「ほぅ・・・本職の青魔法使いでもないのに、私の熱線を受け止めるとは、素晴らしい魔道具だな。だが、私はまだ全力は出していないぞ。いつまで耐えられるかな?」
「大した自信じゃねぇか?こんなので俺の反作用の糸に、勝てると思ってんならやってみろよ?」
「いい返事だ」
挑発めいた言葉をエロールが返すと、アンソニーの指先から発する熱線が勢いを増した。
「ッ!?ぐ・・・!」
結界にぶつかる音も一段と高くなり、マフラーを通して感じる圧力に、エロールは足を一歩下がらされた。
「ほぉ・・・これも耐えるか、大口を叩くだけはあるな?」
「調子に、乗ってんじゃ、ねぇよ・・・てめぇの、技が・・・軽いだけだ!」
言葉とは裏腹に、エロールの表情は険しさを増していた。額には汗の粒が浮かび、マフラーを握る腕も小刻みに震えている。
すでに全力に近い魔力を発して、結界を維持しているエロールには余裕などなかった。
対するアンソニーの表情は涼しく、力の底はまだ見えない。
「一つ教えてやろう。私のこの炎は魔法ではない。火の精霊の力を使って、今お前に熱線を撃ちつけている。これがどういう事か分かるか?」
「・・・魔法じゃねぇだと?火の精霊?」
眉間にシワを寄せるエロールに、アンソニーの口から絶望的な言葉が発せられた。
「魔法でないという事は、魔力は当然使わない。そして精霊の力には底が無い。つまり、私がその気になれば、明日の朝までだって熱線を撃ち続ける事ができるのだよ」
「なにッ!?」
「さて、それを踏まえて貴様はいつまで耐えられるかな?」
その赤い目がギラリと光ると、アンソニーの指先から発する熱線がさらに力を増し、エロールの結界を撃ちつけた!
目の前で倒れている男に向け、アンソニーは静かに語りかけた。
火の精霊の力で火柱を上げ、全身を焼き尽くしたはずだった。
しかし、骨さえ残さず消し炭になる程の業火に焼かれながらも、この男は生き残った。
身に纏っていた黒いローブは焼け落ち、全身が赤く焼けただれている。
弱い呼吸を繰り返し、意識は朦朧としているようだがそれでも息がある。
「私の火柱を直前で察し、火魔法で全身を包むとはな。可能な限り火の流れを同調させて受け流し、受けるダメージを最小限に抑える・・・・・才能だけでできる技ではない。貴様が己を高めるために、これまで費やした時間、研鑽がよく分かる」
アンソニーはゆっくりと右手の人差し指を向けた。
指先に火が付き、力が集約されていく。
「この私を相手に、ここまで戦った事への敬意を払い、苦しまぬようひと思いに殺してやろう」
アンソニーの指先から、鋭い熱線が撃ち放たれた。
それはパトリックと魔法兵達を葬った、あの火の精霊の一撃・・・・・
「・・・なに?」
しかし熱線がウィッカーに届く事はなかった。
「・・・あぶねぇな~、ギリギリだ」
エメラルドグリーンの髪に、中性的な顔立ちをしたその白魔法使いは、ウィッカーの前に立ち、大きく息を吐き出した。
両手で握った水色のマフラー、反作用の糸を前に出し、青く輝く結界を張り熱線を受け止めている。
今や白魔法使いとして、ジャニスに次ぐ実力者となったエロール・タドゥランは、明確な敵意を宿した鋭い目で、アンソニーを睨んだ。
「エロール君!ウィッカー様は私に任せて!」
エロールの後ろには、ピンク色の髪をした小柄な女性が、倒れているウィッカーの脇に膝を着いていた。
エロールの後輩であり恋人、フローラ・ラミレスである。
フローラが両手をウィッカーの胸に当てると、淡い輝きをがウィッカーを包み込む。
回復魔法のヒールである。
「頼むぞ!ウィッカー様が回復するまで、俺がこいつを食い止める!」
フローラがウィッカーの回復に入ると、反作用の糸の結界で熱線を弾きながら、エロールは声を張り上げた。
「・・・白いローブだが、その結界・・・貴様、青魔法使いか?」
アンソニーの金色の目がエロールを捉えた。
その目には、エロールに対しての興味が見える。
火の精霊の力を使って撃つ熱線は、並の結界では一瞬も持たない。
その熱線を防いだのだから、エロールの力量が計れるというものだった。
アンソニーは、この魔法使いもウィッカーと同じく、自分と戦うに値すると認めた。
「ハッ、俺は白魔法使いだよ。こいつは俺の魔道具だ」
水色のマフラーを顎で指すと、アンソニーは感心したように息をついて頷いた。
「ほぅ・・・本職の青魔法使いでもないのに、私の熱線を受け止めるとは、素晴らしい魔道具だな。だが、私はまだ全力は出していないぞ。いつまで耐えられるかな?」
「大した自信じゃねぇか?こんなので俺の反作用の糸に、勝てると思ってんならやってみろよ?」
「いい返事だ」
挑発めいた言葉をエロールが返すと、アンソニーの指先から発する熱線が勢いを増した。
「ッ!?ぐ・・・!」
結界にぶつかる音も一段と高くなり、マフラーを通して感じる圧力に、エロールは足を一歩下がらされた。
「ほぉ・・・これも耐えるか、大口を叩くだけはあるな?」
「調子に、乗ってんじゃ、ねぇよ・・・てめぇの、技が・・・軽いだけだ!」
言葉とは裏腹に、エロールの表情は険しさを増していた。額には汗の粒が浮かび、マフラーを握る腕も小刻みに震えている。
すでに全力に近い魔力を発して、結界を維持しているエロールには余裕などなかった。
対するアンソニーの表情は涼しく、力の底はまだ見えない。
「一つ教えてやろう。私のこの炎は魔法ではない。火の精霊の力を使って、今お前に熱線を撃ちつけている。これがどういう事か分かるか?」
「・・・魔法じゃねぇだと?火の精霊?」
眉間にシワを寄せるエロールに、アンソニーの口から絶望的な言葉が発せられた。
「魔法でないという事は、魔力は当然使わない。そして精霊の力には底が無い。つまり、私がその気になれば、明日の朝までだって熱線を撃ち続ける事ができるのだよ」
「なにッ!?」
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