異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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【888 カエストゥス 対 帝国 ㉒ 託された想いと力】

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「ウォォォォォォォォーーーーーーーーーッ!」

俺の竜氷縛は精霊の炎に、一歩も引けを取っていなかった。

炎と氷が真正面からぶつかり合う。精霊の炎は氷の竜の顔面を、一気に半分程焼き落とした。
だがそこまでだった。氷の竜はそこから炎を押し返し、冷気は再び竜の顔を作り直した。

竜の巨大な顎は炎を飲み込み、その極寒の腹の中で固めて己の一部とさせた。

「氷の竜よ!喰らえ!精霊の炎なんて食らいつくせ!」

飲み込んでやる!


精霊とは、本来人と自然と共存する存在だ。

人は生きるために火を使う。その恩恵にあずかった人間は、感謝の気持ちを忘れずに火を崇め称える。
そうして人と火は自然の中で共に生きていく事が、あるべき姿だったんだ。

だが、火の精霊は好戦的だった。

大地を赤く染め、空を焼き焦がす。戦火を生む事を目的として、火の加護を受けた者の戦闘意欲を刺激する。


・・・ふざけた精霊だ・・・

風の精霊も、土の精霊も、水の精霊も、人と共存してこの地に恵を与えてくれている。

人だけじゃない。鳥でも魚でも、牛でも馬でも、生きとし生ける全てが、自然の中で生きているんだ。

それを破壊していいわけがない!

帝国が戦争をしかけてきたのも、火の精霊が関わってんじゃねぇのか?
カエストゥスの平和を脅かし、多くの仲間を・・・友を・・・奪っていきやがった。

許せねぇ・・・許していいわけがない・・・・・

「精霊だろうとなんだろうと・・・絶対にゆるさねぇぞーーーーーッ!」

精神の高まりが俺の魔力を高めていく。
より強く、より大きく、そして触れた瞬間に炎を凍らす程の、絶対の冷気を持った氷の竜は、精霊の炎を喰らいながらアンソニーへと迫った!


いける!俺の魔力は精霊の炎にだって勝て・・・ッ!?


そしてあと一歩でアンソニーの頭に、氷の竜の牙が届こうとしたその時・・・俺は精霊の本当の力を知った。

「なにッ!?」
「ガァァァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!」

操られるがままのアンソニーは、空に向かって大きく口を開けると、喉の奥底から絶叫を上げた。

アンソニーの体から発せられる炎が爆発的に膨れ上がり、竜氷縛の頭を一瞬で吹き飛ばす!
そのまま氷の竜の胴体までも瞬く間に溶かすと、精霊の炎はウィッカーを焼き尽くさんと迫った!

「ぐっ、まさかッ!?」

全魔力を放出し氷の竜をぶつけるが、精霊の炎の勢いはウィッカーの竜氷縛をはるかに上回る。


こ、これほどなのか・・・!?
俺の全てをぶつけても、精霊の力とはここまで圧倒的なのか!?

「ぐ・・・オォォォォォォォーーーーーーッ!」

精霊の力には底が無い。

いかにウィッカーが大陸一の黒魔法使いと言われる程の魔力を持っていても、人の力ではどうにもならない存在がある。

歯を食いしばり必死に耐えるが、本気を出した精霊の炎はウィッカーの氷の竜を消滅させ・・・そしてウィッカーを吞み込んだ。





負けた・・・そう思った。

俺は全魔力を振り絞って竜氷縛を撃った。だが精霊の炎は俺の全力でも全く届かなかった。

渾身の竜氷縛も破られ、俺は確かに精霊の炎に吞み込まれた。

完全な敗北だった・・・・・




「・・・え、な、これ?・・・・・」

しかし、いつまでも俺の体を焼かない炎に目を開けると、青く光る結界が俺を包み込んでいた。
轟轟と燃え盛る炎から俺を護る結界に、覚えのある魔力を感じとった。

「ま、まさか・・・こ、これはッ!?」

胸の前で青い光を発し、俺を炎から護ってくれていたのは、パトリックさんの指輪だった。

これはローブに入れていたはずだ。
だが、さっき火柱をくらった時に焼け落ちて、どこかに・・・・・

なぜ、今ここにあるんだ?

どうして俺の胸の前で光って・・・・・


「パ、パトリック、さん・・・・・」



・・・・・・ウィッカー・・・・・諦めるな・・・・・お前なら勝てる


体を包む魔力が、俺に語り掛けて来るようだった。
パトリックさんの想い、願い、祈り・・・残した心が俺に流れ込んで来る。

これはパトリックさんの残した最後の力なんだ。

パトリックさんは、俺に全てを託して死んでいった。
その命を無くしても俺を護ってくれている。



もう魔力は枯渇寸前だった・・・・・だが、やるしかない。


「俺が・・・やるしかない」

俺の中に暖かく優しいものが流れて来た。
これは魔力とは違う、だが俺をもう一度立ち上がらせる力をくれた。

パトリックさんの命・・・おそらく亡くなる前に指輪に込めた生命エネルギーだ。


「フゥ・・・・・」

心を落ち着けるように息を吐いた。
この結界がある間は大丈夫だ。両手を脇に広げて魔力を込める。

静かに・・・ゆっくりと・・・・・


今まで一度も成功した事はなかった

黒魔法使いならば誰でも一度は試した事があるはずだ

だが、魔力のコントロールの難しさから、不可能と言われてきた技だ

俺にできるか?
いや、できるできないじゃない
おそらくこいつに勝つにはこれしかない

今ここで成功させるんだ


右手には風の魔力を、左手には氷の魔力を込める
異なる二つの魔力を左右の手で維持する


できる・・・自分を信じるんだ・・・・・俺ならできる・・・・・


両手の魔力を寸分違わず同じ魔力量で調整する
ここからが難しい

そのまま両手を合わせる
異なる魔力がぶつかって打ち消されないように、慎重に融合せていく


これまで誰も成功させた事のない技だ
それを今日ここで、俺が成功させてみせる!


風と氷の合成魔法


俺を護る青い結界に亀裂が入ると、炎の圧力によって粉々に砕け散った

・・・できた!

「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーッツ!」


押し寄せる炎に向けて、俺はたった今できたソレを撃ち放った!

暴力的なまでに荒れ狂う渦巻いた風に、鋭く研ぎ澄まされた氷の刃が混ざり合ったそれは、精霊の炎を切り裂いてアンソニーへと一直線に突き進んだ!

炎の揺らめきが激しい。まるで精霊が心を乱しているかのようだ。

そうか、火の精霊よ、お前らも合成魔法を見るのは初めてだよな?
お前らの炎がいくら強くても、風に乗った氷の刃が炎を斬り裂き、お前らへの道を作る。


俺一人ではとうてい勝てなかった。

エロールが時間を作り、アンソニーを弱らせた。
フローラが俺の命を繋いでくれた。
パトリックさんが護ってくれて、俺に力を与えてくれた。

みんながいたから・・・みんなの力で・・・・・

「ウォォォォォォォーーーーーーーーッツ!


風と氷の合成魔法が火の精霊を切り裂き、アンソニーを粉砕した。


「・・・みんなの力で勝ったんだ」


風と氷の竜巻が通り過ぎた跡には、何も残っていなかった。

微かな残り火も風に舞って消え、アンソニーがそこにいた事を教えるように、大量の血が飛び散っていただけだっだ。


みんなの力で勝ったんだ


魔力を使い果たし、俺はその場に倒れ込んだ。
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