971 / 1,560
【970 タジーム 対 皇帝】
しおりを挟む
タジーム・ハメイドの戦いを見た者はいない。
ただ、父である国王さえ恐れる凄まじい魔力が、いつしか悪評となって広まった。
およそ人では考えられない魔力は、人外の存在。不吉なる者。悪魔王子。
様々な呼び方で表現されたが、どれもとても王族に向ける言葉ではなかった。
タジームの魔法が公で使われたのは、あのバッタの時が初めてである。
闇魔法黒渦。
黒魔法使いのタジームが使用した以上、黒渦は黒魔法に分類されるべきなのだが、師ブレンダン・ランデルは、黒渦のあまりの禍々しさから、ブレンダンは黒渦を闇の魔法と分類した。
黒渦は大勢の国民が目にした。
本来、国を救ったタジームは英雄と呼ばれていい。
だがタジームの使用した黒渦は、畏怖の対象として映り、賞賛されるどころか更なる迫害を受ける事となった。
一歩間違っていれば、あの黒渦に国民も呑まれていたのではないか?
そもそもあんな禍々しい魔法が存在していいのか?
あんな魔法を作り出すなんて、とても同じ人間だとは思えない!
やはり悪魔の子なのだ!
それが国民から見るタジーム・ハメイドだった。
「ぐはぁぁぁーーーーーッツ!」
腹部で爆ぜる衝撃に、皇帝ローランド・ライアンは天井へと吹き飛ばされた。
「ふん、その程度か?」
タジーム・ハメイドはつまらなそうに呟くと、右手の平から立ち上がる煙を握り締め、爆裂弾で飛ばした皇帝を冷めた目で見つめた。
「ぐぬぅッッッ!」
床に落ちる寸前で風魔法を使い体を浮かせると、皇帝は体を回して着地をした。
「くっ・・・」
致命傷ではないが、ただの爆裂弾でも想像以上に大きなダメージを受けた。
火の精霊の加護を受けている深紅のローブはあっさりと燃やされ、腹の部分が焼け落ちている。
くらった瞬間に魔力を集中させて、爆発のダメージを軽減させたはずだが、それでも腹の中にズシンと重く残る痛みがあった。
・・・爆裂弾でこれか?
口の端から流れる血を拭い、皇帝は視線の先のタジーム・ハメイドを見据えた。
・・・初級魔法の爆裂弾でこの破壊力なのか?
魔法とは使用者の魔力によって、破壊力が変わってくる。
皇帝である自分が使えば、爆裂弾でも並の魔法使いの中級魔法を大きく凌駕する破壊力になるが、タジームの爆裂弾は中級どころではなかった。
防御に回した皇帝の魔力を越えてくる破壊力、これは上級に匹敵する。
ここまでの攻防で、皇帝はタジームの魔力が、想定よりもはるかに高いと感じ取っていた。
「どうした?威勢がいいのは最初だけか?」
「・・・貴様・・・・・」
玉座の間の中央、赤い絨毯の上で睨み合う皇帝とタジーム・ハメイド。
ともに大陸最強と謳われる二人だった。
底の知れない魔力、そして黒渦という不気味なまでに恐ろしい魔法を使うタジーム・ハメイド。
圧倒的魔力で大陸一の軍事国家を支配した、皇帝ローランド・ライアン。
タジームと戦えるのは皇帝だけ。
皇帝と戦えるのはタジームだけ。
二人の名は常に並び、そして比べられてきた。
しかし・・・・・・・
「なめるなァァァァァーーーーーーーッツ!」
皇帝である自分が軽んじられるなどあってはならない!
怒りに表情が険しくなり、大きく口を開いて叫びをあげる!
右手が大きく光りを放つ!周囲の空気がバチバチと音を鳴らし、玉座の間を震わせた!
「ふん・・・・・」
並の魔法使いならば立っている事すらできない。地鳴りの如き振動と強烈なプレッシャー。
だがそれをぶつけられても、タジームは何も感じていないように、眉の一つさえ動かさなかった。
そしてゆっくりと右手を前に出すと、自分に向けられている皇帝の魔力に合わせるように、己の手にも爆発の魔力を集中させた。
「・・・貴様、余と魔力比べをするつもりか!?馬鹿が!消し飛ぶがいいィィィーーーーーッ!」
怒りの咆哮と共に撃ち放たれるのは、爆裂空破弾!
玉座の間を全て呑み込む程の巨大な光弾が、タジーム・ハメイドに襲い掛かる!
中級魔法に位置する爆裂空破暖弾だが、皇帝のソレは上級魔法に匹敵する威力を持つ!
「・・・こんなものか?」
「なにぃッツ!?」
皇帝は目を疑った。
タジームごとこの部屋全てを吹き飛ばすつもりで撃った爆裂空破弾が、タジームの右手一本で止められているのだ。
「俺と五分だと聞いていたんだが・・・・・噂は所詮噂でしかないな」
溜息交じりに呟くと、タジームは右手に少し力を込めて、皇帝の爆裂空破弾を押し返した。
ただ、父である国王さえ恐れる凄まじい魔力が、いつしか悪評となって広まった。
およそ人では考えられない魔力は、人外の存在。不吉なる者。悪魔王子。
様々な呼び方で表現されたが、どれもとても王族に向ける言葉ではなかった。
タジームの魔法が公で使われたのは、あのバッタの時が初めてである。
闇魔法黒渦。
黒魔法使いのタジームが使用した以上、黒渦は黒魔法に分類されるべきなのだが、師ブレンダン・ランデルは、黒渦のあまりの禍々しさから、ブレンダンは黒渦を闇の魔法と分類した。
黒渦は大勢の国民が目にした。
本来、国を救ったタジームは英雄と呼ばれていい。
だがタジームの使用した黒渦は、畏怖の対象として映り、賞賛されるどころか更なる迫害を受ける事となった。
一歩間違っていれば、あの黒渦に国民も呑まれていたのではないか?
そもそもあんな禍々しい魔法が存在していいのか?
あんな魔法を作り出すなんて、とても同じ人間だとは思えない!
やはり悪魔の子なのだ!
それが国民から見るタジーム・ハメイドだった。
「ぐはぁぁぁーーーーーッツ!」
腹部で爆ぜる衝撃に、皇帝ローランド・ライアンは天井へと吹き飛ばされた。
「ふん、その程度か?」
タジーム・ハメイドはつまらなそうに呟くと、右手の平から立ち上がる煙を握り締め、爆裂弾で飛ばした皇帝を冷めた目で見つめた。
「ぐぬぅッッッ!」
床に落ちる寸前で風魔法を使い体を浮かせると、皇帝は体を回して着地をした。
「くっ・・・」
致命傷ではないが、ただの爆裂弾でも想像以上に大きなダメージを受けた。
火の精霊の加護を受けている深紅のローブはあっさりと燃やされ、腹の部分が焼け落ちている。
くらった瞬間に魔力を集中させて、爆発のダメージを軽減させたはずだが、それでも腹の中にズシンと重く残る痛みがあった。
・・・爆裂弾でこれか?
口の端から流れる血を拭い、皇帝は視線の先のタジーム・ハメイドを見据えた。
・・・初級魔法の爆裂弾でこの破壊力なのか?
魔法とは使用者の魔力によって、破壊力が変わってくる。
皇帝である自分が使えば、爆裂弾でも並の魔法使いの中級魔法を大きく凌駕する破壊力になるが、タジームの爆裂弾は中級どころではなかった。
防御に回した皇帝の魔力を越えてくる破壊力、これは上級に匹敵する。
ここまでの攻防で、皇帝はタジームの魔力が、想定よりもはるかに高いと感じ取っていた。
「どうした?威勢がいいのは最初だけか?」
「・・・貴様・・・・・」
玉座の間の中央、赤い絨毯の上で睨み合う皇帝とタジーム・ハメイド。
ともに大陸最強と謳われる二人だった。
底の知れない魔力、そして黒渦という不気味なまでに恐ろしい魔法を使うタジーム・ハメイド。
圧倒的魔力で大陸一の軍事国家を支配した、皇帝ローランド・ライアン。
タジームと戦えるのは皇帝だけ。
皇帝と戦えるのはタジームだけ。
二人の名は常に並び、そして比べられてきた。
しかし・・・・・・・
「なめるなァァァァァーーーーーーーッツ!」
皇帝である自分が軽んじられるなどあってはならない!
怒りに表情が険しくなり、大きく口を開いて叫びをあげる!
右手が大きく光りを放つ!周囲の空気がバチバチと音を鳴らし、玉座の間を震わせた!
「ふん・・・・・」
並の魔法使いならば立っている事すらできない。地鳴りの如き振動と強烈なプレッシャー。
だがそれをぶつけられても、タジームは何も感じていないように、眉の一つさえ動かさなかった。
そしてゆっくりと右手を前に出すと、自分に向けられている皇帝の魔力に合わせるように、己の手にも爆発の魔力を集中させた。
「・・・貴様、余と魔力比べをするつもりか!?馬鹿が!消し飛ぶがいいィィィーーーーーッ!」
怒りの咆哮と共に撃ち放たれるのは、爆裂空破弾!
玉座の間を全て呑み込む程の巨大な光弾が、タジーム・ハメイドに襲い掛かる!
中級魔法に位置する爆裂空破暖弾だが、皇帝のソレは上級魔法に匹敵する威力を持つ!
「・・・こんなものか?」
「なにぃッツ!?」
皇帝は目を疑った。
タジームごとこの部屋全てを吹き飛ばすつもりで撃った爆裂空破弾が、タジームの右手一本で止められているのだ。
「俺と五分だと聞いていたんだが・・・・・噂は所詮噂でしかないな」
溜息交じりに呟くと、タジームは右手に少し力を込めて、皇帝の爆裂空破弾を押し返した。
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる