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1154 平手打ち
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寄生型の魔道具は、寄生という言葉のせいで、どうしても悪いイメージを持たれてしまう。
だが寄生という名前だけで、その本質を知ろうともしないのはもったいない。ラニはそう思った。
魔力を餌に体内で育てる魔道具、魔食い鳥。
この鳥がどれほどの力を秘めているかを知ったラニは、自分の体内で育てる事に抵抗はなかった
体内で飼うと言っても胎児をこの身に宿すわけではない。魔力で作る鳥は結局のところ魔力なのだ。
自分の魔力に別の何かが入りこむ感覚に、違和感が無かったわけではない。だがそれさえ慣れてしまえばなんて事はない。魔食い鳥の潜在能力を知れば、これほどの鳥を自在に扱えるのだから、寄生型にも積極的に目を向けるべきだとラニは思った。
そして今、ラニを乗せる魔力で作られた鳥、魔食い鳥は空中で旋回をしているが、その目をルーシーとディリアンから外す事はなかった。
使い手であり主人のラニも、自分の生み出した魔食い鳥の頭を撫でながら、地上のルーシーとディリアンをじっと見つめて目を離さない。
「さっきからずっとこっちを見てやがる。何考えてんだ?さっさとかかってこいよ」
自分達の頭上をぐるぐる回る魔力の鳥、そしてその背に乗るラニに向かって、ディリアンが苛立ちをそのまま言葉にしてぶつける。
「おい、ディリアン、上にばかり気を取られるなよ。あっちで暴れているもう一人も相当ヤバそうだ。お前は青魔法使いだろ?体力型の私が攻撃を担当するから、お前は結界でのフォローを頼む」
そう話すルーシーの視線の先では、ピンク色の髪を振り乱しながら、アレリーが怒声を上げながら腕を振り回していた。
アレリーがここまで我を忘れた経緯を知らないルーシー達には、状況が掴めない事で困惑もあった。
だがアレリーから発せられる凄まじい魔力を感じ取り、決して放置していいわけでもなく、十分に警戒して対処しなければならない。そう判断したのだ。
「分かった、確かにその方がいいかもな・・・っ!来るぞ!」
ディリアンがルーシーに言葉を返したその時、上空を旋回していたラニの魔食い鳥が、急遽(きゅうきょ)翼を大きく広げて突撃して来た!
「ディリアン、お前は下がれ!」
ラニの魔食い鳥の攻撃は、人一人を背に乗せる事が出来るくらい巨大な体での突撃だった。
肉体ではなく魔力によって形作られているため、ソレは魔力の塊でぶつかってくるイメージであるが、これほど大きく質量がある魔力の塊ならば、その威力は決して生半可なものではない。
「ちっ!」
ルーシーが言うや否や、ディリアンは雪に足首まで埋まった地面を蹴って、後ろに飛び退いた。
そして地面に足が着くよりも早く魔力を練り上げる!
この間にルーシーは自身が身に付けている白いマント、魔道具水流のマントに溜めておいた水を使い、以前レイジェスでも見せた水の鞭を具現化していた。
「オォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
気合の叫びと共に、右手に握る水の鞭を、自分に向かって突っ込んで来る魔力の鳥目掛けて叩きつける!
「どうだっ・・・なっ!?」
ルーシの水の鞭は、魔食い鳥の頭部を打ち付けた。しかも魔食い鳥が突っ込んでくる勢いを利用したその攻撃は、ただ鞭を振るうよりもはるかに強い一撃だった。
だがラニの魔力で作られた魔食い鳥は、その一撃をまともにくらったにも関わらず微動だにしない。魔食い鳥にはまるでダメージが見えなかった。
「うん、鋭くて重い、良い攻撃だね。でも私の魔食い鳥には通用しないよ・・・やれ」
魔食い鳥の背に立つラニは、ルーシーを冷たく見据えながら、指を鳴らした。
その合図をまっていたかのように、魔食い鳥はルーシーに頭からぶつかり、その小さな体を吹っ飛ばした!
「ぐぅッ!」
「むっ、なにそれ?水?・・・水で盾を作って防いだの?」
咄嗟に水の盾を作り出し、魔食い鳥の頭突きを防いだルーシーだったが、魔食い鳥の一撃は水の盾では吸収しきれず、その衝撃に軽量のルーシーは吹き飛ばされてしまった。
「おっと」
吹き飛ばされたルーシーだったが、後ろに控えていたディリアンが両手に集めていた魔力を飛ばし、ルーシーの背中に結界を作りその体を受け止めた。
「ッ!」
ルーシーは自分を受け止めた結界に左手を着いて、即座に飛び上がると、空中で体を回転させてディリアンの脇に着地をした。
「あの鳥、想像以上に重いぞ」
「おい、アレ・・・あの女、何を考えてやがる?」
鞭を打ち付け、鳥の頭で吹き飛ばされた感覚をディリアンに伝えるが、ディリアンはそれよりも視線の先を見ろと言うように、前方を顎で指した。
言われてルーシーが正面に顔を向けたその時、青く輝く鳥の背に乗ったラニが、大声で喚き散らし暴れるアレリーの頬を、平手で叩いたところだった。
だが寄生という名前だけで、その本質を知ろうともしないのはもったいない。ラニはそう思った。
魔力を餌に体内で育てる魔道具、魔食い鳥。
この鳥がどれほどの力を秘めているかを知ったラニは、自分の体内で育てる事に抵抗はなかった
体内で飼うと言っても胎児をこの身に宿すわけではない。魔力で作る鳥は結局のところ魔力なのだ。
自分の魔力に別の何かが入りこむ感覚に、違和感が無かったわけではない。だがそれさえ慣れてしまえばなんて事はない。魔食い鳥の潜在能力を知れば、これほどの鳥を自在に扱えるのだから、寄生型にも積極的に目を向けるべきだとラニは思った。
そして今、ラニを乗せる魔力で作られた鳥、魔食い鳥は空中で旋回をしているが、その目をルーシーとディリアンから外す事はなかった。
使い手であり主人のラニも、自分の生み出した魔食い鳥の頭を撫でながら、地上のルーシーとディリアンをじっと見つめて目を離さない。
「さっきからずっとこっちを見てやがる。何考えてんだ?さっさとかかってこいよ」
自分達の頭上をぐるぐる回る魔力の鳥、そしてその背に乗るラニに向かって、ディリアンが苛立ちをそのまま言葉にしてぶつける。
「おい、ディリアン、上にばかり気を取られるなよ。あっちで暴れているもう一人も相当ヤバそうだ。お前は青魔法使いだろ?体力型の私が攻撃を担当するから、お前は結界でのフォローを頼む」
そう話すルーシーの視線の先では、ピンク色の髪を振り乱しながら、アレリーが怒声を上げながら腕を振り回していた。
アレリーがここまで我を忘れた経緯を知らないルーシー達には、状況が掴めない事で困惑もあった。
だがアレリーから発せられる凄まじい魔力を感じ取り、決して放置していいわけでもなく、十分に警戒して対処しなければならない。そう判断したのだ。
「分かった、確かにその方がいいかもな・・・っ!来るぞ!」
ディリアンがルーシーに言葉を返したその時、上空を旋回していたラニの魔食い鳥が、急遽(きゅうきょ)翼を大きく広げて突撃して来た!
「ディリアン、お前は下がれ!」
ラニの魔食い鳥の攻撃は、人一人を背に乗せる事が出来るくらい巨大な体での突撃だった。
肉体ではなく魔力によって形作られているため、ソレは魔力の塊でぶつかってくるイメージであるが、これほど大きく質量がある魔力の塊ならば、その威力は決して生半可なものではない。
「ちっ!」
ルーシーが言うや否や、ディリアンは雪に足首まで埋まった地面を蹴って、後ろに飛び退いた。
そして地面に足が着くよりも早く魔力を練り上げる!
この間にルーシーは自身が身に付けている白いマント、魔道具水流のマントに溜めておいた水を使い、以前レイジェスでも見せた水の鞭を具現化していた。
「オォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
気合の叫びと共に、右手に握る水の鞭を、自分に向かって突っ込んで来る魔力の鳥目掛けて叩きつける!
「どうだっ・・・なっ!?」
ルーシの水の鞭は、魔食い鳥の頭部を打ち付けた。しかも魔食い鳥が突っ込んでくる勢いを利用したその攻撃は、ただ鞭を振るうよりもはるかに強い一撃だった。
だがラニの魔力で作られた魔食い鳥は、その一撃をまともにくらったにも関わらず微動だにしない。魔食い鳥にはまるでダメージが見えなかった。
「うん、鋭くて重い、良い攻撃だね。でも私の魔食い鳥には通用しないよ・・・やれ」
魔食い鳥の背に立つラニは、ルーシーを冷たく見据えながら、指を鳴らした。
その合図をまっていたかのように、魔食い鳥はルーシーに頭からぶつかり、その小さな体を吹っ飛ばした!
「ぐぅッ!」
「むっ、なにそれ?水?・・・水で盾を作って防いだの?」
咄嗟に水の盾を作り出し、魔食い鳥の頭突きを防いだルーシーだったが、魔食い鳥の一撃は水の盾では吸収しきれず、その衝撃に軽量のルーシーは吹き飛ばされてしまった。
「おっと」
吹き飛ばされたルーシーだったが、後ろに控えていたディリアンが両手に集めていた魔力を飛ばし、ルーシーの背中に結界を作りその体を受け止めた。
「ッ!」
ルーシーは自分を受け止めた結界に左手を着いて、即座に飛び上がると、空中で体を回転させてディリアンの脇に着地をした。
「あの鳥、想像以上に重いぞ」
「おい、アレ・・・あの女、何を考えてやがる?」
鞭を打ち付け、鳥の頭で吹き飛ばされた感覚をディリアンに伝えるが、ディリアンはそれよりも視線の先を見ろと言うように、前方を顎で指した。
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