異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,242 / 1,560

1241 パウンド・フォーへの進軍

しおりを挟む
西の山脈パウンド・フォー。
帝国とクインズベリーの国境となる山である。

レイチェル達がレイマート達を救出するために駆けつけた時は、まだ冬になる前だったため、特に何か思う事はなかった。
だが白い雪化粧をした山は、前回来た時とはまったくの別物に見えた。

一見すると山はとても美しかった。枯れ葉や動物の死骸、捨てられたゴミなどの山の汚れ、その全てを白い雪が覆い隠してくれるからだ。
だがその美しさの裏で、樹氷の森は降り積もった雪を風に乗せて飛ばし、山の侵入者の視界と体温を奪う。もし倒れてしまえば冷たい雪が体を包み込み、ゆっくりと死へいざなうだろう。
景観の美しさは死の危険と隣合わせ。これが雪山なのだ。


雪の降らない帝国との国境の山と言っても、クインズベリー側ではやはりそれなりに積もっている。ロングブーツでなければ足を取られてしまうだろう。

この雪自体はクインズリーにとって有利に働くだろう。だが帝国はすでにこの山で、万全の体勢で待ち構えている。
帝国が雪に不慣れという事を考慮しても、登るしかないクインズベリーにとっては、やはり厳しい戦いになる事は間違いないだろう。

山を城として待ち構える帝国、攻め込むクインズベリー。このようにパウンド・フォーでの決戦が、攻城戦のようになる事は予想が付いていた。
アンリエールが決戦を冬に選んだのは、少しでも自軍に有利な環境を整えたいという考えからである。



「アゲハ、この山で私達を待っている師団長だが、前にキミは掴みどころのないヤツと言っていたな?もう少し詳しく教えてくれないか?」

パウンド・フォー、西峰の麓(ふもと)まで辿り着くと、山を見上げながらレイチェルがアゲハに尋ねた。

「ああ、その話しか・・・」

レイチェルの質問に、アゲハ少し言い淀(よど)んだ。
話せないわけではない。だが説明するには材料が足りなさ過ぎる。

「ロンズデールのシャノン、彼女の部下が調べた情報では詳細までは分からなかった。なんでも全くの無名が、急に師団長になったらしいな?」

レイチェルが言葉を続けると、アゲハは薙刀を地面に刺して、腰に手を当て考えるように話し出しだ。

「う~ん、何て言ったらいいか、私も前に会議で話した事くらいしか知らないんだが・・・・・私も師団長として、できるだけ多くの部下の顔と名前は憶えておこうと思ってな、部下と話す時には顔を見て話すように心がけていたんだ。万を超える人数がいるんだから、全員はとても無理だけどね。必要以上の会話をしないヤツとか、やたら声のでかいヤツとか、まぁ色々いたが人が沢山いれば色んなヤツがいる。そういうものだよな?ただな、あいつ、ジャロン・リピネッツは、何て言ったらいいんだろう・・・」

当時の事を思い出すように、アゲハは顔を上げて空に目を向ける。
わずかに眉根が寄っていて、難しい表情をしているのは、あまり良い印象では無かったのかもしれない。
レイチェルは話しの続き急がせる事はせず、アゲハが言葉をまとめるまで待った。

そしてじっと空を見つめた後、少しの間をおいて、アゲハはレイチェルに顔を向けた。

「怖いヤツ・・・・・一言で言えば、ジャロン・リピネッツは怖いヤツだ」

「・・・怖い?それは、戦士として怖いという事か?」

思いもしない言葉だった。まさか師団長まで務めたアゲハの口から、怖いという言葉が出るとは予想もしなかった。それほど強い男なのか?レイチェルはそう思ったが、アゲハは首を横に振った。

 「いや、私が見た限り、あいつは体力型として抜きんでた何かを持ってはいなかった。力も速さも並みだ。ハッキリ言って私なら瞬殺できる。そんな特徴の無いあいつを私が怖いと感じたのは・・・あの目だ・・・」

そこで言葉を切るとアゲハは一度息をつき、レイチェルの目を見つめて口を開いた。

「あまり表情も変わらないし、淡々としていて、最初は大人しいヤツだなと思ったんだ。けどね、さっき言った通り私はなるべく顔と名前を覚えようと、相手の目を見てしっかり話すようにしていたんだ。その時も訓練中のジャロンの目を見ながら助言をしていたんだ・・・・・そして話していてふと思ったんだ。こいつ、私を見ていない・・・ってね」

「・・・それは、どういう意味だい?」

「・・・ジャロンは私の話しを聞いてはいた。教えた通りに体を動かし、返事もしたからね。けど、あの目・・・あいつのあの目・・・空っぽのガラス玉のようだった。普通は誰かと話しをしていたら、そこには何かしらの感情が宿るだろ?親愛でも敵意でも敬意でも、なにかしらあるはずなんだ。けれどジャロンの目には、何もなかったんだ・・・・・」

目を伏せて静かに首を横に振る。
まるで当時の事を忘れたいと言うように・・・・・

「レイチェル・・・あいつ、ジャロン・リピネッツは、恐ろしいくらい空虚な男だ。あいつには何も無い。喜びも、悲しみも、怒りも・・・何も無い男なんだ。それが分かった時、私は・・・あいつを心底恐ろしいと思ったよ・・・」

「・・・アゲハ・・・」


今のアゲハはの話しでは、ジャロン・リピネッツがどうやって師団長になれたのかは分からない。
戦闘力が低い事は確かなようだが、万の軍勢を従える師団長という座は、力を持たずに就けるものではない。つまりジャロン・リピネッツは何かを隠し持っている。

そしてその何かが分からなければ、この戦い・・・・・


「おい、難しい話しはそんくらいにしろよ?そろそろ行くようだぜ」

アゲハの話しが終わったタイミングで、リカルドが横から口を挟み前方を指さす。
パウンド・フォー攻略の司令官、カルロス・フォスターが進軍の合図を出したところだった。





「お?クインズベリーが動き出したようだな。お前達、作戦通りにいくぞ。俺が合図を出したら一斉に撃つんだ」

クインズベリー軍が山へ足を踏み入れた時、麓から1000メートルほど上では、横一線に並ぶ兵達を前に、不敵な笑みを浮かべて見下ろす男がいた。

身長は2メートルはあるだろう、長いシルバーグレーの髪を何本もの細い束に結っている。
鋭い金色のその目には、これから登ってくるクインズベリーの軍勢など敵ではないと、そう自信に満ちていた。

深紅の鎧を身に着けている事から、この男が帝国の幹部だという事は分かる。

帝国軍第二師団、副団長バージル・ビジェラは高らかに笑った。

「ふはははは!さぁ登ってこいクインズベリーよ、この山が貴様らの死に場所だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜

namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。 かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。 無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。 前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。 アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。 「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」 家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。 立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。 これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。

処理中です...