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洗濯の変態編3章:早速ですが、服を脱いでください
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「今日は本当にありがとうございました。残業代は出しますので、あとで請求してください」
彩響の隣で廊下を一緒に歩いていた寛一さんがその話に首を振った。
「いいえ、たまにはこういうこともあるでしょう。残業代はいりません」
「いや、それだと私が申し訳ないので…」
てくてくと二人の足音が廊下に響く。どうやらお堅い家政夫さんはお金を要求する気がないらしい。少し考えて、彩響が提案した。
「じゃあ、なんでも良いので欲しいものがあれば言ってください」
「欲しいもの…?」
「そう、洋服でも、なんか美味しいものでも大丈夫です。私にやって欲しいこととかでも…」
「おい彩響、お前なんでここにいんの?」
誰かが彩響の話を遮る。声が聞こえたところに視線を移すと、『あいつ』が立っていた。ネクタイは半分解いていて、なんか様子がおかしい。びくっとする彩響に気付いた寛一さんが質問した。
「彩響さん、こちらの方は?」
「へーこいつが新しい男?は、どうせあのボロ屋敷に連れて行くと、こいつも逃げていくぞ。お前の汚い本性に気付いてさ!そんなダサいドレスで隠そうとしても無駄だからな!」
「なに、さっきのお姉さんはどこへ行ったの?もう振られた?酔っ払いはさっさとお家に帰りなさい。周りに迷惑だから」
お酒の匂いがこっちまでプンプン臭う。彩響の反応が気にいらないのか、やつは寛一さんの方に突っかかってきた。
「おい、兄さん!あんた誰?こいつといつからできてんだ?」
「……」
「こいつと付き合ってもいいこと一つもねえからな。気は強いし、女子力の欠片もねぇし、部屋は汚いし。お金ちょっと稼ぐからって男をバカにする最低な女だからな」
「武宏、もういい加減に…!」
一歩踏み出した瞬間、寛一さんが彩響の手を引っ張った。驚いて振り向くと、彼が武宏をまっすぐ睨むのが見えた。
「あなたが彩響さんとどのようなご関係だったのか、俺にはよく分かりません。しかしこんなダサいお葬式のスーツを着て、しかも清潔感のかけらもないとは…俺が人生で見た男たちの中では下の下レベルです」
「はあ?お葬式?お前、これがいくらだと思ってるんだ?!」
「値段は関係ありません。むしろ高いお金を使ってこのダサさとは、ただの馬鹿なのでは?動物さえ場所と時間に合わせ毛の色を変えたりするのに、あなたはその動物以下ですね。そしてその最悪のスーツに負けないレベルの口ぶり…きっとあなたとお付き合いする女性も、さぞかし大変だったのでしょう。こんな男、さっさと捨てた方が人生得します」
「お、お前、よくもべらべらと…!」
「彩響さん、エレベーターが来ました。さっさと行きましょう」
マシンガンのように言葉を投げた寛一さんは、彩響の手を引っ張りエレベーターに乗った。慌ててそのまま乗ると、向こうに武宏のアホ面が見える。そのままドアが締まり、エレベーターが動き出した。
なんだか気まずい中、そのまま二人は1階ロビーへ付いた。手はずっと握ったままだった。
「あの…手が…」
「…!」
やっと気づいたのか、寛一さんが慌てて手を離した。視線もこっちに向けてくれない。お互いぎこちない雰囲気の中、先に彩響が口を開けた。
「あの…」
「はい」
これを聞くべきか聞かぬべきか、しばらく迷ったが…結局彩響は聞く道を選んだ。
「あの…なんで助けてくれたんですか?」
「それは…」
彩響の隣で廊下を一緒に歩いていた寛一さんがその話に首を振った。
「いいえ、たまにはこういうこともあるでしょう。残業代はいりません」
「いや、それだと私が申し訳ないので…」
てくてくと二人の足音が廊下に響く。どうやらお堅い家政夫さんはお金を要求する気がないらしい。少し考えて、彩響が提案した。
「じゃあ、なんでも良いので欲しいものがあれば言ってください」
「欲しいもの…?」
「そう、洋服でも、なんか美味しいものでも大丈夫です。私にやって欲しいこととかでも…」
「おい彩響、お前なんでここにいんの?」
誰かが彩響の話を遮る。声が聞こえたところに視線を移すと、『あいつ』が立っていた。ネクタイは半分解いていて、なんか様子がおかしい。びくっとする彩響に気付いた寛一さんが質問した。
「彩響さん、こちらの方は?」
「へーこいつが新しい男?は、どうせあのボロ屋敷に連れて行くと、こいつも逃げていくぞ。お前の汚い本性に気付いてさ!そんなダサいドレスで隠そうとしても無駄だからな!」
「なに、さっきのお姉さんはどこへ行ったの?もう振られた?酔っ払いはさっさとお家に帰りなさい。周りに迷惑だから」
お酒の匂いがこっちまでプンプン臭う。彩響の反応が気にいらないのか、やつは寛一さんの方に突っかかってきた。
「おい、兄さん!あんた誰?こいつといつからできてんだ?」
「……」
「こいつと付き合ってもいいこと一つもねえからな。気は強いし、女子力の欠片もねぇし、部屋は汚いし。お金ちょっと稼ぐからって男をバカにする最低な女だからな」
「武宏、もういい加減に…!」
一歩踏み出した瞬間、寛一さんが彩響の手を引っ張った。驚いて振り向くと、彼が武宏をまっすぐ睨むのが見えた。
「あなたが彩響さんとどのようなご関係だったのか、俺にはよく分かりません。しかしこんなダサいお葬式のスーツを着て、しかも清潔感のかけらもないとは…俺が人生で見た男たちの中では下の下レベルです」
「はあ?お葬式?お前、これがいくらだと思ってるんだ?!」
「値段は関係ありません。むしろ高いお金を使ってこのダサさとは、ただの馬鹿なのでは?動物さえ場所と時間に合わせ毛の色を変えたりするのに、あなたはその動物以下ですね。そしてその最悪のスーツに負けないレベルの口ぶり…きっとあなたとお付き合いする女性も、さぞかし大変だったのでしょう。こんな男、さっさと捨てた方が人生得します」
「お、お前、よくもべらべらと…!」
「彩響さん、エレベーターが来ました。さっさと行きましょう」
マシンガンのように言葉を投げた寛一さんは、彩響の手を引っ張りエレベーターに乗った。慌ててそのまま乗ると、向こうに武宏のアホ面が見える。そのままドアが締まり、エレベーターが動き出した。
なんだか気まずい中、そのまま二人は1階ロビーへ付いた。手はずっと握ったままだった。
「あの…手が…」
「…!」
やっと気づいたのか、寛一さんが慌てて手を離した。視線もこっちに向けてくれない。お互いぎこちない雰囲気の中、先に彩響が口を開けた。
「あの…」
「はい」
これを聞くべきか聞かぬべきか、しばらく迷ったが…結局彩響は聞く道を選んだ。
「あの…なんで助けてくれたんですか?」
「それは…」
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