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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
優しい貴方に甘えて
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道路脇にある、馴染みの自販機。当たり前だが、今日も変わらず静かに佇んでいる。背が高く無機質なそれにコインを投入して、爪先立ちでしか届かない、一番上の段の端で点灯するボタンを押した。
すぐさまガコンと音を立てて落ちてきた、お目当ての缶ジュース。受け取り口から取り出した缶のパッケージには、瑞々しいオレンジの断面が印刷されている。色鮮やかで、夕焼け空を思い出させるような。あの人との髪色と、瞳の色と同じオレンジ。
ひんやりと俺の手を冷やしていく細身の缶をぼんやりと眺めながら、すぐ側にあるベンチへと腰を下ろした。
……後、どのくらいだろう……どのくらい待てば。
ズボンのポケットから端末を取り出して、時間を確認する。表示された時刻は、まだ、いつもの時間には程遠かった。
「後、三時間……か」
俯く俺の小さなボヤきが、誰もいないアスファルトへと落ちていく。
あの騒動以降、ライと一緒に無事にこの世界へと帰ってこられてから、俺は放課後になるとこの自販機へと足げく通っている。
理由は単純明快。好きな人と会う為だ。
彼は、ソレイユ先輩は、この自販機にあるジュースがお気に入り。でも、このメーカーのオレンジジュースは、学園とここでしか置いていないらしい。だから、先輩はいつも部活帰りにこの自販機を訪れて、ジュースを買うのだ。
それを俺は待っている。通い詰めた甲斐もあり、大体どの時間にソレイユ先輩が来るのかも分かってきた。
とはいえ、万が一にでも部活が早く終わって、先輩と入れ違いにでもなってしまったら泣くに泣けない。結果、いつも同じ時間にここで先輩が来るのを、ひたすら待っているって訳で。
うん、完全にストーカーだな俺。
勘のいい先輩のことだ。多分、俺が待ち伏せをしていることには気付いているだろう。
でも先輩はイヤな顔一つしない。いつも決まって「偶然だね」とか「最近よく会うね」と気付いていないフリをしてくれている。微笑みかけてくれて「ちょっと、オニーサンに付き合ってくれない?」と俺の隣に腰掛けてくれるのだ。
そうして、他愛のない話をしてから「一人じゃ危ないでしょう?」と俺の部屋の前まで送ってくれる。そんな先輩の優しさに、俺は甘えてしまっている。
今日だって、いつもの人が良さそうな笑顔で俺を許してくれるだろう。きっと。
……ソレイユ先輩への恋心を自覚して、思い知ったことがある。俺は、先輩のことをほとんど知らないということを。
好きなもの、嫌いなもの、好みのタイプ。そんな些細なことですら。
……先輩、聞き上手だから、気がついたら俺ばっかり喋っちゃってんだよな。
ついでに、接点もほぼ無いに等しい。登校中は皆がいるし、かといって、剣術部にはサルファー先輩がいる。入部したとて、ソレイユ先輩と二人っきりになれることはまずないだろう。
だから、俺はここで待つしかない。先輩に告白する勇気もない、意気地無しの俺は。
前に一回だけ、先輩にキスされたことがある。
その時に何か言われた気がするが、キスの衝撃で頭が真っ白になっていたからよく覚えていない。
ただ、その事実のせいで少しだけ、ほんの少しだけ、先輩も俺のことを思ってくれてるんじゃないかと期待してしまっている自分がいる。
まぁ、それ以降スキンシップが皆無なので、最近はあのキス自体が、俺が先輩を思いすぎて見た夢なんじゃないかという気さえしてくる始末だ。
……何だか泣きたくなってきたな……もう考えるのは止めよう。
長い溜め息を吐いた俺は、気がつけば自分の右耳へと手を伸ばしていた。指先に飾りの石が触れる。ソレイユ先輩から、お守り代わりに貰ったピアスの片割れ。雫の形をした、オレンジ色の天然石を摘んで軽く撫でる。硬くて冷たい。
「ソレイユ先輩……会いたいよ……早く来ないかな……」
「……オレのこと呼んだ?」
すぐさまガコンと音を立てて落ちてきた、お目当ての缶ジュース。受け取り口から取り出した缶のパッケージには、瑞々しいオレンジの断面が印刷されている。色鮮やかで、夕焼け空を思い出させるような。あの人との髪色と、瞳の色と同じオレンジ。
ひんやりと俺の手を冷やしていく細身の缶をぼんやりと眺めながら、すぐ側にあるベンチへと腰を下ろした。
……後、どのくらいだろう……どのくらい待てば。
ズボンのポケットから端末を取り出して、時間を確認する。表示された時刻は、まだ、いつもの時間には程遠かった。
「後、三時間……か」
俯く俺の小さなボヤきが、誰もいないアスファルトへと落ちていく。
あの騒動以降、ライと一緒に無事にこの世界へと帰ってこられてから、俺は放課後になるとこの自販機へと足げく通っている。
理由は単純明快。好きな人と会う為だ。
彼は、ソレイユ先輩は、この自販機にあるジュースがお気に入り。でも、このメーカーのオレンジジュースは、学園とここでしか置いていないらしい。だから、先輩はいつも部活帰りにこの自販機を訪れて、ジュースを買うのだ。
それを俺は待っている。通い詰めた甲斐もあり、大体どの時間にソレイユ先輩が来るのかも分かってきた。
とはいえ、万が一にでも部活が早く終わって、先輩と入れ違いにでもなってしまったら泣くに泣けない。結果、いつも同じ時間にここで先輩が来るのを、ひたすら待っているって訳で。
うん、完全にストーカーだな俺。
勘のいい先輩のことだ。多分、俺が待ち伏せをしていることには気付いているだろう。
でも先輩はイヤな顔一つしない。いつも決まって「偶然だね」とか「最近よく会うね」と気付いていないフリをしてくれている。微笑みかけてくれて「ちょっと、オニーサンに付き合ってくれない?」と俺の隣に腰掛けてくれるのだ。
そうして、他愛のない話をしてから「一人じゃ危ないでしょう?」と俺の部屋の前まで送ってくれる。そんな先輩の優しさに、俺は甘えてしまっている。
今日だって、いつもの人が良さそうな笑顔で俺を許してくれるだろう。きっと。
……ソレイユ先輩への恋心を自覚して、思い知ったことがある。俺は、先輩のことをほとんど知らないということを。
好きなもの、嫌いなもの、好みのタイプ。そんな些細なことですら。
……先輩、聞き上手だから、気がついたら俺ばっかり喋っちゃってんだよな。
ついでに、接点もほぼ無いに等しい。登校中は皆がいるし、かといって、剣術部にはサルファー先輩がいる。入部したとて、ソレイユ先輩と二人っきりになれることはまずないだろう。
だから、俺はここで待つしかない。先輩に告白する勇気もない、意気地無しの俺は。
前に一回だけ、先輩にキスされたことがある。
その時に何か言われた気がするが、キスの衝撃で頭が真っ白になっていたからよく覚えていない。
ただ、その事実のせいで少しだけ、ほんの少しだけ、先輩も俺のことを思ってくれてるんじゃないかと期待してしまっている自分がいる。
まぁ、それ以降スキンシップが皆無なので、最近はあのキス自体が、俺が先輩を思いすぎて見た夢なんじゃないかという気さえしてくる始末だ。
……何だか泣きたくなってきたな……もう考えるのは止めよう。
長い溜め息を吐いた俺は、気がつけば自分の右耳へと手を伸ばしていた。指先に飾りの石が触れる。ソレイユ先輩から、お守り代わりに貰ったピアスの片割れ。雫の形をした、オレンジ色の天然石を摘んで軽く撫でる。硬くて冷たい。
「ソレイユ先輩……会いたいよ……早く来ないかな……」
「……オレのこと呼んだ?」
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