気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件～恋人ルート～

細マッチョな先輩と恋人同士になった件（ソレイユルート）

先輩がカッコよくなくなるなんて、キレイじゃなくなるなんて、そんなことある訳が

　両の頬に添えられた手のひら。包み込むような温かさが、じんわりと胸に染み渡っていく。広がりかけていた暗い罪悪感を、見る見る内に払いのけていってくれる。

「……感じちゃってる声も、顔も、スゴく可愛かったよ……」

　優しい声が、先のみっともない俺を肯定してくれる。あんな俺でも受け入れてくれるのだと。

「……ホント？　俺、汚しちゃったのに……先輩、カッコよくて、キレイなのに……」

　弾かれたように顔を上げた俺の言葉に、先輩は眉を下げて首を傾げた。

「んー……じゃあ、今のオレはカッコよくない？　キレイじゃなくなっちゃった？」

　そんなこと、ある訳が。

「違っ、今もさっきもずっとカッコよくて、キレイで……困っちゃってた……見たことない先輩が見れて、ドキドキしちゃうくらいエッチで」

「じゃあ、いいんじゃない？」

　あっけらかんとした声で言いながら先輩がへらりと笑う。そうして、また優しく尋ねてきた。包み込むように触れている俺の頬を、ゆるゆると撫でてくれながら。

「お互いハッピーなんだしさ。オレは、可愛くてエッチなシュンちゃんが見れて大満足。シュンちゃんもオレに惚れ直してくれたんでしょ？」

　言われてみれば。先輩が言ってくれていることを全面的に信じれば、確かに問題はない。現に、俺は嬉しさしかなかったし。全部が全部、スゴく……気持ちよかったし。

「うん……あ、でもエッチなことしてもらえなくても惚れ直してたから！　先輩が一緒に居てくれるだけで、ずっと好きが増えていっていたっていうか、おわっ」

　何度目だろう。いきなり天井と先輩のツーショットが見えたのは。何が原因なのかは分からない。けれども先輩は、また俺を押し倒してくれている。

　軽く叩きつけられるような感触がしなかったのは、回されていた腕のお陰。背中を支えてくれていた腕が、カーペットへとそっと下ろしてくれる。

　自由になった手が俺の顔の横へ置かれた。もう一方と一緒に。俺を逃さないようにするかのように。

　見下ろしてくる先輩の瞳は、もう優しく微笑んではくれない。鋭く見つめてくる眼差しは、俺の胸の内すら見通してしまいそう。

　……また、襲ってもらえるのかな？　今度はどんなこと、されちゃうんだろう。

　どこまでいっても尽きる気配のない自分の欲に、内心うんざりする。けれども期待に胸が高鳴るばかり。それどころか、身体の奥の方まで疼いてしまう。

　よっぽど物欲しそうに見つめてしまっていたんだろうか、不意に先輩の表情が緩んでいく。どこわざとらしい溜め息を吐いてから、バツが悪そうに唇を尖らせた。

「ズルいよ、シュンちゃん……もっとキミとそういうこと、したくなっちゃうじゃん……」

　……俺と、そういうことを。

　……ん？　そういうことって、エッチなこと……だよな？　それをしたいって？　したくなっちゃうって？　ってことは、先輩……

「じゃ、じゃあ、先輩……え、エッチなこと……苦手って訳じゃないの？」

「は？」

　不機嫌そうな、不思議そうな声を出した先輩は、納得がいかないって顔をしていた。

「何でそういう話に…………あー……」

　けれどもすぐに自己完結したよう。納得したような顔をしてから、手のひらで目元を覆った。

「オレのせい、か……」