気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

文字の大きさ
353 / 645
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

先輩と比べりゃあ、俺なんか

しおりを挟む
「ふ、んぁ……ん、ん……ソレイユ……」

 ついばむような優しいキス。柔らかな唇が重ねられるだけで、確かな喜びを俺は感じていた。でも、そんな幸せもすぐに終わってしまった。

「……あ」

 もうちょっとして欲しかった。

 ついこぼれてしまっていた素直な不満に、物欲しげな声に、先輩は気づいているハズだ。なんせ、くすくす笑っているからな。

 でも、続きをしてはくれない。優しい手つきで頭を撫でてくれるだけだ。いや、撫でてもらえるのも嬉しいんだけどさ。

 ……色々と触れてもらえるようになってから、だよな。俺、なんか、どんどん我儘になってきて。

「……ね、シュン」

「は、はい。なんでしょう?」

「明日からさ……準備しない?」

「……準備、ですか?」

 一体、何の? 今日はお泊りしてくれるし、明日は休日。剣術部もお休みだと聞いていたから、デートしてもらえるかなって期待はしているんだけれども。

 考えても浮かんでこない、浮かぶ気配のない俺を見ている瞳が細められる。そっと伸びてきた人差し指が、俺の口をちょんとつついた。

「うん、シュンを抱く準備」

 だく、俺を、先輩が…………抱く?

 じわじわと飲み込めてきた宣言に、落ち着きかけていた心臓が駆け足になる。こみ上げてきた衝動のままに、俺は先輩の手を両手でしっかと握ってしまっていた。

「っ……し、しますっ、頑張りますっ、頑張りますからっ、俺っ」

 前のめりになっている俺を見て、先輩が擽ったそうに笑う。細い眉を片方下げながら、空いている手で宥めるように頭を撫でてくれた。

「ほいほい、ちょっと落ち着いて。喜んでくれるのは嬉しいんだけどさ」

「……すみません」

「フフ、いいよ。それでさぁ、ぶっちゃけオレのってデカいじゃん?」

 軽い調子で尋ねられて思い出された先輩のもの。キレイでカッコいいお顔に似合わず、けれども鍛え抜かれて引き締まった長身には似合っているそれは、贔屓目に見ても長くて太い。

 普通くらいだと思っていた自分のものが、子供サイズなのではと思い知らされたくらいには。だからといって悔しさなんて微塵も湧いてこなくて、それどころか今まで以上の憧れを抱いたのだけれども。

「は、はぃ……その、カッコいい、です……」

「……ん、ありがと」

 さっきの調子はどこへやら。頬をほんのりと染めた先輩の唇は、拗ねたようにちょこんと尖っている。

 釣られて照れてしまったんだろうか。撫でてくれていた指先も、どこかあたふた。俺の髪に触れては離れてを繰り返している。

 そんな可愛い様子に癒やされていると、何やらじっと見つめられてしまった。もしや、機嫌を損ねて?

「あの、先ぱ」

「でさ、シュンちゃんはさ、オレと比べて目茶苦茶繊細でしょ? ちっちゃくて細いし」

「え、ええ……まぁ、そうですね……」

 確かにモデル顔負けなその長身に比べりゃあ俺なんかチビですし。剣術部の二大エースであるその鍛え抜かれた身体に比べりゃあ細いですけども。

 今更な事実を言いながら、俺を撫でる先輩の手つきがなんだか妖しい。手のひらではなく指の腹で、産毛だけを撫でるように触れてくる。

 しなやかな長い指は頬を撫でて、首を撫でて、急に腰にまで伸びてきた。尾てい骨の辺りに触れられると背筋がぞくぞくとして、何だか変な気分になってしまう。

「……ちゃんと筋肉はついてるのにさ、どこもふにふにしてて柔らかいし。良い匂いするし、スッゴく可愛いし」

 手の動きに気を取られている内に、いつの間にやら鼻筋の通った顔が近づいてきていた。

 頬と頬とをするりと擦り寄せてきたかと思えばすぐに離れて、今度は首元に。高い鼻先を擦り寄せた後は、薄い胸板がターゲットに選ばれたらしい。

 鎖骨にそっと唇で触れてから、揉み応えのない俺の胸板に柔らかい頬をくっつけてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...