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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
ソレイユ曰く、初めての試合において大事なことは
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「分かりましたっ、思いっきり行かせてもらいますね!」
「オッケー! 好きなタイミングでかかっておいで?」
タレ目の瞳を楽しそうに細めるソレイユ。彼は先程と同じように俺から少し離れて構えてはいるものの、その立ち姿からはあの異様な圧は感じない。
多分、気を遣って抑えてくれているんだろう。お陰で今度はちゃんと試合を行えそうだ。
手放しかけていた剣を、左足を半歩後ろに下げてから構える。するとソレイユの雰囲気も少しだけ変わった。にこやかだった表情も僅かに引き締まっている。
瞳に宿りかけている鋭い光から目を離さずに、俺は大きく前へと踏み出した。
「行きます!」
ねぇ、シュン、初めての試合において大事なことって何だと思う? それはね……
頭の中でソレイユの言葉が蘇る。高ぶっている鼓動が、重みのある金属を持つ手にまでも響いている。
彼との間のほんの数歩が長く感じる。もうすぐ近くなのに永遠と届きそうにないような。
いや、俺の身体が何かに引っ張られている。重たくて暗い何かが、剣を持つ腕や足にじっとりと絡みついてきて。
「……ッ、だぁ!!」
腹から声を振り絞りながら、柄を強く握り締める。体重を乗せるようにしながら、全身を使って剣を左から右へと振り抜いた。
目標には掠りもしなかった。軽やかなステップで半歩後ろへと下がりながら、均整の取れた長身を軽く反らせて、最小限の動きだけであっさりと避けられてしまっていた。でも。
「おっ、いいね。そうそう、今みたいに躊躇わないってのが大事だよ。どうしても皆、最初は人に剣を振るうことを怖がっちゃうからね」
ちゃんと教え通りに出来た俺を、ソレイユは嬉しそうに目尻を下げて褒めてくれた。
なんなら、頭を撫でてくれようともしたのかもしれない。たった一振りで息を乱している俺の方へと一歩踏み出そうとして足を止め、伸ばしかけて行き場を失った手をそそくさと引っ込めていた。あくまで自身の髪を整えようとしたんだと誤魔化すように後ろ頭を撫でていたんだからさ。
「……普通の反応なんだけどね、試合とはいえ攻撃をしかけようとしているんだからさ」
俺に言っているような、自分に言っているような。軽く俯いてきながら、草っぱらに吐き捨てるように小さく呟いてから、ソレイユは再び俺に向かって構え直す。
「ソレイ」
「ほらほら、もっとかかっておいで? まだまだこんなもんじゃないでしょ? 思いっきり、なんだからさ」
俺の声をかき消すように、ソレイユは声を張り上げた。顔を上げたことで見えた表情は、声色と同じで晴れやかだった。
「……はい!」
答えると同時に身体が動いていた。一度、重たい感覚を振り切れたからだろうか。少しだけ剣が軽くなったような、手に馴染んできているような。
「でぇい!!」
「いいよ、いいよ、さっきよりも軸がブレてなかったね。今度は続けて振ってみようか?」
まるで練習の時のよう。俺がソレイユに向かって剣を振るう度に、彼は良かったところを教えてくれる。
「ああー、今のはもうちょっと溜めた方が良かったかな。それから、一気に振り抜くっていうか……よしっ、もう一回やってみようか」
直した方がいいところはアドバイスを添えてくれながら。それらを全て、俺の攻撃を軽々と避けながら、時には足ですんなりと受け流しながら言ってくるのだ。
「オッケー! 好きなタイミングでかかっておいで?」
タレ目の瞳を楽しそうに細めるソレイユ。彼は先程と同じように俺から少し離れて構えてはいるものの、その立ち姿からはあの異様な圧は感じない。
多分、気を遣って抑えてくれているんだろう。お陰で今度はちゃんと試合を行えそうだ。
手放しかけていた剣を、左足を半歩後ろに下げてから構える。するとソレイユの雰囲気も少しだけ変わった。にこやかだった表情も僅かに引き締まっている。
瞳に宿りかけている鋭い光から目を離さずに、俺は大きく前へと踏み出した。
「行きます!」
ねぇ、シュン、初めての試合において大事なことって何だと思う? それはね……
頭の中でソレイユの言葉が蘇る。高ぶっている鼓動が、重みのある金属を持つ手にまでも響いている。
彼との間のほんの数歩が長く感じる。もうすぐ近くなのに永遠と届きそうにないような。
いや、俺の身体が何かに引っ張られている。重たくて暗い何かが、剣を持つ腕や足にじっとりと絡みついてきて。
「……ッ、だぁ!!」
腹から声を振り絞りながら、柄を強く握り締める。体重を乗せるようにしながら、全身を使って剣を左から右へと振り抜いた。
目標には掠りもしなかった。軽やかなステップで半歩後ろへと下がりながら、均整の取れた長身を軽く反らせて、最小限の動きだけであっさりと避けられてしまっていた。でも。
「おっ、いいね。そうそう、今みたいに躊躇わないってのが大事だよ。どうしても皆、最初は人に剣を振るうことを怖がっちゃうからね」
ちゃんと教え通りに出来た俺を、ソレイユは嬉しそうに目尻を下げて褒めてくれた。
なんなら、頭を撫でてくれようともしたのかもしれない。たった一振りで息を乱している俺の方へと一歩踏み出そうとして足を止め、伸ばしかけて行き場を失った手をそそくさと引っ込めていた。あくまで自身の髪を整えようとしたんだと誤魔化すように後ろ頭を撫でていたんだからさ。
「……普通の反応なんだけどね、試合とはいえ攻撃をしかけようとしているんだからさ」
俺に言っているような、自分に言っているような。軽く俯いてきながら、草っぱらに吐き捨てるように小さく呟いてから、ソレイユは再び俺に向かって構え直す。
「ソレイ」
「ほらほら、もっとかかっておいで? まだまだこんなもんじゃないでしょ? 思いっきり、なんだからさ」
俺の声をかき消すように、ソレイユは声を張り上げた。顔を上げたことで見えた表情は、声色と同じで晴れやかだった。
「……はい!」
答えると同時に身体が動いていた。一度、重たい感覚を振り切れたからだろうか。少しだけ剣が軽くなったような、手に馴染んできているような。
「でぇい!!」
「いいよ、いいよ、さっきよりも軸がブレてなかったね。今度は続けて振ってみようか?」
まるで練習の時のよう。俺がソレイユに向かって剣を振るう度に、彼は良かったところを教えてくれる。
「ああー、今のはもうちょっと溜めた方が良かったかな。それから、一気に振り抜くっていうか……よしっ、もう一回やってみようか」
直した方がいいところはアドバイスを添えてくれながら。それらを全て、俺の攻撃を軽々と避けながら、時には足ですんなりと受け流しながら言ってくるのだ。
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