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【新婚旅行編】十一日目:我慢の時
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私の頬を熱くする手に手を重ね、口付けようとしていたところで、おあずけをされてしまう。残り僅かな距離を詰め切る前に押し返されてしまった。
手のひらに込められている力は可愛らしい。強引に……とまでいかなくとも、への字になった唇を奪うこと自体は容易い。
だが、今は我慢の時だ。アオイからしようとして下さっている。私を押し留めようとしているのは、そういう意思表示だろうから。
「っ、そんな余裕でいられるのも、今の内だからねっ」
唸りながらアオイが高めの声で吠える。またしても、ピンっと立たせた耳と尻尾が見えてきてしまいそうだ。
今も尚、アオイの目には余裕に満ちた私が映っているらしい。実際は、彼からの愛を今か今かと心待ちにしている、ただの男しか居ないのだが。
余裕など無い。言葉でも、行動でも、幾度となく伝えてきているというのに。いまだに私への認識が変わってはいないとは。結果として、格好をつけたままでいられていること自体は有り難いのですが。
小さな手が、私の襟元を掴む。緩やかな丸みを帯びた頬を不満とばかりに膨らませながら、先ずはとばかりに私の服を脱がせにかかってきた。
いつものアオイであれば、この際にも頬を赤らめたり、ボタンを外そうとして指先を震わせたりと初々しい反応を見せてくれるのだが。
流石に今は対抗意識を燃やしていらっしゃるからか、そのような素振りは全く。寧ろ手際がいい。せっせとボタンを外されてしまっていた。
ただ羽織るだけになったカッターシャツ。すぐに脱がされることになるだろうと、その際には協力をさせて頂いた方が宜しいだろうと、私から手を付けることなく成り行きを見守っていたところ、予想外のことが。
晒された鎖骨辺りに、小さな唇が寄せられた。此方もまた戸惑いなく触れてきたのだ。
「っ……」
急なことではあったが格好悪く驚きの声を上げてしまうことはなく、吐息を漏らしてしまうだけで済んだ。アオイは私を見つめてくることはなく、無心で口付けを繰り返している。
それはさながら、赤子が甘えて指に吸い付いているような。小さな唇でちうちうと口付けてくれること暫く、今度は温い舌先がおずおずと舐めてきた。此方も可愛らしいことこの上ないのだが、何ともこそばゆい。
……頭を撫でて差し上げても構わないだろうか。
心がそわつくままに柔らかな髪に触れていた。やはり熱心に舌を這わせているからか、澄んだ琥珀色の瞳に映してもらえることはなかった。
しかし、気付いてはくれているようだ。喜んでくれてもいるらしい。ふふっと小さな笑みをこぼしてから、手のひらに擦り寄ってきてくれた。
「ん……」
どうやら最後の仕上げに入ったようだ。小さな唇が懸命に吸い付いている。
首元に感じている刺激は些細なもの。しかし、込み上げてくるものがある。どのような些細な触れ合いであったとしても、アオイが、という前提条件が私の胸の内を騒がしく乱すのだ。
何度目かの息継ぎの後、今までよりも強めに吸い付かれて、擽ったさとは異なる感覚が首周りに淡く撫でていく。ちぱっと愛らしいリップ音を鳴らしてから、ほんのりと赤い唇が離れていった。
残されたのは小さな小さな赤い跡。私の可愛いアオイが頑張って、入念に刻みつけてくれた所有印。何度賜わっても鮮やかな喜びが込み上げてくる。言葉に出来ない多幸感が頭の芯まで痺れさせていく。
「ふふっ」
つい笑みがこぼれてしまうのも致し方がないというものだ。
確かめるように指先で証を何度も撫でていると、アオイが空いている手を握ってきた。
「……どう?」
「お上手でしたよ……誠に嬉しく存じます」
「へへ、でしょ?」
胸の内を満たすこの喜びを、一般的な言葉に込めることしか出来ないのは誠に残念だ。しかし、的確な言葉といえば、それしか浮かばない。寧ろ、この世に存在しているのかすらも怪しい。
それでもアオイは喜んでくれた。眩いばかりの笑顔に胸の奥が柔く締め付けられる。
ご機嫌に笑う彼の頬は、より一層柔らかく魅力的に見える。惹かれるがままに触れれば、目尻を下げて擦り寄ってきてくれたのも束の間。
はたと目を見開いたかと思えば、口角がどこか不満気に下がっていってしまう。
「じゃなくてっ、しない? きゅんっとか、ドキッとかっ」
手のひらに込められている力は可愛らしい。強引に……とまでいかなくとも、への字になった唇を奪うこと自体は容易い。
だが、今は我慢の時だ。アオイからしようとして下さっている。私を押し留めようとしているのは、そういう意思表示だろうから。
「っ、そんな余裕でいられるのも、今の内だからねっ」
唸りながらアオイが高めの声で吠える。またしても、ピンっと立たせた耳と尻尾が見えてきてしまいそうだ。
今も尚、アオイの目には余裕に満ちた私が映っているらしい。実際は、彼からの愛を今か今かと心待ちにしている、ただの男しか居ないのだが。
余裕など無い。言葉でも、行動でも、幾度となく伝えてきているというのに。いまだに私への認識が変わってはいないとは。結果として、格好をつけたままでいられていること自体は有り難いのですが。
小さな手が、私の襟元を掴む。緩やかな丸みを帯びた頬を不満とばかりに膨らませながら、先ずはとばかりに私の服を脱がせにかかってきた。
いつものアオイであれば、この際にも頬を赤らめたり、ボタンを外そうとして指先を震わせたりと初々しい反応を見せてくれるのだが。
流石に今は対抗意識を燃やしていらっしゃるからか、そのような素振りは全く。寧ろ手際がいい。せっせとボタンを外されてしまっていた。
ただ羽織るだけになったカッターシャツ。すぐに脱がされることになるだろうと、その際には協力をさせて頂いた方が宜しいだろうと、私から手を付けることなく成り行きを見守っていたところ、予想外のことが。
晒された鎖骨辺りに、小さな唇が寄せられた。此方もまた戸惑いなく触れてきたのだ。
「っ……」
急なことではあったが格好悪く驚きの声を上げてしまうことはなく、吐息を漏らしてしまうだけで済んだ。アオイは私を見つめてくることはなく、無心で口付けを繰り返している。
それはさながら、赤子が甘えて指に吸い付いているような。小さな唇でちうちうと口付けてくれること暫く、今度は温い舌先がおずおずと舐めてきた。此方も可愛らしいことこの上ないのだが、何ともこそばゆい。
……頭を撫でて差し上げても構わないだろうか。
心がそわつくままに柔らかな髪に触れていた。やはり熱心に舌を這わせているからか、澄んだ琥珀色の瞳に映してもらえることはなかった。
しかし、気付いてはくれているようだ。喜んでくれてもいるらしい。ふふっと小さな笑みをこぼしてから、手のひらに擦り寄ってきてくれた。
「ん……」
どうやら最後の仕上げに入ったようだ。小さな唇が懸命に吸い付いている。
首元に感じている刺激は些細なもの。しかし、込み上げてくるものがある。どのような些細な触れ合いであったとしても、アオイが、という前提条件が私の胸の内を騒がしく乱すのだ。
何度目かの息継ぎの後、今までよりも強めに吸い付かれて、擽ったさとは異なる感覚が首周りに淡く撫でていく。ちぱっと愛らしいリップ音を鳴らしてから、ほんのりと赤い唇が離れていった。
残されたのは小さな小さな赤い跡。私の可愛いアオイが頑張って、入念に刻みつけてくれた所有印。何度賜わっても鮮やかな喜びが込み上げてくる。言葉に出来ない多幸感が頭の芯まで痺れさせていく。
「ふふっ」
つい笑みがこぼれてしまうのも致し方がないというものだ。
確かめるように指先で証を何度も撫でていると、アオイが空いている手を握ってきた。
「……どう?」
「お上手でしたよ……誠に嬉しく存じます」
「へへ、でしょ?」
胸の内を満たすこの喜びを、一般的な言葉に込めることしか出来ないのは誠に残念だ。しかし、的確な言葉といえば、それしか浮かばない。寧ろ、この世に存在しているのかすらも怪しい。
それでもアオイは喜んでくれた。眩いばかりの笑顔に胸の奥が柔く締め付けられる。
ご機嫌に笑う彼の頬は、より一層柔らかく魅力的に見える。惹かれるがままに触れれば、目尻を下げて擦り寄ってきてくれたのも束の間。
はたと目を見開いたかと思えば、口角がどこか不満気に下がっていってしまう。
「じゃなくてっ、しない? きゅんっとか、ドキッとかっ」
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