1,445 / 1,566
【新婚旅行編】最終日:それぞれの言葉で
しおりを挟む
「ああ、料理のお礼か。いいね。俺も、真似させてもらってもいい? 俺が好きだったメニューのこと、書いておきたいな」
ぴるるるっと二つ返事を返している小さな彼。ありがとう、と愛らしく微笑む妻。心温まる光景を見ながら、私もペンを握った。
アオイもまた、よし、書くぞ! と気合を入れてペンを取る。そうして暫くの間、私の耳に入ってきていたのはペンが紙の上を滑る音と、コルテがはためく音だけだったのだが。
「……ね、バアル」
「はい」
「いっぱい書いているみたいだけど……」
ふと穏やかな沈黙を破ったアオイの目線は、またしても興味津々そうに今度は私の手元へと注がれている。
「どうぞ、まだ途中ではございますが」
私もお礼を書いてから、コルテと同様に好みだった料理の感想を。それから私達が外出した際の部屋の片付き具合に対しての感謝を書こうとしていた。
書きかけの手紙を渡せば、アオイは恭しく頭を下げてから両手で丁寧に受け取った。どこか緊張しているようにも見えたその動作に何やら擽ったさを覚えてしまい、思わず笑みがこぼれそうになる。
アオイの目線は私が書いた手紙に釘付けだった。まだ半分ほどしか書けていない文章は、内容をなぞるだけではそれ程までに時間はかからない。
だが、アオイは物語でも読み込んでいるかのように時間をかけて読んでいた。コルテもそんなアオイに寄り添うように彼の肩に止まって、一緒に熱心に読んでいる。
その真剣そうな横顔を眺めていると、アオイが小さく呟いた。
「スゴい……そういうプロっていうか、評論家みたい……」
アオイの言葉にコルテも羽をぴるるるっと鳴らす。
「ありがとう、アオイ、コルテ。褒めてもらえるのは嬉しいのですが……少々、心配で……アオイ、私の文章は小煩くはなってはいないでしょうか?」
「全っ然。俺だったら嬉しいよ。気付いてくれたんだなって、やっぱり見てくれている人っているんだなって……これからも頑張ろうって思えるよ」
「そうですか……アオイに言ってもらえると安心致します」
唯一の懸念が消えたことで、最後まで一気に書き進められそうだ。受け取った時と同じように丁寧に返してくれた手紙を受け取り、再びペンを取る。
「俺のもさ、後で見てもらってもいい? 俺も、バアルに読んでもらえると安心するからさ」
「ええ、勿論。私も書き終わった際にはもう一度、宜しくお願い致します」
「うんっ」
笑みを交わし合う私達の間に、勢いよく飛び込んできたのは緑の輝き。淡い光を瞬かせながらコルテが、自分もいるとアピールしている。
「ふふ、ごめんね。コルテにもお願いしていいかな?」
「申し訳ございません、私も宜しくお願いしても?」
コルテは、仕方がないな、と羽をはためかせてから、テーブルに置いていた私の手とアオイの手の間にちょこんと乗った。
アオイを見つめれば、アオイもまた私を見つめて微笑んでいて。思わず笑い合ったところで、またコルテがどこか不満気に淡い光を瞬かせていた。
ぴるるるっと二つ返事を返している小さな彼。ありがとう、と愛らしく微笑む妻。心温まる光景を見ながら、私もペンを握った。
アオイもまた、よし、書くぞ! と気合を入れてペンを取る。そうして暫くの間、私の耳に入ってきていたのはペンが紙の上を滑る音と、コルテがはためく音だけだったのだが。
「……ね、バアル」
「はい」
「いっぱい書いているみたいだけど……」
ふと穏やかな沈黙を破ったアオイの目線は、またしても興味津々そうに今度は私の手元へと注がれている。
「どうぞ、まだ途中ではございますが」
私もお礼を書いてから、コルテと同様に好みだった料理の感想を。それから私達が外出した際の部屋の片付き具合に対しての感謝を書こうとしていた。
書きかけの手紙を渡せば、アオイは恭しく頭を下げてから両手で丁寧に受け取った。どこか緊張しているようにも見えたその動作に何やら擽ったさを覚えてしまい、思わず笑みがこぼれそうになる。
アオイの目線は私が書いた手紙に釘付けだった。まだ半分ほどしか書けていない文章は、内容をなぞるだけではそれ程までに時間はかからない。
だが、アオイは物語でも読み込んでいるかのように時間をかけて読んでいた。コルテもそんなアオイに寄り添うように彼の肩に止まって、一緒に熱心に読んでいる。
その真剣そうな横顔を眺めていると、アオイが小さく呟いた。
「スゴい……そういうプロっていうか、評論家みたい……」
アオイの言葉にコルテも羽をぴるるるっと鳴らす。
「ありがとう、アオイ、コルテ。褒めてもらえるのは嬉しいのですが……少々、心配で……アオイ、私の文章は小煩くはなってはいないでしょうか?」
「全っ然。俺だったら嬉しいよ。気付いてくれたんだなって、やっぱり見てくれている人っているんだなって……これからも頑張ろうって思えるよ」
「そうですか……アオイに言ってもらえると安心致します」
唯一の懸念が消えたことで、最後まで一気に書き進められそうだ。受け取った時と同じように丁寧に返してくれた手紙を受け取り、再びペンを取る。
「俺のもさ、後で見てもらってもいい? 俺も、バアルに読んでもらえると安心するからさ」
「ええ、勿論。私も書き終わった際にはもう一度、宜しくお願い致します」
「うんっ」
笑みを交わし合う私達の間に、勢いよく飛び込んできたのは緑の輝き。淡い光を瞬かせながらコルテが、自分もいるとアピールしている。
「ふふ、ごめんね。コルテにもお願いしていいかな?」
「申し訳ございません、私も宜しくお願いしても?」
コルテは、仕方がないな、と羽をはためかせてから、テーブルに置いていた私の手とアオイの手の間にちょこんと乗った。
アオイを見つめれば、アオイもまた私を見つめて微笑んでいて。思わず笑い合ったところで、またコルテがどこか不満気に淡い光を瞬かせていた。
8
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる