1,541 / 1,566
【新婚旅行編】後日談:やっぱりね、俺のバアルだもの
しおりを挟む
ヨミ様がぐっと親指を上げれば、レタリーさんは投影石の撮影を止めることなく胸に手を当て会釈で返した。彼の表情はさも当然のように平然としていたけれど、髪色と同じ黄緑色の長い尾羽根はヨミ様に手を振るかのように揺れている。
「……素敵な笑顔をありがとうございます、バアル様。お陰で良い写真が撮れました」
やっぱりね。俺のバアルだもの。
つい口角が上がってしまう。自覚してすぐに緩みきった口元を引き締めたがもう遅い。息つくヒマもなく投影石が瞬いているのだ。自分のことのようにニヤけていた顔も撮られてしまっていた。
「アオイ殿っ、照れた顔も、その得意気な顔も愛らしいことこの上ないのだが、もっと笑顔をっ、いつもの自然な笑顔を見せてくれ!」
忙しなく飛ぶ指示と、鳴り止まないシャッター音。こういうことは初めてではないとはいえ緊張はするし、やっぱり照れる。
それでも、ちゃんと笑わなければ。どうにか口角を上げようとしていたところで、頬をゆるりと撫でられた。
横を向けば、思いのほか間近にあった整った顔。柔らかな微笑み。バアルは俺の鼻先に、ちょんと尖った高い鼻を猫の挨拶のようにくっつけてきた。
「バア、ふはっ……」
戸惑いと照れが混じった呼びかけは、俺自身が吹き出したことで不発に終わった。
とはいえ、俺は悪くはない。バアルが笑わせてきたからいけないのだ。おまけにやり方がズルい。悪戯に微笑む唇でこちらの耳の上を軽く食んできて、ふっと息まで吹きかけてきたのだから。俺達の正面に居る皆さんからは見えていないのを良いことに。
耳の下にも唇を擦り寄せられて、再び首筋に走った擽ったさから咄嗟に背を逸らそうとすれば、その分彼が距離を詰めてくる。腰に回されている腕に、しっかりと抱き寄せられているから逃げることも出来ない。まぁ、そんなつもりはそもそもないけれど。
「ふっ、んふふっ、ちょっと……」
密着してくる筋肉質な分厚い胸板を、手で軽く押しながらの訴えてみたところで全く通じてはいない。バレバレだから。俺が嫌がってなんかいないって。
すっかりバアルも楽しんじゃっているのか、唇の柔らかさだけでなく、小さな笑みまでもが俺の肌を、首を撫でていく。
「も、擽ったいってば……ふはっ、ふふふふ……」
「……素敵な笑顔をありがとうございます、バアル様。お陰で良い写真が撮れました」
やっぱりね。俺のバアルだもの。
つい口角が上がってしまう。自覚してすぐに緩みきった口元を引き締めたがもう遅い。息つくヒマもなく投影石が瞬いているのだ。自分のことのようにニヤけていた顔も撮られてしまっていた。
「アオイ殿っ、照れた顔も、その得意気な顔も愛らしいことこの上ないのだが、もっと笑顔をっ、いつもの自然な笑顔を見せてくれ!」
忙しなく飛ぶ指示と、鳴り止まないシャッター音。こういうことは初めてではないとはいえ緊張はするし、やっぱり照れる。
それでも、ちゃんと笑わなければ。どうにか口角を上げようとしていたところで、頬をゆるりと撫でられた。
横を向けば、思いのほか間近にあった整った顔。柔らかな微笑み。バアルは俺の鼻先に、ちょんと尖った高い鼻を猫の挨拶のようにくっつけてきた。
「バア、ふはっ……」
戸惑いと照れが混じった呼びかけは、俺自身が吹き出したことで不発に終わった。
とはいえ、俺は悪くはない。バアルが笑わせてきたからいけないのだ。おまけにやり方がズルい。悪戯に微笑む唇でこちらの耳の上を軽く食んできて、ふっと息まで吹きかけてきたのだから。俺達の正面に居る皆さんからは見えていないのを良いことに。
耳の下にも唇を擦り寄せられて、再び首筋に走った擽ったさから咄嗟に背を逸らそうとすれば、その分彼が距離を詰めてくる。腰に回されている腕に、しっかりと抱き寄せられているから逃げることも出来ない。まぁ、そんなつもりはそもそもないけれど。
「ふっ、んふふっ、ちょっと……」
密着してくる筋肉質な分厚い胸板を、手で軽く押しながらの訴えてみたところで全く通じてはいない。バレバレだから。俺が嫌がってなんかいないって。
すっかりバアルも楽しんじゃっているのか、唇の柔らかさだけでなく、小さな笑みまでもが俺の肌を、首を撫でていく。
「も、擽ったいってば……ふはっ、ふふふふ……」
11
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
紳士オークの保護的な溺愛
こむぎこ7g
BL
■ 世界と舞台の概要
ここはオークの国「トールキン」。
魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。
トールキンのオークたちは、
灰色がかった緑や青の肌
鋭く澄んだ眼差し
鍛え上げられた筋骨隆々の体躯
を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。
異世界から来る存在は非常に珍しい。
しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。
⸻
■ ガスパールというオーク
ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。
薄く灰を帯びた緑の肌、
赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。
分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、
銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。
ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、
貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。
● 彼の性格
• 極めて面倒見がよく、観察力が高い
• 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い
• 責任を引き受けることを当然のように思っている
• 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手
どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。
⸻
■ 過去と喪失 ――愛したオーク
ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。
家柄も立場も違う相手だったが、
彼はその伴侶の、
不器用な優しさ
朝食を焦がしてしまうところ
眠る前に必ず手を探してくる癖
を、何よりも大切にしていた。
しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。
現在ガスパールが暮らしているのは、
貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。
華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。
彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。
それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。
⸻
■ 現在の生活
ガスパールは現在、
街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。
多忙な職務の合間にも、
洗濯、掃除、料理
帳簿の整理
屋敷の修繕
をすべて自分でこなす。
仕事、家事、墓参り。
規則正しく、静かな日々。
――あなたが現れるまでは。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる