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とある師匠の弟子の決意
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人間は愚かで醜く弱いもの。それが、地獄で生まれ育った俺達の共通認識だ。一部を除いて。
正直、そうなってしまったのも無理はない。天が見離すような連中しか落ちてこないんだからな、ここには。
……だから、余計に惹かれるんだろう。あの方に、皆も、俺達も。
見上げればマーブル模様のように、青空、夕焼け、星空が混ざり、見下ろせばパッチワークのように、草原、花畑、荒地がツギハギにされた地面が映る。
相変わらず、奇妙な場所だ。地獄と現世の狭間なのだから、二つの世界の要素が入り混じっているのだから、仕方がないのだが。
「師匠!」
聞き慣れた、高い声からの呼びかけに振り向けば、俺の弟子が満面の笑みを浮かべていた。紫色の花を数本、その小さな手に大事そうに握っている。
ベルのような形をした花がいくつも咲いていて、とても愛らしい。アオイ様にも似合いそうだ。
「可愛いな、気に入っていただけるんじゃないか?」
「えへへ、やっぱり師匠もそう思います?」
よっぽど必死に探し回ったんだろう。身に纏う灰色のフードマントの至る所に葉っぱがつき、砂や泥の汚れでシミが出来てしまっている。
取れるものは払い落とし、残りは術で綺麗にしてやれば「ありがとうございますっ」と丸っこい頬がますますふにゃりと綻んだ。
いつものように報告書を提出し、同僚と軽く一服済ませた後でも、まだ弟子は帰ってこない。
まさかとは思い、中庭のベンチへと急ぐ。予想通り、弟子は居た。居たんだが、手放しでは喜べなかった。
鼻歌を口ずさむくらい、ご機嫌だったハズの彼が泣いていたのだから。ボロボロと大粒の涙をこぼしながら、ちょこんと座っていたのだから。
完全にデジャブだ。今日彼が食べているのは、星の形をしたクッキーではなく、薄茶色のカップケーキなのだが。
声はかけずに横に腰掛け、出来るだけ優しく頭を撫でる。しばらくされるがままだったが、突然タックルをする勢いで抱きついてきた。そのまま声を上げ、わんわんと泣き始めてしまった。
一部だけ、濡れに濡れまくった自分のマントに術を施していると、真っ赤になった鼻をすすりながら弟子が小さな頭を下げる。
「……ごめんなさい、師匠」
「気にするな。これくらい、大したことじゃないからな」
「……ありがとう、ございます」
いつもより、か細く感じる彼の背中を、一定のリズムで叩きながら、朝日に照らされ輝く水晶の花々へと視線を移す。
……静かだ、とても。
ここに座って花を眺めていると落ち着くんだと、常々言っている弟子の気持ちがよく分かる。
「…………いただいたんです、アオイ様に……」
少し枯れたような、滲んだような。弟子がぽつりと落とした言葉が、吹き抜ける穏やかな風にのって耳に届く。
「……僕と師匠が作ったお菓子、喜んでいただけたみたいで」
「そうか、良かったな」
隣でくすりと小さく笑った気配がして、明るさをほんの少し取り戻した声が、嬉しそうに「はい」と応えた。
「……その後、サタン様からお話があるって……お部屋に招いてもらって…………それで……」
日が差したのは一瞬だった。続ける声は再び曇って、滲んで、こぼれ出す。透明な雫と一緒にぽろぽろと。
「怒って……ないって……ぐすっ……アオイ様、恨んで……ないって…………それどころか……僕と……っ……師匠のこと……心配して、くださって……」
……涙ってのは、うつるらしい。頬を伝う感触に、慌てて目元を拭ったものの、再び目の奥が熱くなってくしまう。
「……僕、会います…………アオイ様に。お会いして、謝って……お礼を言いたい……」
ゴシゴシと衣が擦れる音がして、ゆっくり、大きく息を吸って吐いた後に紡がれた決意。まだ少し、震えていたけれど、力強い声だった。
「……師匠に一つ、お願いが……あります」
軽くマントを引かれ、視線を横へと向ける。
「…………なんだ?」
「僕のこと……側で、見守っていてくれませんか?」
俯く彼の縋るように布地を握る手は、華奢な身体は、僅かに震えていた。まるで気持ちを代弁しているかのように。
「僕、弱虫だから…………でも、師匠が居てくれると……勇気が、湧いてくるんです。だから……」
「水臭いやつだな、お前は」
「え?」
久々に合った目は、ただでさえくりくりしているのに余計に丸くなっていて、真っ赤になってしまっているのに、頬が思わず緩んでしまう。
「俺を置いて、一人で行くつもりだったのか?」
「だ、だって……師匠は何も悪くないから……僕のせいで、巻き込まれただけで……何も……」
声を震わせながらも、真っ直ぐに俺を見つめてくる。彼の、こういう芯の強さは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
強すぎて、強くならなければと思い過ぎて、一人で抱え込もうとするのは、難点だが。
「つったく……それが水臭いって、言ってんだろうが」
「でも……」
「うるせぇな……お前の責任は、師匠である俺の責任だ。勝手に一人で背負うな、よこせ。いいな?」
だってだの、でもだの、ぶつぶつぼやいている口を、柔い頬を掴んで無理矢理止める。
指でむにゅっと挟まれ、へちゃむくれになってしまったのが恥ずかしかったんだろう。鼻先にある白い頬が、あっという間に赤く染まった。
「ひゃ、ひゃい……」
「よし、決まりだな。なんか、一段落ついたら腹が減ってきたな……」
「あ、師匠も一緒に食べましょうよ! カップケーキ」
すっごく美味しいんですよっ! と顔を輝かせ、3つのカップケーキが並ぶ、可愛らしい緑のリボンが結ばれた透明な袋を、俺に向かって指し示す。
「いいのか? お前のだろ」
「師匠も手伝ってくれたじゃないですか、お菓子作り。だから半分こしましょう、ね?」
「……じゃあ、遠慮なくいただこうか」
はいっどうぞ! と差し出された黄色のケーキは、俺の弟子が太鼓判を押すだけあって、とても美味しかった。優しい甘さに、また少しだけ、目の奥が熱くなった。
正直、そうなってしまったのも無理はない。天が見離すような連中しか落ちてこないんだからな、ここには。
……だから、余計に惹かれるんだろう。あの方に、皆も、俺達も。
見上げればマーブル模様のように、青空、夕焼け、星空が混ざり、見下ろせばパッチワークのように、草原、花畑、荒地がツギハギにされた地面が映る。
相変わらず、奇妙な場所だ。地獄と現世の狭間なのだから、二つの世界の要素が入り混じっているのだから、仕方がないのだが。
「師匠!」
聞き慣れた、高い声からの呼びかけに振り向けば、俺の弟子が満面の笑みを浮かべていた。紫色の花を数本、その小さな手に大事そうに握っている。
ベルのような形をした花がいくつも咲いていて、とても愛らしい。アオイ様にも似合いそうだ。
「可愛いな、気に入っていただけるんじゃないか?」
「えへへ、やっぱり師匠もそう思います?」
よっぽど必死に探し回ったんだろう。身に纏う灰色のフードマントの至る所に葉っぱがつき、砂や泥の汚れでシミが出来てしまっている。
取れるものは払い落とし、残りは術で綺麗にしてやれば「ありがとうございますっ」と丸っこい頬がますますふにゃりと綻んだ。
いつものように報告書を提出し、同僚と軽く一服済ませた後でも、まだ弟子は帰ってこない。
まさかとは思い、中庭のベンチへと急ぐ。予想通り、弟子は居た。居たんだが、手放しでは喜べなかった。
鼻歌を口ずさむくらい、ご機嫌だったハズの彼が泣いていたのだから。ボロボロと大粒の涙をこぼしながら、ちょこんと座っていたのだから。
完全にデジャブだ。今日彼が食べているのは、星の形をしたクッキーではなく、薄茶色のカップケーキなのだが。
声はかけずに横に腰掛け、出来るだけ優しく頭を撫でる。しばらくされるがままだったが、突然タックルをする勢いで抱きついてきた。そのまま声を上げ、わんわんと泣き始めてしまった。
一部だけ、濡れに濡れまくった自分のマントに術を施していると、真っ赤になった鼻をすすりながら弟子が小さな頭を下げる。
「……ごめんなさい、師匠」
「気にするな。これくらい、大したことじゃないからな」
「……ありがとう、ございます」
いつもより、か細く感じる彼の背中を、一定のリズムで叩きながら、朝日に照らされ輝く水晶の花々へと視線を移す。
……静かだ、とても。
ここに座って花を眺めていると落ち着くんだと、常々言っている弟子の気持ちがよく分かる。
「…………いただいたんです、アオイ様に……」
少し枯れたような、滲んだような。弟子がぽつりと落とした言葉が、吹き抜ける穏やかな風にのって耳に届く。
「……僕と師匠が作ったお菓子、喜んでいただけたみたいで」
「そうか、良かったな」
隣でくすりと小さく笑った気配がして、明るさをほんの少し取り戻した声が、嬉しそうに「はい」と応えた。
「……その後、サタン様からお話があるって……お部屋に招いてもらって…………それで……」
日が差したのは一瞬だった。続ける声は再び曇って、滲んで、こぼれ出す。透明な雫と一緒にぽろぽろと。
「怒って……ないって……ぐすっ……アオイ様、恨んで……ないって…………それどころか……僕と……っ……師匠のこと……心配して、くださって……」
……涙ってのは、うつるらしい。頬を伝う感触に、慌てて目元を拭ったものの、再び目の奥が熱くなってくしまう。
「……僕、会います…………アオイ様に。お会いして、謝って……お礼を言いたい……」
ゴシゴシと衣が擦れる音がして、ゆっくり、大きく息を吸って吐いた後に紡がれた決意。まだ少し、震えていたけれど、力強い声だった。
「……師匠に一つ、お願いが……あります」
軽くマントを引かれ、視線を横へと向ける。
「…………なんだ?」
「僕のこと……側で、見守っていてくれませんか?」
俯く彼の縋るように布地を握る手は、華奢な身体は、僅かに震えていた。まるで気持ちを代弁しているかのように。
「僕、弱虫だから…………でも、師匠が居てくれると……勇気が、湧いてくるんです。だから……」
「水臭いやつだな、お前は」
「え?」
久々に合った目は、ただでさえくりくりしているのに余計に丸くなっていて、真っ赤になってしまっているのに、頬が思わず緩んでしまう。
「俺を置いて、一人で行くつもりだったのか?」
「だ、だって……師匠は何も悪くないから……僕のせいで、巻き込まれただけで……何も……」
声を震わせながらも、真っ直ぐに俺を見つめてくる。彼の、こういう芯の強さは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
強すぎて、強くならなければと思い過ぎて、一人で抱え込もうとするのは、難点だが。
「つったく……それが水臭いって、言ってんだろうが」
「でも……」
「うるせぇな……お前の責任は、師匠である俺の責任だ。勝手に一人で背負うな、よこせ。いいな?」
だってだの、でもだの、ぶつぶつぼやいている口を、柔い頬を掴んで無理矢理止める。
指でむにゅっと挟まれ、へちゃむくれになってしまったのが恥ずかしかったんだろう。鼻先にある白い頬が、あっという間に赤く染まった。
「ひゃ、ひゃい……」
「よし、決まりだな。なんか、一段落ついたら腹が減ってきたな……」
「あ、師匠も一緒に食べましょうよ! カップケーキ」
すっごく美味しいんですよっ! と顔を輝かせ、3つのカップケーキが並ぶ、可愛らしい緑のリボンが結ばれた透明な袋を、俺に向かって指し示す。
「いいのか? お前のだろ」
「師匠も手伝ってくれたじゃないですか、お菓子作り。だから半分こしましょう、ね?」
「……じゃあ、遠慮なくいただこうか」
はいっどうぞ! と差し出された黄色のケーキは、俺の弟子が太鼓判を押すだけあって、とても美味しかった。優しい甘さに、また少しだけ、目の奥が熱くなった。
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⸻
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⸻
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