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え? 俺がパンツ下げるの? バアルさんの? 無理でわ?
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「……ゆっくりで宜しいですよ」
「……は、はい」
とはいえ……まさか、彼の着替えを俺が手伝うことになるとは、思ってもみなかったんだけど……
さっきから指の震えは止まらないわ、ボタンを一つ外す度に逞しい胸板があらわになっていくわで。ホント、心臓に悪いどころの騒ぎじゃない。どうにかなってしまいそうだ。
いや、まぁ……好きな人の服を俺の手で、脱がさせていただいてるってのに。そんな落ち着いていられるかって話なんだけどさ。
前々から分かってはいたけど……やっぱりスゴイ、筋肉が。
彫刻かな? ってくらいに立体的っていうか、綺麗に盛り上がってて。でも、締まるところは、ちゃんと締まってるし。とにかく凄くカッコいい。
鍛え抜かれた彼の男らしい身体つきに、俺はすっかり見惚れてしまっていた。頭の中が、ただただカッコいいという感想で埋め尽くされる程、語彙力どころか、思考能力が低下してしまっていた。
だから、俺は気づいていなかった。とある事実に。
完全に失念してしまっていたんだ。苦戦しながらも、なんとか最後のボタンを外し終えた、その時まで。
……ちょっと待て、上は取り敢えずオッケーとして……下はどうするんだ?
そりゃあ、俺の時と同じで、タオルは当然巻くだろうけどさ……
え、パンツ下げるの? 俺が? 手探りで? バアルさんの? そんでもって水着穿かせるのの? …………無理でわ?
いやでも……バアルさんは、いっつも平気な顔で俺のを脱がせてくれているどころか、そのまま畳んじゃうし……
そもそも折角バアルさんが俺に、「着替えを手伝っていただけませんか?」って頼んでくれたっていうのに……
彼を半裸にし、ズボンのベルトに手をかけようとしたまま止まってしまっている俺の姿は、傍から見れば完全に不審者だろう。
そんな、あきらかに今考えるべきでないことが過ぎってしまうほど、頭の中がぐっちゃぐっちゃになってしまっていた俺の耳に、くつくつと喉の奥で笑うような声が入ってくる。
「あ……すみません、俺、ぼーっとしちゃってて……」
「いえ、お気になさらず。続きはまた……次回に致しましょうか?」
「…………すみません、お願いします……」
結局、俺はギブアップした。自分から誘っといて、やっぱりヘタレてしまった。なのに「ありがとうございます」と頭を撫でてくれた彼の優しさが身にも、心にも沁みる。
瞬きの間にバアルさんは、俺とお揃いの黒いハーフパンツの水着に着替えた。そして、微笑みながら手を差し出してくれる。
彼の手を取った俺は、今度こそ、お互いの背中を流し合う時こそ、彼のようにスマートに決めようっ! と強く拳を握った。握ったのだが……
「……ふふ、そのように遠慮して頂かなくても問題ございませんよ。私めの皮膚は、丈夫に出来ておりますから」
「は、はい……」
……遠慮してるんじゃないんだよなぁ……緊張しすぎて力が入らないだけなんだよなぁ……
小刻みに震え続けている手を見つつ、不甲斐ない自分に心の中で息を吐く。
俺が洗いやすいように、配慮してくれているんだろう。背中から生えている、白い水晶のように透き通った彼の羽は、小さく折り畳まれている。ふんだんに泡が盛られたスポンジを近づければ、ぴょこっと立てて避けてくれる。
実は、後ろも見えているんですよ? なんて言われたら信じてしまいそうだ。というか、バアルさんなら見えてても驚かないけどさ。
スポンジを持った手を支えながら、広い背中に慎重に泡を広げていく。
時々擽ったそうに小さく笑う彼の白い首筋は、ほんのり染まっていて、しっとり濡れた髪が張り付いていた。
……ズルい。カッコいいだけじゃなくて、色っぽいなんて……ホントにズルい。
「……終えられましたか?」
逞しい背中をぽーっと眺めながら、今度はカッコいいなぁ……に加えて、色っぽいなぁ……という感想で、俺はキャパオーバーになってしまっていた。
咄嗟に、はいっと返事をしてしまったことを、すぐさま俺は後悔した。
「では、引き続き宜しくお願い致します」
まだ心構えがきちんと出来ていないのに、ご対面するはめになってしまったんだ。滴り、余計に色気を増した、彼の鍛え上げられた肉体と。
背中だけでもマズかったのに、正面の破壊力がエグすぎる……
「アオイ様、大丈夫ですか?」
振り向きざまに微笑みかけられ、固まってしまっていた俺を、緑の瞳がきょとんと見つめる。
お顔が真っ赤ですよ? と心配そうに目を細めた彼の整った顔がゆっくり近づいてきて、額がちょんと触れた。
それだけで、十分だった。自分の心音しか聞こえないくらいに鼓動を高鳴らせ、くらくらするほど体温が上がってしまっていた俺にトドメをさすには。
「アオイ様っ?!」
ぺちゃんとスポンジが青い石造りの床へと力なく倒れ込む。続けてぺたんとへたれ込んでしまった俺を、筋肉質の腕が軽々と抱き抱えてくれた。
「……だ、大丈夫です……ちょっと、腰が抜けちゃっただけで……」
「申し訳ございませんでした……私がついていながら……今すぐ上がりましょう。のぼせられたのかもしれません」
「え……でも、まだ一緒にお風呂……」
「明日でも……毎日でもご一緒致します。ですから今は、ご自身の体調を一番にお考えください……」
泣いてしまいそうなくらいに顔を歪ませ、唇を噛む彼の苦しそうな表情に胸が締めつけられる。
俺の手を握り懇願する彼に、ただ俺は頷くことしか出来なかった。
「……は、はい」
とはいえ……まさか、彼の着替えを俺が手伝うことになるとは、思ってもみなかったんだけど……
さっきから指の震えは止まらないわ、ボタンを一つ外す度に逞しい胸板があらわになっていくわで。ホント、心臓に悪いどころの騒ぎじゃない。どうにかなってしまいそうだ。
いや、まぁ……好きな人の服を俺の手で、脱がさせていただいてるってのに。そんな落ち着いていられるかって話なんだけどさ。
前々から分かってはいたけど……やっぱりスゴイ、筋肉が。
彫刻かな? ってくらいに立体的っていうか、綺麗に盛り上がってて。でも、締まるところは、ちゃんと締まってるし。とにかく凄くカッコいい。
鍛え抜かれた彼の男らしい身体つきに、俺はすっかり見惚れてしまっていた。頭の中が、ただただカッコいいという感想で埋め尽くされる程、語彙力どころか、思考能力が低下してしまっていた。
だから、俺は気づいていなかった。とある事実に。
完全に失念してしまっていたんだ。苦戦しながらも、なんとか最後のボタンを外し終えた、その時まで。
……ちょっと待て、上は取り敢えずオッケーとして……下はどうするんだ?
そりゃあ、俺の時と同じで、タオルは当然巻くだろうけどさ……
え、パンツ下げるの? 俺が? 手探りで? バアルさんの? そんでもって水着穿かせるのの? …………無理でわ?
いやでも……バアルさんは、いっつも平気な顔で俺のを脱がせてくれているどころか、そのまま畳んじゃうし……
そもそも折角バアルさんが俺に、「着替えを手伝っていただけませんか?」って頼んでくれたっていうのに……
彼を半裸にし、ズボンのベルトに手をかけようとしたまま止まってしまっている俺の姿は、傍から見れば完全に不審者だろう。
そんな、あきらかに今考えるべきでないことが過ぎってしまうほど、頭の中がぐっちゃぐっちゃになってしまっていた俺の耳に、くつくつと喉の奥で笑うような声が入ってくる。
「あ……すみません、俺、ぼーっとしちゃってて……」
「いえ、お気になさらず。続きはまた……次回に致しましょうか?」
「…………すみません、お願いします……」
結局、俺はギブアップした。自分から誘っといて、やっぱりヘタレてしまった。なのに「ありがとうございます」と頭を撫でてくれた彼の優しさが身にも、心にも沁みる。
瞬きの間にバアルさんは、俺とお揃いの黒いハーフパンツの水着に着替えた。そして、微笑みながら手を差し出してくれる。
彼の手を取った俺は、今度こそ、お互いの背中を流し合う時こそ、彼のようにスマートに決めようっ! と強く拳を握った。握ったのだが……
「……ふふ、そのように遠慮して頂かなくても問題ございませんよ。私めの皮膚は、丈夫に出来ておりますから」
「は、はい……」
……遠慮してるんじゃないんだよなぁ……緊張しすぎて力が入らないだけなんだよなぁ……
小刻みに震え続けている手を見つつ、不甲斐ない自分に心の中で息を吐く。
俺が洗いやすいように、配慮してくれているんだろう。背中から生えている、白い水晶のように透き通った彼の羽は、小さく折り畳まれている。ふんだんに泡が盛られたスポンジを近づければ、ぴょこっと立てて避けてくれる。
実は、後ろも見えているんですよ? なんて言われたら信じてしまいそうだ。というか、バアルさんなら見えてても驚かないけどさ。
スポンジを持った手を支えながら、広い背中に慎重に泡を広げていく。
時々擽ったそうに小さく笑う彼の白い首筋は、ほんのり染まっていて、しっとり濡れた髪が張り付いていた。
……ズルい。カッコいいだけじゃなくて、色っぽいなんて……ホントにズルい。
「……終えられましたか?」
逞しい背中をぽーっと眺めながら、今度はカッコいいなぁ……に加えて、色っぽいなぁ……という感想で、俺はキャパオーバーになってしまっていた。
咄嗟に、はいっと返事をしてしまったことを、すぐさま俺は後悔した。
「では、引き続き宜しくお願い致します」
まだ心構えがきちんと出来ていないのに、ご対面するはめになってしまったんだ。滴り、余計に色気を増した、彼の鍛え上げられた肉体と。
背中だけでもマズかったのに、正面の破壊力がエグすぎる……
「アオイ様、大丈夫ですか?」
振り向きざまに微笑みかけられ、固まってしまっていた俺を、緑の瞳がきょとんと見つめる。
お顔が真っ赤ですよ? と心配そうに目を細めた彼の整った顔がゆっくり近づいてきて、額がちょんと触れた。
それだけで、十分だった。自分の心音しか聞こえないくらいに鼓動を高鳴らせ、くらくらするほど体温が上がってしまっていた俺にトドメをさすには。
「アオイ様っ?!」
ぺちゃんとスポンジが青い石造りの床へと力なく倒れ込む。続けてぺたんとへたれ込んでしまった俺を、筋肉質の腕が軽々と抱き抱えてくれた。
「……だ、大丈夫です……ちょっと、腰が抜けちゃっただけで……」
「申し訳ございませんでした……私がついていながら……今すぐ上がりましょう。のぼせられたのかもしれません」
「え……でも、まだ一緒にお風呂……」
「明日でも……毎日でもご一緒致します。ですから今は、ご自身の体調を一番にお考えください……」
泣いてしまいそうなくらいに顔を歪ませ、唇を噛む彼の苦しそうな表情に胸が締めつけられる。
俺の手を握り懇願する彼に、ただ俺は頷くことしか出来なかった。
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