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遠く、愛しい貴方様に導かれて
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……落ちていく。
暗闇の中、深淵の底を目指してただひたすらに落ちていく。遥か彼方で僅かに輝く灯りを目指して、真っ直ぐに。
……いや、しかし、果たして私はちゃんと落ちていけているのだろうか。
いつもならば、次第に強くなる灯りによって大穴の底が、浄化の炎が照らす祭壇が、近いのだと分かる筈。
だが、今はどうだ。視界を真っ黒に染める穢れのせいで、よく分からない。
正しく落ちていけているのかも。間違えて、地上へと上がってしまっているのかも。もしくは、左右のどちらかへと飛んでいってしまっているのかも、全く。
心に巣くい始めた不安を、焦りを煽るかのようだ。穢れによって失われていく魔力の量も増していく。
ゆっくりゆっくり刻んでいた、カウントダウン。死の足音がだんだんと近く、速く、大きくなっていく。
「…………もう、三分の一ほど……でしょうか……」
つい漏れてしまっていた、誰にも届くことのない弱音。乾いた喉から絞り出していた声は、自分でも驚くほどに弱々しかった。
相変わらず、遥か先で光る灯りの大きさは変わらない。だというのに、現時点でいつも以上の魔力を奪われてしまっている。
身体にも支障が出始めている。急がねばならないのに、上手く羽ばたくことが出来ない。
少し前から冷たくなっている指先は、足先は、感覚すらも失ってしまっている。ただ、ぼんやりと認識出来るだけだ。まだ、なんとか腕も足も付いているのだと。
不意に音がした。ここは地獄中から集めた穢れが満ちる深淵。眩い生命など一切息づけぬ場所。私の呼吸音しか聞こえない筈。
だが、聞こえる。何かがひび割れ、今にも砕け散ってしまいそうな乾いた音が。
…………ああ、そうか。
……私か。私の心の音か。
自覚した途端、自分の心が折れかけているのだと認めた途端、息が上手く出来なくなった。
……苦しい…………何も見えない。唯一私の導となっていた灯りさえ。
……重たい…………触覚さえ動かない。身体が言うことを聞いてくれない。
全身に広がっていく薄気味悪い何かが、じわじわと私を内側から喰らっていく。魔力を、感覚を奪っていく。
………………もう、私は…………
…………………………………………
……………………………っ……
…………ル、……さ……
バアルさんっ!
「……アオイ、様……」
かひゅっと鳴った喉に新鮮な空気が流れ込む。
居られる筈がないのに聞こえた、私を呼ぶ声。愛しくて愛しくて仕方がない可愛らしい声。
「帰らなければ……あの方の元へ」
不思議だ。改めて、そう決意した瞬間、壊れる寸前だった心が熱くなる。
重たくて仕方がなかった身体が軽くなる。枯れかけていた筈の魔力が湧き上がってくる。
まだ、動ける。まだ、飛べる。
「アオイ……待っていて下さい。必ずや、貴方様のお側へ戻ります」
ただ名前を声に乗せるだけで、眩しい笑顔を思い浮かべるだけで、冷え切っていた身体が、心が、温もりで満たされていく。
まるで、アオイ様が導いてくれたようだ。めいいっぱい羽ばたいた途端、あれほど濃かった穢れが瞬く間に晴れていく。
久方ぶりに地に足をつけた私の視界を、神々しく燃え盛る炎が真っ白に照らした。
暗闇の中、深淵の底を目指してただひたすらに落ちていく。遥か彼方で僅かに輝く灯りを目指して、真っ直ぐに。
……いや、しかし、果たして私はちゃんと落ちていけているのだろうか。
いつもならば、次第に強くなる灯りによって大穴の底が、浄化の炎が照らす祭壇が、近いのだと分かる筈。
だが、今はどうだ。視界を真っ黒に染める穢れのせいで、よく分からない。
正しく落ちていけているのかも。間違えて、地上へと上がってしまっているのかも。もしくは、左右のどちらかへと飛んでいってしまっているのかも、全く。
心に巣くい始めた不安を、焦りを煽るかのようだ。穢れによって失われていく魔力の量も増していく。
ゆっくりゆっくり刻んでいた、カウントダウン。死の足音がだんだんと近く、速く、大きくなっていく。
「…………もう、三分の一ほど……でしょうか……」
つい漏れてしまっていた、誰にも届くことのない弱音。乾いた喉から絞り出していた声は、自分でも驚くほどに弱々しかった。
相変わらず、遥か先で光る灯りの大きさは変わらない。だというのに、現時点でいつも以上の魔力を奪われてしまっている。
身体にも支障が出始めている。急がねばならないのに、上手く羽ばたくことが出来ない。
少し前から冷たくなっている指先は、足先は、感覚すらも失ってしまっている。ただ、ぼんやりと認識出来るだけだ。まだ、なんとか腕も足も付いているのだと。
不意に音がした。ここは地獄中から集めた穢れが満ちる深淵。眩い生命など一切息づけぬ場所。私の呼吸音しか聞こえない筈。
だが、聞こえる。何かがひび割れ、今にも砕け散ってしまいそうな乾いた音が。
…………ああ、そうか。
……私か。私の心の音か。
自覚した途端、自分の心が折れかけているのだと認めた途端、息が上手く出来なくなった。
……苦しい…………何も見えない。唯一私の導となっていた灯りさえ。
……重たい…………触覚さえ動かない。身体が言うことを聞いてくれない。
全身に広がっていく薄気味悪い何かが、じわじわと私を内側から喰らっていく。魔力を、感覚を奪っていく。
………………もう、私は…………
…………………………………………
……………………………っ……
…………ル、……さ……
バアルさんっ!
「……アオイ、様……」
かひゅっと鳴った喉に新鮮な空気が流れ込む。
居られる筈がないのに聞こえた、私を呼ぶ声。愛しくて愛しくて仕方がない可愛らしい声。
「帰らなければ……あの方の元へ」
不思議だ。改めて、そう決意した瞬間、壊れる寸前だった心が熱くなる。
重たくて仕方がなかった身体が軽くなる。枯れかけていた筈の魔力が湧き上がってくる。
まだ、動ける。まだ、飛べる。
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ただ名前を声に乗せるだけで、眩しい笑顔を思い浮かべるだけで、冷え切っていた身体が、心が、温もりで満たされていく。
まるで、アオイ様が導いてくれたようだ。めいいっぱい羽ばたいた途端、あれほど濃かった穢れが瞬く間に晴れていく。
久方ぶりに地に足をつけた私の視界を、神々しく燃え盛る炎が真っ白に照らした。
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