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大好きな人の柔らかい笑顔の前では
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頭の上から降ってきた穏やかな低音。いつから見られていたんだろうか。釣られて顔を上げると、緑の瞳が俺に微笑んでいた。
大きな白い手が、大事そうに持っている二枚のチケットを俺に見せる。
先程、店員のお兄さんから頂いたものだ。お礼ですと。是非、またいらして下さいと。眩しい笑顔と一緒に頂いたもの。
お店のかき氷と同じでカラフルで光沢のある紙には、バアルさん曰く「トッピング無料!」と大きく書かれているらしい。
此方の文字をマスター出来ていない俺には、まだアルファベットのような、不思議な模様のような文字の羅列にしか見えないのだが。
串焼き屋さんのお土産に引き続き、サービス券を貰えてしまうとは。嬉しいんだけれど、ちょっぴり気が引けてしまう。おこぼれに預かってるみたいでさ。
だって、俺は何もしてない。お客さんが集まっているのは、バアルさんのお陰だからな。
「……はいっ。今度は、大盛り頼んじゃいましょうか?」
だから、その分お店に貢献しないとな。また来てお金を落とすのもだけど、お城に帰ったら宣伝しよう。グリムさんやクロウさん、あと親衛隊の皆さんや兵士さん方、メイドの皆さんに。
バアルさんが目尻のシワを深める。花が咲くように綻んだ唇。緩やかなラインを描く桜色が紡いだ声は、楽しげだ。
「ふふ、そうですね」
彼の手元から、なんの前触れもなくチケットが消えていく。空いた手が、ごく自然に俺の手を取り指を絡めた。
いつ見ても鮮やかだ。
しまったんだろう。術を使って、例の謎空間に。ホント便利だよな。魔力を込めるだけで、いつでも簡単に、どんな大きさの物でも出し入れ出来ちゃうんだからさ。
「二人で食べられる、チャレンジメニューというものもあるようです。そちらを頼んでみるのも楽しそうでございますね」
「いいですね。楽しみです」
カラフルで大きな氷の山を、一緒につつく俺達。気の早い光景を、にやにや思い浮かべていたからだ。
「ところでアオイ様」
「はいっ、何ですか? バアルさん」
「先程は……大変熱心に、この老骨めを見つめておりましたが……いかがなさいましたか?」
「え、そりゃあ、バアルさんはカッコいいなって。見慣れていてもドキドキしちゃうなって…………あっ」
脳内がお花まみれになっていたせいだ。口までガっバガバになってしまっていた。
ヘタれな俺が、すんなり素直に言うとは思わなかったんだろう。艷やかに微笑んでいた瞳が、ぱちぱちと瞬いている。
とはいえ、再起動は早かった。そんでもって、ご機嫌そうだ。金属のような光沢はあるけれど柔らかそうな触覚が、弾むように揺れている。
羽も大きく広がっていた。はためく度に、磨き上げられた硝子のような表面が、温かい日差しをキラキラ反射している。
「左様でございましたか」
モデルさんのようにスタイルの良い長身を屈め、バアルさんが身を寄せてくる。
途端に彼から漂う優しいハーブの匂いが強くなった。おまけに頬が触れてしまいそうだ。人前なのに。
一体全体、どういうバランス感覚をしているんだろうか。腰が痛くなりそうな、下手すれば前のめりにコケてしまいそうな体勢。だというのに、変わらず俺に合わせて、のんびり歩いている。器用だ。
「ば、バアルさん」
「はい、何でしょう? 私の可愛いアオイ」
「ひょわ……」
一撃だった。
甘い声と嬉しいお言葉。さらには蕩けるような微笑み。間近で三つの幸せを一度に受けてしまった俺の腰は砕ける寸前。心臓は喜びのあまり暴れ狂い、理性という名の常識は、あっさり吹き飛んでしまっていた。
「も、もうちょっと……もうちょっとだけ、このままでもいいですか?」
その結果が、このザマである。
ひっくり返りそうな声を出してしまった口が、ますますだらしなく緩んだだけじゃない。だだ漏れだ。
どんなにくっつきたくても、さっきまでは、ちゃんと我慢出来ていたのに。離れた方がいいんじゃないんですか? って、そう提案するハズだったのに。
とはいえ、無意味だった。大好きな人の柔らかい笑顔の前では。
「ええ。此方こそ、宜しくお願い致します」
……まぁ、いっか。
今更だろ。屋台でもイチャイチャしちゃってたんだし。お客さん達が集まってることにも気づかないでさ。
俺は全てを放り投げた。周囲からの視線が強くなったような気もしたが、構わず鍛え上げられた身体に身を寄せた。
大きな白い手が、大事そうに持っている二枚のチケットを俺に見せる。
先程、店員のお兄さんから頂いたものだ。お礼ですと。是非、またいらして下さいと。眩しい笑顔と一緒に頂いたもの。
お店のかき氷と同じでカラフルで光沢のある紙には、バアルさん曰く「トッピング無料!」と大きく書かれているらしい。
此方の文字をマスター出来ていない俺には、まだアルファベットのような、不思議な模様のような文字の羅列にしか見えないのだが。
串焼き屋さんのお土産に引き続き、サービス券を貰えてしまうとは。嬉しいんだけれど、ちょっぴり気が引けてしまう。おこぼれに預かってるみたいでさ。
だって、俺は何もしてない。お客さんが集まっているのは、バアルさんのお陰だからな。
「……はいっ。今度は、大盛り頼んじゃいましょうか?」
だから、その分お店に貢献しないとな。また来てお金を落とすのもだけど、お城に帰ったら宣伝しよう。グリムさんやクロウさん、あと親衛隊の皆さんや兵士さん方、メイドの皆さんに。
バアルさんが目尻のシワを深める。花が咲くように綻んだ唇。緩やかなラインを描く桜色が紡いだ声は、楽しげだ。
「ふふ、そうですね」
彼の手元から、なんの前触れもなくチケットが消えていく。空いた手が、ごく自然に俺の手を取り指を絡めた。
いつ見ても鮮やかだ。
しまったんだろう。術を使って、例の謎空間に。ホント便利だよな。魔力を込めるだけで、いつでも簡単に、どんな大きさの物でも出し入れ出来ちゃうんだからさ。
「二人で食べられる、チャレンジメニューというものもあるようです。そちらを頼んでみるのも楽しそうでございますね」
「いいですね。楽しみです」
カラフルで大きな氷の山を、一緒につつく俺達。気の早い光景を、にやにや思い浮かべていたからだ。
「ところでアオイ様」
「はいっ、何ですか? バアルさん」
「先程は……大変熱心に、この老骨めを見つめておりましたが……いかがなさいましたか?」
「え、そりゃあ、バアルさんはカッコいいなって。見慣れていてもドキドキしちゃうなって…………あっ」
脳内がお花まみれになっていたせいだ。口までガっバガバになってしまっていた。
ヘタれな俺が、すんなり素直に言うとは思わなかったんだろう。艷やかに微笑んでいた瞳が、ぱちぱちと瞬いている。
とはいえ、再起動は早かった。そんでもって、ご機嫌そうだ。金属のような光沢はあるけれど柔らかそうな触覚が、弾むように揺れている。
羽も大きく広がっていた。はためく度に、磨き上げられた硝子のような表面が、温かい日差しをキラキラ反射している。
「左様でございましたか」
モデルさんのようにスタイルの良い長身を屈め、バアルさんが身を寄せてくる。
途端に彼から漂う優しいハーブの匂いが強くなった。おまけに頬が触れてしまいそうだ。人前なのに。
一体全体、どういうバランス感覚をしているんだろうか。腰が痛くなりそうな、下手すれば前のめりにコケてしまいそうな体勢。だというのに、変わらず俺に合わせて、のんびり歩いている。器用だ。
「ば、バアルさん」
「はい、何でしょう? 私の可愛いアオイ」
「ひょわ……」
一撃だった。
甘い声と嬉しいお言葉。さらには蕩けるような微笑み。間近で三つの幸せを一度に受けてしまった俺の腰は砕ける寸前。心臓は喜びのあまり暴れ狂い、理性という名の常識は、あっさり吹き飛んでしまっていた。
「も、もうちょっと……もうちょっとだけ、このままでもいいですか?」
その結果が、このザマである。
ひっくり返りそうな声を出してしまった口が、ますますだらしなく緩んだだけじゃない。だだ漏れだ。
どんなにくっつきたくても、さっきまでは、ちゃんと我慢出来ていたのに。離れた方がいいんじゃないんですか? って、そう提案するハズだったのに。
とはいえ、無意味だった。大好きな人の柔らかい笑顔の前では。
「ええ。此方こそ、宜しくお願い致します」
……まぁ、いっか。
今更だろ。屋台でもイチャイチャしちゃってたんだし。お客さん達が集まってることにも気づかないでさ。
俺は全てを放り投げた。周囲からの視線が強くなったような気もしたが、構わず鍛え上げられた身体に身を寄せた。
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