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白と青に願いを込めて
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「こ、これって……結婚式の衣装、ですか?」
透き通ったレース生地の青いベールがふわふわ揺れていたのだ。細かく繊細な装飾を、これでもかと見せびらかすように。
「……む?」
水を打ったように静かになってしまった室内に、ポツリと落ちた疑問の声。きょとんと丸くなった真っ赤な瞳が俺を見つめている。間違えた、らしかった。
バアルさんとレタリーさんが、ほとんど同時に何かを言おうとして遮られる。
「はっはっは! 儀式用の衣装を使い回すなど、そんな無粋な真似を大事な二人にはさせぬとも! 存分に期待しておくといい! メインもお色直しも最上の物を用意しておるからな!」
「え……儀式用、ですか?」
「む?」
またしても、不思議そうに首を傾げるヨミ様。ぽかんと見つめ合う俺達の疑問を解いてくれたのは、バアルさんとレタリーさんだった。
「申し訳ございません、アオイ様。説明が遅れてしまいましたが、儀式には一つだけ重要な決まりごとがあるのです」
「必ず、白と青の二色を用いた服を身に着けること。それさえ守っていれば、カジュアルなものでも構いません。ですが、やはり一生に一度のものですから……よほど拘りがない限り、フォーマルな衣装で臨まれる方が多いですね」
現世で言う冠婚葬祭のマナーみたいなものか。何か、特別な意味があるんだろうな。ずっと続けられている、決まりごとなのだから。
「そうだったんですね。俺の分にベールがついていたから、てっきり結婚式用かと……」
「成る程、それで勘違いさせてしまっていたんだな」
ヨミ様も納得されたご様子。「すみません」と頭を下げると「いや、私の方こそ」と微笑んでくれた。
そして、二色に込められた意味を教えてくれる。
「私達の国ではな……白は『希望』青は『永遠』の象徴なのだ」
「……希望と永遠」
「うむ。我らが神が灯してくれた私達の希望、浄化の炎を抱く杯。そして、その白き炎へと続く祭壇。どちらもが青い石によって作られているのだ」
ヨミ様達が、バアルさんが、命をかけて守ってくれている浄化の炎。この国を侵そうとしている穢れを消してくれる、唯一の手段。それは、確かに「希望」と呼ぶべきものだろう。
ヨミ様の言葉に、バアルさんが付け加える。
「言い伝えでは、杯と祭壇も神が作りたもうたとされております」
「へぇ……」
「私達の国は『永遠』が約束されておる。神が残してくれた炎がある限り、な……」
青が「永遠」の象徴なのは、希望を永遠に灯し続けている杯が、それに続く祭壇が青いから、か。
ぼんやりと視線を上げて、ふと気づく。一番俺が目にしていて、身近にある「青」の存在に。
「じゃあ、このお城に青い石が使われてるのって……」
「うむっ! 流石アオイ殿であるな! そなたの推測どおり『永遠』の繁栄と平和を願ってのことである!」
「ですから、神の前で愛を誓う際の衣装にも、白と青の二色を用いるのでございます。お二方の愛が、幸せが、永遠に続いていくことを願って……」
柔らかく微笑むレタリーさんの言葉が、じんわりと胸に染み渡っていく。嬉しいのに、目の奥が熱くなってしまう。
俺の手の甲に重なり、繋いでくれたひと回り大きな手。バアルさんの手を握り返し、とびきりの笑顔で応えようとした。したんだけれど。
「……どうだ? 気に入ってくれただろうか?」
おずおずとした声で尋ねながら俺達を、不安と期待の混じった瞳で見つめているヨミ様。落ち着きなく羽を揺らしている彼の姿に、持ち上げようとしていた口角が歪んでしまう。喉が震えてしまう。
「っ……はい、ありがとうございます……今回のサプライズも、スゴく嬉しかったですよ……」
「いつもありがとうございます……大変嬉しく存じます」
また俺は、うつしてしまっていた。俺を抱き寄せてくれたバアルさんだけじゃなく、ヨミ様とレタリーさんにも。
俺とバアルさんを、まとめて抱き締めてくれた優しい王様を。ハンカチーフで目元を押さえながら、俺達を見守る秘書さんを。
透き通ったレース生地の青いベールがふわふわ揺れていたのだ。細かく繊細な装飾を、これでもかと見せびらかすように。
「……む?」
水を打ったように静かになってしまった室内に、ポツリと落ちた疑問の声。きょとんと丸くなった真っ赤な瞳が俺を見つめている。間違えた、らしかった。
バアルさんとレタリーさんが、ほとんど同時に何かを言おうとして遮られる。
「はっはっは! 儀式用の衣装を使い回すなど、そんな無粋な真似を大事な二人にはさせぬとも! 存分に期待しておくといい! メインもお色直しも最上の物を用意しておるからな!」
「え……儀式用、ですか?」
「む?」
またしても、不思議そうに首を傾げるヨミ様。ぽかんと見つめ合う俺達の疑問を解いてくれたのは、バアルさんとレタリーさんだった。
「申し訳ございません、アオイ様。説明が遅れてしまいましたが、儀式には一つだけ重要な決まりごとがあるのです」
「必ず、白と青の二色を用いた服を身に着けること。それさえ守っていれば、カジュアルなものでも構いません。ですが、やはり一生に一度のものですから……よほど拘りがない限り、フォーマルな衣装で臨まれる方が多いですね」
現世で言う冠婚葬祭のマナーみたいなものか。何か、特別な意味があるんだろうな。ずっと続けられている、決まりごとなのだから。
「そうだったんですね。俺の分にベールがついていたから、てっきり結婚式用かと……」
「成る程、それで勘違いさせてしまっていたんだな」
ヨミ様も納得されたご様子。「すみません」と頭を下げると「いや、私の方こそ」と微笑んでくれた。
そして、二色に込められた意味を教えてくれる。
「私達の国ではな……白は『希望』青は『永遠』の象徴なのだ」
「……希望と永遠」
「うむ。我らが神が灯してくれた私達の希望、浄化の炎を抱く杯。そして、その白き炎へと続く祭壇。どちらもが青い石によって作られているのだ」
ヨミ様達が、バアルさんが、命をかけて守ってくれている浄化の炎。この国を侵そうとしている穢れを消してくれる、唯一の手段。それは、確かに「希望」と呼ぶべきものだろう。
ヨミ様の言葉に、バアルさんが付け加える。
「言い伝えでは、杯と祭壇も神が作りたもうたとされております」
「へぇ……」
「私達の国は『永遠』が約束されておる。神が残してくれた炎がある限り、な……」
青が「永遠」の象徴なのは、希望を永遠に灯し続けている杯が、それに続く祭壇が青いから、か。
ぼんやりと視線を上げて、ふと気づく。一番俺が目にしていて、身近にある「青」の存在に。
「じゃあ、このお城に青い石が使われてるのって……」
「うむっ! 流石アオイ殿であるな! そなたの推測どおり『永遠』の繁栄と平和を願ってのことである!」
「ですから、神の前で愛を誓う際の衣装にも、白と青の二色を用いるのでございます。お二方の愛が、幸せが、永遠に続いていくことを願って……」
柔らかく微笑むレタリーさんの言葉が、じんわりと胸に染み渡っていく。嬉しいのに、目の奥が熱くなってしまう。
俺の手の甲に重なり、繋いでくれたひと回り大きな手。バアルさんの手を握り返し、とびきりの笑顔で応えようとした。したんだけれど。
「……どうだ? 気に入ってくれただろうか?」
おずおずとした声で尋ねながら俺達を、不安と期待の混じった瞳で見つめているヨミ様。落ち着きなく羽を揺らしている彼の姿に、持ち上げようとしていた口角が歪んでしまう。喉が震えてしまう。
「っ……はい、ありがとうございます……今回のサプライズも、スゴく嬉しかったですよ……」
「いつもありがとうございます……大変嬉しく存じます」
また俺は、うつしてしまっていた。俺を抱き寄せてくれたバアルさんだけじゃなく、ヨミ様とレタリーさんにも。
俺とバアルさんを、まとめて抱き締めてくれた優しい王様を。ハンカチーフで目元を押さえながら、俺達を見守る秘書さんを。
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