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すっかり忘れていたらしい、御本人もだけれど、珍しいことにバアルさんも
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「その……バアルさんとの新婚旅行の為に、貯めておきたいんです。記念品とか、お土産用に……」
「なに!? もう場所は決まっておるのか!? ホテルは!? 宿泊日数は!?」
「えっ、あ……う……」
前のめりになったヨミ様からの怒涛の質問に二の句が継げない。圧がスゴい。思わず上半身を仰け反らせてしまっていた。
そんな俺を余所にヨミ様は大興奮。テーブルの上に両手をつけたまま、羽を大きく広げていらっしゃる。
陸に打ち上げられた魚のごとく口をぱくぱくさせているだけの俺を、引き締まった腕が抱き寄せてくれた。温かい手のひらが宥めるように肩をぽんぽんと撫でてくれる。
「場所は南エリアです」
「おお! あちらは良いぞ! 自然が豊富なのは勿論だが、レジャー施設も充実しておる。何より父上と私のプライベートビーチもあるからな! 予定が決まり次第、貴殿らが訪れる旨を伝えておこう!」
「お心遣い感謝致します」
トントン拍子に決まってしまったんだが。多分、王族専用のプライベートビーチを使わせてもらえることが。
恐縮過ぎるんだが、丁寧なお辞儀で返すバアルさんは嬉しそうだし。それに。
「遠慮は無用であるぞ! バアルは私と父上の大事な家族である。そして、アオイ殿も家族になるのだからな!」
そう言われてしまえば、微笑みかけられてしまえば、断る方が失礼だ。
「あ、ありがとうございますっ」
「うむっ」
その後も、トントン拍子だった。
「ホテルは、此方のスイートを予約するつもりです」
「ああ、此方なら間違いないな。一番良い部屋を用意させよう」
バアルさんが俺に説明する時にも見せてくれた画像。投影石から放たれている光によって、宙に映し出された煌びやかなホテル。そちらは、ヨミ様曰く王族御用達のものだったらしい。
バアルさんが選んだのも納得だ。バアルさん、ヨミ様とサタン様のこと大好きだし。お二人の右腕として、一緒に訪れていたのかもしれない。
ほっこりしつつも再び申し訳なさを感じたが、ご厚意に甘えることにした。
「日数はまだ決めておりません。ですが、此方のパーク……特にドラゴンとの空中遊泳体験へは訪れるつもりです。アオイ様が愛らしい瞳を輝かせるほど楽しみにして下さっているので」
「それは、是が非でも訪れるべきであるな! 写真は任せたぞ!」
「心得ております」
「うむっ! 私達のことは気にせず、心ゆくまで楽しんできてよいからな。ところでアオイ殿は、貴殿が戦う姿が好きであったろう? 迷宮踏破体験はどうだ? カッコいい姿を存分に見せつけられるぞ? ますます惚れ込んでもらえるぞ?」
ニヤリと口の端を持ち上げたヨミ様に、バアルさんが目を見開く。指先で額を軽く押さえる様は、その手があったかと言わんばかりだ。
「成る程……そちらは盲点でした」
「バアルさんが戦うところ、見れるんですか?」
つい割り込んでしまった。我慢出来なかったんだ。
だって、戦うバアルさんを存分に見られるんだぞ! そんな魅力的過ぎるお話を聞いてしまっては、居ても立っても居られない! もっと詳しく知りたくなっちゃうじゃないか!
食いついてきた俺を見て、ヨミ様の口角がさらに上がっていく。
はためく羽が起こす風で金糸に彩られた片マントが、光沢のある黒い生地が、ふわりふわりと揺れていた。細い腰まで届いている艷やかな黒髪と一緒に。
「うむっ、それも特等席でな! バアルは、絶対にそなたを守りながら立ち回るであろうし」
「……守る? 危ないんですか?」
そわそわしていた身体が止まる。ウキウキしていた熱も引いていく。けれども、すぐに再燃した。それどころか、勢いが増していくことに。
「危険なことは一切ないぞ! 出現する敵役は、術による無害なものであるからな。ただし攻撃に当たり続ければ、強制退去。つまりはゲームオーバーである。宝探し要素もあるぞ! 好きであろう?」
「めっちゃ好きですね」
「大変有益な情報、感謝致します」
深々とお辞儀をするバアルさん。彼が表示してくれていた、迷宮踏破体験の紹介動画を早速見てみることに。
鍾乳洞のような場所に姿を現したリアルな幻。キメラのようにライオンとヘビの特徴を兼ね揃えた獣や、吸血鬼のような出で立ちをしたもの。それらと踊るように華麗に戦うバアルさんを想像して、ヨミ様と大盛り上がり。紅茶も焼き菓子も、どんどん進んでしまう。
クッキーやマドレーヌで賑わっていた大皿が寂しくなり、紅茶のお代わりも四杯目に突入したところ。前のめりになっていた姿勢も落ち着き、ふかふかの背もたれに寄りかかっていた。のんびりカップを傾けようとして、気づく。
「あの……そう言えば、ヨミ様のお用事って?」
「あ」
「…………」
すっかり忘れていたらしい。御本人もだけれど、珍しいことにバアルさんも。
「なに!? もう場所は決まっておるのか!? ホテルは!? 宿泊日数は!?」
「えっ、あ……う……」
前のめりになったヨミ様からの怒涛の質問に二の句が継げない。圧がスゴい。思わず上半身を仰け反らせてしまっていた。
そんな俺を余所にヨミ様は大興奮。テーブルの上に両手をつけたまま、羽を大きく広げていらっしゃる。
陸に打ち上げられた魚のごとく口をぱくぱくさせているだけの俺を、引き締まった腕が抱き寄せてくれた。温かい手のひらが宥めるように肩をぽんぽんと撫でてくれる。
「場所は南エリアです」
「おお! あちらは良いぞ! 自然が豊富なのは勿論だが、レジャー施設も充実しておる。何より父上と私のプライベートビーチもあるからな! 予定が決まり次第、貴殿らが訪れる旨を伝えておこう!」
「お心遣い感謝致します」
トントン拍子に決まってしまったんだが。多分、王族専用のプライベートビーチを使わせてもらえることが。
恐縮過ぎるんだが、丁寧なお辞儀で返すバアルさんは嬉しそうだし。それに。
「遠慮は無用であるぞ! バアルは私と父上の大事な家族である。そして、アオイ殿も家族になるのだからな!」
そう言われてしまえば、微笑みかけられてしまえば、断る方が失礼だ。
「あ、ありがとうございますっ」
「うむっ」
その後も、トントン拍子だった。
「ホテルは、此方のスイートを予約するつもりです」
「ああ、此方なら間違いないな。一番良い部屋を用意させよう」
バアルさんが俺に説明する時にも見せてくれた画像。投影石から放たれている光によって、宙に映し出された煌びやかなホテル。そちらは、ヨミ様曰く王族御用達のものだったらしい。
バアルさんが選んだのも納得だ。バアルさん、ヨミ様とサタン様のこと大好きだし。お二人の右腕として、一緒に訪れていたのかもしれない。
ほっこりしつつも再び申し訳なさを感じたが、ご厚意に甘えることにした。
「日数はまだ決めておりません。ですが、此方のパーク……特にドラゴンとの空中遊泳体験へは訪れるつもりです。アオイ様が愛らしい瞳を輝かせるほど楽しみにして下さっているので」
「それは、是が非でも訪れるべきであるな! 写真は任せたぞ!」
「心得ております」
「うむっ! 私達のことは気にせず、心ゆくまで楽しんできてよいからな。ところでアオイ殿は、貴殿が戦う姿が好きであったろう? 迷宮踏破体験はどうだ? カッコいい姿を存分に見せつけられるぞ? ますます惚れ込んでもらえるぞ?」
ニヤリと口の端を持ち上げたヨミ様に、バアルさんが目を見開く。指先で額を軽く押さえる様は、その手があったかと言わんばかりだ。
「成る程……そちらは盲点でした」
「バアルさんが戦うところ、見れるんですか?」
つい割り込んでしまった。我慢出来なかったんだ。
だって、戦うバアルさんを存分に見られるんだぞ! そんな魅力的過ぎるお話を聞いてしまっては、居ても立っても居られない! もっと詳しく知りたくなっちゃうじゃないか!
食いついてきた俺を見て、ヨミ様の口角がさらに上がっていく。
はためく羽が起こす風で金糸に彩られた片マントが、光沢のある黒い生地が、ふわりふわりと揺れていた。細い腰まで届いている艷やかな黒髪と一緒に。
「うむっ、それも特等席でな! バアルは、絶対にそなたを守りながら立ち回るであろうし」
「……守る? 危ないんですか?」
そわそわしていた身体が止まる。ウキウキしていた熱も引いていく。けれども、すぐに再燃した。それどころか、勢いが増していくことに。
「危険なことは一切ないぞ! 出現する敵役は、術による無害なものであるからな。ただし攻撃に当たり続ければ、強制退去。つまりはゲームオーバーである。宝探し要素もあるぞ! 好きであろう?」
「めっちゃ好きですね」
「大変有益な情報、感謝致します」
深々とお辞儀をするバアルさん。彼が表示してくれていた、迷宮踏破体験の紹介動画を早速見てみることに。
鍾乳洞のような場所に姿を現したリアルな幻。キメラのようにライオンとヘビの特徴を兼ね揃えた獣や、吸血鬼のような出で立ちをしたもの。それらと踊るように華麗に戦うバアルさんを想像して、ヨミ様と大盛り上がり。紅茶も焼き菓子も、どんどん進んでしまう。
クッキーやマドレーヌで賑わっていた大皿が寂しくなり、紅茶のお代わりも四杯目に突入したところ。前のめりになっていた姿勢も落ち着き、ふかふかの背もたれに寄りかかっていた。のんびりカップを傾けようとして、気づく。
「あの……そう言えば、ヨミ様のお用事って?」
「あ」
「…………」
すっかり忘れていたらしい。御本人もだけれど、珍しいことにバアルさんも。
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