478 / 1,566
もう一つのサプライズ
しおりを挟む
もう一つのサプライズがあるからと、ヨミ様とレタリーさんに連れられ辿り着いたのは、大きな扉。花や蔦をモチーフにしたような模様が彫られた、木製の扉が開いた先は、教会のような場所だった。
床も、天井も、壁も、柱も、全てが真っ白だからだろうか。同じ城内なのに、何だかここだけ空気が違う。神社の境内を歩いているような、少し涼しくて清らかな感じ。こんな場所があったなんて。
「あっ、アオイ様! バアル様!」
鈴を転がしたような可愛らしい声、一目散に向かってくる小柄な身体。丸い薄紫色の目を輝かせ、満開の花のような笑みを浮かべて、グリムさんが俺達に駆け寄ってくる。
今朝に、あんな話をしたからだろうか。目の奥が熱くなってしまう。久しぶりでもないのに。
なんだか、最近涙腺が弱すぎるな。今からこんなんじゃあ先が思いやられてしまう。ボロ泣きしちゃうんじゃないか? 儀式でも、結婚式でも。
気遣いレベルがMAXなバアルさんは相変わらずだ。皆さんが気づかないようにさり気なく俺を抱き寄せ、肩を優しく撫でてくれている。嬉しくて、逆に決壊してしまいそう。
拳を握り、必死に堪えている内に、グリムさんが俺達の直ぐ側まで来ていた。
スキップでも踏んでいたんだろうか。とん、とっ、とん、と軽快に弾みながら着地しようとして。
「こんにち、うわっ!?」
盛大に、すっ転んだ。
「グリムさんっ!」
俺と皆さんの焦った声が広い室内に響き渡る。反射的に踏み出した一歩も、伸ばした手も間に合わない。
スローモーションに見えた。
薄紫色の頭が、灰色のフードマントを纏った身体が、白い石の床へと前のめりに倒れていく。
「全く、いきなり駆け出すなって……」
想像してしまっていた、悪い事態は起きなかった。無事に未然に防がれた。
お揃いのフードマントに身を包んだ長身の彼。グリムさんの師匠であるクロウさんが、長い腕でしっかりと抱き止めてくれたのだ。
「はしゃぎ過ぎだ。危ないだろうが……いつになったら学習するんだ?」
眉間にシワを寄せ、呆れたような声でボヤいているものの心配なんだろう。
片手で軽々と抱き起こしたかと思えば膝を折り、グリムさんのか細い腕や足に触れている。入念だ。空港とかで見る、ボディーチェックみたい。
「えへへ……すみません……ありがとうございます、クロウ」
鋭い金の瞳を細めるクロウさんへ、少し照れくさそうに「大丈夫ですよ」と微笑むグリムさん。お二人のほのぼのとした様子を見ていたら、肩の力が抜けていくのが分かった。随分と力んでしまっていたらしい。隣からも後ろからも安心したような声が聞こえた。
「すみません、お騒がせしてしまって……」
「ごめんなさい……」
「いえ、ケガがなくて良かったです」
改めて挨拶を交わしたところで、グリムさんがはたと声を大にする。
「ヨミ様、レタリーさん、流石です! グッドタイミングですよ! 丁度、準備が整ったところなんです!」
「おお、そうであったか! 予定していた時間ピッタリであるな! 凄いぞ!」
「えへへ」
「準備って?」
愉快そうなヨミ様、どこか得意気なグリムさん、気恥ずかしそうに頬を掻くクロウさん。三人から導かれ、バアルさんと一緒に部屋の中央へ。そこには、見覚えのある花で飾られた式場があった。
青い絨毯が敷かれた道の両端にズラリと並び、彩っているのは緑のバラとオレンジのヒマワリ。俺達が贈り合った魔力の花を、模してくれているんだろう。それぞれの参列者席に寄り添い合うように飾られ、咲き誇っている。
道の先には立派な祭壇があった。どこか荘厳な雰囲気が漂う台の上に置かれていたのは青い杯。神秘的な模様が刻まれたそれを見守るように、祭壇の上にある太陽と星が描かれたステンドグラスから淡い光が差し込んでいる。
もしかしなくても、此処が? 準備って、もう一つのサプライズって、まさか。
床も、天井も、壁も、柱も、全てが真っ白だからだろうか。同じ城内なのに、何だかここだけ空気が違う。神社の境内を歩いているような、少し涼しくて清らかな感じ。こんな場所があったなんて。
「あっ、アオイ様! バアル様!」
鈴を転がしたような可愛らしい声、一目散に向かってくる小柄な身体。丸い薄紫色の目を輝かせ、満開の花のような笑みを浮かべて、グリムさんが俺達に駆け寄ってくる。
今朝に、あんな話をしたからだろうか。目の奥が熱くなってしまう。久しぶりでもないのに。
なんだか、最近涙腺が弱すぎるな。今からこんなんじゃあ先が思いやられてしまう。ボロ泣きしちゃうんじゃないか? 儀式でも、結婚式でも。
気遣いレベルがMAXなバアルさんは相変わらずだ。皆さんが気づかないようにさり気なく俺を抱き寄せ、肩を優しく撫でてくれている。嬉しくて、逆に決壊してしまいそう。
拳を握り、必死に堪えている内に、グリムさんが俺達の直ぐ側まで来ていた。
スキップでも踏んでいたんだろうか。とん、とっ、とん、と軽快に弾みながら着地しようとして。
「こんにち、うわっ!?」
盛大に、すっ転んだ。
「グリムさんっ!」
俺と皆さんの焦った声が広い室内に響き渡る。反射的に踏み出した一歩も、伸ばした手も間に合わない。
スローモーションに見えた。
薄紫色の頭が、灰色のフードマントを纏った身体が、白い石の床へと前のめりに倒れていく。
「全く、いきなり駆け出すなって……」
想像してしまっていた、悪い事態は起きなかった。無事に未然に防がれた。
お揃いのフードマントに身を包んだ長身の彼。グリムさんの師匠であるクロウさんが、長い腕でしっかりと抱き止めてくれたのだ。
「はしゃぎ過ぎだ。危ないだろうが……いつになったら学習するんだ?」
眉間にシワを寄せ、呆れたような声でボヤいているものの心配なんだろう。
片手で軽々と抱き起こしたかと思えば膝を折り、グリムさんのか細い腕や足に触れている。入念だ。空港とかで見る、ボディーチェックみたい。
「えへへ……すみません……ありがとうございます、クロウ」
鋭い金の瞳を細めるクロウさんへ、少し照れくさそうに「大丈夫ですよ」と微笑むグリムさん。お二人のほのぼのとした様子を見ていたら、肩の力が抜けていくのが分かった。随分と力んでしまっていたらしい。隣からも後ろからも安心したような声が聞こえた。
「すみません、お騒がせしてしまって……」
「ごめんなさい……」
「いえ、ケガがなくて良かったです」
改めて挨拶を交わしたところで、グリムさんがはたと声を大にする。
「ヨミ様、レタリーさん、流石です! グッドタイミングですよ! 丁度、準備が整ったところなんです!」
「おお、そうであったか! 予定していた時間ピッタリであるな! 凄いぞ!」
「えへへ」
「準備って?」
愉快そうなヨミ様、どこか得意気なグリムさん、気恥ずかしそうに頬を掻くクロウさん。三人から導かれ、バアルさんと一緒に部屋の中央へ。そこには、見覚えのある花で飾られた式場があった。
青い絨毯が敷かれた道の両端にズラリと並び、彩っているのは緑のバラとオレンジのヒマワリ。俺達が贈り合った魔力の花を、模してくれているんだろう。それぞれの参列者席に寄り添い合うように飾られ、咲き誇っている。
道の先には立派な祭壇があった。どこか荘厳な雰囲気が漂う台の上に置かれていたのは青い杯。神秘的な模様が刻まれたそれを見守るように、祭壇の上にある太陽と星が描かれたステンドグラスから淡い光が差し込んでいる。
もしかしなくても、此処が? 準備って、もう一つのサプライズって、まさか。
69
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる