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とある秘書は進んで願い出ていた
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いつの間にやら隣に来て居られたのか。ヨミ様が、バアル様には届かない声で呟いた。
我が主の気配に気づくことが出来ぬとは。これからが本番だというのに、今日の私は随分と気が緩みきっているようだ。注意せねば。
動揺を気取られることのないよう、頭を垂れる。しかし、ヨミ様には全てお見通しの様で、気にするなと言わんばかりに私の肩を軽く叩かれた。
すっかりお二人の世界に浸っていらっしゃるご様子の、バアル様とアオイ様。仲睦まじい御二方を、ヨミ様は慈愛のこもった瞳で見つめていらっしゃる。
「まぁ、仮に契約を交わした後でも、バアルとアオイ殿の幸せを乱すような輩が現れた時は、私が全身全霊をかけて叩き潰すがな」
私達の周囲の空気だけが、僅かに揺れた。
「……塵一つ、残してなるものか」
呟かれた声は、耳を澄まさねば聞き逃してしまうほどに小さかった。けれども、その声色には並々ならぬ決意に満ちていた。
あまりの迫力に、私は無意識に尾羽根を逆立てていたらしかった。私を宥めるように、誰かの手のひらが背を撫でる。
「ほっほっほ、存分にやるとよい。責任は全てわしが持つからのう」
サタン様だった。仰られた内容とは裏腹な明るい声色に、ヨミ様から放たれていた威圧感が和らいでいく。
「ありがとうございます、父上」
夕日よりも赤い瞳が柔らかく微笑む。私は、ごく自然に願い出ていた。
「……ヨミ様……その際は、どうか私めもお連れ下さい」
「うむっ、貴殿の力、存分に貸してもらおうぞ」
「はい、お任せ下さい」
「あ、あのっ」
飛び入り参加してきた、高めの声。精一杯の勇気を振り絞ったような声の方へと視線を向ければ、グリムさんがクロウさんの手を取りながら、細い腕をめいいっぱい上げていた。
「ヨミ様っ、僕達も」
「駄目だ」
遮られ、挙手していた腕をおずおず下げようとしていたグリムさん。寂しそうに瞳を伏せている彼と心配そうにしているクロウさんへ、ヨミ様が微笑みかける。
「グリムとクロウには、大事な使命があるであろう?」
「え……?」
「私達が不埒な輩をとっちめている間、バアルの側に居て、アオイ殿を守るという重大な使命がなっ」
こぼれ落ちんばかりに瞳を見開いたグリムさんの表情が、見る見る内に晴れ渡っていく。
「そ、そうでしたっ、そうですよねっ! 僕達、頑張りますっ!」
小さな拳を握り、ハツラツとした声でヨミ様へと宣言した。安心したように口元を綻ばせたクロウさんも彼に続いて胸に手を当て、頭を下げる。
「お任せ下さい。この身を賭してでも、守り抜いてみせます」
「うむっ、頼りにしておるぞ!」
グリムさんとクロウさんに向かって微笑んでいた眼差しが、私の方へと向けられる。申し訳なさそうに「ところで、遅くなったが」と仰ってから、勿体無いほどのお褒めの言葉ととびきりの笑顔を頂けた。
「良くやったな、レタリー。貴殿のお陰で、いつも以上にアオイ殿が輝いておる。やはり、貴殿に任せて大正解であったな!」
サタン様からも「流石の腕前じゃの!」と背中を撫でて頂けただけでなく、更にはグリムさんとクロウさんからまで。
「スゴかったんですよ! レタリーさんが、シュシュシュってやったら、ますますアオイ様がキラキラキラってなって!」
「まさに神業でしたね」
身に余る温かいお言葉と共に、私がどのようにアオイ様のヘアメイクを施していたのかを、ヨミ様とサタン様に身振り手振りで説明までして頂けたのだ。
我が主の気配に気づくことが出来ぬとは。これからが本番だというのに、今日の私は随分と気が緩みきっているようだ。注意せねば。
動揺を気取られることのないよう、頭を垂れる。しかし、ヨミ様には全てお見通しの様で、気にするなと言わんばかりに私の肩を軽く叩かれた。
すっかりお二人の世界に浸っていらっしゃるご様子の、バアル様とアオイ様。仲睦まじい御二方を、ヨミ様は慈愛のこもった瞳で見つめていらっしゃる。
「まぁ、仮に契約を交わした後でも、バアルとアオイ殿の幸せを乱すような輩が現れた時は、私が全身全霊をかけて叩き潰すがな」
私達の周囲の空気だけが、僅かに揺れた。
「……塵一つ、残してなるものか」
呟かれた声は、耳を澄まさねば聞き逃してしまうほどに小さかった。けれども、その声色には並々ならぬ決意に満ちていた。
あまりの迫力に、私は無意識に尾羽根を逆立てていたらしかった。私を宥めるように、誰かの手のひらが背を撫でる。
「ほっほっほ、存分にやるとよい。責任は全てわしが持つからのう」
サタン様だった。仰られた内容とは裏腹な明るい声色に、ヨミ様から放たれていた威圧感が和らいでいく。
「ありがとうございます、父上」
夕日よりも赤い瞳が柔らかく微笑む。私は、ごく自然に願い出ていた。
「……ヨミ様……その際は、どうか私めもお連れ下さい」
「うむっ、貴殿の力、存分に貸してもらおうぞ」
「はい、お任せ下さい」
「あ、あのっ」
飛び入り参加してきた、高めの声。精一杯の勇気を振り絞ったような声の方へと視線を向ければ、グリムさんがクロウさんの手を取りながら、細い腕をめいいっぱい上げていた。
「ヨミ様っ、僕達も」
「駄目だ」
遮られ、挙手していた腕をおずおず下げようとしていたグリムさん。寂しそうに瞳を伏せている彼と心配そうにしているクロウさんへ、ヨミ様が微笑みかける。
「グリムとクロウには、大事な使命があるであろう?」
「え……?」
「私達が不埒な輩をとっちめている間、バアルの側に居て、アオイ殿を守るという重大な使命がなっ」
こぼれ落ちんばかりに瞳を見開いたグリムさんの表情が、見る見る内に晴れ渡っていく。
「そ、そうでしたっ、そうですよねっ! 僕達、頑張りますっ!」
小さな拳を握り、ハツラツとした声でヨミ様へと宣言した。安心したように口元を綻ばせたクロウさんも彼に続いて胸に手を当て、頭を下げる。
「お任せ下さい。この身を賭してでも、守り抜いてみせます」
「うむっ、頼りにしておるぞ!」
グリムさんとクロウさんに向かって微笑んでいた眼差しが、私の方へと向けられる。申し訳なさそうに「ところで、遅くなったが」と仰ってから、勿体無いほどのお褒めの言葉ととびきりの笑顔を頂けた。
「良くやったな、レタリー。貴殿のお陰で、いつも以上にアオイ殿が輝いておる。やはり、貴殿に任せて大正解であったな!」
サタン様からも「流石の腕前じゃの!」と背中を撫でて頂けただけでなく、更にはグリムさんとクロウさんからまで。
「スゴかったんですよ! レタリーさんが、シュシュシュってやったら、ますますアオイ様がキラキラキラってなって!」
「まさに神業でしたね」
身に余る温かいお言葉と共に、私がどのようにアオイ様のヘアメイクを施していたのかを、ヨミ様とサタン様に身振り手振りで説明までして頂けたのだ。
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