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とある秘書も祝福していた
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喜びに震えていた空気が止まる。
決して悪い意味ではない。一様に息を呑んだからだ。
見惚れたからだ。拍手を送る手を、つい止めてしまうほど。お二方の名前を呼ぼうと大きく開いていた口を、思わず閉ざすほどに。
白い光の中から現れたお二方の晴れ姿に、心を奪われたからだ。
アオイ様の小さな手を取り、祭壇に向かってエスコートしていくバアル様。晴れ渡る空のように青いマントを揺らし長い足を進める様は美しく、威厳に満ちている。白い髭を蓄えた口元に、緩やかな笑みを浮かべている。
少しだけ、アオイ様の表情が固い。
バアル様とお揃いの儀礼服。上下共に真っ白な衣装を華奢な身に纏い、青いベールを揺らしながら、懸命に笑顔を作ろうとしていらっしゃる。
不意に、バアル様が足を止めた。
驚き、見上げるアオイ様のお身体を優しく抱き寄せ、流れるような動作で手の甲に口づけた。予定にはない行動だったが、皆様は演出の一つと捉えたご様子。にわかに黄色い声援が上がった。
アオイ様の頬が染まって、綻んでいく。幸せそうな笑みをバアル様に向けている。目尻のシワを深め、微笑み返したバアル様が長く引き締まった腕をアオイ様の腰に回される。
見つめ合い、頷いてから再び祭壇へと向かって歩み始めた。お二方を優しく照らしている、光輝く道を真っ直ぐに。
寄り添い、歩みを進めるお二方の姿は、理想の夫婦像を絵に描いたよう。仲睦まじい御姿に皆様は拍手をしつつも、声にならない溜め息を漏らしていた。
祭壇の前に辿り着いたお二方を、ヨミ様とサタン様が満面の笑みで迎えた。和やかな雰囲気の中、儀式は滞りなく進んでいく。
ヨミ様が、サタン様が、順番にお二方に祝いの言葉をかけられる。その間に私はお二方の選んだ魔宝石をヨミ様方の元へと運んでいった。
ハツラツとしたヨミ様の言葉を受け、バアル様とアオイ様が魔宝石へと手を伸ばす。
緑色と琥珀色。お二方の瞳の色がグラデーションになった、バイカラーの魔宝石。こぶし大の結晶がお二方の魔力を受けて、淡い輝きを帯びていく。異なる二つの魔力が結ばれていく。
魔宝石が一際大きく瞬いた。緑色と琥珀色、二色の輝きが光の帯となって会場に広がっていく。魔宝石に向かってかざすように、手を重ねたお二方を中心に。
力強くも優しい輝きが、徐々に収まっていく。ほんの一瞬だったが、私は感じた。お二方の魔力が、決して途切れることのない絆で繋がったように感じたのだ。
「……我らが神の元、今、魂の契約は交わされた。バアル、アオイ殿……貴殿らが共に歩む永遠に、あふれんばかりの幸福があらんことを」
ヨミ様からの御言葉の後、お二方が見つめ合い、微笑み合う。
この会場に居る誰もが、投影石を通して見守っている国民の誰もが、お二方の輝かしいこれからを思い浮かべ、祝福していた時だった。
祭壇に祀られていた白い炎が、暴力的な輝きを放ったのは。
決して悪い意味ではない。一様に息を呑んだからだ。
見惚れたからだ。拍手を送る手を、つい止めてしまうほど。お二方の名前を呼ぼうと大きく開いていた口を、思わず閉ざすほどに。
白い光の中から現れたお二方の晴れ姿に、心を奪われたからだ。
アオイ様の小さな手を取り、祭壇に向かってエスコートしていくバアル様。晴れ渡る空のように青いマントを揺らし長い足を進める様は美しく、威厳に満ちている。白い髭を蓄えた口元に、緩やかな笑みを浮かべている。
少しだけ、アオイ様の表情が固い。
バアル様とお揃いの儀礼服。上下共に真っ白な衣装を華奢な身に纏い、青いベールを揺らしながら、懸命に笑顔を作ろうとしていらっしゃる。
不意に、バアル様が足を止めた。
驚き、見上げるアオイ様のお身体を優しく抱き寄せ、流れるような動作で手の甲に口づけた。予定にはない行動だったが、皆様は演出の一つと捉えたご様子。にわかに黄色い声援が上がった。
アオイ様の頬が染まって、綻んでいく。幸せそうな笑みをバアル様に向けている。目尻のシワを深め、微笑み返したバアル様が長く引き締まった腕をアオイ様の腰に回される。
見つめ合い、頷いてから再び祭壇へと向かって歩み始めた。お二方を優しく照らしている、光輝く道を真っ直ぐに。
寄り添い、歩みを進めるお二方の姿は、理想の夫婦像を絵に描いたよう。仲睦まじい御姿に皆様は拍手をしつつも、声にならない溜め息を漏らしていた。
祭壇の前に辿り着いたお二方を、ヨミ様とサタン様が満面の笑みで迎えた。和やかな雰囲気の中、儀式は滞りなく進んでいく。
ヨミ様が、サタン様が、順番にお二方に祝いの言葉をかけられる。その間に私はお二方の選んだ魔宝石をヨミ様方の元へと運んでいった。
ハツラツとしたヨミ様の言葉を受け、バアル様とアオイ様が魔宝石へと手を伸ばす。
緑色と琥珀色。お二方の瞳の色がグラデーションになった、バイカラーの魔宝石。こぶし大の結晶がお二方の魔力を受けて、淡い輝きを帯びていく。異なる二つの魔力が結ばれていく。
魔宝石が一際大きく瞬いた。緑色と琥珀色、二色の輝きが光の帯となって会場に広がっていく。魔宝石に向かってかざすように、手を重ねたお二方を中心に。
力強くも優しい輝きが、徐々に収まっていく。ほんの一瞬だったが、私は感じた。お二方の魔力が、決して途切れることのない絆で繋がったように感じたのだ。
「……我らが神の元、今、魂の契約は交わされた。バアル、アオイ殿……貴殿らが共に歩む永遠に、あふれんばかりの幸福があらんことを」
ヨミ様からの御言葉の後、お二方が見つめ合い、微笑み合う。
この会場に居る誰もが、投影石を通して見守っている国民の誰もが、お二方の輝かしいこれからを思い浮かべ、祝福していた時だった。
祭壇に祀られていた白い炎が、暴力的な輝きを放ったのは。
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