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【番外編】ハレの日だから10
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とにもかくにも、バアルさんのご期待に応えなければ。
浮かれた気持ちを引き締めて、再び口を押しつけてみる。柔らかい温もりと触れ合えた途端、不満気に下がっていた彼の口角が緩やかに上がっていく。パタパタとはためく羽の音が聞こえ出す。
俺は単純な男だ。バアルさんに喜んでもらえたら嬉しくて、ついつい調子に乗ってしまう。
そんなもんだから、口づける他にも手を出してしまっていた。セットが崩れるのも構わずに、指通りのいい白い髪を梳くように撫でてみたり、指先で目尻や頬骨のカッコいいシワをなぞってみたり。
好き勝手に撫で回しても、息をするように繰り返し口づけても、バアルさんはされるがまま。時々、擽ったそうな笑みをこぼすだけで、全部受け止めてくれていた。
ずっと香っていたイチゴみたいな、おそらくワインの香りが俺にも移ってしまう頃には、最初の決意は何処へやら。すっかり俺自身が楽しんでしまっていた。
そのせいだ。気がつくのが遅れてしまった。絶えず聞こえていた羽の音が小さくなって、俺に微笑んでくれていた瞳がウトウトしてきてようやくだった。
「ん……ごめんなさい……眠くなっちゃいましたか?」
擦り寄せていた口を離すと閉じかけていた瞼がぱちりと開いた。けれども、すぐにまた鮮やかな緑が見えなくなっていく。白い睫毛が伏せられていく。
「……大丈夫、です……まだ、眠くは……もっと……私に……触れて、下さ……」
途切れ途切れに話す間にも、俺の背を抱いたままゆらゆらと船を漕ぎかけている。
それでも懸命に眠気に抗おうと頭をふるふる左右に振る様は、健気で可愛くて。胸がきゅっと締めつけられてしまう。とびきり甘やかしたく、応えたくなってしまう。
「……ベッドに行きましょう? 立てますか?」
滲み出ていた欲を振り払い、彼の頭へと伸びかけていた手を幅広の肩へと置く。
こんなにも眠たそうなのに、流石はバアルさん。まだ思考は回っているらしい。少し押せば、俺がコテンといってしまうのが分かっているんだろう。そっと取った俺の手に、滑らかな頬を擦り寄せてきた。
とはいえ、律儀に答えるところは答えてくれるのが彼らしい。
「……立てます……ですが……嫌、です……まだ、アオイと……アオイに……」
可愛らしい仕草と嬉しいお願い。どちらも心にグッときすぎて、頭がクラクラしてしまう。
いやいや、俺が折れる訳には……
「……お、起きたら、またいっぱいしましょう? だから、今は休んで」
「……誠に、ですか? 起きたら、また……?」
「はい……俺も、もっとバアルさんとキスしたいですし……その……今度は撫でて欲しいから……」
何とか堪えたものの、期待に満ちた眼差しに釣られてしまった。うっかり甘えたい欲を出してしまっていた。
大きな手が、俺の手を取り握り締める。かち合った眼差しには変わらず濃い眠気が滲んでいたけれど強い光が宿っていて、自然と胸が高鳴ってしまう。
「……一時間」
「……え?」
「一時間で、起きます……必ずや……」
「ふふ、楽しみに待ってますね……」
約束を交わしてからのバアルさんの行動は早かった。
俺を抱えたまま部屋の奥にあるベッドへと向かい、術でご自身の服装と俺の服までお揃いの衣装から部屋着へと早着替え。素早く羽のように軽い布団の中へと潜り込んで、俺を抱き締めたのだ。
当たり前のように添い寝を求められ、胸の内が喜びで満たされていく。口元が勝手にニヤけてしまう。
落ち着くハーブの香りと安心する温もりに包まれて、夢見心地のまま逞しく盛り上がった彼の胸板に顔を寄せようとしていた時だ。
「アオイ……」
「ひゃ、ひゃいっ……なんでしょう?」
弾かれるように顔を上げた途端、白くて長い指が俺の顎を優しく掴んだ。吐息が触れる寸前まで近づいてきた唇が、どこか照れくさそうに歪んでいる。
「頭を……撫でて、頂けないでしょうか? 出来れば……手も繋いで」
込み上げた熱に唆されるまま、俺は口づけてしまっていた。あんまりにも可愛らしいお願いをしてくれるもんだから、言葉よりも先に行動で示してしまっていたのだ。
優しい瞳が僅かに見開いたものの、すぐに細められた。彼もまた、応えてくれるように唇を擦り寄せてくれた。
何度か交わし合ってから指を絡めて手を繋いで、乱れた艷やかな髪を整えるように優しく撫でる。
うつらうつらと瞼を閉じかけては、俺の姿を、撫でている手を確認するように見つめてくる。そんな彼の姿にまた愛しさが込み上げてきて、小さく笑ってしまっていた。
「ふふ、大丈夫だよ……バアルが眠っちゃってもずっと撫でているから……だから、ゆっくりお休み……」
「……はい……お休みなさい、アオイ……」
安心してくれたんだろう。柔らかい笑みを形作った唇で繋いだ手の甲に触れてくれてから、バアルさんは瞳を閉じた。
すぐに規則正しい寝息が聞こえてきたけれど、俺は手を止めなかった。穏やかな笑みを浮かべる彼を見つめながら、触り心地の良い髪をずっと撫でていた。
浮かれた気持ちを引き締めて、再び口を押しつけてみる。柔らかい温もりと触れ合えた途端、不満気に下がっていた彼の口角が緩やかに上がっていく。パタパタとはためく羽の音が聞こえ出す。
俺は単純な男だ。バアルさんに喜んでもらえたら嬉しくて、ついつい調子に乗ってしまう。
そんなもんだから、口づける他にも手を出してしまっていた。セットが崩れるのも構わずに、指通りのいい白い髪を梳くように撫でてみたり、指先で目尻や頬骨のカッコいいシワをなぞってみたり。
好き勝手に撫で回しても、息をするように繰り返し口づけても、バアルさんはされるがまま。時々、擽ったそうな笑みをこぼすだけで、全部受け止めてくれていた。
ずっと香っていたイチゴみたいな、おそらくワインの香りが俺にも移ってしまう頃には、最初の決意は何処へやら。すっかり俺自身が楽しんでしまっていた。
そのせいだ。気がつくのが遅れてしまった。絶えず聞こえていた羽の音が小さくなって、俺に微笑んでくれていた瞳がウトウトしてきてようやくだった。
「ん……ごめんなさい……眠くなっちゃいましたか?」
擦り寄せていた口を離すと閉じかけていた瞼がぱちりと開いた。けれども、すぐにまた鮮やかな緑が見えなくなっていく。白い睫毛が伏せられていく。
「……大丈夫、です……まだ、眠くは……もっと……私に……触れて、下さ……」
途切れ途切れに話す間にも、俺の背を抱いたままゆらゆらと船を漕ぎかけている。
それでも懸命に眠気に抗おうと頭をふるふる左右に振る様は、健気で可愛くて。胸がきゅっと締めつけられてしまう。とびきり甘やかしたく、応えたくなってしまう。
「……ベッドに行きましょう? 立てますか?」
滲み出ていた欲を振り払い、彼の頭へと伸びかけていた手を幅広の肩へと置く。
こんなにも眠たそうなのに、流石はバアルさん。まだ思考は回っているらしい。少し押せば、俺がコテンといってしまうのが分かっているんだろう。そっと取った俺の手に、滑らかな頬を擦り寄せてきた。
とはいえ、律儀に答えるところは答えてくれるのが彼らしい。
「……立てます……ですが……嫌、です……まだ、アオイと……アオイに……」
可愛らしい仕草と嬉しいお願い。どちらも心にグッときすぎて、頭がクラクラしてしまう。
いやいや、俺が折れる訳には……
「……お、起きたら、またいっぱいしましょう? だから、今は休んで」
「……誠に、ですか? 起きたら、また……?」
「はい……俺も、もっとバアルさんとキスしたいですし……その……今度は撫でて欲しいから……」
何とか堪えたものの、期待に満ちた眼差しに釣られてしまった。うっかり甘えたい欲を出してしまっていた。
大きな手が、俺の手を取り握り締める。かち合った眼差しには変わらず濃い眠気が滲んでいたけれど強い光が宿っていて、自然と胸が高鳴ってしまう。
「……一時間」
「……え?」
「一時間で、起きます……必ずや……」
「ふふ、楽しみに待ってますね……」
約束を交わしてからのバアルさんの行動は早かった。
俺を抱えたまま部屋の奥にあるベッドへと向かい、術でご自身の服装と俺の服までお揃いの衣装から部屋着へと早着替え。素早く羽のように軽い布団の中へと潜り込んで、俺を抱き締めたのだ。
当たり前のように添い寝を求められ、胸の内が喜びで満たされていく。口元が勝手にニヤけてしまう。
落ち着くハーブの香りと安心する温もりに包まれて、夢見心地のまま逞しく盛り上がった彼の胸板に顔を寄せようとしていた時だ。
「アオイ……」
「ひゃ、ひゃいっ……なんでしょう?」
弾かれるように顔を上げた途端、白くて長い指が俺の顎を優しく掴んだ。吐息が触れる寸前まで近づいてきた唇が、どこか照れくさそうに歪んでいる。
「頭を……撫でて、頂けないでしょうか? 出来れば……手も繋いで」
込み上げた熱に唆されるまま、俺は口づけてしまっていた。あんまりにも可愛らしいお願いをしてくれるもんだから、言葉よりも先に行動で示してしまっていたのだ。
優しい瞳が僅かに見開いたものの、すぐに細められた。彼もまた、応えてくれるように唇を擦り寄せてくれた。
何度か交わし合ってから指を絡めて手を繋いで、乱れた艷やかな髪を整えるように優しく撫でる。
うつらうつらと瞼を閉じかけては、俺の姿を、撫でている手を確認するように見つめてくる。そんな彼の姿にまた愛しさが込み上げてきて、小さく笑ってしまっていた。
「ふふ、大丈夫だよ……バアルが眠っちゃってもずっと撫でているから……だから、ゆっくりお休み……」
「……はい……お休みなさい、アオイ……」
安心してくれたんだろう。柔らかい笑みを形作った唇で繋いだ手の甲に触れてくれてから、バアルさんは瞳を閉じた。
すぐに規則正しい寝息が聞こえてきたけれど、俺は手を止めなかった。穏やかな笑みを浮かべる彼を見つめながら、触り心地の良い髪をずっと撫でていた。
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