585 / 1,566
【番外編】ひたすらに甘やかして2
しおりを挟む
そう。そうなのだ。つい先程、彼がツラツラと語った通り、俺は繰り返してしまったのだ。あの俺達にとって記念すべき晩でのポンコツムーブを。
バアルさんに話しかけられても、頭の中はお花が咲き乱れていて上の空。あーんしてもらえれば食べこぼし、お返しをすれば彼のお髭や口元をソースでべっとり汚す。毎日お風呂をご一緒させてもらっているくせに、彫刻みたいにカッコいい彼の裸を見た瞬間、腰を抜かしてひっくり返りそうになる。
という、まるで再現VTRか? ってくらいに全く同じ反応とやらかしをしてしまったのだ。因みにその日もバアルさんから心配されて、なおかつ誤解は解けている。単純に俺が浮かれまくっていただけだって。
つまりはだ。バアルさんからしたら丸わかりなのだ。今回も俺が浮かれてしまっているって。久々に彼からたっぷり可愛がってもらえるってことで、彼と愛し合えることで、頭がいっぱいになっているんだって。
なんだか、夫婦になれたからって変わらないな……やっぱり俺ばっかりだ……ドキドキしてるの……
「……仕方ないでしょう? バアルさんのこと、大好きなんですから……まぁ、バアルさんは俺よりずっと大人だから……余裕、なんでしょうけど……」
子供っぽい寂しさが滲み出てしまったからだ。言わなくてもいいことを。
マズいと思う頃には、優しく手を退かされていた。大きな手のひらから後頭部を掴まれて、分厚い胸板に押しつけるように抱き寄せられて。今彼が、どんな顔をしているのか分からない。でも、きっとイヤな想いを。
「聞こえておりますか?」
「え……?」
「私めの心音が」
「あ……はい、聞こえて……いますけど……」
「では、どのように聞こえておりますか?」
どのようにって……そんなの……
普通ですけど、とは言えなかった。だって、明らかに早かったのだ。目を閉じて、耳を押しつけて、集中して聞いてみても変わらない。
忙しなく、ドッ、ドッ、ドッと駆けている命の音は、抱き締めてくれる身体から伝わってくる熱は、もしかしたら俺よりも。
「……ごめんなさい……俺ばっかりって、思っちゃって……余裕だなんて、勝手に決めつけちゃって……」
「ふふ、分かって頂けたのであれば」
一度ぎゅっと強く抱き寄せられてから、再び対面した彼はますますご機嫌そう。風を切るように羽をはためかせ、目尻のシワを深くしている。
それは何よりなのだけれど。優しい視線が、漂う空気が、擽ったくて仕方がない。思わず顔を背けたくなったけれども見逃してくれるハズもなく。
「アオイは周りの方をよく見れて、思いやりに長けている御方ですのに……ことご自身に関しては、よく鈍くなってしまわれますよね? そういうところも好ましく思っておりますが」
捕まってしまった。細長い指に顎を掴まれて、額をくっつけられて、鮮やかな緑の瞳に捉えられてしまった。
「もっと貴方様には、分かって頂く必要があるようですね……私めが、どれほどまでに貴方様に焦がれて止まないのかを……」
「あ……バアルさ……」
絡んだ視線は熱を帯びていて、柔らかな微笑みは艶めいていた。お手柔らかにと、お願いする間もなく奪われていた。言葉も、吐息も、混じって分からなくなっていた。
バアルさんに話しかけられても、頭の中はお花が咲き乱れていて上の空。あーんしてもらえれば食べこぼし、お返しをすれば彼のお髭や口元をソースでべっとり汚す。毎日お風呂をご一緒させてもらっているくせに、彫刻みたいにカッコいい彼の裸を見た瞬間、腰を抜かしてひっくり返りそうになる。
という、まるで再現VTRか? ってくらいに全く同じ反応とやらかしをしてしまったのだ。因みにその日もバアルさんから心配されて、なおかつ誤解は解けている。単純に俺が浮かれまくっていただけだって。
つまりはだ。バアルさんからしたら丸わかりなのだ。今回も俺が浮かれてしまっているって。久々に彼からたっぷり可愛がってもらえるってことで、彼と愛し合えることで、頭がいっぱいになっているんだって。
なんだか、夫婦になれたからって変わらないな……やっぱり俺ばっかりだ……ドキドキしてるの……
「……仕方ないでしょう? バアルさんのこと、大好きなんですから……まぁ、バアルさんは俺よりずっと大人だから……余裕、なんでしょうけど……」
子供っぽい寂しさが滲み出てしまったからだ。言わなくてもいいことを。
マズいと思う頃には、優しく手を退かされていた。大きな手のひらから後頭部を掴まれて、分厚い胸板に押しつけるように抱き寄せられて。今彼が、どんな顔をしているのか分からない。でも、きっとイヤな想いを。
「聞こえておりますか?」
「え……?」
「私めの心音が」
「あ……はい、聞こえて……いますけど……」
「では、どのように聞こえておりますか?」
どのようにって……そんなの……
普通ですけど、とは言えなかった。だって、明らかに早かったのだ。目を閉じて、耳を押しつけて、集中して聞いてみても変わらない。
忙しなく、ドッ、ドッ、ドッと駆けている命の音は、抱き締めてくれる身体から伝わってくる熱は、もしかしたら俺よりも。
「……ごめんなさい……俺ばっかりって、思っちゃって……余裕だなんて、勝手に決めつけちゃって……」
「ふふ、分かって頂けたのであれば」
一度ぎゅっと強く抱き寄せられてから、再び対面した彼はますますご機嫌そう。風を切るように羽をはためかせ、目尻のシワを深くしている。
それは何よりなのだけれど。優しい視線が、漂う空気が、擽ったくて仕方がない。思わず顔を背けたくなったけれども見逃してくれるハズもなく。
「アオイは周りの方をよく見れて、思いやりに長けている御方ですのに……ことご自身に関しては、よく鈍くなってしまわれますよね? そういうところも好ましく思っておりますが」
捕まってしまった。細長い指に顎を掴まれて、額をくっつけられて、鮮やかな緑の瞳に捉えられてしまった。
「もっと貴方様には、分かって頂く必要があるようですね……私めが、どれほどまでに貴方様に焦がれて止まないのかを……」
「あ……バアルさ……」
絡んだ視線は熱を帯びていて、柔らかな微笑みは艶めいていた。お手柔らかにと、お願いする間もなく奪われていた。言葉も、吐息も、混じって分からなくなっていた。
57
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる